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読んでやる! basis 基礎 意識と無意識Ⅲ
行動の質

 私たちの行動が正確であれば、より満足度の高い活動ができます。さらに、新しいことを学び続けることで、可能性を広げられます。

行動の質

 小学校の時に、漢字の練習をしたことがあります。宿題で、同じ字を10回ほど書くのです。この練習の目的は何でしょうか。
 「漢字を覚えるために書いている」が、もっともな答えになるでしょうか。そして、中学生になると、漢字の代わりに英単語を同じように練習しました。
 目で見て、手の感覚で、発音して、覚える。体で覚えるということでしょうか。
 この感覚を覚えていると、新しい文字に出会っても、効率よく覚えられるのかもしれません。

 記憶には、一目見ただけでずっと覚えているものもあれば、練習を繰り返しても覚えられないものがあります。
 それは、その人の個性や能力に関係しているのかもしれません。そして、個性と同じように、能力差には個人差があります。理解力、記憶力、協調性、リーダーシップ等々。
 それは、全員が練習をしても、短距離走でオリンピックに出られる人が限られているのににています。恵まれた身体、強靱なメンタル、協力的な支援などがあって、達成できることです。
 能力や個性の差は、他者との比較だけではありません。個人についても言えることです。どれくらい能力を伸ばし、新たな分野への可能性を広げられるかです。練習前と後での差があります。

 先ほどの漢字を覚えることに戻ります。何回も書くことは、漢字そのものを覚えます。と、同時に漢字の覚え方も自分なりに習得していきます。
 何回も書いていると、書くことが目的になってしまって、覚えるという意識が薄れてきます。特に宿題で出されるものは、5回とか10回とか、1文字の書く回数が決められています。ノルマのように、ただ文字を生産すればよい感覚(無意識)になりがちです。
 文字を覚える目的であれば、覚えてしまえば、それ以上練習する必要はないはずです。

 では、覚えてしまえば、もう書く必要はないのでしょうか。
 書道はどうでしょうか。書家は、何度も同じ字を書いているはずです。紙の上を走る筆の感触、字の形など、あらゆる感覚を身につけているようです。
 その漢字を覚えるだけなら、何回も書く必要はないかもしれません。しかし、新しい字を覚えるときに、豊富な書く感覚をもっていれば、現実に書かなくても、その字を覚えられるかもしれません。
 書家が書いたことのない字を書くとき、一般の人々にくらべて上手に書くはずです。それは、見たことのない字に対して、書く感覚をイメージできるからでしょう。
 しかし、ここでも才能のある人は、それほど書かなくても字をきれいに書きます。

 「その漢字を覚える」そして、「新しい漢字が出てきた時も覚えられる」方法を身につけようとしているのです。
 「女」という漢字は「くノ一」と書くと教わることがあります。ひらがなの「く」+カタカナの「ノ」+漢字の「一」でできあがります。名詞ですから、漢字だけを覚えるに焦点を合わせた覚え方と言えます。
 注目したいのは、覚える方法なのです。

 何回も繰り返さないと覚えられないと思い込んでいないでしょうか。逆に言うと、何回も繰り返して覚える癖をつけていないか、ということです。
 一見しても覚えられることがあるわけですから、1回で覚える習慣があっても不思議はありません。
 しかしながら、質の問題があります。丁寧だけでなくきれいな字、発音、意味、使い方などが、キチンとできているかです。
 質を高めるには、いくつかの視点から文字に触れることだと思われます。文字を文章の中に位置づけて意味を考え、黙読や音読をする。文字の形を見たり、読んだり、書いたり、声に出したりする。さらに、作文の中に、その文字を入れて使ってみる。
 1回で覚えようとする意志を持って、自分の、リズムとスピード、感覚で、読んだり、書いたり、声に出したりします。
 文字によっては、何回も同じことを繰り返すことになるでしょう。場合によっては、覚えられないこともあります。

 文字を覚えようとした時に、それをどのように見て、何をして、覚えたのかを意識して行動しておくこと。そうすれば、うまく覚えられたときに、その感覚を再現できます。それを繰り返せば、やがて無意識でできるようになるはずです。
 これは、文字だけでなく、スポーツや家事、仕事にも言えることだと思います。

 ここでは話をわかりやすくするために、「1回で覚えようとする意志」を使いました。試験や受験勉強でない限り、現実には、そんな意志を持つことはありません。
 見たり聞いたり行動したりして、必要なことを知らず知らずのうちに、覚えているからです。

 まとめると。
 自分の、リズムやスピード、感覚で、いろんな視点から見たり聞いたり行動したりすることが、物事の習得に影響を与えている。それを意識して実行し、うまくいった感覚を続けることで、無意識でできるようになる。
 となります。
 ただ、言うは易く行うは難し、です。

更新記録など

2018年5月31日(木) : アップロード