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読んでやる! 事例研究(ケーススタディ)
至近距離の目の使い方

 読書以外の目と意識の使い方を考えています。このページでは、至近距離の目の使い方を、バレーボールのブロック、ボクシングや空手の対戦相手への目線、野球のショートバウンドの捕り方を考えています。

至近距離の目の使い方

 近い距離で動くものに対処する目の動きについて考えます。

目 次

  1. バレーボールのブロック
  2. ボクサーはどこを見ているのか
  3. 空手の場合
  4. 野球のショートバウンド

1 【バレーボールのブロック】

 バレーボールを見ていると、攻撃側のスパイクに対して、守備側がネット際でブロックするのをよく見ます。そして、ブロックが気持ちよく決まるときがあります。ネットを挟んで、攻撃側のアタッカーと守備側のブロックをする人の距離はわずかしかありません。この短い距離でボールを正確にはじき返すことは、不可能に近いと感じます。ブロックをする選手はどこを見て、手にボールを当てようとしているのでしょうか。
 高校生の当時、同級生のバレーボール部員にブロックのことを聴いたことがありました。その部員が言うには、アタッカーの目を見る、のだそうです。すると、アタッカーの狙っているところを予想できるのと、ボールが見えるのだそうです。そして、実際に見せてもらった練習で、ブロックを決めていました。

 聴いた内容からブロックの方法は次のようになります。ブロックする選手は、予想されるボールの位置に手を持っていきます。見ながら微調整して、手でボールを捉えるようにする。
 見えていても、ブロックは100%決まりません。アタッカーもブロックが見えているので、打つ瞬間にボールの方向を変えるそうです。つまり、アタッカーとブロックする選手の駆け引きです。
 当時、私はブロックを試しましたが、アタッカーの目を見ても、ボールは見えませんでした。ジャンプして、闇雲に両手を上げているだけでした。
 今から思えば、ブロックする人は、アタッカーの目に視線を向けても、焦点を絞り込んでいないようです。焦点を絞り込んでしまうと、目だけしか見えません。視線だけであれば、視界に入るため、アタッカーは見えます。
【図1】【図2】
図1
図2

2 【ボクサーはどこを見ているのか】

 テレビ番組で、元チャンピオンのボクサーが次にように言っていました。
 目をお客さんの方に向けると、対戦相手も同じ方向を見た。その時、パンチを出したら当たった。
 この話から、選手はお互いの目を見て試合をしていることです。また、対戦相手の目を見ないとパンチをかわせない、ということです。お客さんの方に視線を向けても、視界の中に飛んでくるパンチは見えていたことでしょう。また、おそらくパンチに視線を向けたり焦点を合わせていないはずです。視線の周囲でパンチを見ていると推察できます。

3 【空手の場合】

 知人から聴いた話です。
 空手の組み手の場合、対戦相手の目を見る、とのこと。また、全身を使う空手の技の場合、対戦相手の動きを全体的に捉えるようにするそうです。対戦相手の繰り出す技がどこからくるのかをわかるようにするためです。
 突いてくる拳を見ると、相手の突きをかわしたり受けたりできない、のだそうです。どうしてそうなるのかは、わからないとのことでした。経験を伝統として受け継いできたのでしょう。
 全国大会に出場経験のある人は、対戦相手の繰り出す突きや蹴りを受けない、と言っていたそうです。いちいち受けていると、腕や足の疲労が溜まって試合にならないからだそうです。攻撃にきちんと対処できるのは、対戦相手の攻撃がきちんと見えていることになります。しかも、相手の攻撃が身に及ぶまでに、受けたりかわしたりできるのですから驚きです。防御するには体を動かす必要があります。攻撃が来るとわかっていても、距離が近いので時間的に間に合わないように感じます。

 ボクシングや空手は至近距離で戦っています。そのパンチや突き、蹴りは決して遅いとは言えません。また、距離が近いだけに速く感じるはずです。しかし、対戦相手の目を見ることで、対戦相手の攻撃を推察できそうです。理由はわからないにせよ、技を直視しなければ、攻撃に対処できそうです。
 しかし、技が見えていないと、受けたりかわしたりはできません。視線は目にむけられていることから、視線の周囲の視界で技を捉えていると考えられます。そして、そこで見ることがスピードに対処する方法と考えられます。
【図3】
図3
 いろいろな攻撃に対処する技を練習することで、瞬時に体が反応して防御できるのでしょう。このことから、対戦相手を想定したシャドーボクシングや空手形(かた)は、有効な練習法と言えます。余談になりますが、イメージトレーニングは有効だと言えます。ただ、やり方により、効果の濃淡はありそうです。
 ボクシングや空手は対戦相手の視線をいかに外させるかで駆け引きをしているとも言えます。

4 【野球のショートバウンド】

 今までは対人の場合の目の使い方でした。人の顔がない場合の目の使い方はどうでしょうか。 野球のショートバウンドを例に考えます。野手の直近でバウンドするボールの取り方です。
 当時、同級生の野球部員に聴いたことがあります。すべての野球部員がショートバウンドを取るのが得意ではなかったようです。話を聴いたのは、ボールを見て捕っているというショートかセカンドの選手でした。
 地面にバウンドするボールがどの方向に動いているのか見える。飛んでくるボールの勢いや方向から、ボールの飛んでくる位置にグラブ(グローブ)を準備しておく。バウンドしてきたボールを見ながらグラブで捕る。
 私なら怖くてボールをよけてしまいます。見るどころの話ではありません。どうしてそうなるのか。ボールにスピードがあるので体が反応できないと思うからです。そのことから、当たるのが怖くてボールを見られないのです。
 逆に、選手はボールを見ていないと怖いと言います。体のどこに当たるかわからないからです。目にでも当たれば大変です。ボールが見えていれば、イレギュラーした場合でもグラブに当てることはできるし、避けることもできる、と言うのです。
 飛んでくるボールの見方ですが、グラブに入るまでボールに焦点を合わせて見ていないそうです。これは、普通にキャッチボールをしていても同じことだそうです。途中からボールを凝視しない。しかし、ボールは見えているのです。いい加減に、マグレでボールを捕っているようですが、グラブのある場所できちんと捕っています。ボールは最後まで見えているのです。

 人がものを見るとき、視線を向け、凝視するときは焦点を絞ります。ただ視線を向けると視界は広いですが、凝視したときは狭い視界となります。このことを考えてみます。
 最後までボールを凝視する見方は、目で追うという方法です。しかし、この方法は、眼が焦点を合わせるために脳と情報交換をする時間がかかります。さらに、どのように処理するのか考え、体を動かすにも時間がかかります。
 ボールを凝視したり、焦点を一点に絞ることは、視界を狭くします。ただ何となく視線をボールに向けた場合と比べて、周囲に映る状況がなくなってしまいます。目で追い切れなくなったとき、ボールは見えなくなります。視界からなくなるからです。
 恐怖を感じると、眼の視界が狭くなる傾向があります。逆に、眼の焦点を一点に絞ると、体が動きにくくなります。体の動きが固くなります。
 このことが絡み合い、ボールをキャッチしにくくなっていると考えられます。

 どうすれば、ショートバウンドを捕ることができるのでしょうか。結論から言うと、ノーバウンドのキャッチボールや普通のゴロと同じようにボールを捕ればいい、ということになります。
 着地点がわかった時点で、視線を固定し、ボールから焦点を外します。視界の中にボールを見るようにします。視線は、ボールの方向と同じにならないようにします。ボールとの距離をつかめないからです。
 ゴロを捕る基本は体の正面です。しかし、初めの練習は、体の横ににボールを投げてもって捕ります。そして、目の使い方がわかり、横で捕れるようになってから、正面で捕る練習をした方が良さそうです。恐怖心を押さえるために精神論を持ち出すと、習得は遅くなります。なぜなら、根本に恐怖心を持っているからです。しかるべき方法を提示し、つかみの部分だけでも体得できれば、自分にあった捕り方を工夫できるようになると思います。捕れるようになるまでの時間は、個人差があると思います。教えなくても、ショートバウンドを捕れる選手はいるそうです。
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10

 ショートバウンドを捕れる選手に話を聴くと、以上のような目の使い方をしています。
 私はショートバウンドを捕れません。ところが、この目の使い方を意識すると、グラブにボールが当たるようになりました。ボールの位置も何となくわかる気がします。恐怖心があるので顔を途中で背けてしまいますが。

 余談ですが。子供が2、3歳くらいの時、ボール遊びをして不思議に思うことがありました。
 子供は、止まっているボールを触ったり捕ることができます。ボールを転がすと、子供はボールを捕ろうとします。ところが、ボールに触ることすらできません。そのうち、ボールを手でたたこうとしますが当たりません。
 よく見ていると、子供は、ボールの通った後の一点に手を動かしていました。どうしてそうなるのでしょうか。
 1 脳が未発達のため、滑らかな動きができない。
 2 ボールの動きを予想できない。
が考えられました。
 見ようと目で追っているので、ボールの動きに、遅れて手がでる、と今だと思えるのです。子供にとっては、ボールを目で追うのが精一杯なのでしょう。子供はボールがそこにあると思っていても、既にボールは違うところに移動しているのです。子供が手で押さえるところは、ボールの通った道筋にありました。
 しかし、この年齢のすべての子供がそうではありません。俊敏に動き、ボールを捕る子供もいるのです。その子供を見ていると、何をするにも器用で俊敏でした。もしかすると、動物的な目の使い方をしているのかもしれません。しかし、動物でも子供の時は、動きが緩慢です。大人になって、俊敏になります。
 同じ年齢の子供でボールを捕れるか捕れないかの差は、いったい何なのでしょうか。この理由がわかれば、目の使い方の質をさらに向上できるかもしれません。

更新記録など

2015年4月4日(土) : アップロード
2015年4月6日(月) : 【図2】移動
2016年1月5日(火) : 「目次」を追加
2016年1月5日(火) : レスポンシブ様式に改装