『「いき」の構造』
他二篇
- 著者など
- 著作者 : 九鬼 周造(くき しゅうぞう)氏著
- 出版社など
- 株式会社 岩波書店 さん
- 版刷など
- 1979年9月17日第1刷。読んだものは、2016年3月第59刷。
- ボリューム
- 233ページ。『「いき」の構造』は110ページまで。他二篇は216ページまで。残りは解説です。
感じたこと
30年くらい前のこと。言葉に関するパネルデスカッションをテレビで見ていました。テーマは、言葉とは何か?といったようなものです。パネリストは、工学系の学者2人、脚本家1人でした。
工学系の学者2人は、言葉とは記号であり、曖昧(あいまい)さがあってはならない。誰が聞いても同じ意味でとらえられるものでなければならない、との主張でした。ディスカッションは学者2人の主導で進められ、脚本家は発言する機会がほとんどありませんでした。
言葉を数理的にとらえる学者に対して、脚本家は言葉が心に響く豊かさを持っている面があることを披露しました。すると、学者2人は、猛烈にその言葉の持つ幅を無くすべきだとの主張をしました。
脚本家は同じ言葉でも表現の仕方で感じ方が変わることを伝えたかったのだと思います。もし、言葉がピンポイントで正確なものであるなら、心の変化に一つ一つ対応する言葉が必要になります。現実はそうではないし、そのように言葉をつくったとしても表現しきれないような気がします。
当時まだ若かった私は、学者2人が脚本家をいじめているように感じました。
確かに、言葉が正確に相手に伝われば、円滑なコミュニケーションが図れます。文系理系にかかわらず、学者にとって、正確な言葉は、議論を深めていくためには不可欠だと思います。
しかし、一方で、言葉が、人間の感情を波立たせることも事実です。そして、人によりその感受性は変わると思います。
言葉は、記号として理性的に使われる場合もありますが、人間の感情を変化させる役割もあります。言葉は一義的なものではなく、多様性を持ったものです。言葉の意味だけでなく、韻や強弱、抑揚などによっても受け取り方は変わる気がします。
人類が言葉を使うようになったのは、狩で力を合わせるために生まれたのでしょうか。打ち合わせをするための役割だけではないような気がします。仲間に目を向ければ、親子の愛情を伝え、結束を強くし、信頼関係を築く役割が言葉にはあると思います。
人間は感情を持っています。感情には様々なものがあります。それを表現するのは言葉です。さまざまな感情を体感していないと、言葉から共感を得られないように感じます。
著者は、豊かな感情から言葉の意味を探り、理論的な言葉の位置づけを試みていると思いました。言い換えると、言葉の境界線を確定しようとしていますが、あわせて言葉の持つ豊かさを披露している、とも感じました。
本書99ページには、「意味体験と概念的認識との間に不可通約的な不尽性の存することを明らかに意識しつつ、しかもなお論理的言表の現勢化を「課題」として「無窮」に追跡するところに、まさに学の意義は存するのである。」とありました。
この書物を選んだ理由
「いき」とは? どうやってそれを表現するのか疑問に思っていました。「いき」は「いき」で、それ以外に何があるのかという気持ちがありました。考えてもわからないので読むことにしました。
私の読み方
難しいことが書かれており、何のことかさっぱりわかりませんでした。本書の解説を読んで、こういったことを伝えたかったのかな、といった感じでした。
初めから解説にあるような説明で、どうして著述してくれなかったのだろうか、という疑問が出てきます。おそらく、解説のような著述にすると、本来伝えたかったことがぼやけてしまうからかもしれません。思考の整ったものは、無駄な著述がないと聞いたことがあります。
これを書いている今も、残念ながら本書を理解できたとは思えません。
本書を読んで思い出したのが、『日本語練習帳』大野晋氏著です。
言葉はそれ自体に意味があります。文の中で使われることで、意味の感じ方が変化します。正確な表現や、感情をかき立てるようにするには、文中の言葉の使われ方によるような気がします。
言葉だけをとらえて意味を考えるのは、一義的なのかもしれません。各人の体験を思い出す言葉に共感することもあります。言葉の感じ方は経験によっても変わるようです。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 13日16時間48分
- 読み始め
- 2020(令和2)年11月7日(土)12時21分~
- 読み終わり
- 2020(令和2)年11月16日(月)~14時19分
- 一通り読んだ時間
- 9日1時間58分
- 編集終了
- 2020(令和2)年11月21日(土)~午前5時09分
- 読んだ範囲
- 本文と解説です。
取り上げられた書物など
- 雑誌『思想』
- 『元禄文学辞典』
- 辞書『言海』
- 『ことばについての対話』 ハイデッガー氏著
- 『ポリテイア』 プラトン氏著
※ これ以外に多くの書籍などの紹介がありました。
調べたこと
- 1 いき(粋)
- 2 粋(すい)
- 3 畢竟(ひっきょう)
- 4 味得(みとく)
- 5 言表(げんぴょう)
- 6 外延(がいえん)
- 対義語は「内包(ないほう)」。
- 7 内包(ないほう)
- 8 闡明(せんめい)
- 9 対当(たいとう)
- 10 性情(せいじょう)
- 参考:性状(せいじょう)。
- 11 索める(もとめる)
- 「求める」と同義でしょうか。
- 12 ミニョン(mignon)
- 小説の主人公でしょうか。
- 13 思郷(しきょう)
- 14 措定(そてい)
- 15 繊巧(せんこう)
- 16 媚態(びたい)
- 17 徴表(ちょうひょう)
- 18 唯名論(ゆいめいろん)
- 19 向観
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 20 顚倒(てんとう)
- 21 会得(えとく)
- 22 明晰(めいせき)
- 23 意気(いき)
- 24 意気地(いきじ)
- 25 要諦(ようたい、ようてい)
- 26 すれずれに
- 「擦れ擦れ」のことでしょうか。
- 27 悪性者(あくしょうもの)
- 28 無窮(むきゅう)
- 29 瀟洒(しょうしゃ)
- 30 厭世的(えんせいてき)
- 31 苦界(くがい)
- 32 世知辛い(せちがらい)
- 33 恬淡(てんたん)
- 34 無碍(むげ)
- 35 爛熟(らんじゅく)
- 36 頽廃(たいはい)
- 37 洒脱(しゃだつ)
- 38 燦爛(さんらん)
- 39 鹵簿(ろぼ)
- 40 倹素(けんそ)
- 41 衒い(てらい)
- 42 検校(けんこう、けんぎょう)
- 43 通人(つうじん)
- 44 酔客(すいきゃく、すいかく)
- 45 野人(やじん)
- 46 田夫(でんぷ)
- 47 しぶうるか
- インターネットで調べました。
- 48 人性(じんせい)
- 49 擬古(ぎこ)
- 50 蒼古(そうこ)
- 51 古拙(こせつ)
- 52 截然(せつぜん)
- 53 破却(はきゃく)
- 54 放縦(ほうじゅう)
- 55 流眄(りゅうべん)
- 56 与件(よけん)
- 57 仙女香(せんじょこう)
- 58 媚茶(こびちゃ)
- 59 御納戸(おなんど)
- 60 燻べ(ふすべ)
- 61 区劃(くかく)
- 区画(くかく)。
- 62 急突に
- 単語ではなく「急、突に」ということでしょうか。
- 63 悟得(ごとく)
- 64 味解(みかい)
- 65 特彩
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 66 実有(じつう)
- 67 取り交わす(とりかわす)
- 68 喟然(きぜん)
- 69 夏炉冬扇(かろとうせん)
- 70 高邁(こうまい)
- 71 不羈(ふき)
- 72 おもねる(阿る)
- 73 自在人
- 「自在人」とは仏様のことのようです。が、本書では、何物にも縛られない思いのままにできる人、のようです。
- インターネットで調べました。
- 74 耽美(たんび)
- 75 不易流行(ふえきりゅうこう)
- 76 頽落(たいらく)
- インターネットで調べました。意味の取り方によっては、分の解釈が反対になる気がします。
- 77 色道(しきどう)
- 78 翫賞(がんしょう)
- 79 滋味(じみ)
- 80 磊落(らいらく)
- 81 孤在的
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 82 視圏
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 83 漸消
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 84 以心伝心(いしんでんしん)
- 85 さかしら(賢しら)
- 86 言挙げ(ことあげ)
- 87 嚮導(きょうどう)
- 88 閑寂(かんじゃく)
- 89 対蹠(たいしょ、たいせき)
- 90 飛行(ひぎょう)
- 91 叙景(じょけい)
- 92 方便(たずき)
- 本書では「生活(たづき)」。
- 93 アナムネーシス(anamnesis)
- 本書では「想起(アナムネシス)」。
- 94 倶非
- 本書では「・・・倶(とも)に非(あら)ざるこの倶非の・・・」とありました。
- 95 コンテクスト(context)
- 96 渺(びょう)
- インターネットで調べました。
- 97 不可通約(ふかつうやく)
- 通約不可能性(つうやくふかのうせい、incommensurability)のことでしょうか。
- インターネットでも調べました。
以下余白