『物価とは何か』
- 副題など
- 帯には「本当に必要な経済学がここにある!」「デフレもインフレもない社会は可能なのか?」などとありました。
- 著者など
- 著者 : 渡辺 努(わたなべ つとむ)氏著
- 出版社など
- 株式会社 講談社 さん
- 講談社選書メチエ
- 版刷など
- 2022年1月11日第一刷発行。読んだものは、2022年3月17日第5刷発行分。
- ボリューム
- 333ページ。ただし、327~333ページは、図表出典一覧、人名索引です。
感じたこと
学問や金融政策としての考えた場合と、一般人の感じる物価とは違うんだな、と思いました。
どうやって物の値段を決めるのかでしょうか。様々な費用に利益を足したものが、物の値段になるのだと思います。しかし、利益はどのくらいにするのがよいのでしょうか。
私が営業をしていた時のことです。どのように利益をつければいいのか迷ったことがあます。
既製品は会社の規定に従って決められた値段で売ります。しかし、売値のいくらが利益なのかわかりませんでした。おそらく原価、利益ともに企業のトップシークレットなのでしょう。
特別に注文されたものは、原価に利益をつけて売ることになります。原材料や経費などは計算できますが、利益をどのくらいにするのかを迷いました。会社の規定になかったからです。
先輩方や上司にも相談しましたが、得心の行く回答は得られませんでした。異口同音に言われたのが、お前がとってきた仕事なんだから、赤字でなければ好きに値段を決めてよい、でした。担当である自分が考え決めて実行するしかありません。
競争相手のないものだったので、買い手の予算の上限で売価をつけることができます。当時、本当にこれでいいのかと自問自答したことがあります。これは既読の稲盛和夫氏の書籍の中にも同じような話がありました。
一見(いちげん)の取引なので最大の利益でもいいか・・・、買い手は研究機関で予算が余れば他にも使えるだろうし・・・、我が社の売り上げといっても一時的なものだし・・・、学生時代のバイト先の利益率は確か〇〇%だったが業種が違うし・・・、予算全額で売るのは利益が大きすぎて人としてどうか・・・、販路を拡大するための安売りではないし・・・、といろんなことが頭を駆け巡っていました。
職場の先輩によく連れて行ってもらったお店のマスターが、“相見互い”という言葉をよく使っていました。相互扶助か・・・。
そして、ふと思い出したことがありました。
イギリスの食事の作法で、マナーズビットというのを学校で学んだことがあります。これは、出された料理をすべて平らげるのではなく、今の恵みをいただけたことを神様への感謝として少し残しておくというもの、だったと思います。(うろ覚えですみません。)
子どもたちは、自分たちの嫌いな食べ物、例えばニンジンをお皿に残したというオチがついていました。
結局、私が考えたのは、予算全額からマナーズビット分を引き、さらに値引き処理をしました。予算全額から売値を引いた額は、高めの検査機器が1台買える金額にしました。
先ほどの話になぞらえると。この取引の恵みに、神への感謝として、利益を捧げることで表しました。相互扶助にもなったかなと思えました。捧げた利益は、何かに使われ誰かに恵みをもたらす、と信じました。何せ、我が社の最も好きな利益を捧げたのですから。
この書物を選んだ理由
どうやって物の値段が決まるのか、ずっと疑問に思っていました。本書の書評を見て、専門知識がなくても読めそうなのでチャレンジすることにしました。
私の読み方
長い時間をかけて読み終わりました。読まない日があり、一日2、3ページの日がありました。不思議に一日に何十ページを読む日はありませんでした。
基礎知識がなく、日頃からこのような話題に接していないのが原因なのかもしれません。どうしても、先々を読み進めませんでした。
そして、内容が理解できたかというと、まったく自信がありません。字面を追っていたという感じです。ただ、起こった出来事や、実際に行われていることについての記述は、勉強になりました。ニュースをみると少しわかるようになりました。
残念ながら、私の個人的な疑問、利益はどのくらいなのかは解消されませんでした。
値段をそのままに量を減らした場合に、原価と利益の割合がどう変化するのか知りたいところです。多大な労力をかけて量を減らしたのに、採算ギリギリでは働く意味を見出せないかもしれません。そして、量を減らした既製品の値段が、大胆な新規商品を出しにくくするのではないかとも思いました。
また、新機軸の製品が出た場合の利益は、売れれば利益はいくらでもよいのか、です。利益がどこかに集中すると全体のバランスが崩れる気がします。それにより過剰な設備投資をした場合、どうなるのでしょうか。
形式的なことです。
言葉の索引があれば便利だと思いました。
挫折しそうになりましたが、何とか読み終えてほっとしています。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 139日20時間3分
- 読み始め
- 2022(令和4)年3月31日(木) 16時29分~
- 読み終わり
- 2022(令和4)年8月11日(木)~18時45分
- 一通り読んだ時間
- 133日2時間16分
- 編集終了
- 2022(令和4)年8月18日(木)~12時32分
- 読んだ範囲
- 本書。ただし、奥付とカバーは軽く目を通しました。図表出典一覧、人名索引は必要なときに使いました。出版社の広告等は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『ヴェニスの商人の資本論』 岩井克人氏著
- 『新しい物価理論』
- 『一般理論』 ケインズ氏著
- 『国家は破綻する(This Time is Different)』 ロゴフ(Kenneth Rogoff)氏著
- 『十八史略』
ひととき
本書を読み始めたころに咲いていた花です。シャガというそうです。日差しを浴びて輝いていました。
令和4年4月17日(日)に撮影しました。
調べたこと
- 1 物価(ぶっか)
- 2 遭遇(そうぐう)
- 3 蚊柱(かばしら)
- インターネットでも画像を確認しました。
- 4 猛烈(もうれつ)
- 5 個体(こたい)
- 6 厳然(げんぜん)
- 7 自明(じめい)
- 8 ミクロ〔微視的〕経済学(みくろ〔びしてき〕けいざいがく)
- 9 マクロ〔巨視的〕経済学(まくろ〔きょしてき〕けいざいがく)
- 10 括り(くくり)
- 11 譬え(たとえ)
- 12 同根(どうこん)
- 13 格納(かくのう)
- 14 使い出(つかいで)
- 15 消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう)
- 総務省統計局のWebサイトで確認しました。
- 16 CPI(Consumer Price Index)
- 消費者物価指数。
- 17 買い溜め(かいだめ)
- 18 タラレバ(たられば)
- 19 誤謬(ごびゅう)
- 20 風が吹けば桶屋が儲かる(かぜがふけばおけやがもうかる)
- 21 当て擦り(あてこすり)
- 22 揶揄(やゆ)
- 23 腹落ち(はらおち)
- 腹に落ちる。インターネットでも調べました。
- 24 重商主義(じゅうしょうしゅぎ)
- 25 たんまり
- 26 ブロックチェーン(blockchain)
- 27 人海戦術(じんかいせんじゅつ)
- 28 ドル建て(どるだて)
- 29 ビットコイン(Bitcoin)
- インターネットで調べました。
- 30 乱高下(らんこうげ)
- 31 心許ない(こころもとない)
- 32 逼迫(ひっぱく)
- 33 ドッチライン(Dodge Line)
- インターネットで調べました。
- 34 一糸乱れず(いっしみだれず)
- 35 腐心(ふしん)
- 36 ハイパーインフレ
- 本書82ページに解説がありました。
- 37 ポリシーメーカー
- 本書120ページに解説がありました。
- 38 ともかくも
- 39 実質金利(じっしつきんり)
- 本書に解説があります。インターネットでも調べました。
- 40 趨勢(すうせい)
- 41 一蓮托生(いちれんたくしょう)
- 42 収斂(しゅうれん)
- 43 神通力(じんつうりき)
- 44 眼と鼻の先(めとはなのさき)
- 目と鼻の先。
- 45 モデレーション(moderation)
- 45 GDP(Gross Domestic Product)
- 国内総生産。インターネットで調べました。
- 46 手懐ける(てなずける)
- 47 束の間(つかのま)
- 48 コンセンサス(consensus)
- 49 トレードオフ(trade-off)
- 本書124ページに解説があります。
- 50 ノミナル(nominal)
- 51 勘案(かんあん)
- 52 信認(しんにん)
- 53 市井(しせい)
- 54 荒唐無稽(こうとうむけい)
- 55 直截(ちょくせつ)
- 56 開陳(かいちん)
- 57 一物一価(いちぶついっか)
- 本書178ページに解説があります。参考:一物一価の法則。インターネットで調べました。
- 58 外生的(がいせいてき)
- 調べましたがわかりませんでした。経済用語でもないようです。内生的と対比させると、本来のものとは関係のない、という意味にでもなるのでしょうか。
- 59 達観(たっかん)
- 60 バズる
- インターネットで調べました。
- 61 ざら
- 62 伸縮的(しんしゅくてき)
- 214ページに解説があります。
- 63 ・・裡(・・り)
- ・・裏。
- 64 アナロジー(analogy)
- 65 ケミストリー(chemistry)
- 66 学際(がくさい)
- 67 間隔(かんかく)
- 68 辻褄(つじつま)
- 69 五里霧中(ごりむちゅう)
- 70 後知恵(あとぢえ)
- 71 要素還元主義(ようそかんげんしゅぎ)
- 本書245ページに解説があります。インターネットでも調べました。
- 72 インプリケーション(implication)
- 73 しっくり
- 74 ピークアウト(peak out)
- インターネットで調べました。
- 75 所以(ゆえん)
- 76 均す(ならす)
- 参考:平す(ならす)。インターネットでも調べました。
- 77 慣行(かんこう)
- 78 デフォルト(default)
- 本書263ページ。「債務不履行」の意味ではないようです。
- 79 ご利益(ごりやく)
- 参考:利益(りやく)。
- 80 元の木阿弥(もとのもくあみ)
- 81 見限る(みかぎる)
- 82 フリーフォール(free fall)
- インターネットで調べました。
- 83 しどろもどろ
- 84 ステルス値上げ
- シュリンクフレーション(Shrinkflation)。本書276ページに解説があります。インターネットでも調べました。
- 85 マエストロ(maestro:イタリア語)
- 86 合成の誤謬
- 本書286ページに解説があります。
- 87 後講釈(あとこうしゃく)
- 88 模式(もしき)
- 89 旨(むね)とする
- インターネットで調べました。
- 90 選りすぐる(えりすぐる)
- 選りすぐる(よりすぐる)。
- 91 金科玉条(きんかぎょくじょう)
- 92 鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
以下余白