呼吸
読書に限らず人は生きている限り呼吸します。いついかなる状況にあっても、呼吸をしています。呼吸をどのように考え実践するかは、活力、緊張緩和、能力の発揚にかかわってきます。いつもの呼吸をして、実現できるなら合理的です。
呼吸法はたくさんあります。どれが自分によいのか吟味するだけでも、かなりの時間がかかります。ここで記す呼吸についてのことは、私の経験や考えによるものです。文献から寄せ集めてきたものではありません。ご注意ください。
【呼吸で心身を調える】
人の能力を発揮し維持するのに最も大切なものは、呼吸だと考えています。
集中しているときや気分が落ち着いているとき、呼吸は穏やかです。気が動転したときに深呼吸をすると落ち着くことがあります。呼吸をコントロールすることで、心身を安定した状態にできる可能性があります。深くて穏やかな呼吸をすると、安定した状態になる確率が上がります。時には、運動や大声を出すほうが効果的なこともあります。その際にも、安定した呼吸は効果を発揮します。
無感情なとき、無理矢理に笑顔を作ると楽しくなってくるそうです。表情を作ると、その気持ちになりやすい、のだとか。呼吸も同じだと考えます。過呼吸のように息を急激に吸ったり吐いたりすると、気持ちは穏やかではなくなります。取り乱していても、深く静かで穏やかな呼吸は、気持ちを鎮めてくれます。【図1】
集中力や平常心を保つ呼吸ができれば、緊張したり動揺せずに自分の力を出せるはずです。いつもしている呼吸をそのようにできれば可能なはずです。
【腹式呼吸と丹田】
胸を開く胸式呼吸と腹式呼吸のかみ合う呼吸が、理想のものです。実際、胸が開いていないと、腹式呼吸の利点も生かされません。そのためには、姿勢に注意を払うことが必要です。そのうえで、ここでは腹式呼吸を考えます。
腹のどこで呼吸をすればいいのでしょうか。よく言われるのが臍下丹田(せいかたんでん)または、丹田の辺りです。丹田はどこにあるのでしょうか。調べたり試してみたりしましたが、ここだという場所が私にはわかりません。「臍(へそ)下3寸」や「臍と肛門を結んだ線上にある」と言われています。この言葉から、丹田は体の中にあります。そして、胴体の下の方、ほぼ骨盤と接しているところだと私は考えています【図2】。
私の考えている場所が丹田でないとしても、この場所を意識して、腹式呼吸をすると心身が安定してきます。
この丹田に意識を集中して、呼吸をします。丹田は気を集める場所であり、膨らませる場所ではなさそうです。丹田は気、腹は呼吸と分けて考えます。気の流れをつかみやすくするために、呼吸を利用しているのです。下腹で呼吸をすることで、近くの丹田に気を集めやすくなります。【図3】【図4】
【気とは何か】
気とは何でしょうか。丹田の位置と同じで、私には説明ができません。しかし、気と呼吸は違います。意識のうえで自分の重心をどこに置くかによって、体の安定感は変わってきます。頭に置くよりは、足下に重心があると意識した方が体は安定します。物理では同じ体なので安定度は同じのはずです。しかし、実際に移動する電車やバスで自分の重心の位置をいろいろ変えて意識してみると、安定度は変わってきます。この変化が気であると私は考えています。
しかし、丹田に気を集めると体が安定するとは思えません。なぜなら、重心が足より上にあるからです。しかし、先ほどの意識で体の安定度が変わるケースの場合、物理の重力や引力の考え方をそのまま用いることはできません。気は気の考え方によるべきです。
気功では、宇宙のあらゆるところから気を集めると聞いたことがあります。憶測ですが、宇宙のあらゆるところから丹田に気がつながっているということは、自分が宇宙の中心であることを意味します。あらゆる方向に力が調和され、体が安定するのです。立ったり、座ったり、寝たりなど、どんな姿勢でも心身に安定をもたらすことになります。地球上だけでなく、宇宙でも通用することになります【図5】。
そして、気を感じられる人は、呼吸を利用する必要はなく、流れをつかんで、丹田に集めればいいのです。
気を具体的に説明できない以上、呼吸を基に心身の安定を図ります。
【息の流れを意識する】
一般的な腹式呼吸は、息を吸いながら腹を膨らませ、息を吐きながら腹をへこませる、というものです。【図6】
鼻から吸った息は、鼻腔、気管を通り肺に行きます。肺から気管を通って、鼻、口から息が出されます。腹式呼吸と言っても、腹に空気が送り込まれるわけではありません。下腹を膨らませることで、横隔膜が下がり肺に余裕ができます。それにより、息が楽になり、気持ちが安定する、というものです。物理の流れとともに、気持ちのことが出てきます。
自分流の呼吸法をしている方もいます。例えば、息を吸いながら腹をへこまし、息を吐きながら腹を膨らます、というものです。腹の動きが逆ですが、腹式呼吸に間違いありません。
私がよく使うのは、一般的な腹式呼吸です。しかし、息の流れを意識することで、疲れが取れたり、気持ちがよりゆったりする感じがします。
私のやり方は、何も考えず、息の流れに意識を集中すること、です。雑念の代わりに、息の流れに意識を集中するような感じとも言えます。
1 流れをイメージした呼吸
物理の考え方は少し置いておいて。息の流れをイメージします。物理の流れとは違うイメージをします。鼻から吸い込まれた息は、鼻腔に入り、脳の溝、ひだを通り抜け、気管だけでなく、体の中をゆっくりと通っていきます。丹田近くに溜められた息は、ゆっくりと口や鼻から吐き出します。【図7】
さらにイメージを加えて息の流れを意識します。
2 活性化するイメージをした呼吸
鼻から新鮮な空気が入っていきます。ゆっくりと吸い込まれた空気が、新鮮な空気を脳や体中、細胞に染み渡り、リフレッシュするイメージをします。丹田辺りに溜められた空気を鼻や口から静かにゆっくりと吐き出します。【図8】
3 疲れを出すイメージをした呼吸
もう一つは、鼻から新鮮な空気をゆっくりと吸い込みます。新鮮な空気が脳や体、細胞の老廃物を洗い流しながら、丹田辺りに息がたまるイメージをします。丹田辺りにたまった息や老廃物を、①ゆっくりと徐々に鼻や口から吐き出したり、②一気に口から吐き出すようにします。【図9】
4 2と3を同時にする呼吸
また、上記2つを同時に行います。新鮮な空気が、脳や体(細胞)に、生気を与えるとともに老廃物を洗い流すイメージです。丹田辺りにたまった息や老廃物を、ゆっくり、または、一気に吐き出します。
老廃物をイメージしたときは、一気に吐き出す方がいいようです。しかし、息を一気にだすと、呼吸が乱れることがあります。息が乱れた場合は、息を調えます。一般的な腹式呼吸で、ただ息の流れだけに意識を集中して、ゆっくりと吸って吐きます。
【丹田を意識した呼吸】
先ほどの呼吸で、流れに乗ってきた生気や活力が丹田に送り込まれるイメージをしていきます。
1 流れから生気や活力を取り込む呼吸
鼻からゆっくりと息を吸います。吸い込まれた息に乗って、生気や活力が体に流れ込んできます。丹田辺りに溜まった息から離れ、生気や活力は丹田にたどり着きます。吐き出される息に乗って、古い生気や活力が体外に吐き出されます。そんなイメージで呼吸をします。【図10】
2 足から生気や活力を取り込む呼吸
鼻からゆっくりと息を吸いますが、足の裏から息を吸っているイメージをします。それと同時に、足から生気や活力が丹田に吸い込まれるイメージで呼吸をします。息は丹田近くに溜まる感じです。息を吐くときは、丹田から古い生気や活力が出ていくイメージをします。生気や活力の新旧入れ替えをするイメージです。
両手を動かすとイメージをしやすくなります。手のひらを地面に向けます。息を吸い始めるとともに、手を上にあげていきます。同時に、徐々に手のひらを上に向けます。臍くらいの高さで手と息を吸うのをやめます。呼吸が溜まった感触がわかってから、息をゆっくりと吐き始めます。手は吸うときと逆の動きになります。徐々に手のひらを下にしていきます。【図11】
3 あらゆるところから生気や活力を取り込む呼吸
鼻からゆっくり息を吸います。この時、宇宙のあらゆるところから、丹田に向かって生気や活力が集まっていくイメージをします。息をゆっくりと吐くときは、古い生気や活力が丹田から直接体外に出ていくイメージをします。丹田に意識を集中し、体の中心であるようなイメージをします。宇宙のあらゆるところと丹田がつながっており、体がどっしりと安定しているイメージをします【図12】。
現在、私はこれを試行錯誤しています。
【イメージをするために】
イメージがしにくいときは、手や足を動かしたりします。下腹に手を当てたり、丹田に集めるように手を動かしたりします。
目を閉じてすると息の流れに意識を集中しやすくなります。次第に、目を開けてもできるように努めます。最終的に、仕事中、睡眠中、遊びなど、どのような状態でも、この呼吸ができるようにするのが目標です。
【流れを止めない】
丹田に送り込まれた生気や活力はたえず入れ替える必要があります。新鮮なものの方がいいからです。同じものが同じ状態でいると、よどんでしまいます。たえず動いているか流れている状態がいいのです。呼吸と同じで、生気や活力も流れを止めないイメージをします。
【呼吸で膨らますところ】
腹式呼吸と言えば、下腹を膨らますことです。しかし、私の経験上、もう一つ意識したいところがあります。それは腰です。膨らんだ下腹と脊柱を挟んで反対側にある腰の部分です。背中側左右の骨盤の上辺りです。この部分に空気が溜まったように感じたことがありました。激しい運動をしているときでしたが、なぜか呼吸が乱れないのです。そして、集中力や気持ちの落ち着きも安定していました。このような経験は数えるほどしかありませんが、1つの考えに至りました。腹式呼吸は、下腹だけでなく背中側も意識するとより効果がある、ということです。もし、丹田が体の中心線上にあるなら、その辺りでの呼吸は胴を輪切りにした部分を膨らませるのが姿勢を安定させることになります。お腹だけを膨らませたのでは、体のバランスが取れません。また、お腹に加えて背中も使えるなら、さらにパワーアップします。【図13】【図14】
【気をつけたいこと】
何かをしながら呼吸法を身につけます。読書法に加えて、呼吸法のためだけに練習するのは、時間と労力を多く消費します。呼吸はいつもしているので、時々、自分の息の流れをチェックします。お腹の膨らみ、リズム、姿勢などを修正していきます。きちんとした姿勢でも同じ状態を続けるのは、無理があります。修正後、数分くらいで楽な姿勢にしても問題ありません。どのような姿勢でも腹式呼吸ができるようになればいいのです。
衣類やベルト、帯、ネクタイ、マフラー、靴などで、体の締め付けに気をつけます。
腹をきつく締め付けると、呼吸がしづらくなります。呼吸をしたときに、腹が十分に膨らむ服装をします。首も同じで、負担をかけると顔が赤くなったりして、気持ちが落ち着きません。呼吸が楽になるような服装をします。
メタボリック症候群と呼ばれる内臓脂肪は、腹式呼吸をしづらくします。腹腔が狭くなるのか、姿勢を取っても下腹が前に出ません。下腹が前に出る姿勢を取っても、息が腹まで入らない感じです。息を力尽くで、体に押し込んでいく感じです。
しかし、運動や食事のコントロールで体重が落ちるに従い、息は自然に入っていく感じがします。下腹も自然に前に出て行きます。腹式呼吸を試して、息がしづらいと感じたら、自分の健康をチェックしてみてください。意外な病気が見つかるかもしれません。
心身の落ち着く呼吸を身につけるには、ある程度の時間が必要です。すぐにできるわけではありませんし、続けた後で効果が徐々に出てくるものです。できるだけ理想の姿勢で呼吸を習慣づけます。呼吸と意識の持ち方が習得できたら、姿勢を問わずにできるようになります。また、意識せずにそのような呼吸になっています。最終的には、息の流れを意識しなくても、丹田に生気や活力を集めることができればいいのです。
静かで深い呼吸をするには、できるだけリラックスした状態が理想です。それを実現するには、無理のない姿勢が必要です。腹式呼吸ですが、胸が前に広がっていないと、十分な感触を得られません。年を取ると猫背になりがちです。背筋を鍛えると姿勢を取りやすくなることがあります。
呼吸を止めないことや、息をのんだりしないことです。一定のリズムで呼吸をし続けます。呼吸や生気と活力は、たえず流れて効果を発揮します。よどまないように気をつけます。
最終的に、自分に合った方法を見つけることが大切です。前述した呼吸は、私のやり方や提案であり、私の方法です。参考にしていただければ幸いに思います。
【呼吸を調えるエクササイズ】
簡単にできるのは、歩き方を工夫することです。できるだけゆっくりと歩きます。歩き方は、前に出す足の膝頭をゆっくりと呼吸を吸うとともにあげていきます。膝頭を上にあげます。高さは臍くらいの高さで十分です。膝頭が上にきた時に、息を留めるようにしてから、呼吸を吐き始めるとともに、膝頭を下げていきます。一歩ずつゆっくりとした動作をします。体の中心線が水平面に対して垂直を保つように心がけます。
私のお勧めはジョギングです。体の中心線を意識しながら、それが水平に垂直になるように上下させます。足のバネを使って、軽くジャンプするような感じで走ります。スピードは、歩くより少し速い程度です。足を高く上げる必要はありませんが、体の中心線を意識します。
呼吸は、鼻から吸って、口や鼻から出します。呼吸のリズムを作るようにします。できるだけ、ゆっくりと呼吸をします。走ると、呼吸が激しくなるので、息の流れを意識しやすくなります。
速く走ったり、上下幅を大きくすると、姿勢を崩したり、腰や膝を痛めます。目的は、姿勢を崩さずに、息の流れを感じるようになることです。競技のためにやっているわけではありません。【図15】
1時間程度ジョギングすると、冬なら足がポカポカしてきます。夏なら汗が出ますが、その後涼しくなります。2、3日に1回で効果を持続できます。歩くより短い時間で効果があります。第2の心臓と呼ばれている足裏を刺激できるので、申し分ありません。全身の血行がよくなります。
その他、呼吸を調えるものとして、自律訓練法や座禅などがあります。詩吟もいいみたいです。好きでやるならいいのですが、呼吸法の習得を目的とした場合、始めるのに抵抗があります。また、習得に時間がかかります。
呼吸法はいろいろあります。私が呼吸法に求めたいのは、集中力を高め、平常心を維持し、自分の力を発揮する、ことです。
私のことを言うと、呼吸の習得は、道半ばです。何度も試行錯誤を繰り返しているのか、まだ始めたばかりとの感じです。偉そうなことを書きましたが、わからないこと、できないことは、たくさんあります。
習得する方法は、○○と呼吸法を同時に習得するようにしています。呼吸はいつでもしているので、意識の持ち方を工夫すれば、このやり方でいいはずです。例えば、呼吸法をしながら、読書する、などです。
呼吸は生命に取って重要です。呼吸を中心に考えます。完成度の高い呼吸は、能力を十分に発揮させてくれるはずです。当然、弊サイトの読書法の習得、もです。
以下余白
更新記録など
2015年3月14日(土) : アップロード
2016年1月14日(木) : レスポンシブ様式に改装