『過敏で傷つきやすい人たち』
- 副題など
- 「HSPの真実と克服への道」
- 著者など
- 著作者 : 岡田 尊司(おかだ たかし)氏著
- 出版社など
- 株式会社 幻冬舎 さん
- 版刷など
- 2017年7月30日第1刷。読んだものは、2019年11月20日第5刷。
- ボリューム
- 260ページ。ただし、256~260ページは「おわりに」と「主な参考文献」です。
感じたこと
ある職場で、様々なハラスメントや脅迫を受けたことを思い出しました。
組織の中でも根性が悪いとの評判の上司のもとで勤めたことがあります。そのハラスメントは強烈でした。言葉だけではなく、悪ふざけのような行為により労働災害になったこともありました。最も辛かったのは、評価を下げることを実行されたことでした。逆に自分が部下からハラスメントを受けていると幹部会議や所属のトップに主張しているようでした。この上司は、私が言ったことにして、他人の悪口を言っていたようです。
仕事で関係のあるセクションに行ってもまともに取り合ってくれなくなりました。それでも仕事はせざるを得ません。ハラスメントの対応に心身を消耗し、仕事に集中するどころではありませんでした。
あるとき書類を取りに、上司の席の背後にあるロッカーに急いでいったときのこと。上司は急に立ち上がり、慌てて私から遠ざかったのです。どうも危害を加えられると思ったようでした。上司は、自身が悪いことしていることを十分に認識していたのです。しかも、人から危害を加えられるほどの憎しみを生むハラスメント行為を上司自身が認めた瞬間だとも感じました。
この上司のもとにいたとき、実行したことがあります。それは、この上司ついて、他人に一切話をしないことと、公私を厳格にし職場外で一緒に行動をしないことでした。上司にできるだけ、言いがかりをつけられないようにしていました。また、理念は、マハトマ・ガンディーの「非暴力的抵抗運動」。対処法は、三国志で、孔明が孟獲を何度も解放したこと。この2つを参考に、非道を行う人間に、人の道、自分にできる最上で対処することとしました。組織のトップへの直訴や刑事告訴などで止めを刺すのではなく、非道を悟らせ、自発的に変化することを目指しました。非道を行う人間を、一人の人として接することにしました。
ただ残念なのは、この上司の在任期間中に同僚が自殺したことでした。同僚とは一緒に仕事をしていました。仕事のことや、世間話をよくしていました。不思議なことにこの上司が話題になったことはありませんでした。同僚は病気を患っていましたが、自殺をするような感じはぜんぜんありませんでした。何か強いきっかけがあったとしか思えませんでした。
その上司のもとで数年勤めました。かなり苦しいときもありました。よほど、異動希望や直訴しようかとも思ったこともありました。しかし、私がここを去ると他の人が同じ目に合う可能性があり、何とか凌ぐことを決意しました。
この上司が去る半年ほど前に、ハプニングがありました。ある朝出勤して間もなく、椅子に腰かけている私の近くに来て、上司は何かボソボソと独り言を言っているようでした。いつものように真摯に聞いていましたが、何を言っているのか全然わかりませんでした。私が用件を確認する間もなく、一方的に話し終わると上司は別の人のところで同じように独り言を言っているようでした。この上司をかわいがっている幹部にハラスメントがバレたようでした。
その後、ハラスメントが無くなったわけではありませんが、私を無視する形でマシになりました。
この件に関して事実関係を確認していないので何とも言えません。実際に起こったことから、私が推測したことでしかありません。周囲との付き合いを控えていたためです。
上司の独り言は何だったのか。自分の非を認め謝罪をしたのだろうか。独り言で少し聞こえたのは、お前をゆるしてやる、という意味のことです。そもそも何についてゆるしてくれるのか意味不明でした。そして、原因をつくったのは私で、上司は指導としてハラスメントを正当化したかったのでしょうか。もしそうなら、私に独り言を聞かせる必要はありません。この上司の行動が解せませんでした。
不快だし何の益にもならないので、この上司のことは思わないようにしていました。ただ、この上司が日ごろからよく発言していたのは「バレなければ、何をしてもいい」です。
この上司の異動後、会議などで場を同じくすることがありました。明らかにこの元上司は私を避けていました。あいさつに行こうと近づくと、さっとどこかへ行ってしまうのです。
悪行の事後処理としては、自身が反省し、被害を受けた人に謝りゆるしをもらい、二度と同じ過ちを繰り返さない、というのを聞いたことがあります。
私の憶測に過ぎませんが。この元上司も、反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないと心に強く誓ったと思います。「今度こそ、バレないように、完璧にしてやる」と。
この書物を選んだ理由
ネットサーフィンをしていて、この本を知りました。バラエティ番組でも「繊細さん」とかいうテーマで取り上げていました。この傾向を持つ人を「HSP」と呼んでいるそうです。内容を知りたいと思ったので、この本を読むことにしました。
私の読み方
人の性格は変わらない、というのが私の感じたことです。それは、自分も他人も同じことです。
人事主催の研修で担当者が放った言葉に、「何回、言ってもわからない」がありました。これは、ハラスメント行為を止めるように言ったが、対象者が行動を改めないというのです。もともと感覚的に理解できないことは、相手の立場になってみても、その痛みを感じられないということです。悔悛(かいしゅん)による、改善は見込めないと思うのですが。このような場合、異動により適した人材を配置する以外にないと思いました。
ハラスメントは、いたずらと同等に思われているようです。しかし、法に触れないまでも、人の道に外れていることがほとんどです。組織内であり仕事上の言動のため、罪を犯しているという意識がないように感じます。
組織の一員としてホロコースト(大虐殺)に携わった人は、業務としては正当だとしても、人道の罪に問われました。本来人が持っている情が問われたのです。人を傷つける行為は、人間の自然の感情がゆるさないのです。例え、懇願されても、人を傷つけることは、人の自然な感情に反するのです。
ハラスメントの悪影響は、組織だけではありません。そこで働く人々に悪影響を与えています。直接ハラスメントを受けた人だけでなく、それを見聞した人にも影響があります。
組織では生産性が落ちます。恐怖により統制することになり、コミュニケーションの質が落ち、創造的な意見がなくなり、必要最小限の言動になります。
そして、家族への影響です。組織での類似ハラスメントを家族にしやすいと思われるのです。先ほどの上司は、子供に恐怖心を起こさせて、勉強をさせていたそうです。それが最も人を動かす手っ取り早い手段であるという解説を自慢げに話していました。
ハラスメントの被害者についても、その家族にマイナスの影響があります。
程度の違いはあるものの、私の職場には必ずハラスメントをする人がいました。私は、もしかしたら敏感なのかもしれません。しかしながら、ハラスメントをする人に共通して感じるのは、人としての円熟味がない、未熟なことです。そして、考え方が極めて単純なことです。役に立つかたたないか。敵か味方か。まるで二項対立を地で行くのです。
さらに、ためらうことなく、自己中心的な行動をします。自分の考えが最も合理的だと思っているようです。
ハラスメントは、文明の基となる創造性を不良化し、長年築いてきた信頼関係を壊しているようです。不良化の傾向を健全化するには多くの心労と時間が必要です。壊したものが元に戻ることはありません。ハラスメントは、人類への敵対行為とも感じられます。
私が思うに、本当に手当てが必要なのはハラスメントをする人です。ハラスメントをする人は、多くの犠牲者を出します。そして、自らの非を悟ることができず、改善する意志を持つことがありません。これは習慣や感じ方、考え方を変えることが非常に困難だからです。
先ほどの元上司は、母親のことを非常に憎んでいました。まさに、本書で語られる内容と合致するのです。母親の愛情を十分に受けていないと感じました。その満たされない感情を他人に求めているようでした。自らの要求を完全に満たす人でないと認めず、自らの感情に絶対服従する部下でないと、ゆるせないのです。
ハラスメントは、徐々に心身をむしばんでいきます。短ければ短いほど、心身への悪影響を少なくできると思います。ダメージの大きい後遺症は、想像を超える時間、おそらく一生続くと感じるからです。
ハラスメントをする人がいたら、被害を受けていないとしても、その人とは付き合わないことです。同じ職場なら、早期に事情を伝え、異動を申し出ることです。希望がかなわない場合は、退職や転職を検討すべきです。組織自体がハラスメント体質かもしれないからです。
絶対やってはいけないのは、ハラスメントをする人に同調することです。ハラスメントが組織の体質となるからです。
人としての行いをしっかりと自覚しないと、ハラスメントに負けて、人の道を踏み外すことにもなります。
本書には、心に傷を負った時の対処法が書いてあります。非常にわかりやすく実践しやすいと感じました。
絶えず嫌なことが付きまとったり、突然そのことを思い出すとき、なんとも言えない無力感に襲われます。様々な方法を試しましたが、いまだに引きずっています。
出来事について、加害者は罪を忘れやすく、被害者はそのことを一生忘れない、そうです。それゆえ、加害者は何度も同じことを繰り返す傾向にあるようです。被害者は、絶えず防衛本能が強く働き、行動を抑制するのかもしれません。
ハラスメントを受けた人が出来事を一生忘れないということは、いつも嫌な思い出と背中合わせに生きているようです。言い方を変えると、過去の出来事とともに現在を生きている、イメージです。
忌まわしい出来事の対処法として、本書でも紹介のあった禅があります。北条早雲氏の言葉に「・・・あるをばあるとし、なきをばなきとす、・・・」があります。今この場において、あるものをよく意識し、ないものを見たり想像しない、ということ。
座禅は壁に向かってひたすらに座っています。しかし、目は開けて壁を見ていますし、きちんと目が覚めています。座禅のやっていることは、今この場を正しく認識することです。過去の出来事は、今この場にはありません。今この場に過去の出来事がないので、自身の防衛態勢をとる必要はありません。過去の嫌な出来事や感情は現実に今この場にないし、思い起こす必要もありません。
言い換えると、私たちが感じたり思うことと、今この場にある現実とをはっきりと区別することです。今この場にあるものをしっかりと認識すること。それ以外は何もないのです。
しかしながら、このような訓練をしても、完全にこの感情がなくなることはありません。それは、既に起こったことを消すことができないからです。受け入れざるをえません。
人が行動するとき、無意識であれ意図的であれ、自身の意思で言動を行っています。寝たいときは、寝ると思っているからベッドに行きます。意思が心身に指示を出して行動しています。私たちは、自分に命令することで行動をコントロールできるということです。最近は、嫌なことを思い出し始めたら、ダメダメ思い出してはダメ、今は関係ないと言って自分に命令してコントロールを試みています。
この方法は、私の知人に教えてもらった方法です。嫌な感情やあらぬ行動をしそうになった時、その瞬間に自分に命令ができるので効果があります。これを何度も繰り返すうちに、嫌な感情を起こしにくくなるそうです。
この方法は、時、場所を選びません。必要に応じていつでも使える手段です。意識的に思い起こさせないようにしていくのです。
嫌な感情を起こすとパニックのようになり、自己制御ができない場合があります。そういう時は、じっと耐えるしかありません。しかし、感情が湧いて出た時でも、自分を制御できるときがあります。その時に少しずつ、実行すればよいと思っています。一生やり続けるかもしれませんが、何回も実行し実践するしかないと感じています。
今置かれた環境で、①今見えるものしか存在しないこと、②言葉で表現しても今見ているものしかないこと、③今やっていることや状態、を強く明確に確認します。嫌な感情が出てきたら、今ここにはない、ダメダメ、思い出すな、と自身に命令します。今やっていることに強く意識を持っていきます。
本書の215ページに「認知、感情、行動」の関連図があります。経験上、認知、感情を変えることは困難です。性格を変えられないのと同じだと思います。行動をルーティン化することで、長く無理なく嫌な感情に対処できるはずです。
長々と書いてきましたが、私が克服したかというとそうではありません。いまだに、新しい方法を探したり、過去に試したものを再度使ったりしています。
過去の出来事を消せない以上、嫌な感情は出てきます。人生の質を高めるには、それと上手に付き合っていくしかありません。
本書で愛着や安全基地の話がありました。家庭や職場が安全基地であれば、人生は充実していると思います。その逆の場合、どこにもそれがない場合です。私は、神仏や天(てん)がその代わりをしてくれると感じています。
神仏や天が存在するかどうかは別として、何かに守られていると感じた時ほどの安堵感はありません。人は、自分を守ってくれる何かを求めるようにできているようです。年を取るにつれ、これらを信じる人が増えるように感じます。おそらく、頼れる人や、守ってくれる何かが、少なくなっていくからでしょう。
そういう意味では、根源的な性質において、神仏や天が人に存在するのかもしれません。
「天は自ら助くる者を助く」のとおり、意志を持ち実行しなければ、助かる見込みはありません。意志を持ち実行すれば、守ってくれる何モノかが現れるということでしょうか。それは、神仏や天かもしれないし、別のモノかもしれません。
さて、困難に出会ったとき、メンタルヘルスを健康に保つ書籍として『道は開ける〔原題:How to worrying and start living』デール・カーネギー氏著があります。弊サイトでも取り上げましたが、心の持ち方などを具体的に書いてあります。
少し古い本ですが、世界三大宗教よりは新しいものです。しかし、人間の本質が変わっていない以上、古い新しいは関係ありません。心を平安に導いてくれるかどうか、です。
本書は、現象だけでなく、原因、改善方法を示していました。わかりやすく説得力がありました。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 15日10時間13分
- 読み始め
- 2020(令和2)年12月2日(水)午前11時37分~
- 読み終わり
- 2020(令和2)年12月12日(土)~午前12時44分
- 一通り読んだ時間
- 10日1時間7分
- 編集終了
- 2020(令和2)年12月17日(木)~21時50分
- 読んだ範囲
- 本書、カバー。ただし、主な参考文献、著者略歴、奥付は軽く目を通し、巻末の書籍広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『失われた時を求めて』 プルースト氏著
- 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』 岡田尊司氏著
- 『回避性愛着障害、絆が稀薄な人たち』 岡田尊司氏著
- 『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』 岡田尊司氏著
※ これ以外にも書籍の紹介がありました。
調べたこと
- 1 過敏(かびん)
- 2 HSP(Hightly Sensitive Person)
- 本書には「敏感すぎる人」とありました。
- 3 適職(てきしょく)
- 4 蔑む(さげすむ)
- 5 黙殺(もくさつ)
- 6 精緻(せいち)
- 7 予後(よご)
- 8 集合的無意識
- 本書では「個人や民族を超えて人類が共有する普遍的イメージや構造」。
- 9 共時性
- 本書では「因果性の原理を超えて複数の出来事が同時に起きること」。
- 10 裾野(すその)
- 11 スペクトラム(spectrum)
- 本書では「連続体」。
- 12 喫緊(きっきん)
- 13 バロメーター(barometer)
- 指標。
- 14 ファクター(factor)
- 要因。
- 15 切実(せつじつ)
- 16 閾値(いきち)
- 本書では「反応が起きる最小限の刺激量のこと」。
- 17 順化(じゅんか)
- 本書では「刺激に対する馴(な)れ」。
- 18 散漫(さんまん)
- 19 シャットアウト(shutout)
- 20 猜疑(さいぎ)
- 21 一挙両得(いっきょりょうとく)
- 22 相関関係(そうかんかんけい)
- 2つの対象の関連性の程度を、正比例、反比例として示す。相関関数は「r」で表す。相関関数「r」の範囲は、-1.0~+1.0。「0」の場合、2つの対象に関連性はない(=無相関)。
- 相関関数が「1.0」の場合、2つの対象の関連は、正比例。一つが増えると、他方も増える関係。
- 相関関数が「-1.0」の場合、2つの対象の関連は、反比例。一つが増えると、他方は減る関係。
- 無相関「0」からどのくらい離れているかで、関連性の程度を判断するそうです。
- 詳細は、ご自身でお調べください。グラフで表したものを参考にすると、イメージがしやすかったです。
- 23 貶める(おとしめる)
- 参考:貶す(けなす)。
- 24 生得的(せいとくてき)
- 参考:生得(しょうとく)。
- 25 私事(わたくしごと、しじ)
- 26 極論(きょくろん)
- 27 食わず嫌い(くわずぎらい)
- 28 羞明(しゅうめい)
- 本書では「光に対して過敏になる症状」。
- 29 両価(りょうか)
- 両価価値、両価感情、アンビバレンス(ambivalence)のこと。本書にわかりやすく解説があります。
- 30 ぼろくそ(襤褸糞)
- 31 疑心暗鬼(ぎしんあんき)
- 32 洒脱(しゃだつ)
- 33 虚仮(こけ)にする
- 34 曝露(ばくろ)
- 暴露(ばくろ)。
- 35 放念(ほうねん)
- 36 三十六計(さんじゅうろっけい)逃(に)げるに如(し)かず
- 37 機転(きてん)
- 気転(きてん)。
- 38 丁丁発止(ちょうちょうはっし)
- 打打発止(ちょうちょうはっし)。
- 39 覿面(てきめん)
- 40 必定(ひつじょう)
- 41 試金石(しきんせき)
- 42 ドロップアウト(dropout)
- 43 異口同音(いくどうおん)
- 44 絵空事(えそらごと)
- 45 闊達(かったつ)
- 豁達(かったつ)。
- 46 視座(しざ)
- 47 無間地獄(むけんじごく)
- 48 怪訝(けげん)
- 49 呪詛(じゅそ)
- 50 熱り立つ(いきりたつ)
- 51 反語(はんご)
- 52 反目(はんもく)
以下余白