『ある特別な患者』
原題は『Die Ene Patiënt』
本書は『That One Patient』英訳版の重訳
- 副題など
- 副題は「医師たちの人生を変えた患者たちの物語」。
- カバー折返しには「正解がないなかで、迷い、悩む医師たちは何を考え、何を感じ、何を学んだのか」とありました。
- 著者など
- 著者 : エレン・デ・フィッサー(Ellen de Visser)氏著
- 訳者 : 芝 瑞紀(しば みずき)氏訳
- 出版社など
- 株式会社サンマーク出版 さん
- 版刷など
- 2021年12月1日初版印刷。読んだものは、2021年12月10日初版発行。
- ボリューム
- 446ページ。
感じたこと
8年ほど前に腰痛で入院したことを思い出しました。
痛みが和らぎ始めたころから、まともな病院食を食べ始めました。2、3日後の昼過ぎに、管理栄養士さんがやってきて、食事のアンケートということで、いろいろと質問されました。
「食事は、おいしいですか?・・・」。
「おいしいです」
といった感じで…。
苦手な料理があまりない私は、次のように答えました。
食べるときに、ごはんもおかずも温かいものが食べられること、いくつかのメニューの中から料理を選べること、味付けもよくおいしいことを伝えました。
何か不満なことがあるか聞かれましたが、病院でこれだけのものが食べられることに感謝していることを伝えました。
その話が終わって管理栄養士さんが去って数分後、隣の患者さんが私に声をかけてきました。さっきの会話はダメだというのです。私は黙ったまま、その人の話を聞いていました。
その人の話では、「まずい」「配膳がなっていない」「もっとおいしいものを食べさせろ」と言うべきだというのです。現状に甘んじるような回答は、患者にとって質の高いサービスを受けられないからだそうです。
その患者は病院サイドに敵対心を持っているというか、自己に有利なように振舞うとでもいうのでしょうか。食事を提供する人、医師、検査技師など、すべてにケチをつけるのです。
あの医者は、痺(しび)れの残る手術をした。ヤブだな。というように。
職場では、労働時間外の飲み会で仕事の方針が決まることが多々あります。飲み会に参加していない人は、なんで急にそのようになったのか理解に苦しみます。インフォーマルグループが、職場の方向性を決めているのです。
しかし、患者は病院のやり方を決められるわけでもなく、要望を伝えることしかできません。アンケートや投書をする病院もあるので、患者にとっては自分の意思を伝えやすくなっていると感じます。
患者はベッドの近いもの同士話をします。身近な話題、食事や医師や看護師の評判などの話題が多くなります。病院側に対抗するかのような、患者の輪ができるのです。
(そこで、一人の患者が病院側にそうような意見を言うと、完全に仲間外れにされます。)
しかしながら、患者グループでの話は、ある程度の力を持っているように思えます。病院がアンケートなどを実施した際、異口同音に同じ言葉で同じ内容の回答があった場合、インパクトはあります。
病院関係者もそのことはよく知っているようで、人の性格を考慮したり、客観的な評価で対応しているようです。
患者を敵とみなしていると思われる医師の診察を受けることがあります。悪態をつく患者には、そうしなければ、自身の精神状態を正常に保つことができないことは理解ができます。医師の防衛反応を、対応がつっけんどんだとか、もしかしたら、お前らに医療のことはわかるまいと高飛車に振舞っている、と患者は誤解しているのかもしれません。
すべての関係者が協力的で活発なら、素晴らしい治療を受けられるように思うのですが。しかし、患者は、症状を医療関係者に伝えるだけで、専門知識は持ち合わせません。病院関係者の手のひらで悪あがきをしているように見えます。
そんな状況で、医師が患者に特別な感情を抱くのは、まず、ありえないことだと思えるのです。だから、本書にある出来事は、貴重な経験なのだと思いました。
ちなみに、数年後に経過観察の受診をした際、私の手術の状況をその医師は克明に覚えていました。技術的なことは、覚えているようです。
病院関係者は、心身共にタフでないと務まりませんね。
この書物を選んだ理由
新聞で紹介されていました。医者が患者に感情を抱き、障害忘れられない思い出となる。どんなことなのか知りたいと思いました。
私の読み方
一つの話が4ページ程度になっています。ただ景色を眺めるだけの通勤をしていたので、この本を読むことにしました。読み始めたころは、通勤時のみ読んでいました。
あっそうですかと読み流すような話もあれば、考えさせられるもの、強い印象を受けた話など、いろんな感じ方をしました。おそらく、人によって話の感じ方が変わるのだと思いました。
そして、話を提供してくれた医師も感じ方がまちまちのようで、次はどんな内容だろうと期待をしていました。
次第に、職場の休憩時間や、仕事の待機時間に、少しずつ読んでいました。
このようになったのは、一話が短時間で読めるのと、一話で完結するのが、隙間時間にピッタリだったからです。そして、次の話に期待をしたからだと思います。
もっと長く楽しむつもりでしたが、予想より早く読み終えてしまいました。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 47日9時間26分
- 読み始め
- 2022(令和4)年10月26日(水)午前11時48分~
- 読み終わり
- 2022(令和4)年12月5日(月)~15時12分
- 一通り読んだ時間
- 40日3時間24分
- 編集終了
- 2022(令和4)年12月12日(月)~21時14分
- 読んだ範囲
- 本書、カバー。奥付は軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- オランダの日刊紙『デ・フォルクスラント』
- 『ターヘル・アナトミア(オランダ訳)』クルムス氏著(ドイツ)
- 『解体新書』前野良沢氏・杉田玄白氏ほか翻訳
- 『医師の感情』ダニエル・オーフリ氏著(アメリカ)
- 『ロミオとジュリエット』シェイクスピア氏著
- 『地下室の手記』ドストエフスキー氏著
出来事
11月8日(火) 皆既月食。ブラッドムーン。
調べたこと
- 1 聖域(せいいき)
- 2 啓発(けいはつ)
- 3 ジレンマ(dilemma)
- 4 パンデミック(pandemic)
- インターネットで調べました。
- 5 匿名(とくめい)
- 6 禍(か)
- ・・・禍。
- 7 コラム(column)
- 8 骨が折れる(ほねがおれる)
- 9 インタビュー(interview)
- 10 共感(きょうかん)
- 11 垣間見る(かいまみる)
- 12 胸が熱くなる(むねがあつくなる)
- 13 鼻つまみ者(はなつまみもの)
- インターネットでも調べました。
- 14 ウェビナー(webinar)
- ウェブ(web)とセミナー(seminar)の造語。インターネットで調べました。
- 15 悼む(いたむ)
- 16 忸怩(じくじ)
- 恥じ入るさま。
- 17 辺獄(へんごく)
- リンボ(limbo)。インターネットで調べましたが、よくわかりませんでした。
- 18 憔悴(しょうすい)
- 19 瘢痕(はんこん)
- 20 オーバードース(overdose)
- 過剰摂取(かじょうせっしゅ)。
- 21 捲し立てる(まくしたてる)
- 22 意味深長(いみしんちょう)
- 23 理詰め(りづめ)
- 24 暗澹(あんたん)
- 25 一介(いっかい)
- 26 内省(ないせい)
- 27 ヒーラー(healer)
- 治療者。
- 28 信念(しんねん)
- 29 あしらう
- 30 hotmail
- インターネットで調べました。
- 31 毅然(きぜん)
- 32 バイオプシー(biopsy)
- 生検。本書では「身体の組織の一部を切除して顕微鏡で検査すること」。
- 33 誉めちぎる(ほめちぎる)
- 34 図々しい(ずうずうしい)
- 35 フラストレーション(frustration)
- 36 ヒステリック(hysteric)
- 37 トラウマ(trauma)
- 心的外傷。
- 38 熱傷(ねっしょう)
- 熱傷は医学用語。日常で使う火傷(やけど)のこと。本書では使い分けていると思われるところがありました。29話。
- 39 眩い(まばゆい)
- 目映い(まばゆい)。
- 40 宛がう(あてがう)
- 41 チュール(tulle)
- インターネットで画像を確認しました。
- 42 不穏(ふおん)
- 43 ポルダー(polder)
- 干拓地。
- 44 がらん
- 45 郷に入っては郷に従え(ごうにいってはごうにしたがえ)
- 46 ヒエラルキー(hierarchy)
- ヒエラルヒー。
- 47 傲慢(ごうまん)
- 48 人望(じんぼう)
- 49 単刀直入(たんとうちょくにゅう)
- 50 込み入る(こみいる)
- 51 まごつく
- 52 早とちり(はやとちり)
- 53 機能不全家族(きのうふぜんかぞく、dysfunctional family)
- インターネットで調べました。
- 54 アサシン(assassin)
- 本書では「暗殺者」。
- 55 ビクター(victor)
- 勝利者。
- 56 陰口(かげぐち)
- 57 年端(としは)
- 58 覚束無い(おぼつかない)
- 59 不治(ふじ、ふち)
- 参考:不治の病。
- 60 デザイナーベイビー(designer baby)
- インターネットで調べました。
- 61 唯一無二(ゆいいつむに)
- 62 気さく(きさく)
- 63 何はともあれ(なにはともあれ)
- 64 素っ気無い(そっけない)
- 65 うんざり
- 66 プロトコール(protocol)
- 本書では「治療計画書」。
- 67 牛車(ぎゅうしゃ、ぎっしゃ)
- 68 他愛(たわい)
- 69 無下に(むげに)
- 70 偏屈(へんくつ)
- 71 婉曲(えんきょく)
- 72 うらぶれる
- 73 一目置く(いちもくおく)
- 74 見るからに(みるからに)
- 75 美談(びだん)
- 76 容体(ようだい、ようたい)
- 容態(ようだい、ようたい)。
- 77 身の毛がよだつ(みのけがよだつ)
- 78 掛替え(かけがえ)
- 本書では「かけがえのない」。
- 79 縋る(すがる)
- 80 オピエート(opiate)
- 本書では「麻薬性鎮痛剤」。
- 81 事も無げ(こともなげ)
- 82 ばつが悪い(ばつがわるい)
- 83 ホメオパシー(homeopathy)
- 同種療法。
- 84 忙しない(せわしない)
- 「・・・ない」は、忙しいを強める語。
以下余白