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読んでやる! 読んだもの
№159 『言語学講義』

 本書の「語用論の使い方」は、現実の社会で起こる出来事や心理学のことを取り上げていました。コミュニケーションの技術をアップさせるヒントになる気がしました。

『言語学講義』

副題など
 副題は「-その起源と未来」。
 帯には「ことばの『現在(いま)』がこの一冊でわかる!学びなおしの決定版。」「新しい言語学の見取り図」とありました。
著者など
加藤 重広(かとう しげひろ)氏著
出版社など
株式会社 筑摩書房 さん
版刷など
 2019年3月第1刷。
ボリューム
 296ページ。ただし、292~296ページは「おわりに」。巻末6ページは参考文献です。

感じたこと

 ブッダ氏の言葉に「集諦(じったい)」があります。「苦の原因は、欲望である。変化していくものに執着するところに苦がある。」(学習参考書:『シグマ・ベスト 解明 倫理・社会』より)。を思い出しました。

 言葉の変化は新聞でもよく取り上げられています。また、中国の思想の中にも、言葉の乱れを嘆くものがありました。これは紀元前後の話であり、昔も今も言葉は変化し続けています。
 言葉の変遷がいいのか悪いのかで論じられることがあります。言葉が変遷するのが自然なら、抵抗しても、その流れを止められない気がします。

 言葉には、流行語があります。全世代に受け入れられれば、大流行となります。
 世代間、年齢、環境、経験などによって、流行する言葉は変わるようです。同じような年齢、経験、環境にあれば、同じような感受性や価値観を持つようです。
 小中学校など、同じ環境で学ぶとそのようになるのかもしれません。校外でも、社会環境、メディアなど、似たり寄ったりでしょうから。

 言葉は、自分以外の人と意思疎通をするに便利です。しかし、言葉だけで、発言者が思っていることとまったく同じに、聞き手が受け取ってくれるのは難しいように思います。何回もやり取りし、ある程度話し手の人柄がわかってから、言っている意味がわかるようになる気がします。
 このように考えると、発言者の言い誤り、言葉の間違いを指摘する行為は、コミュニケーションに支障を生じさます。聞き手の発言内容を理解しようする気持ちが見えないからです。発言者は、伝える気力をなくしてしまいます。遊びや練習試合の戦績はよくても、本試合は散々な結果というようなコミュニケーションになります。本筋を間違ってしまいます。
 話し手や聞き手に十分な言葉の能力があるとは限りません。また、間違いは誰にもあります。そのために、内容が十分に伝わらないのは残念なことです。
 内容の核心に影響がある場合は、ストレートに聞かざるを得ないこともあります。しかし、間違った言葉などの枝葉の部分を避けて、十分に内容を知ることはできます。発言が一通り終わった後で、内容を聞き手の言葉で確認することです。
 話し手と聞き手が、やる気と本流を保つのは難しいことです。言葉だけでなく、同じ目的に集中できる、双方向のコミュニケーションの技術が必要な気がします。

 言葉の変化に不快感、誤りの指摘、言い分を伝えたい聞きたいなど、何らかの動機があり欲望があります。自然な変遷や、完全なコミュニケーションができるか、を考えると、強引で、わがままな行動をしているようにも感じます。
 本当のことを知るのは、難しいことですね。

この書物を選んだ理由

 以前から、言語学がどのようなものなのか興味がありました。新聞の書籍紹介に本書が取り上げられていました。

私の読み方

 言語学は私にとってはじめの分野です。巻頭部分は世間話のような感じですが、中程から巻末にかけては、読んでいるのか字面を追っているのかわからなくなりました。
 今までに専門分野を勉強したことがあります。ここで必ず経験することがあります。それは、字面を追っていけますが、内容が理解できないのです。漠然と、あっ、そうですか、といった感じです。
 それぞれの専門分野には、独特の言い回しや考え方の傾向を感じます。それに慣れるのに時間がかかります。
 私の場合、勉強を始めてから、3ヵ月ほど経ってから、そうだったのか、に変わります。

 しかし、どのように本を読むのかをテーマにした弊サイトとしては、新分野であっても何とか内容を読めるようになりたいと考えてしまいます。
 その方策として、専門用語の意味をキチンと知ることがあります。
 私の場合、日常の言葉と、専門用語を区別せずに読み始め、専門領域に入ってから躓(つまず)きます。
 帯に「学びなおしの決定版」とあるように、言語学についてある程度の知識を持った人を本書は対象にしているようです。
 読み方としては、専門用語と日常使う言葉を区別できるかが、ポイントになる気がします。区別ができないようなら、新分野は入門書から読み始めるほうがいいように思います。
 私には少し難しかったので、入門書の選定をすべきだったと反省しています。

 日常で使う言葉でわからない場合、国語辞典を引きます。国語辞典は、世間で使われている言葉がどのような意味なのかを示しています。しかしながら、世間の言葉は変遷しますし、編集が全体の理解を統合しているとは考えにくいものがあります。地域によって、ある人々にとっては、ニュアンスが国語辞典とは違うこともあるはずです。言葉の意味の幅や奥行き深さがかなり大きいと感じます。
 ところが、専門分野では、たいてい、その分野の専門用語の辞典があります。出版社により表現は違いますが、内容に大きな差はなく、誤解しにくい記述になっているようです。言葉の意味に遊びが少ないのです。学会で研究発表や討論する際に、参加者が好き勝手に用語を理解していたら、とんでもない結論になったり、収拾がつかなくなります。専門用語は、誰もが共通した認識のモノである必要があります。
 困るのは、日常でつかう言葉と専門用語の混在です。専門分野であっても、発言内容は、専門用語を日常で使う言葉で繋いで作っています。それを避けるためか、独特の言い回しをしているようです。しかし、門外漢からすると、日常で使う言葉と専門用語の区別、独特の言い回しに慣れるという、二重の苦しみがあります。

 形式です。新書形式です。文字の大きさ、行長、行間、余白は適当で、文字は見やすかったと思います。
 ページ順に読みました。前後すればよいと思うことはなく、ページ順に読めばいいと思いました。

 本書の「2語用論の使い方」(本書97~113ページ)は、印象に残りました。人がどのように言葉を使い理解しようとしているかが書かれています。心理学の本でも読んでいるのかと思うほどです。
 言葉の使い方、人間関係の築き方、身の処し方にも通じる内容に感じました。

読書所要時間など

総所要時間(読み始めから編集終了まで)
32日3時間25分
読み始め
2019(令和元)年8月22日(木)午前10時57分~
読み終わり
2018(平成30)年9月18日(水)~19時12分
一通り読んだ時間
27日8時間15分
編集終了
2018(平成30)年9月23日(月)~14時22分
読んだ範囲
 本書、カバー、帯。ただし、参考文献、奥付は軽く目を通し、書籍広告は見ていません。

取り上げられた書物など

  • 『日本語が亡びるとき』 水村美苗氏著
  • 『武器としてのことば』鈴木孝夫氏著
  • 『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ氏著
  • 『神曲』ダンテ氏著
  • 『アイヌ神謡集』知里幸恵氏著

 ※本書には60を超える書籍などのタイトルがありました。

ひととき

 日が暮れるのが早くなりました。まだ明るいと思ったら、巨大な雲に夕焼けが光っていました。

 夕焼け

 令和元年9月8日(日)に撮影しました。

調べたこと

1 言語学(げんごがく)
2 講義(こうぎ)
3 真顔(まがお)
4 もどかしい
5 耳目(じもく)
6 牧歌的(ぼっかてき)
7 錯誤(さくご)
8 プロパー(proper)
9 ネットスラング(Internet slang)
 インターネットで調べました。
10 ザイオン効果
 本書では「接触効果」。ザイアンス(Zajonc,Robert Boleslaw)氏が、「単純接触仮説」を提唱。
11 夾雑物(きょうざつぶつ)
12 バリエーション(variation)
13 母方言
 調べましたが、わかりませんでした。
14 心理的機制(しんりてききせい)
 インターネットで調べました。
15 混淆(こんこう)
 混交(こんこう)。
16 平準(へいじゅん)
17 呼称(こしょう)
18 島嶼(とうしょ)
19 出来(しゅつらい、しゅったい)
20 リバイバル(revival)
21 ローカリズム(localism)
 インターネットで調べました。
22 母語(ぼご)
23 ディアスポラ(Diaspora)
 本書では「世界離散」「離散共同体」。
24 故地(こち)
25 シオニズム(Zionism)
26 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
27 リバイブ(revive)
28 倚辞(いじ)
 調べましたが、わかりませんでした。
29 アクティブ・ラーニング(Active learning)
30 形態素(けいたいそ)
31 方略(ほうりゃく)
32 商量(しょうりょう)
33 好悪(こうお)
34 夙に(つとに)
35 番船(ばんせん、ばんぶね)
36 舷側(げんそく)
37 クリオール(creole)
 クレオール。本書87ページに解説があります。
38 パラダイム(paradigm)
 活用表。
39 曲用(きょくよう)
 参考:屈折(くっせつ)。
40 印欧語族(いんおうごぞく)
 インド・ヨーロッパ語族。
41 声調(せいちょう)
42 声調言語(せいちょうげんご)
 インターネットで調べました。
43 ピジン(Pidgin language)
 接触言語。本書87ページには「拡張ピジン」もありました。参考:クリオール(creole)との関係。本書87ページ。
44 雅語(がご)
 雅言(がげん)。
45 蓋然性(がいぜんせい)
46 女真(じょしん)
 本書では「女真族」。インターネットでも調べました。
47 版図(はんと)
48 能吏(のうり)
49 大学士
 本書では「学問所に勤務した役人」。インターネットなどで調べました。
50 語用論(ごようろん)
51 明晰(めいせき)
52 手強い(てごわい)
53 マウンティング(mounting)
 インターネットでも調べました。
54 モダリティー(modality)
 モダリティ。
55 漢籍(かんせき)
56 プロトタイプ(prototype)
 言語用語。
57 あちき
 インターネットで調べました。
58 ユニセックス(unisex)
 本書では「ユニセクス」。
59 深窓(しんそう)
60 デフォルメ(deform)
61 コーパス(corpus)
62 アノテーション(annotation)
 本書では「注記」。
63 祖語(そご)
64 呂律(ろれつ)
65 軋轢(あつれき)
66 落とし所(おとしどころ)
67 方便(たずき)
 参考:方便(ほうべん)。
68 高踏的(こうとうてき)
69 縦しんば(よしんば)
70 広汎(こうはん)
 広範(こうはん)。
71 思潮(しちょう)
72 習い性(ならいしょう)
73 炯眼(けいがん)
 参考:慧眼(けいがん)。
74 思弁(しべん)
75 末裔(まつえい)
76 後裔(こうえい)
77 造詣(ぞうけい)
78 黎明期(れいめいき)
79 謬見(びゅうけん)
80 清廉潔白(せいれんけっぱく)
81 推意(implicature)
 参考:表意(explicature)。インターネットで調べました。
82 括る(くくる)
83 学際(がくさい)
 本書に解説があります。
84 校訂(こうてい)
85 古態(こたい)
 故態(こたい)。インターネットでも調べました。
86 指弾(しだん)
87 従兄弟(いとこ)
88 とんでも説
 インターネットで調べました。
89 牽強付会(けんきょうふかい)
 牽強附会。
90 誤謬(ごびゅう)
91 措定(そてい)
92 意に染まない(いにそまない)
93 逆鱗(げきりん)
94 喧伝(けんでん)
95 災禍(さいか)
96 錦の御旗(にしきのみはた)
97 標榜(ひょうぼう)
98 強迫観念(きょうはくかんねん)
99 直観(ちょっかん)
100 表し分ける
 わかりませんでした。
101 ロゴス(logos)
102 伍する(ごする)
103 完膚無きまで(かんぷなきまで)
104 ジャーゴン(jargon)
 業界用語など。
105 古色蒼然(こしょくそうぜん)
106 直弟子(じきでし)
107 ナイーブ(naive)
108 振幅(しんぷく)
109 音素(おんそ)
110 パラグラフ(paragraph)
111 正書法(せいしょほう)
112 侘しい(わびしい)
113 哀れむ(あわれむ)
114 身過ぎ(みすぎ)
115 世過ぎ(よすぎ)
116 紫煙(しえん)
117 燻らす(くゆらす)
118 論う(あげつらう)
119 先達(せんだつ、せんだち)
120 連関(れんかん)
121 端無くも(はしなくも)
122 ・・・葉(・・・よう)
 時代。
123 御大(おんたい)
124 共時的(きょうじてき)
 インターネットで調べました。
125 布石(ふせき)
126 頭字語(とうじご)
127 ポジション・ペーパー(position paper)
 インターネットで調べました。
128 旗幟(きし)
129 転位(てんい)
130 音韻(おんいん)
131 音韻転位(メタテシス)
 本書284ページに解説があります。
132 出開帳(でがいちょう)
133 居職(いじょく)
134 ア・プリオリ(a priori)
135 イワシ・トルネード
 インターネットで画像を確認しました。
136 ベイトボール(bait ball)
 インターネットで画像を確認しました。
137 寓喩(ぐうゆ)
 インターネットで調べました。
138 極論(きょくろん)
139 アバンギャルド(avant-garde)
140 ヴァルネラブル(vulnerable)
 本書では「傷つきやすい」。
141 紐帯(ちゅうたい、じゅうたい)
142 大風呂敷(おおぶろしき)

以下余白

更新記録など

2019年9月24日(火) : アップロード