『道は開ける[新装版]』
原題は『HOW TO STOP WORRYING AND START LIVING』
- 副題など
- 帯には「悩みの正体を明らかにし、悩みを解決する原則を具体的に明示して、こころの闇に光を与える不朽の名著。」とありました。
- 著者など
- 著者 : デール・カーネギー(Dale Carnegie)氏著
- 訳者 : 香山 晶(かやま あきら)氏訳
- 出版社など
- 株式会社 創元社 さん
- 版刷など
- 1999年10月第1版第1刷。読んだものは、2014年8月第1版第68刷。
- ※ 新装版の初版は1999年です。本書「まえがき」に1978年10月とあることから、日本語版はこれ以降に出版されたようです。
- ボリューム
- 442ページ
感じたこと
私が小学生のとき、ハッキリとは覚えていませんが、2~4年生くらいのときだったと思います。
ある朝のこと。いつものように、通学していました。小学校近くのアパートの前に近づいたとき、ただならぬ雰囲気がありました。遠くからは、その異変が何なのか、わかりませんでした。見えたのは、道路の端に立つ一人の女性でした。
その女性は、髪の毛は失敗したパーマのようにボサボサ、顔はすすけたように薄黒く、端切れで作ったような綿入りの袢纏(はんてん)は薄汚れてところどころ破れていました。寒い時期なのに、裸足(はだし)で、草履も使っていなかったように思います。ちょうど、テレビのコメディ番組で、爆発した後のメイクにそっくりでした。
女性の様子は、遠くを見ているようですが、焦点が定まっていないようで、目が泳いでいました。女性の視線は建物に向けられていましたが、その表情は普通ではありませんでした。そもそも通学路は住宅街の中で、車が1台通れるほどの道幅しかないからです。ただ、黙って何かを見ているようでした。今から思うと、女性は、目をあけたままで、心にある情景を見ていたのかもしれません。
教室に入るとこの話題で持ちきりでした。あの女の人は何だろうか、です。襲われるのではないかとか、何をしている人なのだろうかとか、いろいろな憶測が飛び交っていました。
数日経った頃、それらしき情報が友達から入ってきました。どうも、女性は男の人に騙(だま)されて正気を失った、というのです。
当時、この言葉から私が想像したのは、プロポーズがあり献身的に尽くしたのに裏切られた、です。誠実さや信頼を踏みにじられ、女性は心身ともにボロボロになったに違いありません。きっと、自分のすべての感覚が信じられなくなったのかもしれません。何を信じてよいのか、わからなくなったのでしょう。私は、この女性を非常に気の毒に思いました。そして、このように非常につらい思いをすると、人は正気を失うことを知り、恐ろしいと感じました。
1週間もしないうちに、その女性を見かけなくなりました。友達から、どこかに連れて行かれたようだ、と教えてもらいました。どこなのかはわかりませんが、女性が元気になればいいな、と思いました。
悩みは、人の健康をも害してしまいます。それに対処できる方法があるなら、身につけておきたいものです。
それにしても、私の友達は、このような情報をどこから仕入れたのだろうか。このことが、ちょっと悩ましく思えてきました。
この書物を選んだ理由
長年この本が書店にありました。以前に取り上げた神谷美恵子氏の書籍と同じで、気になっていました。
当初、タイトルから宗教分野の本だと、私は勝手に決めつけていました。あるとき、◯◯教などの表記がないことに気づきました。また、特定の宗教、思想などを支持しているようでもありませんでした。長い時間をかけて、やっと、自己啓発の分野の書籍だとわかりました。
今まで読んだ本『HARD THINGS』『何をしてもうまくいく人のシンプルな習慣』には、どのように考え、生きるのかについて、書かれてありました。その思考方法は、他の外国人著作者の本にも、似たようなものがありました。
もしかすると、何らかの書籍がその考え方を提供したのではないか、と思うようになりました。本書によれば、世界的ロングセラーで、アメリカはもちろんのこと、世界各国で読まれているとのことです。
よく出てくる考え方のルーツを探るため、本書を読むことにしました。
私の読み方
悩みについて書かれた本ですが、今まで読んだ本と感触が違います。
現実の声を基にしていること。思想・宗教などの裏付けがあること。実践すること。これらが三位一体(さんみいったい)となったものが本書と感じます。
悩みについて、知りたいことがあり、その方法があり、実践して解決する、と言い換えられる気がします。
時間をかけたエッセンスがそこにはあり、無駄がないようにも感じます。
本書の読み方です。
本書には「本書から最大の成果を得るための九カ条」があり、それにしたがって読み進めました。条項によっては、すぐに実践できないものがあります。注意して守ったのは、1章を読んだら、翌日以降に同じ章を読みました。同じところを、日を変えて2回読みました。1日1章となりますが、1回目読む章と、2回目読む章で、1日2章を読みました。
2回読むと頭に残りやすいようです。
本書には、本を読んでいる時の状態について書かれているところがありました。また、50冊程度の書籍などの紹介がありました。
著者は読書好きで、本の読み方についても熟知していたようです。本の読み方についての著作物があれば、読んでみたいと思いました。
形式です。
文字の大きさ、行間、行長、左右上下中央の余白は適当で、見やすかったです。
難しい言葉が少なかったように思います。時代の変化で、言葉がわかりづらいものはありましたが、気になりませんでした。
読んでいて、止まるところが少なかったので、わかりやすい文章になっていたと思います。
考え方を扱っているので、主語が長くなりがちだと思います。それに応じて、1文も長くなりがちです。ところが、読んでも苦痛はありませんでした。意味が通らず見返すところは少なかったと思います。むしろ、内容を味わうために、同じところを読み返していました。
読んでも苦痛が少ないのは、読み方になれてきたせいかもしれません。
「2 この書物を選んだ理由」で書いた、外国の著作者はこの本を基にして苦難を乗り越えてきたか、の疑問です。
具体的な確証はありませんでした。ただ、物事を解決する方法は、いくつかは酷似していました。
著作者の何人かは本書を読んでいるかもしれません。
また、古い本なので、読んだことのある人が、知らず知らずのうちに、他人に言った可能性もあります。それを聞いた人が、実行してきたとも考えられます。
それよりは、本書が生の声を基にして作られたとすると、それは元々言い伝えられてきたこととも言えます。
私が子供とき、母から同じようなことを言われたことがあります。母は、この本を読んだことはありません。自分の経験や考えで言っていたようです。
誰もが経験し思いつくようなことも、本書は記述していると言えそうです。
ですから、外国の著作者がこの本を読んだかどうかは、本人に聞かないとわからないことになります。
本書の「24章 疲れの原因とその対策」の中に、「精神的作業だけでは人間は疲れない」が気になりました。
私の考えを言っても仕方がないのですが・・・。
筋肉は使うと疲労を感じて、体を休めるようにします。動かすことによって筋肉は傷ついています。休ませるのは、筋肉についたキズの修復とも言えます。
精神活動は脳の働きです。精神活動をするとき、脳の神経細胞は電気信号により情報のやり取りをしています。電気が流れることで、神経細胞は傷ついていると考えられます。睡眠をとることで、傷ついた神経細胞を修復していると考えられるのです。
また、睡眠についてはわかっていないことが多いようです。ですから、寝る時は、精神活動を停止し、脳を休める方がいいと思われます。たとえ寝られなくても、何も考えずに、横になって心身を休めた方がいいと思います。
これは、あくまでも私の個人的な考えです。
取り上げられた書籍の著作者に、哲学者や医者、作家がありました。ウィリアム・ジェームズ氏、アレクシス・カレル氏、ヘンリー・W・ロングフェロー氏、エマソン氏らです。
どうも、彼らはアメリカでは有名な人物のようです。最近では、アレクシス・カレル氏がテレビで取り上げられていました。また、ウィリアム・ジェームズ氏も、心理に関することで名前を聞くようになりました。
日本の医学や心理学は、ヨーロッパからのものが主のようで、アメリカからは積極的に吸収しようとはしていなかったようです。
悩みを解消することを狙った本とのことです。読み方を変えると、躍動的に行動する方法を書いた本とも言えそうです。
一人でできることが書かれてあるので、読んですぐに実践できます。努力を必要としますが、元手はそれほどかからないと思います。
帯にあった能書き「世界的ロングセラー」は、本物でした。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 57日14時間37分
- 読み始め
- 2017(平成29)年11月1日(水)22時46分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年12月22日(金)~22時15分
- 一通り読んだ時間
- 50日23時間29分
- 編集終了
- 2017(平成29)年12月29日(金)~13時23分
- 読んだ範囲
- 帯、カバー、本書。
取り上げられた書物など
- 『人を動かす』 デール・カーネギー氏著
- 『生活の発見』 林語堂氏著
- 『人生の意味』 アルフレッド・アドラー氏著
- 『魂を探求する近代人』 カール・ユング氏著
- 『種の起源』 チャールズ・ダーウィン氏著
- 『積極的休養法』 エドマンド・ジェイコブソン氏著
- 『休養の福音』 ウィリアム・ジェームズ氏著
これ以外にも、多くの書籍などの紹介がありました。
調べたこと
- 1 ロングセラー(long seller)
- 和製語。
- 2 クローズアップ(close-up)
- 3 平明(へいめい)
- 4 清教徒(せいきょうと、Puritans)
- 5 香気(こうき)
- 6 伴侶(はんりょ)
- 7 生い立ち(おいたち)
- 8 軽蔑(けいべつ)
- 9 卑屈(ひくつ)
- 10 窶す(やつす)
- 11 度肝(どぎも)
- 度胆(どぎも)。
- 12 至言(しげん)
- 13 象牙の塔(ぞうげのとう)
- 14 山上の垂訓(さんじょうのすいくん)
- 15 会得(えとく)
- 16 欽定(きんてい)
- 17 弥立つ(よだつ)
- 18 貞淑(ていしゅく)
- 19 嘸(さぞ)
- さぞかし。
- 20 終生(しゅうせい)
- 21 憔悴(しょうすい)
- 22 相場(そうば)
- 23 私淑(ししゅく)
- 参考:親炙(しんしゃ)。
- 24 極(きょく、きわみ)
- 25 煩悶(はんもん)
- 26 猩紅熱(しょうこうねつ)
- 27 会衆(かいしゅう)
- 28 クーリー(coulee、苦力)
- 29 不可知論(ふかちろん)
- 30 漫ろ(そぞろ)
- 31 咆哮(ほうこう)
- 32 百戦錬磨(ひゃくせんれんま)
- 33 溜飲が下がる(りゅういんがさがる)
- 34 気骨が折れる(きぼねがおれる)
- 35 風説(ふうせつ)
- 36 責務(せきむ)
- 37 疾病(しっぺい)
- 38 遊走腎(ゆうそうじん)
- 39 鼻摘み(はなつまみ)
- 40 倦怠(けんたい)
- 41 くさくさ
- 42 尾(び)
- 生きている魚は「匹(ひき)」で数えるそうです。
- 43 雪原(せつげん)
- 44 幕間(まくあい、まくま)
- 45 愛しい(いとしい)
- 46 後年(こうねん)
- 47 発破を掛ける(はっぱをかける)
- 48 掻っ攫う(かっさらう)
- 49 犬釘(いぬくぎ)
- 50 可哀想(かわいそう、当て字)
- 51 一縷(いちる)
- 52 土牢(つちろう)
- 53 金科玉条(きんかぎょくじょう)
- 54 半死半生(はんしはんしょう)
- 55 旱魃(かんばつ)
- 56 半生(はんせい)
- 参考:「はんしょう」と読めば、別意。
- 57 然(ぜん)
- 58 鵞鳥(がちょう)
- 59 キワニスクラブ
- インターネットで調べました。
- 60 せがむ
- 61 周章狼狽(しゅうしょうろうばい)
- 62 厭世(えんせい)
- 63 アロペシア
- 脱毛症のことでしょうか。インターネットで調べましたが、よくわかりませんでした。
- 64 渋紙(しぶかみ、しぶがみ)
- 65 ベスピアス
- イタリアにある火山。インターネットで調べました。
- 66 弾劾(だんがい)
- 67 千千(ちぢ)
- 68 意気地(いくじ)
本書の作者は「デール・カーネギー(Dale Carnegie)氏」で、カーネギー・ホールや鉄鋼業で成功した「アンドリュー・カーネギー(Andrew Carnegie)氏」とは別人です。
以下余白