バッティング
野球のバッターの目の使い方はどのようになっているのでしょうか。何十年も前に放送されていたテレビ番組と、当時同級生の野球部員から聴いたことをもとに考えてみました。
目 次
1 【打者はボールを見ていない?】
テレビ番組では、当時最新と言っていた機器を使って、バッターがボールをどのように見ているのかを検証していました。ピッチャーから投げられたボールを途中まで目で追っていました。ボールに目の焦点を合わせていました。バットを振り始める少し前くらいから、ボールが視線から外れたのです。バッターが打つ瞬間、ボールに焦点を合わせていないのです。【図1】
当時、同級生の野球部員に聞いても、途中からボールを凝視していないと言っていました。ボールをしっかり見ていないのにどうしてボールを打てるのか?と質問してみましたが、「わからない」とか「何となく打てる」とかの答えが返ってきました。
当時の最新機器から見た目の使い方と、プレーヤーの発言内容は、一致していました。
2 【プロとアマに違いはあるか?】
プロ野球のバッターへのインタビューで「ボールが止まっているように見えた」という話を聞いたことがあります。しかも、このような話は、何度か聞いたことがあります。奇跡や偶然ではなく、人間の感覚として現実に起こることなのです。そして、この場合、ボールを見てバットを振ったことになります。同級生の野球部員の証言とは違うのです。ボールが止まって見えたのは絶好調のときで、それ以外は同級生の野球部員と同じような見え方になっているのかもしれません。
3 【眼球と脳の処理速度】
眼球と脳について考えたいと思います。
ものを考えたり、想像したりと人間の脳は、ありとあらゆることを一瞬のうちに処理します。「一炊(いっすい)の夢」ということわざがあるように、短い時間で一生を見ることもできるのです。脳の処理スピードはおそろしく速いのです。
眼球はものを見るのに必要です。ものを見るには、その方向に視線を向け、焦点を合わせる必要があります。ものが動いていると、焦点を合わせにくく、何であるのかわからないこともあります。見たいものがある場合、脳は眼球を動かす指示を出すはずです。そして、距離を測り、焦点を合わせ、ものが何であるか判別しようとします。ものを見るため、脳の指令と眼球の報告が繰り返されています。その調整に時間がかかります。眼球を動かしてものを見るのは、時間がかかるのです。眼球を動かして見ると、動くものを見失いやすいのです。目で追うという見方です。
さらに、眼球の調整後の情報に基づいて、どのようにするのか脳が体に命令をします。物事を判別してから体を対応させると、動くものはもうそこにはないのです。タイミングがズレてしまいます。【図2】
ものを見ているのは脳です。眼球は外界の情報を映像という形で脳に伝えているだけです。ことわざの「心ここにあらざれば視れども見えず」なのです。眼球からの情報をどのように使うかは脳が決めます。まぶたを開ければ、何かが見えます。意識して、眼球に力を入れる必要もありません。眼球にかかる脳の活動を減らし、送られた情報をもとに脳が指令を出せば、スムーズに動くのです。手足を使うのも脳が指令を出して動かします。眼球ではなく脳が見て、状況を判断し、体を対応させるのが、合理的です。速く確実に処理できます。【図3】
4 【焦点を合わせない理由】
バッティングの話に戻ります。選手は意識しませんが、途中から視線を固定し、ボールに焦点を合わせないのは、ボールのスピードに対応するためと考えられます。ボールを目で追うと、ボールをバットで捉える確率が下がります。タイミングが合わず、振り遅れます。また、フォームが崩れるので、自分が思ったところにバットを振ることができません。
5 【ボールの見え方】
では、ボールのある位置から視線が固定された場合、ボールをどのように打つというのでしょうか。
まぐれ当たりは別として、いくつかのことが考えられます。一つは、ピッチャーからバッターの視線が固定される位置までで、ボールの軌道を推測しスイングをする。もう一つは、何となくボールが見えていて、はっきりとわからないがそこに向かってバットを出す、ことです。または、この2つの融合です。さらに、発言内容とは違いますが、ボールのある位置から焦点を外すが、目、顔を動かすなどして、ボールが視界に入るようにして、打つというものです。
視線は1方向1点でも、視界には、平面のような範囲があります(※奥行きもあります)。その範囲は、はっきり、ぼんやりと見える、何も見えない、といった感じで、中心から外側に向かってぼやけるグラデーションのようです。1点に視線が固定されても、その周辺は見えるのです。視線が固定されたとしても、ボールは何となく見えているはずです。
このことを考えると、はっきりと見えなくても、ボールがどこにあるかはわかることになります。同時に、脳はボールの軌道も推測しているはずです。【図4】
6 【ボールは止まって見えるか?】
ここでボールが止まって見えるのは、どういうことか考えたいと思います。
ものが落ちてゆくとき、スローモーションのようにゆっくりと見えることがあります。そして、空中を落ちてゆくものを手でつかめそうな感覚になることがあります。この時の状態は、非常にリラックスして、眺めるようにというか夢を見ているかのような感じです。ものに焦点を合わそうという意識はなく、眼球のことは忘れています。当然ものは視界の中にあります。ものが落ちるスピードより、脳が知覚する方が速いことがわかります。私の経験からも、落ちていくもの見ながら、どうするべきか考えてから、手でつかんだことがありました。脳の処理速度は、想像以上に速いのです。
このスローモーションのように落ちてゆく状態が、ボールが止まっているように見える状態と同じではないかと思っています。
考えられる条件は、リラックス、集中、脳で見る、です。
リラックスは、だらしない感じに脱力した感じではありません。ゆったりと落ち着いた気持ちのことです。集中は、緊張することではありません。必要な力や注意力を出すことです。それ以外の力は極力使わないことです。言い換えると、無駄な力を使わずに、必要なところだけに力を入れる、ということです。脳で見るとは、眉間にしわをよせたり、眼球で焦点を合わそうとすることではありません。脳に映った状況を見ることです。
最大のポイントは、眼球の見方と、脳の見方を区別することです。
7 【ボールの視界での位置】
ボールが止まったように見えたときの脳に映った映像は、どのようなものでしょうか。打つ瞬間に、視線の周囲のはっきりと見える部分にボールがあったはずです。しかも、気持ちがリラックスしていないと、ボールはゆっくりと見えません。さらに、集中力がなければ、ボールをバットで正確に捉えることはできません。ボールがゆっくりと見えるからといって慌てると、打ち損じます。これは感情の問題です。
このことを逆に言うと、リラックスして、集中ができて、視界のはっきりした範囲で脳がボールを見ることができれば、ジャストミートの確率は上がるはずです。
では、打つ瞬間に何となくわかる範囲にボールがあった場合は、どうでしょうか。この場合、脳は今までのボールの軌道から正確な位置を予測します。その位置めがけてバットを振ることになります。ここで注意したいのは、脳には見えない部分を予測したり補正したりする癖があることです。この予測や補正を現実の状態と勘違いすると、スランプになったり、思い悩むかもしれません。現実のものの動きと、自分の感覚が違っているからです。目で追う見方は、幻のボールを打とうとしているとも言えます。
見えない範囲にボールがあった場合は、何をしてよいか脳は判断できません。それでも無理矢理バットを振ってボールが当たったとすれば、まぐれ当たりです。
努めなければならないのは、打つ瞬間まで、視界のはっきりした範囲にボールを入れておくことです。はっきりと見えていれば、そのボールに向かってバットを振ればいいのです。ボールの確かな場所がわかれば、迷うことはなくなります。たとえ、打ち損ねたとしても、次は、修正できるはずです。
8 【視界の作り方】
どうやって見える範囲を作るのか、という問題があります。
一つは、眼球に力を入れて、脳に映る範囲を広げることです。もう一つは、できるだけ眼球をリラックスさせ、脳でものを見るようにすることです。
眼球に力を入れて見える範囲を広げると、脳に余分な動きをさせてしまいます。また、疲れやすくなり、集中力も長くは続きません。そして、脳に負荷をかけるために、それに対応する心身の動きが複雑になります。想定される動きへの対応を何パターンか練習しておく必要があります。極度の緊張を感じる場所では、この方法が優れていると思います。しかし、一度感覚が狂うと修正するのに時間がかかることでしょう。
眼球をリラックスさせて脳で見る方法は、素直に心身が動く可能性が高くなります。なぜなら、脳への負担が少なく、動きが単純だからです。見たままに対して動作をすればいいだけです。理想的ですが、リラックスすることは力を入れる以上に難しいことです。そして、見方を始めてから、徐々に視界が広かっていきます。感覚をつかみにくく、時間がかかります。また、リラックスしようとすると、必要な力まで抜いてしまいがちです。最大の問題は緊張です。緊張すると視界が狭まります。対処法が重要になってきます。
1つの方法として、リラックスして視界を保ちながら練習をする意識を持つことです。試合では、ピッチャーがモーションに入った瞬間に、視界が広がり、練習時の集中力がよみがえってきます。視界が広がれば、緊張はリラックスの方向に働きます。
9 ※2015(平成27)年3月27日(金)追記はじめ
多くの練習試合や公式戦を経験した選手やチームは総じて強い印象を受けます。
練習試合の目的は、練習の習熟度、選手起用、試合運びなどの確認です。そして、目的がなく、ただ練習試合を数多く重ねても、得られるものがあります。それは、「場慣れ」です。公式戦は緊張することがありますが、プレーを続けるうちに、練習試合と同じ感覚になっていきます。この時、緊張からいつものプレーに変化します。
この場合、練習試合と公式戦という似たケースを体験することで、その変化を実現しています。しかし、練習試合を少なくして、日頃の練習でこの変化を実現できないでしょうか。呼吸、目の使い方、意識の持ち方で、緊張感から集中へシフトさせるのです。日頃から、リラックスして集中する目の使い方、呼吸を意識するのです。それを、日常生活でも実践します。そうすれば、プレーを待つまでもなく、意識することで、いつもの状態に近づけることができるはずです。
このことは、受験勉強で模擬試験を受けることも同じです。練習試合なら勝つこと、模擬試験なら合格判定を目指さないと、効果は薄くなります。意識して精神をコントロールできれば、自分の力を十分に発揮できるはずです。
以上、2015(平成27)年3月27日(金)追記分終わり
10 【なぜ右利きは、右バッターボックスなのか?】
話は変わりますが、なぜ、右利きの人は、たいてい、三塁側の右バッターボックスに入るのかを考えてみます。ここにも視界のことが関係しています。右利きの人は、目も右利きだと考えられるからです。右バッターボックスに立った場合、ピッチャーからより遠い右目で見た方が、ボールの飛んでくるインパクト部分を広範囲かつ正確に見ることができます。ボールの位置を正確に見ることができれば、スムーズにバットを動かせます。【図5】
見るという視点から考えると、手は右利きで、目が左利きの選手の場合、左バッターボックスに立つ方が、ジャストミートの確率は上がるかもしれません。
ちなみに、利き目の確かめ方について。両目の前に、人差し指を立て、指先と遠くにあるものの一点を結ぶように見ます。例えば、指先と遠くに見える煙突です。次に、その状態を保ったまま、片側の目だけでものを見ます。その時、両目と同じ見え方になった方が、利き目です。【図6】
11 【動くものの方向と視線が同じ場合】
視線の問題もあります。ボールの飛んでくる方向と視線が一致した場合、距離感がつかめないため、対応できないことがあります。この場合、じっとしていると打者の顔面にボールが当たることになります。デッドボールです。【図7】
視線をどこに置くのかも再考の余地がありそうです。ボールのある位置で視線を固定するのか、ピッチャーの目に視線を置くのかなどです。インパクトの位置に、視界のはっきりとした範囲にボールがあるなら、視線を遠くにおいた方が、ボールの軌道をより正確につかめるかもしれません。しかし、遠い距離だとピントがぼやけます。視線を固定するにしても、できるだけ打者に近い位置がいいはずです。なぜなら、ボールをはっきりと見ることができるからです。視線が近すぎると、遅れてバットを振ることになります。
ですから、視線が投手からある位置まで動き、視線が固定されたところの視界は、インパクト部分がはっきり見える状態になりやすいのです。この視線の動きは合理的です。
12 【ボールをどう見るか】
視界とボールの関係を裏付けることがあります。
「ボールをにらみつけるように見る」「ヘッドアップしない」というのを聞いたことがあります。こうすると、ボールをヒットしやすくなるそうです。
「ボールをにらみつける」とは、アゴを引いて顔面をやや下向きにしてボールをみることです。「ヘッドアップ」とは、バットを振る際に頭(目線)を上げることをいうそうです。ボールを遠くへ飛ばそうとして、力の限りバットを振ろうとすると、力んで顔面が空の方向、上を向いてしまうことです。
この2つの言葉は、ボールを見る点から、同じことをいっています。ボールをにらみつけると、見える範囲はボールの視線より下側が広くなります。打つポイントにきた時に、ボールが見える範囲にあることになります。ヘッドアップは、上を向いてしまうので、視線が動き、見える範囲も上に移動するので、打つポイントでボールは、はっきりと見える範囲から遠ざかります。たいていの場合、ボールは見える範囲にないはずです。ボールがどこにあるのか見えないわけですからバットには当たりません。バッターにしてみると、打つ瞬間にボールが消えたように感じることでしょう。また、バットも波打つことになります。
このことからも、途中から視線が固まったとしても、その後、ボールが視界にあることは、重要なことがわかります。
13 【練習方法について】
ボールを確実にヒットさせるには、練習をする必要があります。脳で見る感覚と、視界のはっきりと映る範囲でボールを見ることが大切です。
練習の1つとして、ゴム管の上に置いた止まったボールを打つのは、効果があると考えます。打撃フォームを取り、インパクトするところにボールを置きます。イン、アウトのコースによってボールの位置は変わります。また、ホームベースを置くなど、実戦に近い環境を用意します。ボールの位置をより正確につかめるからです。
初めは、インパクト時のボールとバットの位置を確認します。打撃フォームを取ったら、ゆっくりと動作して、インパクト部分で動作を止めます。インパクト時の打撃フォーム、バットとボールの位置がしっくりいくまで、微調整をしていきます。ボールの位置は変えません。
次に、バットを軽く振ってボールを打ちます。インパクの感触、ボールの方向などを確認します。自分の求めるものでなければ、調整していきます。調整後、初めの位置確認をします。ゆっくりと打つ動作をして、インパクト部分でバットを止めます。思うように決まったら、軽く打ちます。これを繰り返します。
この練習を終わるときは、初めの動作をします。フォーム、バットとボールの位置を確認して終わります。練習を終わる時は、ボールを打ちません。
意識的に、ホームベースや周囲の状況を同時に見ながらリラックスして練習をします。そして、置いたボールに視線を向けても、ボールの一点に焦点を合わせないようにします。
この練習の目的は、インパクト時のボールが視界に入るようにすることです。もちろん、バットを正確にボールに当てることもです。
バットを振る際、ボールの飛んでくる方向を予測して打ちがちです。しかし、一番大切なのは、予測することではなく、実際にある位置のボールを確かめることです。インパクト時のバットとボールの位置は大切です。見えるものを確実に打つためです。それは、バットとボールの芯を衝突させることです。バットとボールには厚みがありますが、芯は一点で厚みはありません。ボールが打つその位置に来たら、ボールを見てバットを振る感じにします。【図8】
「ボールが止まって見えた」にとどまらず、「ボールの縫い目が見えた」という選手もいました。これは、本当に見えたのか、脳の錯覚なのかは、わかりません。置いたボールを打つ練習をしたために、脳が勝手にそのような錯覚をしたのかもしれません。眼球と脳の使い方を意識して、止まったボールを打つのは有効な練習方法だと思います。漫然と練習しても効果は望めません。
14 【卓球から】
「ボールの縫い目が見えた」という言葉ですが、気になることがあります。それは卓球です。文字を書いたピンポン球を打ったところ、何が書いてあるのかを卓球選手が言い当てたテレビ番組を見たことがあります。卓球の名人になると、相手のラケットのどの位置でピンポン球が当たっているのか、見えるそうです。また、ピンポン球の回転のスピードや方向なども見え、それに合わせて打ち返し方を考えて、打ち返すそうです。
私が中学3年生の時、当時の卓球部員から次の話を聞いたことがあります。
卓球を始めてからしばらくすると視力が落ちたので、眼鏡を作った。さらに、しばらくすると、眼鏡をかけなくてもだんだん見えるようになってきた。中学3年の今では、目はよく見える。
といった、なかなか興味深い話でした。なぜ、視力が落ちたのか、そして、回復したのか、です。また、このようなことは一人だけに起こったことではなく、卓球部に複数人いたのを覚えています。この視力の回復をどのように考えるのか、ここからは私の想像です。
卓球を始めたとき、ピンポン球に焦点を合わせ、眼球で追っていた。眼精疲労により仮性近視になった。その後、卓球を続けていくうちに、眼球で追わなくてもピンポン球が見えることを体が自然に覚えた。眼球から脳で見るようになった。その結果、眼精疲労は少なくなり、視力が回復した。
本人がそのことに気づいて他人に話しそうなものですが、眼球と脳で見る違いを説明することは困難です。選手の眼球や動作から、他者がそれを判断するのも困難です。認知機能は、手に取るようには見えないからです。特に、意識や感覚は人によって違います。説明されても理解は困難だと思います。
このことから、プロ野球選手の「ボールの縫い目が見えた」というのは、本当に見えていたと言えます。脳の錯覚や想像ではありません。
15 【視界確保で、打率は上がるか?】
先ほどの練習をすれば、打率が上がりそうなものですが、現実は違います。そこには、ピッチャーとの駆け引き、守備の配置などが影響します。
ではピッチャーが打者を討ち取るにはどのようにすればいいでしょうか。逆に、打者の立場でいうと、それをしなければ確率が上がることになります。
外角低めは、打者の視界から外れやすい。特に、外側に逃げるカーブやスライダーは視界の端っこか、視界外にボールがいく確率が上がります。打者がバットの芯で捉える確率が下がります。
緩急をつける。ストレートでも正確なコントロールがあれば、ある程度しのぐことができます。山なりの緩いボールで打者の目がボールに焦点を合わせるように投げます。しかし、ストライクかボールになるぎりぎりのところに投げる必要があります。カウントにもよりますが、ツーストライクを取ったあと、普通のスピードのストレートを外角か内角の低め、または、肩口の高さに投げます。打者はそのストレートをかなり速く感じるはずです。緩いボールは目で追いがちになります。その後に、普通のストレートが来ると、ボールに焦点を合わせようとするので、打者のバットを振るタイミングは遅れます。凡打になる確率が上がります。ここにカーブが入ると、バリエーションが広がります。焦点を合わせるようになった眼球の場合、打者にとって、外側に逃げるカーブは見えづらいはずです。打者の視界が狭くなっているからです。ピッチャーは、打者にボールの軌道を目で追わせるように配球を組み立てます。打者の視界の外になるように決め球を投げます。
打者が、ボールに焦点を合わせ、視界を狭めるようにします。フォームまで崩すことができれば、なおいいことです。緩急、上下幅や左右の幅の組合せを考えます。打者の視界を狭めるだけでなく、脳に錯覚を起こさせることができれば、試合に勝つ確率は上がります。さらに、打者が感情的にダメだと思えば、完勝に近づきます。
16 【野球観戦の1つの楽しみ方】
打者は、眼球でボールを追っては打てません。インパクトの場所でボールを見ながら打つようにします。ピッチャーは、打者の見方を崩すことを考えます。これが、バッターとピッチャーの駆け引きです。
目と意識の観点から、草野球、部活動での野球、プロ野球の投手と打者の駆け引きを見ると違った楽しみ方ができます。ボールを眼球で追うように姿勢も崩れる打者の場合、凡打になりやすくなります。どんなボールでも目線と姿勢の崩れない打者は、鋭い打球を飛ばします。ピッチャーはなぜそのボールを投げたのかという理由を考えることができます。打者が姿勢を崩すと、視界が狭くなったり、脳に錯覚を起こしたかもしれないとか。次は、おそらく、こんなボールを投げるだろう、と予測しながら楽しめます。観戦する方も、球場にいる選手全員が視界に入るように見ます。そのうえで、気になるところを意識して見るようにします。すると、試合をより楽しめます。
17 【おわりに】
疲れない読み方を目指す弊サイトで、野球を取り上げたのは、目と意識の使い方を考えるのに役立つからです。ピッチャー、野手、打者、審判が、いろいろな角度から、目的をもってボールを見ているからです。打者が体の横を通るボールをバットで打つのは、ボールを斜めに見ながらの動作です。テニスや卓球も同じですが、野球は同じ場所で打っています。腕を伸縮させたりして、打者がインパクトの場所を調整する必要があります。視線、焦点、視界、視線の移動、視界の範囲などいろいろなことを考えさせられます。
バッティングに興味を持たれた方は、一度、バッティングセンターで実際に打ってみてください。目と意識以外に、ボールの飛んでくるタイミングを取る必要があります。機械が投球動作に入ったら、打者も打撃動作に入るようにします。スピードは時速90~100㎞をお勧めします。緩すぎたり、速すぎたりすると、打ちづらいものがあります。バットの芯で、ボールの芯を打つようにしてみてください。初めは当たらないかもしれませんが、眼球で打つ瞬間までボールに焦点を合わせなくても、打てる感覚を味わえると思います。リラックスして、目と意識の感覚を楽しんでください。
偉そうなことを書きましたが、私がバッティングセンターで会心の当たりを連発するかというと、そうではありません。ただ、楽にボールを見られるようになったのと、力まなくなりました。
更新記録など
2015年3月25日(水) : アップロード
2015年3月27日(金) : 追記
2016年1月5日(火) : 「目次」を追加
2016年1月5日(火) : レスポンシブ様式に改装