『言語の起源』
原題『HOW LANGUAGE BEGIN』
- 副題など
- 「人類の最も偉大な発明」
- 原副題「THE STORY OF HUMANITY’S GREATEST INVENTION」
- 著者など
- 著作者 : ダニエル・L・エヴェレット(DANIEL L.EVERETT)氏著
- 翻訳者 : 松浦 俊輔(まつうら しゅんすけ)氏訳
- 出版社など
- 株式会社 白揚社 さん
- 版刷など
- 2020年7月26日第1版第1刷。読んだものは、2020年10月8日第1版第3刷。
- ボリューム
- 446ページ。ただし、423~446ページは「おわりに」「訳者あとがき」「註」「索引」などです。
感じたこと
今どきの若者は言葉がなっていない、という言葉を聞いたことがあります。これは中国の思想を読んだ際にも、紀元前後の人が言葉の乱れを嘆いたとありました。
なぜ、言葉は変化をするのか不思議なことです。現代のように教育が行き届き、ほとんどの人が文法など決められたことを習っているにもかかわらずです。
特定の地域や人たちの流行り言葉も含めて、言葉は変化しています。使い方だけでなく、ある言葉が使われなくなったり、新しい言葉が生まれたりします。
科学技術の進歩により、新しい言葉が出てきます。新しい製品や技術的な言葉です。科学の基礎的な原理は変わらないとしても、単位が変わったり、呼び方が変わることがあります。不変を扱うように思えますが、使っているのは人間です。
普段の生活も同じように、変化していきます。メディアの影響や服装などのファッション、飲食の嗜好性などにより、文化は変化しています。
もう一つ思うのは、私たちが何かを見聞した時に、同じように感じることがある、ことです。「ヤバい」は、よくないことに使われていたようですが、今ではいい意味でも使われています。ある映画を見た観客が、主人公の言葉を同じように感じ、一斉に使い始めたことから起こったと聞いたことがあります。
同じ世代の人が、同じ教育を受け、同じ時代の流れを感じ、今同じ環境に身を置いている。この人たちが、何かを見たとき、例え辞書の意味とは違っていても、感じた意味で使い始めるのかもしれません。
国語教育があるのに、どうして言葉は変化するのか。これは私の勘違いだったようです。言葉が変化するから、国語教育があるのです。
日々文化が変化する以上、言葉が変化するのが自然なのです。人間の感性が、その現象を受け入れ、言葉を使い始めるようです。それを同じように感じる人がいればなおさらです。
文法は規則性がありますが、例外も多くあります。文化が言葉をつくるのであれば、文法は後付けの説明でしかありません。このように考えると、言葉の変化に対して、文法はどのように解釈するのだろう、と思います。
言葉は乱れるのが自然だったのです。
この書物を選んだ理由
何かの広告で本書のタイトルを見ました。言語学の本を手に取ったことがなかったので、本書を読むことにしました。
私の読み方
『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ氏著、『文化がヒトを進化させた』ジョセフ・ヘンリック氏著の内容に近いものを感じました。
企業文化というのがあります。その企業独自のものです。新入社員や転職者にとって、この企業文化に慣れるまでは大変なように感じます。慣れるにつれて、仕事が円滑に進むようになってきます。
3年ほど在籍すれば、その文化が当たり前になってきます。ベテランにはその文化を絶対視する人もいるようで、何か新しいことをしようとすると猛烈に反対する人も出てきます。
時代の流れや環境の変化で変わる必要があるとき、企業がこの文化をどのように扱うのか興味があります。
採用しても早期に退職したり、根も葉もないウワサが蔓延したり、合理的な考えが力により歪められたりしては、人材を活かせません。
企業文化をデザインすることで、生産の向上だけでなく、働きやすい環境や企業の活力などを求められるのかもしれません。
ただ、デザイン後実行してもすぐに効果が上がるとは考えにくいところがあります。企業は人の集まりだからです。急激な変化は在職者に大きな負担をかけることになります。
企業は時代を読みながら、組織の文化を徐々に絶えず変化させた方がいいことになります。在職者も変化する文化を体得していくことになります。
言語の起源から飛躍しましたが、組織も「文化」で活動していると言えそうです。
一気の変化には制度改革や社内教育がいいようですが、定着するまでにはそれなりの時間がかかることでしょう。
弊サイトでは『学習する組織』ピーター・M・センゲ氏著、『U理論』C・オットー・シャーマー氏著、稲盛和夫氏著作などが役に立ちそうです。
いずれにせよ、少なくとも企業とそこで働く人たちの両者が、何らかの目標に向かう方向にあれば、文化は変化していきそうです。
読み終わるのに半年以上かかりました。読まなかった日が多くありました。ブランク後に続きから読むのですが、以前読んだ部分を覚えていて抵抗はありませんでした。
きっと、私が強い好奇心を持ち、分野が初めてで新鮮であり、強烈な印象を受けたからだと思います。
記憶に残る本であれば、少々のブランクは乗り越えられるような気がしました。
本書では、理解できないところが多々ありました。特に、言語学の基礎や定説の部分だと思います。過去に言語学の入門書などを読んでいたら、より深く文化と言語のかかわりを理解できたかなと少し残念な気持ちです。
読書は一発勝負のようなところがあるので、日々精進して自らのレベルアップに努めなければとも思いました。
どうして言語は変遷するのか、同じ分野の職業、同世代、同地域など、同のつく集団の人たち同士は話が通じやすいのか、がわかった気がします。同のつく人たちの、同の文化を持っているからなのですね。また、同じ分野でも違う同の人たちがいますから、違う文化が生まれ、言語は変遷するのですね。
言葉が変わっていくことは自然なことです。それは文化が進展しているとも言えそうです。
刺激の多い一冊でした。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 222日18時間48分
- 読み始め
- 2020(令和2)年12月20日(月)22時15分~
- 読み終わり
- 2021(令和3)年7月25日(日)~午前8時02分
- 一通り読んだ時間
- 216日 9時間 47分
- 編集終了
- 2021(令和3)年7月31日(土)~17時03分
- 読んだ範囲
- 本書、カバー、帯。ただし、奥付、著者等照会は軽く目を通し、「図版クレジット」、巻末広告は読んでいません。索引は必要なときに使いました。
取り上げられた書物など
- 『Dark Matter of the Mind : The Culturally Articulated Unconscious』 ダニエル・L・エヴェレット氏著
- 『ピダハン-「言語本能」を超える文化と世界観』ダニエル・L・エヴェレット氏著
- 『統辞理論の諸相』チョムスキー氏著
- 『Beyond Words : What Animals Think and Feel』カール・サフィナ氏著
※ これ以外にも書籍、映画、論文の紹介がありました。
出来事
東京2020オリンピック 開催期間7月23日(金)~8月8日(日)
埼玉、千葉、神奈川、大阪に緊急事態宣言。期間8月2日(月)~8月31日(火)まで。
調べたこと
- 1 起源(きげん)
- 2 偉大(いだい)
- 3 発明(はつめい)
- 4 ケラチン(Keratin)
- 5 閲歴(えつれき)
- 6 梃摺る(てこずる)
- 7 ちゃんぽん
- 8 捻り出す(ひねりだす)
- 9 末裔(まつえい)
- 10 恣意(しい)
- 11 形象(けいしょう)
- 12 苛立つ(いらだつ)
- 13 生分解性(せいぶんかいせい)
- 本書では「生分解」。辞書には該当する言葉はなく、「生分解性」。
- 14 早計(そうけい)
- 15 俯瞰(ふかん)
- 16 ややこしい
- 17 族(ぞく)
- 18 属(ぞく)
- 19 亜科(あか)
- 20 つむじまがり(旋毛曲り)
- 21 ジャンク(junk)
- 本書では「その意味には必須ではない部分」。
- 22 ヒストン(histone)
- 本書では「遺伝子の起動、停止を制御するDNAの支持材」。
- 23 ニッチ(niche)
- 24 殖える(ふえる)
- 25 統語論(とうごろん)
- シンタックス(syntax)。
- 26 再帰(さいき)
- recursion。本書にどのようなものか例があります。
- 27 矢状隆起(しじょうりゅうき)
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 28 眉弓(びきゅう)
- インターネットで画像を確認しました。
- 29 僻地(へきち)
- 30 泥仕合(どろじあい)
- 31 熾烈(しれつ)
- 32 統覚(とうかく)
- 本書85ページには、「われわれの発達に作用する経験のことで、無意識に蓄えられ、個々人の心理を生み出すもとになる」とありました。
- 33 ダークマター(dark matter of the mind)
- 本書85ページには、「宇宙物理学に由来する言葉で、光などの磁気的作用で『見る』ことはできないが、その重力によって宇宙の構造に影響を及ぼしている(そう考えないと現象を説明できない)とされる物質。観測が試みられているものの、まだ特定されていない」とありました。
- 34 後躯(こうく)
- インターネットで調べました。
- 35 穴居人(けっきょじん)
- インターネットで調べました。
- 36 太平洋通過流
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 37 パレオアート(paleoart)
- インターネットで調べました。
- 38 音高(おんこう)
- インターネットで調べました。
- 39 マトリックス(matrix)
- 40 涵養(かんよう)
- 41 換喩(かんゆ)
- 42 燧石(すいせき)
- 火打石(ひうちいし)。
- 43 統辞(とうじ)
- 統語論(とうごろん)、シンタックス(syntax)。
- 44 コロニー(colony)
- 45 舌骨(ぜっこつ)
- 46 突顎(とつがく)
- インターネットで画像を見ました。
- 47 把手(とって)
- 取手(とって)。
- 48 隠れ処(かくれが)
- 隠れ家(かくれが)。
- 49 敷衍(ふえん)
- 50 ネクサス(nexus)
- 本書では「結びつき」。
- 51 バイナリ(binary)
- 本書では「二分木的」。
- 52 隘路(あいろ)
- 53 アドオン(add-on)
- 54 器用(きよう)
- 55 轍(わだち)
- 56 アイコニック(iconic)
- 本書では「類像的」。
- 57 声道(せいどう)
- 58 調音(ちょうおん)
- 59 ヴォウル(vowel)
- 母音(ぼいん)。
- 60 チャンキング(chunking)
- インターネットで調べました。
- 61 ミニマリズム(minimalism)
- インターネットで調べました。
- 62 循環論法(じゅんかんろんぽう)
- 63 抗う(あらがう)
- 64 ハイライター(highlighter)
- 本書では「強調因子」。インターネットで調べました。
- 65 吃音(きつおん)
- 66 共時的(きょうじてき)
- 本書では「タイミングが合致する」。対義語は「通時的(つうじてき)」。
- 67 共進化(きょうしんか)
- 68 付言(ふげん)
- 69 リベラル(liberal)
- 70 雑魚(ざこ)
- 71 格率(かくりつ)
- 72 漸進(ぜんしん)
- 73 手練手管(てれんてくだ)
- 74 もどかしい
- 75 涵養(かんよう)
- 76 収斂(しゅうれん)
- 77 等質(とうしつ)
- 78 野良(のら)
- 79 スロット(slot)
- 80 便法(べんぽう)
- 81 同質(どうしつ)
- 82 常道(じょうどう)
以下余白