脳の見方
眼球から送られてきた情報を脳が見ていることをこれまで見てきました。もう少し、このことを見ていきます。
人がものを見て判断するとき、視覚だけでなく、肌からの刺激、聴覚などありとあらゆる感覚を使っています。しかし、ここでも、視覚のみを考えます。
取り扱う範囲は、脳の視野です。
視覚において、眼球で捕らえた以上の視界の情報は得られません。
眼球を操作して1文字に焦点を絞った場合、脳の視野には1文字しか映りません。まぶたを開いて複数文字見える場合、いくつかの文字を見ることができます。眼球の捕らえる視界によって、脳に映る範囲の広狭が決まります。脳の視野には、眼球で捕らえる以上のものは映りません。
脳はどのように文字を見ているのでしょうか。
文字の大きさと範囲を脳がどのように見ているかです。
脳の視野に映った、焦点を絞った1文字と、複数見える1文字では、大きさは変わらないように感じます。焦点を絞ってもそうでなくても、眼球で捕らえた文字の大きさを、脳は同じ大きさに捕らえているのです。
では、眼球で捕らえた視界が、狭い場合と広い場合とでは、脳の視野にどのように映るのでしょうか。範囲が狭ければ、脳の視野にも、狭く映るはずです。そして、眼球の限界で見た最も広い視界でも、脳の視野にもそのまま映ります。機械的に考えれば、眼球で視界を小さくすれば、脳の視野に映ったものは、広い範囲で暗くなっているはずです。しかし、現実には、その範囲の狭い広いにかかわらず、見える範囲の外に暗がりを見ることはありません。視界視野の広狭があっても、脳が文字の大きさを一定の大きさに調整していると考えられます。
脳がどのように見ているかです。
眼球が1文字に焦点を絞った場合、脳はその1文字しか見られません。
眼球が複数文字を捕らえた場合、脳はいくつかの文字を同時に見ています。視線の文字の周囲のいくつかの文字をはっきりと脳は見ることができます。
ところが、眼球が複数の文字を捕らえている場合で、かつ、脳の視野にいくつかの文字が同時に映っている場合でも、1文字しか見えないことがあるようです。はっきりと映った文字のすべてをいつもはっきりと脳が見ているわけではないということです。
意識により、視野に映った情報を脳が取捨選択しているのです。
例えば、文中でわからない文字があった場合に起こることがあります。意識がわからない文字に集中するため、はっきりと映っている他の文字を脳が見ていないようです。
さらに、電話をしながらの自動車の運転があります。眼球が見える状態で、脳の視野に映っているにもかかわらず、追突などの事故を起こすことです。会話により、外界の状況を脳が見ないように、見えていてもそれに対応できないようにしているのです。
本来の目的とは違うことを、想像したり、思い出したりする雑念も脳の見方に影響しています。
眼球で見た外界の状況と、脳で見た視野に映った状況とは、必ずしも一致するとは限らない、と言えそうです。
眼球で1点に焦点を絞ると、脳ではそれ以上の視野を得ることはできません。眼球でより広い範囲を捕らえて、それを脳に送っても、脳がそれをすべて見ているとは限りません。
ここで確認しておきたいのは、眼球で捕らえた以上の外界の情報を脳は知ることができない、ということです。そして、送られた情報のすべてを脳が見ているわけではない、ということです。
眼球が筋肉を使って視界の広狭を操作するように、脳は視野に映った範囲を意識で狭く広く見たりしています。そして、目的に応じて、広狭の決定や調整を自然(無意識)に操作しています。
更新記録など
2016年10月4日(火) : アップロード
2018年5月31日(木) : 『意識と無意識ⅠⅡⅢ』追加による構成変更。