意識と無意識の関係
例として、学校のペーパーテストがあります。設問があり、それに回答します。国語や算数など、科目はいくつかありますが、考えたり言葉を覚えたりします。テストを受ける人の使う機能は多岐にわたります。その中に、私たちの記憶から思い出すことがあります。記憶を無意識とするなら、思い出すのは意識です。無意識の中から必要なデータを意識して取り出す能力を計っているのがテストともいえます。
例として、国語の漢字テストについて考えてみましょう。
このようなテストは、覚えたことを思い出すことといえます。記憶との関係が深いようです。
覚えたての漢字は、紛らわしい問題の場合、間違えることがあります。そして、しばらくして同じ漢字について別のテストをすると、すぐに出てくるものもあれば、まったく思い出せないものが出てきます。答え合わせをして、そうだったと思うこともあれば、こんなの習ったかなと感じることもあります。
そして、学校を卒業し、社会人を何年か経験して、テレビ番組で小学生レベルの漢字クイズに苦戦することがあります。日頃使わないもので、過去の記憶を呼び起こそうとします。また、慣習的な使い方を答えにしてしまって、間違うこともあります。(学校のテストは教科書に基づいているため、世間で使われているものとは違うことがあります。例えば、時間の「十分」を「じゅっぷん」と読むことです。「じゅう」+「ふん」が音便のようで正しく思います。しかし、教科書を見ると「じっ」+「ふん」で「じっぷん」となっています。時間でなければ「じゅうぶん」とも読みます。)
図4-2は、漢字テストの例です。問題を見て意識は、無意識から答えを引き出そうとします。
問題1は、答えがすぐに出る場合です。正解であれば、無意識にあるものが、正しく意識に反映したことになります。間違った場合、無意識にあるものが、間違っていたか、記憶が変遷したか、思い込みなどが考えられます。意識と無意識の連絡に、誤作動は少ないように感じます。
問題2です。正確に覚えているにもかかわらず、誤答をする場合です。意識して見直すと訂正できる可能性があります。無意識から意識に行く途中で、何らかの原因で違うものにすり替わってしまうことです。「完璧」の場合、「璧」はめったに使わないため、「へき」の韻で、よく使う「壁」を確認することなく書いてしまう、などです。
問題3は、覚える努力をしたにもかかわらず、無意識から意識に引き出せないケースです。漢字の形を覚えていますが、正解できません。漢字が、花のイメージではないかもしれません。また、「桔梗(ききょう)」を無理やり「けつべん」とか「けつびん」と読むと、正解に結びつきません。せめて、「きちべん」なら、最初の「き」で正解を思い出すかもしれません。
これ以外にも様々なことがありますが、意識と無意識は相互に作用して、問題に解答しています。
日頃は無意識にあるとしても、意識する必要に迫られる時があります。
しかし、すぐに思い出せるものもあれば、そうでないものもあります。身体の動きでは、スムーズに動かせる場合もあれば、ぎごちない時もあります。
覚えたてのことは、何かの刺激があれば、それを意識することがあります。しかし、必ず思い出せるとは限りません。先ほどまで覚えていたのに、何らかの雑音で思い出せなくなることもあります。
かなり昔に一度しか経験していないのに、昨日のことのように思い出せることもあります。これは、言葉にも言えることで、一度しか聞いていないのに、忘れないものがあります。
最近覚えたからといって、必ず思い出せるとは限りません。昔に覚えたから、忘れているとは限らないのです。どうも、その人の、育ってきた環境、感受性、性格などが、意識と無意識に作用しているようです。
そして、意識して思い出せなくても、無意識は働いているようです。身についてしまったら、覚えておこうという意識は必要がないからです。この場合、意識して、言葉で表現できないかもしれません。感覚にあることを言葉で再現するような感じになると思います。
意識していなくても、無意識が働けば、円滑な行動ができるようです。意識することは、今していることに注意を向けることで、それほど多くのことではないはずです。しかし、身体の動き、言葉の意味など、無意識が働くことは、それ以上に多くあるはずです。
このことは、意識することを少なくし、無意識を働かせることで効率のよい行動を実現させているようです。ですから、今やっている作業とは関係があったとしても、何かを意識することで、動きが止まる可能性があります。無意識を意識するのは、かなりのエネルギーを使っていると感じます。関係のない雑念が生じた場合、必要な作業は効率が悪くなります。
ですから、文章を読む時に、漢字テストのような感覚で文字を見ると、効率が悪くなります。内容を知るために読んでいるのに、本来の意識を向けるのに関係のない意識と無意識を繰り返しているからです。読むスピードが遅くなるだけでなく、文章の主旨がわかりづらくなります。その文章の言いたいことを知るには、漢字などの言葉を無意識に任せる方がいいことになります。
長くなったので、まとめます。
私たちの知的活動では、意識と無意識が相互に働いている。
更新記録など
2018年5月31日(木) : アップロード