『できる社員は「やり過ごす」』
- 副題など
- カバーには「・・・上司の無理難題を『やり過ごし』、部下の「尻ぬぐい」までする係長クラスの奮闘にはすごい働きが隠されていた・・・」などとありました。
- 著者など
- 著者 : 高橋 伸夫(たかはし のぶお)氏著
- 出版社など
- 株式会社日本経済新聞出版社 さん
- 日経ビジネス人文庫
- 版刷など
- 2002年7月第1刷。読んだものは、2014年9月第6刷。
- もとは1996年10月に文春ネスコより刊行されています。
- ボリューム
- 261ページ。ただし、258ページ以降は参考文献です。
感じたこと
「やり過ごし」「尻ぬぐい」「泥をかぶる」。職業の中で最も過酷なのが、主婦(夫)業ではないかと思いました。
炊事、台所の片付け、洗濯、掃除、整理整頓、買い物など、同じことを毎日繰り返しています。
パートナーが仕事から帰ってきたら、食事を用意します。しかし、付き合いがある場合、食事は不要になります。職場でのおぞましい出来事などを聞くこともあるでしょう。何に使うかもわからない買い物を頼まれ、渡すと「これじゃない!」と怒られたりします。
小さい子どもは、待ってくれません。すぐに対処しなければ、マズいことになります。トイレ、甘え、イタズラ等々。目を離すと、命にかかわることもあります。小学生以上になると、宿題や習い事、友だちづきあいに頭を悩ませることがあります。大人になるにつれて無愛想になり、真面に話すらできません。
脱ぎ散らかしや、出し放しをやめるように言っても、なかなか聞いてはくれません。家計も、ローンや急な出費で、頭が痛くなります。
主婦(夫)の最もキツいのは、人事異動がないことです。「さぁ、今日から新メンバーで頑張るぞ」といって、パートナーも子どもも全員新しい顔ぶれになることは、なかなかありません。ライフイベントとしてはあったとしても、定期の異動はありません。
次に、24時間営業です。早朝だろうが、深夜だろうが、対応することになります。モノの在処(ありか)を知っているのは、主婦(夫)だからです。パートナーにしてもらっても、結局は、「あれはどこにある?」と聞かれます。
来る日も来る日も、同じことの繰り返しです。家での愚痴を言えば、仕事で疲れているんだから、と言われるかもしれません。他人に話せば、瞬時に広まってしまいます。
病気で寝込んでいると、家族は手伝ってくれます。食事、洗濯、収納の仕方など、どうするのか聞かれることがあります。任せても、ケガをしないか、心配です。体は休められても、気は休んでいる暇はありません。
主婦(夫)の場合、「やり過ごし」「尻ぬぐい」「泥かぶり」は当たり前に経験するようです。そして、決定的に違うのが、絶対的な状況(家族など)を受け入れざるを得ないことです。3年経ったら異動とかがない以上、そうせざるを得ません。
修行僧のような生活を送っているのが、主婦(夫)なのかもしれません。
勤めながら主婦(夫)を兼業する人は、かなりの重労働です。
この過酷な仕事にありながら、どうして主婦(夫)業を続けられるのでしょうか。
子どもから手が離れたら、何年かしたらパートナーの給料が上がっている、と思うことで、凌いでいるのかもしれません。しかし、子どもが独立しようが、給料が上がろうが、毎日することは同じですし、将来もそれをやり続けることになるでしょう。
もっと本質的なところに、その理由があるようです。家族のちょっとした行いを不満に思いながらも、家族には、元気で、思うように活動して欲しいと願っているのです。和を保ったり活気あふれる家族となるように、主婦(夫)が絆になっているのかもしれません。
このように見ると、ベテランの主婦(夫)が、ビジネスの世界で活躍できる場はたくさんあるかもしれません。そして、家族でも職場でも、求められるのは、強い絆のような気がしてきました。
この書物を選んだ理由
弊サイト・読んだもの№120『大学4年間の経営学がざっと学べる』は、わかりやすく、面白かったのを覚えています。しゃちほこ張ることなく、そうかと言ってだらけることもなく、いいあんばいの語り口でした。この本の中に、本書『できる社員は「やり過ごす」』の紹介がありました。このタイトルの意味は何だろうと思い、期待して読むことにしました。
私の読み方
面白かったです。
企業の係長の奮闘ぶりが、アンケート調査で明らかにされていました。過酷な現状に、離職をしない原因を探っていました。それは人間関係であり、数年後の人事異動という、未来の考え方にあるようです。
経済、経営学は、欧米の価値観で語られており、必ずしも正しいとは限らないようです。欧米は戦略と思ったようですが、日本の企業が成功したのは、現実には場当たり的、現場主義にあったようです。
西欧人と日本人の未来に対する考え方は違っていました。日本人は未来を視野に入れて計画をたてるそうです。
日本人なら、働き手も組織も未来を考慮します。著者は、「未来傾斜」という考え方に行きついたようです。
第1章「やり過ごし」からはじまり、第7章「未来傾斜」まで、順を追って、わかりやすく語られていました。
統計がでてきますが、決定係数など理解できないことがありました。心理学でも、今まで読んだ書籍にも統計は出てきました。一見、関係のないところにも、統計は使われるようになっているようです。一度、勉強した方がいいかもしれません。
形式です。文字の大きさ、行の長さ、行間など、読みやすかったです。図表もありました。
文庫版あとがきに、興味がありました。単行本から数年後、著者は内容をどのように感じているのだろうか、と思ったからです。
時の流れという点では、出版されてから、20年くらい経っています。
本来持っている文化や価値観を変えるのは難しいようです。それは、人も組織も変わりないようです。
読書所要時間など
- 総所要時間(読み始めから編集終了まで)
- 10日6時間13分
- 読み始め
- 2017(平成29)年11月2日(木)午前10時01分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年11月11日(土)~16時09分
- 一通り読んだ時間
- 9日6時間8分
- 編集終了
- 2017(平成29)年11月12日(日)~16時14分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。著者紹介、参考文献は軽く目を通しました。奥付、広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『リエンジニアリング革命』 マイケル・ハマー氏&ジェームズ・チャンピー氏共著
- 『企業文化(邦訳書名:シンボリック・マネジャー)』 テレンス・ディール氏&アレン・ケネディ氏共著
- 『経営者の役割』 バーナード氏著
- 『未来傾斜原理-協調的な経営行動の進化-』 高橋伸夫氏著
出来事
11月11日(土)プロ野球・日本ハムの選手・大谷翔平氏がメジャー挑戦を表明。
調べたこと
- 1 遣り過ごす(やりすごす)
- 2 無節操(むせっそう)
- 3 踏ん反り返る(ふんぞりかえる)
- 4 滑稽(こっけい)
- 5 前人未踏(ぜんじんみとう)
- 前人未到(ぜんじんみとう)。
- 6 仕様もない(しょうもない)
- 7 スタンドプレー(grandstand play)
- 8 迂闊(うかつ)
- 9 ひょんな
- 10 平たい(ひらたい)
- 本書では「ひらたくいえば」。
- 11 キャラクター(character)
- 12 パーソナリティー(personality)
- 13 加勢(かせい)
- 14 宥め賺す(なだめすかす)
- 15 叩き上げ(たたきあげ)
- 16 無茶苦茶(むちゃくちゃ)
- 17 矢継ぎ早(やつぎばや)
- 18 洒落(しゃれ)
- 19 麻痺(まひ)
- 痲痺(まひ)。
- 20 目立つ(めだつ)
- 21 駆逐(くちく)
- 22 肝要(かんよう)
- 23 取捨選択(しゅしゃせんたく)
- 24 誘発(ゆうはつ)
- 25 不首尾(ふしゅび)
- 26 妙案(みょうあん)
- 27 尻拭い(しりぬぐい)
- 28 泥を被る(どろをかぶる)
- 29 繁昌(はんじょう)
- 繁盛(はんじょう)。
- 30 半信半疑(はんしんはんぎ)
- 31 憤懣(ふんまん)
- 忿懣(ふんまん)。
- 32 羽目(はめ)
- 33 悪びれる(わるびれる)
- 34 翻る(ひるがえる)
- 35 朝令暮改(ちょうれいぼかい)
- 36 手待ち(てまち)
- インターネットで調べました。
- 37 気後れ(きおくれ)
- 38 書き入れ時(かきいれどき)
- 39 オーライ(all right)
- 40 見通し(みとおし)
- 41 tit for tat
- しっぺ返し。本書では「お返し」を訳語にあてるべきとのこと。
- 42 フォートラン(FORTRAN)
- formula translation。
- 43 ブレークダウン(breakdown)
- 本書に解説があります。
- 44 オーバーラップ(overlap)
- 45 ワンダーランド(wonderland)
- 46 インセンティブ(incentive)
以下余白