標準 読書
1 脳で見る感覚を知る
眼球が、外界の状況を脳の視野に送っています。視野に映ったものを見たり読んだりしているのは脳です。眼球を使う意識を持つのではなく、脳で見る感覚を覚えます。これにより、正確に、効率よく外界の情報を得ることができます。
眼球に力を入れたり、操作すると、疲れやすく、外界の情報を歪(ゆが)めることがあります。
脳の視野に映ったものを意図的に見て、眼球は自動操作に任せます。
※ハッキリと見えない場合は、老化や病気などが考えられます。医療機関を受診した方がいいかもしれません。参考:メガネなどでの矯正。視能訓練。
2 空間を認識する
見ることの1つとして、対象物と自分との位置関係を知ることがあります。
スポーツや日常生活では、空間を認識していることはわかります。本を読むときも同じです。本の文字に視線を向けているとき、本の全体が見えていると同時に、本の向こう側や手前、左右の前後もぼんやりと見えている状態です。景色の中に本がある感覚です。
文字は空間の1点、ページは空間の平面、本は空間の立体です。空間を認識した見方は、ものの位置を正確に知るだけでなく、理解や想像(創造)、スピード感などに関わっています。
3 視界と視線の動き
眼を意識せず、空間を認識する見方は、かなり広い視界になります。本を持って腕を伸ばすと、本全体がスッポリと視界に入ります。本を開くと、ハッキリと見える文字が結構あることに気づきます。
ところで、どんな文字か、次にどの文字を読むのか、行末の次はどのあたりに視線を持っていけば行頭があるのかは、見えていなければ正確にできません。
今見ている文字、次に見る文字はハッキリと見えていないと読めません。次の行頭が見えていれば、視線の移動がスムーズです。少なくとも視界に入っていれば、ある程度は対応できます。
ハッキリと見える範囲が広いと円滑に文字を次から次へと見ていくことができます。見えていれば、正確にスムーズに視線を移動できます。見えている状態で、脳でつぎつぎに文字を見て読んでいきます。
言い方を換えれば、脳で読もうとするところがすべて見えるように視界をつくればよい、となります。
※あるところに視線を向けたとき、はっきり見えるところが中心視野、その周囲にボヤケテ見えるところが周辺視野です。
※眼球を操作して視界を広げたり狭めたりできます。しかし、眼球に力を入れるため、かなり疲れるのと、情報を歪(ゆが)めてしまうことがあります。また、読んだ内容を実践する際に、行動がぎこちなくなることがあります。
眼をリラックスさせた場合でも、かなりの視界が取れます。視界と視線の働きを使うにつれ、徐々に視界が広くなってくる感じがします。また、対象物との距離や位置関係を工夫すると楽に見ることができます。
※眼をリラックスさせて、視界の広がった状態でみる習慣は、試験などでの緊張を和らげてくれます。始まる前は緊張しますが、文字を読み始めると、心身がリラックスしてくることがあります。
4 意識とこころの言語
最初に、図4を説明します。
音声言語は、「あ」なら心の中で「あ」と言うことです。内的言語は、心の中で考え事をする言葉です。意識、無意識、該当無しは、そのままの意味です。
行動をする場合、発音、理解、思考において、無意識、内的言語、音声言語、該当無し、意識が組み合わさります。組合せがしづらいものもあります。
例えば、黙読をする場合、頭の中で、発音は音声言語、理解と思考は内的言語、という感じです。発音は文字1つ1つに合わせて心の中で読みます。理解と思考は、心の中で話をするかのように言葉を使うことです。
すべて意識をするのは、はじめて見たり習ったり覚えることです。すべてにわたって意識をするので、動きが遅くなります。はじめて英語を習った感覚に近いものです。アルファベットや単語から文法など1つ1つを意識することになります。
逆に、すべてが無意識は、スポーツや日常生活に多くあります。ものが飛んできたので、自然に避(よ)けているなどです。
読書ですべて無意識なのは、超速読ということになります。文字や言葉が図形化し、文法や考え方もパターン化されているようです。標識を見たドライバーが、何も考えなくても適切な運転ができるのに似ています。
こころの言語を使うには、意識や無意識を円滑に使う必要があります。その中でも、特に重点を置くべきところがあります。図4の赤枠で囲ったところです。
音読と黙読の行動について、こころの言語に、内的言語を中心に使います。
その理由は、私たちが見るものは、変化し続けているからです。見方、理解、思考も、それに応じて変化する方がいいからです。
そのためには、変化を意識しやすい内的言語が適しています。また、思考をしっかり練るには、自覚できる内的言語が適しています。
はじめは、内的言語を使っていても、やがて、無意識でするようになります。その後、その無意識を意識に呼び起こせるようにします。
5 「見る」と「意識」
実際にどのように文字を見て読んでいくのかです。
文のはじめの文字に視線を向けると、次の何文字かはハッキリと見えます。すると、視線を向けた文字の単語などがすぐにわかります。その要領で、文字を1つずつ順番に見ていきます。
文章全体がハッキリと見えると、構成などがわかるので、さらに読みやすくなります。
「見る」は全体を捉えるようにし、「意識」で言葉や文節などがわかります。そして、「見る」も「意識」も無意識でできるようにします。「発音」のこころの言語は、内的言語か無意識です。
6 意識⇔無意識
何かをしていると、理解できないことや、できないことが出てきます。この時、そのことを意識すると、行動が止まることがあります。しかし、目的を達成するためには、行動をし続けます。
行動を止めるような出来事を無意識で受けとめるようにします。
読書でいうなら素読(そどく)です。わからなくても、読み続けます。アクシデントがあっても、ゲームセットまで、迷うことなく自分の力を出し続けます。
読んだことや、調べたこと、気になったことは、ずっとこころの浅いところに残ることがあります。四六時中、そのことばかり考えている状態です。絶えず意識している感じです。
この状態になると、集中力を欠いたり、気づきを逸したり、理解や創造の機会を先延ばしにするかもしれません。
そのような出来事は、その行動が終わると同時に、無意識に追いやるようにします。気持ちの切り替えを素早くします。
感動したことや、必要なことを覚えたい、忘れたくないと思うことがあります。
記憶に関することは、天性と習慣に関係しているようです。
天性とは、遺伝子として引き継いだものと、生まれつき覚えやすい分野や特性があることです。
また、習慣とは、自分なりの覚え方やクセのことです。繰り返すのか1回で覚えようとするのか、物語仕立てにするのか、映像のように覚えるのか、などです。
そして、覚えるのに、何が必要なのかがわかったら、そこから意識を別のことに向けます。覚えるのに必要なことを無意識に持っていくようにします。
あることが終われば、意識から無意識に追いやります。その後、必要なものだけを無意識から意識に持っていくようにします。そうすることで、正確で動きの早い無意識になると思われます。
意識したことを無意識化するのは、知的活動に最適な処理の1つです。
7 「いま」「ここ」「さき」
適切な行動をし続けるには、「いま(今)」「ここ」「さき(先)」を意識、無意識で実践します。
目的を達成するには、「いま」の状況や、やっていることを知り、「ここ」で何をするのか、「さき」を見ながら、行動するようにします。
これは、現実を知ることであり、現実に対処することであり、現実に行動すること、です。
例えば、読書や散歩でも同じです。今ある状況を知り、先を見ながら、読んだり歩いたりします。
現実に心身を動かすには、「さき」へ「さき」へと動かしていきます。その時、全体の「さき」を見ていると、動きやすくなります。
状況は変わるので、「いま」「ここ」「さき」を意識したり、無意識でも働くようにします。
現実を直視することと、強い感情を離れて状況を見ることで、行動は最適化されます。
今、直面している現実を感じるようにします。
現実を見ながら行動することで、動作の精度が高くなります。
8 呼吸と姿勢
呼吸は、ヘソ(臍)の下の腹部(臍下丹田〔せいかたんでん〕)を使う腹式呼吸をします。静かにゆっくりと深く楽に行います。姿勢は真っ直ぐで最低限の力で保ちます。
練習をする時は、このような呼吸と姿勢で行います。
このような姿勢ができないときは無理をしません。このような呼吸ができる姿勢であればよいのです。大切なのは呼吸です。
気をつけることは、いつも、静かで深い呼吸を続けることです。息をのんだり止めたりすると、心身がうまく働かなくなることがあります。
生体の中心は、お腹(なか)ではないかと感じることがあります。お腹が生きるために、頭やその他の部分が働いている感じです。
考えすぎたり、感情が高ぶったりすると、頭に血が上ることがあります。頭を中心にすると、起こりやすいようです。
また、見る目的の1つに、対象物との距離を測ることがあります。その時に、「お腹が中心」を意識すると、体の余分な力が抜けるときがあります。
お腹を中心として心身を使うと、行動が安定します。読書でいえば、体の中に文章が入った感じです。
練習は、正確な動作を習得するのが目的です。キチンとした呼吸姿勢が望ましいです。
しかし、普段の読書は、呼吸を確保すれば、楽な格好でよいと思います。同じ姿勢でいると肩がこったり、腰が痛くなったりします。立ったり座ったり横になったり、いろいろに姿勢を変えます。
立っているときは、前後、左右など足の位置を変えます。座ったときは、足の位置を変えたり、踏み台を用意して片足を交互に置いたりします。横になったときは、寝返りをします。
お腹で呼吸することで、意識・無意識的に、お腹を中心とすることができます。お腹で呼吸するのは理に適っています。
9 補充
【五感と第六感】
この眼と意識の使い方は、知的活動をスムーズにするものです。簡単にいうと、この眼と意識の使い方で、仕事やスポーツ、日常生活、読書をすればよいのです。すべての行動に共通する使い方です。
そして、本を読む能力をアップさせるには、加えて経験が必要です。本には個性があるので、自分なりのコツをつかむ必要があります。また、言葉や文法を知ったり、わからないことを調べることも大切です。
能力の維持は、特に必要ありません。毎日、何らかの文字は読んでいるからです。
できるのであれば、書いてある内容を実際に体験することも大切です。体験するからこそ、人の話や本の内容をあたかも自分が経験しているかのように感じられるのです。
ここでは特に、眼と意識を取り上げましたが、これ以外の五感、第六感も重要な働きをしています。十分な体験や、正確な動作に必要です。
【障害について】
眼に力を入れないのと、意識⇔無意識を使うことで、余分な心身の動きが少なくなり、疲れにくくなります。
また、眼と意識の使い方を覚えることなので、何らかの障害は考えにくいものがあります。
しかしながら、過度の練習は、眼が疲れたり、体が痛くなるかもしれません。練習=実践という感じで、短い時間で、こまめに繰り返すなどの工夫をします。
【眼球のメンテナンス】
眼に力を入れないので、眼の筋肉のメンテナンスを考えます。眼球には、眼球を動かす外にある筋肉と、水晶体を調節する中にある筋肉があります。特に水晶体を調節する筋肉をよい状態に保ちたいところです。
【健康管理】
健康があって、この眼と意識の使い方を習得しやすくなります。
適当な運動、栄養のバランスのとれた食事、楽しい会話や笑いなど、心身を健康に保つようにします。さらに、安全安心な環境あれば、いうことはありません。
特に、ビールや日本酒などのアルコールは要注意です。思考が狭くなったり、記憶が不確かになります。仕事で読むときは、終わってから飲むようにします。
10 まとめ
「いま」「ここ」「さき」の意識と無意識を持ちます。同時に、脳の視野に文章の全体を映し、文字を読み進めます。
たったこれだけのことです。
しかし、脳で見ている感覚、内的言語と無意識の使い方は、わかりづらいものがあります。意識⇔無意識は、頭ではわかっていても、なかなかできません。
練習は、ゆっくりで構わないので、正確に、文字や文章を見ていきます。そして、リラックスするようにします。
感覚をつかむのに、読書以外のエクササイズをしても効果のある場合があります。
以下余白
更新記録など
2018年6月12日(火) : 作成
2018年7月18日(水) : アップロード