『風姿花伝(ふうしかでん)・三道(さんどう) 現代語訳付き』
- 副題など
- カバーには、「・・・能楽論は、衰えることのない不変の花による、役者としての舞台の成功を求めるための理論といえる。・・・」とありました。
- 著者など
- 著作者 : 世阿弥(ぜあみ)氏著
- 訳注者 : 竹本 幹夫(たけもと みきお)氏訳注
- 出版社など
- 株式会社KADOKAWA さん
- 角川ソフィア文庫
- 版刷など
- 平成21年9月初版。読んだものは、平成29年7月15版。
- ボリューム
- 447ページ。本文は366ページまで。367ページ以降は、校訂付記、解説、世阿弥時代の能一覧、参考文献、家系図などです。
感じたこと
秘密を扱うことでは、マジック、手品でしょうか。
子供の時からテレビ番組でマジックはよくやっていました。幼稚園の催し物でも、マジックを見たことがあります。
幼稚園の頃は、不思議だとも思わず、ただ起きることを見ていただけのように思います。小学生低学年の頃は、ただ不思議でした。どうしてハトが出てくるのか、今までなかった物がどうして出てくるのか。面白いというより、呆気(あっけ)にとられた感じでした。
大きくなるにつれ、中にはマジックをする同級生も出てきました。話を聞くと、マジックにはタネと仕掛けがあることを知りました。
衝撃を受けたのは、タネ明かしをするマジシャンです。
観客の一人を舞台にあげて、マジックを披露します。最初は普通どおりにマジックをします。次に、舞台の観客にマジックをしてもらって、できないところを見せます。タネを明かして観客ができたところで、そのマジックは終わります。
あるときは、ネタが見える状態でマジックをしていることもありました。観客の小学生が、見えていると大声で叫ぶのです。会場はどっと笑いに包まれます。マジシャンは、今のはなかったことにして、と口上を言って、そのネタを手短に終わらせます。
舞台の最後は、マジシャンらしく、粛々とリズミカルにマジックを演じていきます。それが終わると拍手喝采です。子供がそのタネ明かしをせがみます。マジシャンは、飯が食えなくなるからダメと言います。再び、会場は笑いに包まれます。
最近では、お客の目の前でマジックをするものがあります。至近距離なので、タネや仕掛けがわかりそうなものですが。でも、わからないのです。
コインに穴を開けたり、トランプを自在に操ったりしますが、どうやっているのかは全然わかりません。本当にスマートなマジックだと感じます。
命がけのマジックもあります。固唾(かたず)を呑みながら、テレビに釘付けです。脱出に成功すると、ああよかったと安心したのを覚えています。
いずれにしても、観客を喜ばせないとお客さんはやってきません。
お客の感じ方に落差を生じさせたり、誰もが想像できないようなマジックをしたりと、観客を魅了するキモはマジシャンによって違うようです。
真剣に見つめたり、心の底から驚いたりして、マジックを思いっきり楽しみたいのですが。タネと仕掛けを意識すると、感動は冷めてしまいます。
この書物を選んだ理由
中学生のとき、買った本に栞(しおり)がついていました。そこには、能面の写真に一文が添えられていました。「稽古は強かれ、情識はなかれとなり 風姿花伝」とありました。当時、どういう意味なのだろうかだけで終わっていました。調べもせずに。
ところが、自動販売機でコカコーラさんの「紅茶花伝」を見るたびに、風姿花伝を思い出していました。次第に、読まなくちゃに変わって行きました。
私の読み方
辞書で調べると、風姿花伝の言葉と書いてあるものがあり、この書物が世間に与えた影響は大きかったようです。
当時は、文字を読める人は限られていたでしょうし、この書物を手にできる人もわずかだったことでしょう。
書物を読んだ人が、何気に話したことが、口伝えに広まったのかもしれません。貴族や庶民など様々な人が、能や猿楽などの演芸を同じ場所で楽しんでいたのでしょうから。
以上は私の勝手な想像です。史実はキチンとありそうです。
形式です。
文庫本です。文字が小さいわりに、本文は苦になりませんでした。脚注の文字はさすがに小さく、読みづらかったです。
脚注の多さに閉口しました。ルビなのか脚注の番号なのか、迷うこともありました。読んでいる所とは違う脚注を見ることもありました。いくら視界を広く取って注意したとしても、小さい字で多くの脚注を瞬時に正確に探し見るのは抵抗がありました。マーカーで色分けしながら読むなど工夫が必要だと思いました。
「校訂付記」というものを初めて見ました。古い書物だけに、何が正しいか、欠けているものは何か、などを知るのは大切なようです。
巻末の解説は、かなりのボリュームがありました。やはり、本書を読むうえでは、当時の文化や考え方を知っていた方がよいと思いました。
原文を読んでも何のことかわかりませんでした。脚注を見ているのですが。原文と脚注の行き来の多さに、要点をつかむのがお留守になりました。
翻訳も然りで、何となくわかりそうですが、理解できません。解説で、やっと、こういうことが言いたかったのかも、と思えるようになりました。
通読するのに、かなりの忍耐が必要でした。
本書はかなり詳しく書かれており、専門家向けなのかもしれません。
労力と時間、そして、効果を考えると、原文を読むのは、私には少し無理がありました。最初から翻訳を読み、興味や疑問点について、原文や脚注を参照すればよかったと思っています。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 57日8時間44分
- 読み始め
- 2019(令和元)年6月25日(火)午前8時13分~
- 読み終わり
- 2019(令和元)年8月18日(日)~15時40分
- 一通り読んだ時間
- 54日7時間27分
- 編集終了
- 2019(令和元)年8月21日(水)~16時57分
- 読んだ範囲
- 本書、カバー。ただし、校訂付記は見ていません。奥付は軽く目を通しました。カバーの書籍の紹介は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『論語』
- 『徒然草』
- 『源氏物語』 氏著
※本文中に多くの書籍の名前が出てきました。また、巻末に多数の参考文献の記載がありました。
ひととき
蒸し暑い日だったので、水路のある公園に行きました。途中で夕立にあい、建物の軒先で雨宿りをしました。
水路の端は池のようになっていて、スイレンが多くの蕾(つぼみ)をつけていました。写真は咲きかけのスイレンです。
水路の近くは植樹してあり、ザクロが実をつけていました。
令和元年8月23日(金)に撮影しました。
調べたこと
- 1 校本(こうほん)
- 2 校合(きょうごう、こうごう)
- 3 情識(じょうしき)
- 本書では「狭量な諍(いさか)い心」。参考:常識(常識)。
- 4 禅林(ぜんりん)
- 5 神代(かみよ)
- 6 賞翫(しょうがん)
- 賞玩(しょうがん)。
- 7 典雅(てんが)
- 8 花鳥風月(かちょうふうげつ)
- 9 跋文(ばつぶん)
- 10 シテ
- 為手(して)。仕手(して)。
- 11 独善(どくぜん)
- 12 開陳(かいちん)
- 13 嘆かわしい(なげかわしい)
- 14 雌伏(しふく)
- 15 斯道(しどう)
- 16 将来(しょうらい)
- 「持ってくる」という意味もあります。
- 17 悟得(ごとく)
- 18 追善(ついぜん)
- 19 上つ方(かみつかた)
- 20 忽せ(ゆるがせ)
- 21 愛別離苦(あいべつりく)
- 22 妙齢(みょうれい)
- 23 見顕す(みあらわす)
- 24 直面(ひためん)
- 本書59ページに解説があります。
- 25 風体(ふうてい、ふうたい)
- 26 特立(とくりつ)
- 27 獄卒(ごくそつ)
- 28 序破急(じょはきゅう)
- 本書100ページに解説があります。
- 29 風情(ふぜい)
- 本書103ページに解説があります。
- 30 贅言(ぜいげん)
- 31 衒学(げんがく)
- 32 首肯(しゅこう)
- 33 謙辞(けんじ)
- 34 重畳(ちょうじょう)
- 35 庭訓(ていきん)
- 36 庶幾(しょき)
- 37 比定(ひてい)
- 38 勘気(かんき)
- 39 宥免(ゆうめん)
- 40 私淑(ししゅく)
- 参考:親炙(しんしゃ)。
- 41 頑迷(がんめい)
- 42 押し並べて(おしなべて)
- 43 薫陶(くんとう)
- 44 約める(つづめる)
- 45 オブジェ(objet:フランス語)
- 46 感興(かんきょう)
- 47 通底(つうてい)
- 48 自家薬籠中の物(じかやくろうちゅうのもの)
- 49 極致(きょくち)
- 50 臈長ける(ろうたける)
- 51 レトリック(rhetoric)
- 52 陰陽師(おんようじ、おんみょうじ)
- 53 口訣(くけつ、こうけつ)
- 口決(くけつ)。
- 54 神明(しんめい)
- 55 達観(たっかん)
- 56 古本(こほん、ふるほん)
- 57 諱(いみな)
- 本書では「諱名」。
- 58 簓(ささら)
- インターネットで画像を確認しました。
- 59 羯鼓(かっこ)
- 辞書に絵がありました。
- 60 中入(なかいり)
- 61 開聞(かいもん)
- 62 開眼(かいげん)
- 63 所説(しょせつ)
- 64 散佚(さんいつ)
- 散逸(さんいつ)。
- 65 世子(せいし)
- 66 毀誉褒貶(きよほうへん)
- 67 悉す(つくす)
- 68 白眉(はくび)
- 69 勧進興行(かんじんこうぎょう)
- 70 パトロン(patron)
- 71 一頭地を抜く(いっとうちをぬく)
- 72 貴顕(きけん)
- 73 薫陶(くんとう)
- 74 管見(かんけん)
- 75 門跡(もんぜき)
- 76 所引
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 77 発憤(はっぷん)
- 発奮(はっぷん)。
- 78 声価(せいか)
- 79 心敬(しんけい)
- 人の名前。
- 80 夢告
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 81 賞賜(しょうし)
- 82 謝絶(しゃぜつ)
- 83 頽勢(たいせい)
- 退勢(たいせい)。
- 84 客死(かくし、きゃくし)
- 85 動静(どうせい)
- 86 忌諱(きい)
- 87 謦咳に接する(けいがいにせっする)
- 88 相伝(そうでん)
- 89 勘所(かんどころ)
- 90 禁忌(きんき)
- 91 摘録(てきろく)
- 92 遁世(とんせい)
- 93 看坊(かんぼう)
- 94 奇貨(きか)
- 95 還俗(げんぞく)
- 96 左袒(さたん)
- 97 凋落(ちょうらく)
- 98 扶持(ふち)
- 99 翻印(ほんいん)
- 翻刻(ほんこく)。
- 100 墨守(ぼくしゅ)
- 101 曠劫(こうごう)
以下余白