個性について
ここでは、読者個人のことを取り扱います。
人には個性があり、全ての人は違います。同じやり方をしても、習得する時間、程度、実効性に差が出ます。「個人の資質」と「他者との比較」などについて触れます。読み方の効率的な習得ができる、ヒントになればと願っています。
読書には、文字の認識、理解、推察、想像などの能力が必要です。そして、人により能力はまちまちです。遺伝により、元々、優れた能力の持ち主がいます。持って生まれた機能は人並みでも、訓練により効率を向上させる人もいます。生まれつき質の高い機能を持っている人は有利ですが、それを使い、やり方を覚えなければ、実力を発揮できません。
素質以外に、体調、年齢、器官の特徴、癖などの違いが、個人にはあります。
若いほうが、細胞が新しく、器官の反応がいいように思います。正確に、多くの情報を処理できます。しかし、時間のかかった経験や知識の集積は、理解や推察に役立ち、質の高い読みになります。
若さと、豊富な知識と経験を併せ持つことは、現実には難しいものがあります。
人には、趣味趣向があります。
読書を趣味にしている人でも、あらゆるジャンルの本を読んでいないようです。好きな分野はある程度決まっているようです。興味があれば、仕事、趣味、試験に関係なく、読もうとします。しかし、自分の読み方をもっている人は、興味の無いものでも、必要があれば、ある程度は読み進められるはずです。
自分の趣味を向上させたいと願っても、読書になれていなければ、本からの知識習得は効率が悪いかもしれません。この場合、人から見たり聞いたりする方が早道です。しかし、その本にしかない情報が載っていたり、バイブル的な本の場合、時間や苦痛が伴っても、読もうとするでしょう。一気に読まなくても、必要なところを少しずつ見ることで、知識を蓄積できます。
読者は、必要に応じて本を選択し、情報の取得方法を工夫(くふう)します。趣味や興味を持つ本は、読みを進めてくれます。
時間も個人差があります。
読書にかける時間です。趣味の人は、読書に時間をかけます。仕事で必要なら、できるだけ手間と時間をかけないように読みます。読む目的によって、時間の使い方が変わります。しかし、多くの時間を使いたいのであれば、本を早く読む能力は、高いことに越したことはありません。
読者の実感です。じっくりと読んだつもりでも、あまり時間が経っていないことがあります。あれこれと考えながら、読んだにもかかわらずです。この時、かなりの集中力だったと思われます。
逆に、内容とは別のことが頭に浮かんでいると、わずかな行数を読むのに、多くの時間を使います。しかも、本の内容が記憶に残っていません。読んでいないのと同じことになります。
このように、読み手によって、時間の進み具合が違います。
人との比較でよく使われるのが平均です。平均より上か下かをよく問題にします。もう一つ、偏差値があります。どの得点に最も多く人数が存在するか、です。
読み方などの方法は、どの集団を対象に作っているのでしょうか。これは平均でも偏差値でもありません。全てにわたって平均の人が、それほどいるとは考えられません。偏差値の最も多くいる集団の各人を比べると、個人差があるはずです。
競争で自分の位置を知るには適しています。しかし、習熟の方法とは、あまり関係がありません。習熟は、競争ではなく、人の機能に着目して作られています。
ですから、自分の資質を分析し、それに合うように習うことが、早道といえます。その習得の感覚、時間、方法は、人それぞれです。できるなら、記録を取り、癖、工夫、上達具合などを確認すると、向上の一助となります。面倒くさいようですが、後で効いてくることがあります。
まとめ
- 読書には、能力、趣味趣向、時間など、個人差がある。
- 読み方の習得は、人により千差万別である。
更新記録など
2016年10月4日(火) : アップロード
2018年5月31日(木) : 『意識と無意識ⅠⅡⅢ』追加による構成変更。