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読んでやる! basis 基礎 意識と無意識Ⅰ
無意識

 ここでは、無意識がどのようなものか考えます。

無意識

 私たちの行動で無意識が果たす役割は大きいと言われます。しかも、それは意識しないから無意識で、気づくと無意識は意識されることになります。
 無意識があるので、素早く円滑な行動ができます。いちいち意識していたら、1つの行動に多くの時間を使ってしまいます。
 私たちの行動の多くを支えてくれるのが、無意識です。

 では、無意識はどのように作られるのでしょうか。おそらく、いろんな種類の記憶と関係がありそうです。
 まず、最初に思いつくのが、意識から無意識に行く過程です。
 例えば、学校で漢字を習うことがあります。はじめは、形や読み方、意味を覚えます。そして、その漢字を書こうと思うとうまく書けません。教科書に出てきても、ぎこちない感じがします。
 ところが、何度も見たり書いたり読んだりして、日が経つにつれ、漢字を覚えてしまいます。覚えてしまうと、漢字の書き順や別の読み方などをいちいち意識しなくなります。その漢字について、必要な情報を無意識で判断するようになります。読書中に、この漢字は「確か○○」などと、いちいち気に留めたりしません。しかしながら、意識すれば、その漢字の読み方や意味以外の情報を思い出すこともできます。
 私たちは、意識的に考えたり覚えたものを、やがて、無意識に使えるようにしています。このことは、文字を覚えることだけでなく、スポーツなどの身体の動きなども同じことです。

 ところで、山登りや観劇、絵画などで、景色や場面を覚えていることがあります。その時、ある建物や主人公などに意識が集中しており、その周囲を見ていないことがあります。
 ところが、しばらく経ってから、景色や場面の中に、注意して見ていなかったのに、意識したこととは別のことを思い出すことがあります。
 例えば、電柱の頭にカラスが止まっていたとか、舞台の袖(そで)の役者が椅子に座っていたとか、です。注視していなかったのに、そのことを思い出すことがあります。
 覚えているのは意識したことだけのように思いますが、無意識であっても覚えていることがあります。
 そして、意識と無意識のどちらも、あることが視界に入ったり、音に聞いたりなどしていなければ、それを思い出すことはできません。

 多くの働きをする無意識は、知らず知らずのうちにも作られていくようです。意識的に何かをしているときでさえ、無意識は行動を手助けする方策を新たに作っているようです。意識だけが何かを作っているように思いがちです。しかし、意識と行動を支えるために、無意識も何かを作っているように感じます。

 無意識は、意識してもしなくても、絶えず働いています。今まで蓄積したものだけを働かせているわけではないようです。形や言葉のように具体的なものだけでなく、思考、場の雰囲気などの抽象的なことも、無意識は扱っているのです。意識や無意識に行動することについて、無意識は、支援する新たな働きを創造し蓄積しているようです。無意識の中にも、無意識が働いていると感じます。

 次に、無意識の信頼性について考えてみます。
 私たちが行動する時、無意識が正確にきちんと働いていることを確かめられません。しかしながら、振り返ってみて、目的を達成できた行動であったなら、無意識は正確に働いていたと推測できます。
 では、目的を達成する途中で、トラブルが発生した場合はどうでしょうか。他人が関係しない自分だけの行動で、環境にも左右されない場合です。成功も失敗も自分の責任となる場合です。
 失敗の原因を考えると、知識の不正確、作業の未熟さなどがあります。無意識にあるこれらが活動をすると、不正確で未熟な行動になります。自分では、キチンと行動をしているつもりでも、結果として間違ったものになります。
 反対に、無意識にあるものが正確で熟達したものなら、そのように働くということです。
 意識がいつも正確だとは限りませんが、感覚としては正確だと感じます。無意識を感じることはできませんが、意識と同じ正確さで活動しているようです。ですから、無意識は、意識と同じくらい信頼できます。言い方を換えると、信頼できる無意識をつくれば、質量ともに高い活動ができるということです。

 無意識にあるものは、間違っていたり、時の経過や経験などにより変遷することがあります。ある行動がうまく行かなかった場合、それに気づき(意識し)ます。そして、その情報を正しいものに直して、再度、無意識にしまいます。これは、意識を使って情報の修正をしています。無意識は、意識されることがないので、気づきにくいのです。
 無意識は、実感のある気づき(意識の起動)や意図的な修正はできません。しかし、意識と同じように、情報の修正をしています。スポーツでの基本動作を練習することなどです。毎度のことなので無意識でやっていますが、今までの情報を正しいものに、毎度、上書きしています。ただし、情報が間違っていれば、それが上書きされ、無意識として働きます。
 例えば、日頃のお箸の持ち方や使い方は、無意識にしています。毎回の動作は、上書きされています。もし、上書きされないなら、忘れてしまい、ぎこちない動きになっていきます。動作をすることで、脳の神経回路を確保しています。人の通らない道は、草が生えて歩きづらくなっていくのに似ています。
 自分の箸の持ち方は、箸を持つたびに、無意識に記憶されているということです。お箸の持ち方を変えたいのなら、自分の望む持ち方を毎回意識することです。気づかずに、自分の持ち方になっていたら、無意識が覚え行動できるようになったと思われます。

【注意】
 注意したいことがあります。ここでは、意識と無意識を分けていますが、意識と無意識は一体のものだと感じます。明確に線引きできる境界線はないようです。無意識から意識にすぐに出てくるものもあれば、無意識にはあるが意識に現れないものもあります。また、意識したことが、無意識になかなか入らないこともあれば、一度見ただけで無意識に格納されすぐに活躍できるようになることもあります。
 意識と無意識は一体のものだから、様々な態様になり、あらゆる状況に対応できるのだと思います。意識と無意識が別々のものなら、できることは限られるはずです。

更新記録など

2018年5月31日(木) : アップロード