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読んでやる! 支援技術
姿勢

 弊サイト『読んでやる』の読書法を支援するための技術について書いてあります。このページでは、姿勢を取り上げています。

姿勢

 スポーツ、仕事、家事などの動作で、姿勢(フォーム)は大切です。フォームの適切さで、効率的な力の加減、正確さ、疲労度、結果が違ってくるからです。ここで取り上げるのは、読書を支えるための姿勢を考えています。人、時、場所によって、適切な姿勢は変わります。その時々に応じた姿勢ができれば理想的です。

 人の体を、頭、胴体、骨盤、足に大きく分けます。立った状態では、胴体は骨盤のうえに乗っています。ちょうど、胴体を鶏の卵とすれば、骨盤はエッグスタンドのようなものです。少しくらい斜めにしても、卵は安定しています(写真1)。しかし、このエッグスタンドを取って卵を立てようとすると、なかなか立ちません(写真2)。少しでもズレれば、卵は不安定に揺れ動きます。最終的には、横になった状態になります。
写真1 写真2
 この卵が立った状態は、人の立ったり座った姿勢です。卵が転んだ状態は、人が寝た姿勢です。
 生物にとって頭は大切です。人の胴体が立った状態では、脊柱のS字カーブ、椎間板、腹筋背筋などが頭を支えるクッションになっています。人が歩くと体が上下しますが、このクッションで頭が安定しています。このクッションを最大限活用できるのが、人にとっていい姿勢です。
 弊サイトは無駄な力を入れないことが行動の質を高めると考えています。

【胴を立てた状態】
 地球の重力にまっすぐに頭と胴体を立てるのがよいと考えています(図1)。骨盤を取ったときに、頭と胴体が立つような姿勢です。
図1
 ちょうど、硬式テニスのボールを上下に積んだ状態です(写真3)。これにより、胴体下部の一点に頭と胴体の重みが集中します。腰椎に極度の負担がかかりそうですが、実際には、骨盤やクッションがあり、重みは分散しています。
写真3
 胴体が少々斜めになっても、私たちは気にすることありません。胴体が骨盤に収まっているので、不安定な状態でも立っていられるからです(写真4)。胴体が斜めの状態だと、余分なところに力が入ります。それが、肩こりや腰がだるさ、筋肉痛になることもあります。余分な力を使っています(図2)。
写真4 図2
 骨盤を取ったと仮定して、頭と胴体が立つ状態が、無理のない姿勢だと考えています。(参考:図3、図4)
図3 図4

 【寝た状態】
 人の寝た状態が、最も安定した状態です(図5)。卵では転がしてとまった状態、連結したテニスボールでは寝かした状態です。それでも、ころころと寝返りを打つように転びますが、横の状態は保たれています。テニスボール2個の場合は、立てた場合は1点で支えますが、横にした場合2点で支えます。力が分散します。余分な力が入りにくくなります。
図5

 【呼吸の動作を考えて姿勢を考える】
 前に記したことは、体の構造上のことです。しかし、人は呼吸をして生きています。呼吸をしても、安定した姿勢を考える必要があります。
 先ほどのテニスボールを積んだ例で、上下どちらかのボールを膨らませた場合、状態の安定しているのはどちらでしょうか。バランスが取れていれば、上下のどちらを膨らませても問題はありません。しかし、下を大きくした方がバランスをとりやすいように思えます。骨盤を考慮すると、三角錐と円柱のどちらが安定するかの問いに似ています。下を膨らませる方が安定すると考えます。また、呼吸による伸縮の動きが影響を与えないためには、頭から遠く、重心の低い位置でおこなう方がよいと考えます。よく言われる腹式呼吸が最適だと思います。経験上、胸式呼吸は、肩が上がったり、気持ちが動揺しやすいように思います。しかし、胸式呼吸が必要な場合もあります。
 では、腹式呼吸を十分なものにする姿勢とはどんなものでしょうか。
 まず、ベルト、帯、下着、衣服などで、腹部を締め付けないことです。息を吸っても腹が膨らみません。また、締め付けにより、気持ちが集中しにくくなります。
 無理のない程度に、腰骨を体の前に突き出すようにします。さらに、無理のない程度に胸を張ると、下腹が前に出て、お腹が膨らみやすく、呼吸が楽になります(図6)。この状態で、頭と胴体を重力に立つ姿勢にします。
図6
 この姿勢は、立つ座る寝るのいずれにも共通しています。呼吸が十分なものであれば、集中力は高まります。

 【臍下(せいか)丹田(たんでん)はどこにあるのか】
 腹式呼吸でよく聞く言葉が、「臍下丹田」や「丹田」です。ここを意識し、ここで呼吸することが健康によいと言われます。場所は、「臍(へそ)下3寸」とか「臍(へそ)と肛門を結んだ線上にある」とか聞きます。しかし、この場所がどこにあるのか、私にはよくわかりません。ここだと確実に言える場所なのでしょうか。
 私はいろいろ調べたり試したり、また、よく言われる場所と体の構造から、考えてみました。
 どうすれば、重力の方向に頭と胴を立てることができるでしょうか。頭と胴を骨盤がない状態で立てたとき、地面と接する部分は点です。「頭頂部の点」と「胴の地面と接する点」を結んだ線が重力の方向になるようにします。これが立てるための最も簡単な方法だと思います。頭頂部を決めるときは、軽くアゴを引くようにします。アゴの出し過ぎ引き過ぎで、首を痛めることがあります。頭頂部と地面に接する点を意識する必要があります。体の一部を膨らませたとしても姿勢が安定するのは、重力の線上で最下部です。地面に接する点を含めた上の空間?部分です。この位置が丹田かどうかは専門家に確認する必要があります。しかし、呼吸をして姿勢を保つ観点からは、この点を意識し、この点の最も近い場所を膨らませて呼吸するのが理にかなっています。
 このあたりではないかと思っています(図7)。
図7
 気をつけたいのが、丹田ではなく肛門に力を入れて呼吸をすることです。この状態を続けると脱肛など痔になりやすいようです。丹田が胴の最下部であることを認識します。丹田で呼吸ができているなら、肛門に力を入れる必要はありません。

【座った状態】
 座るには、椅子、あぐら、正座などいろいろあります。ここでは、椅子に座ることを考えます。
 姿勢の取り方です。まず、椅子に座ります。この時、足を肩幅程度に開きます。体をまっすぐにして、腰骨を前に押します。すると、下腹が前に出るような感じになります。足のつま先の上に膝(ひざ)頭が来るようにするとやりやすくなります(図8)。
図8
 次に、アゴを軽く引いて頭頂部と胴体下の中心を結んだ線が、立つように体をまっすぐになるように調節していきます。体をまっすぐにしますが、脊柱をまっすぐにすることではありません。頭と胴を積んで立つようにまっすぐにするということです。腰骨を前に押すと、胴体が立ってきます。脊柱はS字のたわみでも衝撃を和らげています。
 大切なのは、呼吸が静かで深く楽なことと、無駄な力の入らない姿勢です。
 正座は椅子に座ったのとあまり変わりませんが、あぐらや体育座りでは体が猫背になります。この場合、呼吸を保つようにします。

 椅子に座った姿勢でいいのは、辞書を引いたり、ものを書いたりできることです。しかし、姿勢が一定で、体が固まりやすいのです。時々は、足を動かしたり、足を組んだり組み替えたりする工夫も必要です。椅子から離れて、歩いたり、体操したりします。

 まっすぐな姿勢は理想的ですが、長時間続けるには無理があります。弊サイトの目と意識の使い方を練習や実践するとき、最初の10分程度だけその姿勢をとります。後は、楽な姿勢で腰掛けて、実践すればいいと思います。理想の姿勢は、習得を早め、密度を濃くしてくれます。安定した呼吸と目と意識の使い方ができれば、姿勢にあまり神経を使うことはありません。

【立った状態】
 体をまっすぐにする方法は、座ったときと同じです。
 立った状態の場合、胴体のクッションに加え、足のクッションが追加されます。しかし、胴体と同じように、足も骨盤にくっついています。足の位置によっては、頭と胴体を重力の向きにまっすぐな状態にするのは難しいことがあります。足は、頭と胴体の姿勢を崩さないように、骨盤の位置を保ったまま、重力の方向に上下するのがいいと思います(図9)。
図9
 移動するときの待ち時間や電車、バスなどで立ち読みをしますが、姿勢に無理があると集中できません。足の位置は重要になってきます。安定した状態を保つには、足を肩幅程度に開き、太ももを少し内側にひねる感じにします。太ももの付け根で胴体の下部を支える感じです。太ももを外側に開いてしまうと、胴体が外に流れるようで安定感がなくなります。乗った馬の胴体を太ももで挟む感じです。足を前後しても、この感覚があれば、姿勢は安定します。
 立った状態で長時間いると疲れます。足の位置を変えたり体を動かしたりしますが、座ったりして体を休めます。立った状態で読み書きはできますが、座ったときほど効率はよくありません。立った場合の読み物の位置ですが、顔より少し下あたり、目線が少し下向きになるのがいいようです。私の場合、本の上辺がアゴの高さくらいになる位置が、姿勢も崩れにくく目も楽です。下向きはまだしも、上向きに読むのは疲れます。座った場合でも、この位置に読み物を持ってくれば、効率よく読めます。書見台を使うなどの工夫が必要です。

【横になった姿勢】
 私にとっては、横になった姿勢が読書に最適だと思います。その理由は、無駄な力が入りにくいことと、体が安定しているからです。寝返りを打つなどして、体が固まるのを防げます。
 横になった状態でも、腰骨を体の前に押して下腹を前に出し、腹式呼吸をするのは変わりません。大切なのは頭の位置です。寝返りを打ったときに、頭が上下するのは、首が痛くなったり、肩が凝ったりします。枕が重要な役割をします。横になって、体をまっすぐにしたとき、頭と地面の間に、頭と肩長さの空間ができます。それと同じか少し高めの枕にすると、寝返りしやすく読みやすいようです(図10)。頭のてっぺんが下がったり上がりすぎると、疲れやすくなります。
図10
 本は書見台を使えばいいのですが、私は手に持って読んでいます。横になったときは、どちらかの腕が地面(正確には、マットレスか布団)に、ついています。上の腕は脇を締めて、腕が疲れにくいようにしています。腕が疲れれば、寝返りを打ち、腕を上下入れ替えれば済みます。本の位置は、立った状態で、本の上辺がアゴの高さになるところが定位置です。しかし、腕の疲れや体の退屈なこともあるので、本は、いろいろな位置に変わります。
 やってはいけないのが、うつぶせで読むことです。腰痛の原因になります。仰向けでも、長時間は腰にきます。腰骨のあたりに低い枕を置き、ひざを軽く立てると、楽になります。また、仰向けの場合、目にゴミが入ることがあるので注意が必要です。読み物のゴミを予めチェックしておいた方がいいかもしれません。手垢のない本でも、油断は禁物です。しおりやチラシなどが挟まっていることがあります。文書類では、クリップやステープルの針もあります。
 横になった姿勢では疲れないと思いがちですが、そうではありません。私の経験上、風邪で3日ほど養生していたとき、寝るのに疲れた飽きたと感じたことがありました。歩いたり体を動かしたり、いろいろな姿勢をするからこそ、横になった姿勢が生きるのかもしれません。いろんな姿勢で読んだ方が、体が固まらず気分転換もできて、効率がいいかもしれません。
 横になる姿勢は、私のお勧めです。

【ヨガに学ぶ】
 ヨガの行者は様々なポーズを取りますが、呼吸や精神が乱れないそうです。いろいろな姿勢をしても本を読めるようになりたいものです。やはり、呼吸を安定させることがポイントです。後は、目と意識の使い方を工夫することで、文章が読めるようになっていくはずです。姿勢は大切ですが、疲れにくい読み方は、目と意識の使い方にあります。

【重心を意識する】
 安定した姿勢を取るには重心をどこに置くのかが大切です。
 肩幅くらいに足を開いて立ってみます。斜め後ろから人に手で押してもらうと、安定した姿勢かどうかわかります。ぐらつくのは不安定な証拠です。
 先ほどの姿勢で、頭に重心があるイメージを持って、押してもらうと簡単にぐらつきます。腹に重心、両足の中間、両足の中間から地面より下など重心を下にするほど、ぐらつきにくくなります。同じ体なのに重心の意識を変えるだけで、ぐらつき方に変化があるのはおかしいように思えます。現実にやってみると、わかります。相撲や空手の練習で、師匠が四股立ちの弟子の体を押して、姿勢の安定を確かめています。
 不思議な話ですが、重心の位置を意識すると、姿勢の安定度は変わります(図11)。
 しかし、いつも重心を意識するわけにはいきません。ここに呼吸が入ってきます。地面から息を吸い上げるように呼吸をします。これにより、特に意識しなくても、重心が下がってきます。気功では、宇宙から気を体に集めるそうです。おそろしく安定した姿勢になりそうです。自分が、中心になったり、宇宙に支えられるわけですから、安定度は抜群のはずです。(図12)。残念ですが、私はこのような経験をしたことがありません。せいぜい呼吸レベルだと思います。
 片足立ちで試すことができます。軸足の内側の地球の中心に重心があるイメージをします。地球の中心から息を吸い上げるようにもう一方の足を呼吸に合わせてあげていきます。すると、体が安定した状態で足を上げることができます。お腹に重心があるイメージで行った場合と比べてみてください。
図11 図12

 【年齢・体力のこと】
 若いときは、体も柔らかく筋力も十分にあります。しかし、年を取ってくると、体が硬くなり、筋力も心肺機能も衰えてきます。
 ウォーキング、ジョギング、柔軟体操など、機能を保つ運動を定期的にしたいものです。湯船につかったときに、指先、足先をマッサージすると血行がよくなります。血行が悪いと、体を十分に解(ほぐ)せません。
 年を取ると、腹筋より背筋の方が衰えるようで、猫背になりやすいようです。背筋を鍛えると、肩が後ろに下がって、胸が前に広がります。腹も斜め前に下がる感じがして、楽に腹式呼吸ができます。無理に呼吸をしている感じから、自然に空気が行き来する感じになります。
 腹式呼吸がうまくいかないと思ったら、背筋を鍛えてみてください。下腹が前に膨らむ姿勢になるかもしれません。
 バランスの取れた姿勢になれば、年齢や体力をある程度カバーできます。少なくとも、気持ちは若返ります。

【腰骨を立てるエクササイズ】
 腹式呼吸をすると、下腹が前に出て膨らみます。この姿勢をするのに、腰骨は大切です。腰骨が立つと、下腹が前に出るからです。先ほどの背筋とあわせて、実行すると効果的です。
 腰骨を立てるには、体を柔らかくする必要があります。硬い体のままで腰骨を立てたり伸ばしたりしようとすると、腰痛になることがあります。無理をしてはいけません。徐々に腰骨を立てることを考えます。
 特別な練習は必要ありません。歩き方を工夫するだけです。歩くと血行がよくなり、体が解(ほぐ)れていきます。体が温まってきたら、歩き方を変えます。胴体は地面に垂直になるようにします。そして、直線上を交差するように歩きます。次に、直線上から交差幅をどんどん広げて歩くようにします。交差幅が広いと、膝頭を高く上げて腰をひねるようにしないと、姿勢を保ったまま安定して歩けません。この歩き方をすると、腰骨が立っていきます。一度試してみてください。
図13

【その他】
 姿勢に関しては、パソコンの取扱説明書に、パソコンを使うときの姿勢が載っていることがあります。取扱説明書もインターネットで見るようになってきました。運がよければ、その姿勢を見られるかもしれません。

 卵を立てたり、テニスボール2個を積んだ写真は、実際にやったものを撮影しています。死角に支えをしたり、接着剤を使うなどはしていません。ご覧の皆様もぜひ挑戦してみてください。テニスボール3個を積む人もいるようですよ。

 以下余白

更新記録など

2015年3月4日(水) : アップロード
2016年1月14日(木) : レスポンシブ様式に改装