『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』
原題は『The Path』
- 副題など
- 「悩めるエリートを熱狂させた超人気講義」とありました。
- 原副題「What Chinese Philosophers Can Teach Us About the Good Life」
- 著者など
- マイケル・ピュエット(Michael Puett)氏
- クリスティーン・グロス=ロー(Christine Gross-Loh)氏 共著
- 熊谷 淳子(くまがい じゅんこ)氏訳
- 出版社など
- 株式会社 早川書房 さん
- 版刷など
- 2016年4月初版。読んだものは、2016年5月4版。
- ボリューム
- 245ページ。243~245ページは、「参考文献と推薦図書」になっています。
感じたこと
結論は出ましたか?といった感じです。孔子や老子、荘子、管子など様々な中国の思想が登場します。どのように本書を締めくくるのだろうか、ワクワクしていました。しかし、どうも歯切れの悪い結末に思えてなりません。
老子は、言葉で表すと、その瞬間に、真意を伝えられないと考えていたようです。語られたことの文字数は多くはありません。多くを語れば語るほど、真意から遠ざかって解釈されるからでしょう。文字の少なさは、般若心経を思わせます。
私たちは何を求めているのでしょうか。絶えず、人にチヤホヤされ、金は儲かり続け、自分が最も優れていること、でしょうか。そういう人はいると思います。しかし、一握りの人に過ぎません。みんながみんな、そうなっていません。
なぜなのでしょうか。同じパイを分け合うからでしょうか。しかし、富は無制限にこの世にあります。能力は人によって違います。だから、貧富の差が生まれるのでしょうか。富を平等に分配することだってできます。
孔子は、努力することが必要だと考えていたようです。努力をすることで、民は知識と富を手に入れることができ、国家が栄えるのです。
しかし、今は、民が知識を持ち、情報を受けられるようになりました。こうなると、努力したからといって必ずしも、富を得られるとは限らなくなります。有利な立場も、差が無くなってきます。そうかと言って、知識や情報の取得を放棄するわけにもいきません。
知識と知恵のある中国の思想家の全てが、思うような人生を歩んだとは考えにくい事実があります。努力したから、才能があるからといって、満足の行く人生を過ごせるとは限らないのです。
偶然や運命をどうしても考えてしまいます。しかし、あの出来事は、本当に、偶然や運命だったのか、と。
私たちいる宇宙や世界はどのように動いているのでしょうか。誰にもわからないが答えではないでしょうか。それでも、人は、観察、分析、予測をして、最大の効果を得ようとします。人が知りうるのは、わずかにもかかわらずです。
自分で意図したとおりに的中し、大当たりしたとします。しかし、いつもそうなるわけではありません。その例が、株価や宝くじです。努力して、解析して当たることが可能なら、今ある株式や宝くじの制度は成立しません。
1つだけ言えるのは、渾沌とした宇宙に私たちがいる、ということだけです。
私たちは、全てをわかったような気になっているようです。だから、勉強すれば、報われると考えがちです。しかし、勉強をしなくても、人から愛される人はいます。努力をしなくても、能力を発揮する人もいます。それはなぜなのかということです。
理由の1つとして、人が自分を中心に宇宙を捕らえているからだと考えられます。自分の見たもの感じたもの、そして、行為をしたことが、いいように返ってくると考えることです。しかし、宇宙は、その人を中心にしてはありません。
大局から見ると、宇宙の中に、人がいるに過ぎません。しかも、人は大勢います。そして、宇宙の動きの中で、人は位置を変え、様々なものとの位置関係が変わっていきます。当然、他人も同じです。ですから、1人が、自らの力を出したとしても、変えられることは限られるのです。状況によっては、努力したことが、事態を悪化させることもあるかもしれません。
どうして私は不遇なのだろう、とか、なんてハッピー続きなのだろう、は、宇宙の動きの一時(ひととき)でしかないことです。そして、この感情は、自己を中心にしたものです。自己を中心に考えると、宇宙をどうにかできると思うはずです。
では、自己は宇宙に漂う塵(ちり)のようなものだと考えるとどうでしょうか。宇宙の動きに身を任せ、できることはするが、どうなるかはわからない、となります。宇宙の動きにより、大役を受けたり、下積みをしたり、お世話をしたりと、役があてがわれます。私たちは、役を選んでいるのではないのです。その役は、それまでの努力や経験が活かされることもあるでしょう。しかし、その役回りにならなければ、それを発揮することはできません。
ですから、宇宙の動きを中心に考えれば、脚光を浴びたり、批判を受ける時など、何らかの状況は必ずあります。成功や失敗は人間が決めつけますが、宇宙の観点からは、単なる役回りで、自然なことです。むしろ、宇宙の動きを察知したなら、出処進退は自ずとわかることになります。自分が、いる場所、すること、どうするか、は自ずと決まるのです。それに、自らの欲求を押し通したところで、宇宙の動きには為(な)す術(すべ)はありません。
私が子ども時は、地域の役をする人は、多くは、人から推されてなっていた気がします。また、人から推されないと、役を引き受ける人は少なかったように思います。
しかし、最近は、自分の欲望のために、自らが名乗り出てする時代になったと感じています。これは、学校や職場、地域でも似たように感じます。コミュニティの崩壊もあるでしょうが、意欲の高い人のほうが仕事をしてくれるという考え方があるからでしょうか。
人から推された人は、周囲の支えがあるので、無理がありません。自ら名乗り出た人は、強い使命感があるかもしれませんが、支持を得るのに苦労するかもしれません。物事が自然に動くとは、宇宙の動きに合わせ、自らのできることをする、ことと言えます。努力や才能の問題ではないようです。自分の意志とは無関係のようにも見えます。
本書は、中国の思想家の研究者が書いています。その考えは非常に理知的で、合理的で、何らかの結論を出そうとしています。そして、宇宙の大局をつかみながら、個人の考え方に行き着いています。
天動説、地動説の対立を考えてしまいます。私たちは、自分がそこにいるから、自分が中心だと勘違いします。しかし、私たちは、宇宙に漂う1つの塵(ちり)にしか過ぎません。また、自分が中心だと考えても、自己でさえ十分にコントロールできません。私たちは、宇宙に漂っているのです。その漂う変化の中で、自分の役割があるのです。自分の力で、何とかしようとするには、向かう力が大きすぎるのです。あるときは精力的に、あるときは控えめにと、状況に合わせざるを得ないのです。
宇宙の中の塵を自分と思うか、自分が宇宙にいると思うかで、その処し方は変わってきます。
宇宙が、私たちの努力や意志を必要としていない、としたら・・・。あなたは、自分の人生をどのように生きようと思いますか。どのように答えても構いません。それはあなたの自由です。
この書物を選んだ理由
書店の店頭にお薦めの本としてありました。中国の思想シリーズを読んでいたので、同じ話題なので買うのをためらいました。迷ったときは「手に入れる」と決めているので、結局は買いました。
日本人は東洋哲学を学校で習うのである程度知っています。ところで、欧米人はどのように感じているのだろうか、という疑問が私にはありました。逆に考えれば、東洋哲学を通して、欧米人の考え方をしることができます。そんな思いで、読んでみました。
私の読み方
本書には、読書のことが書かれてありました。
知らないことをわかるようにして、世界が広がり、豊になっていくことです。本の中の知らないことを調べることは、有意義なようです。また、知らないことに挑戦することも、同じです。
形式です。
文字は小さく感じますが、行の長さ、行間、左右上下見開き中央の余白が適当で読みやすいと感じました。
注が見開きページの左側にあり、見やすかったです。ただ、次の見開きページに記載されていることがあり、戸惑うことがありました。
翻訳を感じさせない表現で、読みやすかったです。
後で確認したくなることがあるので、索引は欲しいと思いました。
表紙から目次、はじめに、謝辞、本文の順番に読みました。参考文献と推薦図書は、合間に読みました。
哲学の本ですが、わかりやすく書かれていたと思いました。少しずつ読もうと思っていたのですが、おもしろくて、コントロールできませんでした。
大学での講義は、指定した中国の思想を読んでくることが課題だそうです。確かに、それらを読んでおいた方がいいように感じましたが、学校で習う程度で十分だと思いました。読まなくても、わかるように本書は書かれています。
「7つの習慣」と似た考え方をしているように感じました。育った環境は思想にも大きな影響を与えるようです。まったく違う思想は、やはり自分の感覚でどうしても理解してしまうようです。それは、思想の生まれた国であっても同じだと思います。当然、私もそうです。
弊サイトをご覧の皆様もぜひ本書をお読みください。中国の思想を通して、欧米の考え方を垣間(かいま)見られるかもしれません。
読書所要時間など
- 所要時間
- 5日2時間38分
- 読み始め
- 2016(平成28)年10月17日(月)午前9時51分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年10月22日(土)~午後12時29分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。奥付は軽く目を通しました。巻末の書籍広告はみていません。
取り上げられた書物など
- 『性自命出』
- 『内業』
- 『詩経』
これ以外にも、書籍などの記載がありました。
出来事
10月20日(木) ラグビーの平尾誠二さん死去。
10月21日(金) 鳥取県中部で震度6弱の地震。
ひととき
いつも歩く海岸線には、浅瀬に牡蠣(かき)がびっしりと付いたところがあります。干潮の時には、海水はありません。
毎年、この季節になると、クロダイがこの牡蠣のところに集まっています。暖かいからなのか、牡蠣(カキ)を食べるためなのでしょうか。
平成28年10月18日(火)撮影。
調べたこと
- 1 ハーバード
- アメリカ合衆国にある大学の名前。Harvard University。
- 2 人生(じんせい)
- 3 東洋(とうよう)
- 4 哲学(てつがく)
- 5 熱狂(ねっきょう)
- 6 path
- 道。弊サイトで取り上げた書籍『腸脳力』では、道を「タオ」と書いてありました。
- 7 原副題「What Chinese Philosophers Can Teach Us About the Good Life」
- 直訳すると、「中国の思想家がよき人生について教えてくれること」でしょうか。
- 8 MP
- 調べましたがわかりませんでした。
- 9 CGL
- 調べましたがわかりませんでした。
- 10 虚心(きょしん)
- 11 真摯(しんし)
- 12 新奇(しんき)
- 13 息吹(いぶき)
- 14 格闘(かくとう)
- 挌闘(かくとう)。
- 15 はたと
- 16 がらり
- 17 大仰(おおぎょう)
- 大業(おおぎょう)、大形(おおぎょう)。
- 18 泰然自若(たいぜんじじゃく)
- 19 視座(しざ)
- 20 枷(かせ)
- 21 珍妙(ちんみょう)
- 22 新自由主義(しんじゆうしゅぎ)
- neo-liberalism。
- 23 代替(だいたい、だいがえ)
- 辞書によっては「だいがえ」は「代替え」と書いてあります。本書では「代替案」で使われています。私は「だいたいあん」と読みました。
- 24 理路整然(りろせいぜん)
- 25 行路(こうろ)
- 26 トロッコ問題
- 本書に解説があります。
- 27 流儀(りゅうぎ)
- 28 修養(しゅうよう)
- 参考:修行(しゅぎょう)。
- 29 一足飛び(いっそくとび)
- 30 翼棟(よくとう)
- 本館の脇にある別の建物のことのようです。手元にある辞書に記載はありませんでした。インターネットを参考にしました。
- 31 触発(しょくはつ)
- 32 枢軸時代(すうじくじだい)
- インターネットで調べました。
- 33 蔓延(まんえん)
- 34 エートス(ethos)
- ギリシア語。
- 35 勃興(ぼっこう)
- 36 思念(しねん)
- 37 系譜(けいふ)
- 38 敬礼(けいれい)
- 39 拱手(きょうしゅ)
- 40 性向(せいこう)
- 41 生来(せいらい、しょうらい)
- 42 翻弄(ほんろう)
- 43 出鱈目(でたらめ)
- 漢字は当て字。
- 44 鍛錬(たんれん)
- 鍛練(たんれん)。参考:訓練(くんれん)。
- 45 洗練(せんれん)
- 洗煉(せんれん)。
- 46 生者(せいしゃ、しょうじゃ)
- 47 名状(めいじょう)
- 48 祭祀(さいし)
- 49 祖霊(それい)
- 50 恨みつらみ(うらみつらみ)
- 51 扮する(ふんする)
- 52 癇に障る(かんにさわる)
- 53 木偶の坊(でくのぼう)
- 54 間が抜ける(まがぬける)
- 本書では「まの抜けた」。
- 55 参与(さんよ)
- 56 窘める(たしなめる)
- 57 畳み掛ける(たたみかける)
- 58 見地(けんち)
- 59 セラピー(therapy)
- テラピー。
- 60 年がら年中(ねんがらねんじゅう)
- 61 雛形(ひながた)
- 雛型(ひながた)。
- 62 スローガン(slogan)
- 63 嗾ける(けしかける)
- 64 苛立つ(いらだつ)
- 65 顰め面(しかめづら)
- 顰めっ面(しかめっつら)。
- 66 行き擦り(ゆきずり)
- 行き摺り(ゆきずり)。
- 67 むっつり
- 68 ラッシュアワー(rush hour)
- 69 レパートリー(repertory)
- 70 襞(ひだ)
- 71 凌駕(りょうが)
- 陵駕(りょうが)。
- 72 大望(たいもう、たいぼう)
- 73 振られる(ふられる)
- 74 挫ける(くじける)
- 75 後ろ楯(うしろだて)
- 後ろ盾(うしろだて)。
- 76 ジレンマ(dilemma)
- ディレンマ(dilemma)。
- 77 美徳(びとく)
- 78 説教(せっきょう)
- 79 さもしい
- 80 逸話(いつわ)
- 81 機知(きち)
- 機智(きち)。
- 82 相応しい(ふさわしい)
- 83 危惧(きぐ)
- 84 等閑(なおざり)
- 85 ・・・嫌い・・・(・・・きらい・・・)
- 86 揺るぐ(ゆるぐ)
- 87 再三再四(さいさんさいし)
- 88 促成(そくせい)
- 89 火照り(ほてり)
- 熱り(ほてり)。
- 90 貧相(ひんそう)
- 対義語は「福相(ふくそう)」。
- 91 伝播(でんぱ)
- 92 側(かわ)
- 93 無念無想(むねんむそう)
- 94 如実知見(にょじつちけん)
- 95 マインドフルネス(mindfulness)
- インターネットで調べました。
- 96 外界(がいかい)
- 97 手ずから(てずから)
- 98 いざこざ
- 99 鬱積(うっせき)
- 100 一朝一夕(いっちょういっせき)
- 101 頑な(かたくな)
- 102 大水(おおみず、たいすい)
- 103 灌漑(かんがい)
- 104 穿鑿(せんさく)
- 105 感応(かんのう、かんおう)
- 106 木細工(きざいく)
- 107 結実(けつじつ)
- 108 矢先(やさき)
- 109 愛弟子(まなでし)
- 110 夭逝(ようせい)
- 参考:「夭折(ようせつ)」。
- 111 神性(しんせい)
- 112 手をこまねく(てをこまねく)
- 手を拱く(てをこまぬく)。
- 113 気紛れ(きまぐれ)
- 114 打ちのめす(うちのめす)
- 115 繁茂(はんも)
- 116 無自覚(むじかく)
- 117 突飛(とっぴ)
- 118 極致(きょくち)
- 119 横柄(おうへい)
- 120 苦苦しい(にがにがしい)
- 121 上の空(うわのそら)
- 122 面食らう(めんくらう)
- 面喰らう(めんくらう)。
- 123 威嚇(いかく)
- 124 隔心(かくしん)
- 125 退去(たいきょ)
- 126 一巻の終わり(いっかんのおわり)
- 127 責務(せきむ)
- 128 喧嘩腰(けんかごし)
- 129 てんてこ舞い(てんてこまい)
- 130 唱導(しょうどう)
- 131 コンセンサス(consensus)
- 132 炉辺談話(ろへんだんわ)
- 133 生気(せいき)
- 134 疲労困憊(ひろうこんぱい)
- 135 神格(しんかく)
- 136 黎明期(れいめいき)
- 137 一角(ひとかど、いっかど)
- 一廉(ひとかど、いっかど)。
- 138 対峙(たいじ)
- 139 外物(がいぶつ)
- 140 ぞんざい
- 141 焼き餅(やきもち)
- 142 無味乾燥(むみかんそう)
- 143 畏怖(いふ)
- 144 毒舌(どくぜつ)
- 145 腸が煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる)
- 腸が煮え返る(はらわたがにえかえる)。
- 146 長命(ちょうめい)
- 147 カオス(chaos)
- 148 カリスマ(charisma)
- ギリシア語。
- 149 完全無欠(かんぜんむけつ)
- 150 脱却(だっきゃく)
- 151 喜喜(きき)
- 嬉嬉(きき)。
- 152 物化(ぶっか)
- 153 自ずから(おのずから)
- 154 自発的(じはつてき)
- 155 寓話(ぐうわ)
- 156 骨節(こっせつ、ほねぶし)
- 参考:「骨っ節(ほねっぷし)」。
- 157 アルペジオ(Arpeggio)
- イタリア語。
- 158 ロブ(lob)
- 159 フロー(flow)
- 160 淀む(よどむ)
- 澱む(よどむ)。
- 161 造詣(ぞうけい)
- 162 虚心坦懐(きょしんたんかい)
- 163 真人(しんじん)
- 本書に解説があります。
- 164 統べる(すべる)
- 総べる(すべる)。
- 165 癇癪(かんしゃく)
- 166 陶工(とうこう)
- 167 技巧(ぎこう)
- 168 訝しむ(いぶかしむ)
- 169 猛禽(もうきん)
- 170 嘲笑(ちょうしょう)
- 171 黙殺(もくさつ)
- 172 生得(せいとく、しょうとく)
- 173 既得権(きとくけん)
- 174 愕然(がくぜん)
- 175 冥想(めいそう)
- 瞑想(めいそう)。
- 176 静修(せいしゅう)
- 177 刹那的(せつなてき)
- 178 断裂(だんれつ)
- 179 抗い(あらがい)
- 争い(あらがい)、諍い(あらがい)。
- 180 底本(ていほん、そこほん)
以下余白