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読んでやる! 読んだもの
№132 『できる社員は「やり過ごす」』

 「やり過ごし」「尻ぬぐい」「泥をかぶる」社員の離職しない理由を探っていました。その中で、「見通し指数」「未来係数」に気づき、本書は「未来傾斜原理」を見いだしています。

『できる社員は「やり過ごす」』

副題など
 カバーには「・・・上司の無理難題を『やり過ごし』、部下の「尻ぬぐい」までする係長クラスの奮闘にはすごい働きが隠されていた・・・」などとありました。
著者など
著者 : 高橋 伸夫(たかはし のぶお)氏著
出版社など
株式会社日本経済新聞出版社 さん
日経ビジネス人文庫
版刷など
 2002年7月第1刷。読んだものは、2014年9月第6刷。
 もとは1996年10月に文春ネスコより刊行されています。
ボリューム
 261ページ。ただし、258ページ以降は参考文献です。

感じたこと

 「やり過ごし」「尻ぬぐい」「泥をかぶる」。職業の中で最も過酷なのが、主婦(夫)業ではないかと思いました。

 炊事、台所の片付け、洗濯、掃除、整理整頓、買い物など、同じことを毎日繰り返しています。
 パートナーが仕事から帰ってきたら、食事を用意します。しかし、付き合いがある場合、食事は不要になります。職場でのおぞましい出来事などを聞くこともあるでしょう。何に使うかもわからない買い物を頼まれ、渡すと「これじゃない!」と怒られたりします。
 小さい子どもは、待ってくれません。すぐに対処しなければ、マズいことになります。トイレ、甘え、イタズラ等々。目を離すと、命にかかわることもあります。小学生以上になると、宿題や習い事、友だちづきあいに頭を悩ませることがあります。大人になるにつれて無愛想になり、真面に話すらできません。
 脱ぎ散らかしや、出し放しをやめるように言っても、なかなか聞いてはくれません。家計も、ローンや急な出費で、頭が痛くなります。

 主婦(夫)の最もキツいのは、人事異動がないことです。「さぁ、今日から新メンバーで頑張るぞ」といって、パートナーも子どもも全員新しい顔ぶれになることは、なかなかありません。ライフイベントとしてはあったとしても、定期の異動はありません。
 次に、24時間営業です。早朝だろうが、深夜だろうが、対応することになります。モノの在処(ありか)を知っているのは、主婦(夫)だからです。パートナーにしてもらっても、結局は、「あれはどこにある?」と聞かれます。
 来る日も来る日も、同じことの繰り返しです。家での愚痴を言えば、仕事で疲れているんだから、と言われるかもしれません。他人に話せば、瞬時に広まってしまいます。
 病気で寝込んでいると、家族は手伝ってくれます。食事、洗濯、収納の仕方など、どうするのか聞かれることがあります。任せても、ケガをしないか、心配です。体は休められても、気は休んでいる暇はありません。

 主婦(夫)の場合、「やり過ごし」「尻ぬぐい」「泥かぶり」は当たり前に経験するようです。そして、決定的に違うのが、絶対的な状況(家族など)を受け入れざるを得ないことです。3年経ったら異動とかがない以上、そうせざるを得ません。
 修行僧のような生活を送っているのが、主婦(夫)なのかもしれません。
 勤めながら主婦(夫)を兼業する人は、かなりの重労働です。

 この過酷な仕事にありながら、どうして主婦(夫)業を続けられるのでしょうか。
 子どもから手が離れたら、何年かしたらパートナーの給料が上がっている、と思うことで、凌いでいるのかもしれません。しかし、子どもが独立しようが、給料が上がろうが、毎日することは同じですし、将来もそれをやり続けることになるでしょう。
 もっと本質的なところに、その理由があるようです。家族のちょっとした行いを不満に思いながらも、家族には、元気で、思うように活動して欲しいと願っているのです。和を保ったり活気あふれる家族となるように、主婦(夫)が絆になっているのかもしれません。

 このように見ると、ベテランの主婦(夫)が、ビジネスの世界で活躍できる場はたくさんあるかもしれません。そして、家族でも職場でも、求められるのは、強い絆のような気がしてきました。

この書物を選んだ理由

 弊サイト・読んだもの№120『大学4年間の経営学がざっと学べる』は、わかりやすく、面白かったのを覚えています。しゃちほこ張ることなく、そうかと言ってだらけることもなく、いいあんばいの語り口でした。この本の中に、本書『できる社員は「やり過ごす」』の紹介がありました。このタイトルの意味は何だろうと思い、期待して読むことにしました。

私の読み方

 面白かったです。
 企業の係長の奮闘ぶりが、アンケート調査で明らかにされていました。過酷な現状に、離職をしない原因を探っていました。それは人間関係であり、数年後の人事異動という、未来の考え方にあるようです。
 経済、経営学は、欧米の価値観で語られており、必ずしも正しいとは限らないようです。欧米は戦略と思ったようですが、日本の企業が成功したのは、現実には場当たり的、現場主義にあったようです。
 西欧人と日本人の未来に対する考え方は違っていました。日本人は未来を視野に入れて計画をたてるそうです。
 日本人なら、働き手も組織も未来を考慮します。著者は、「未来傾斜」という考え方に行きついたようです。
 第1章「やり過ごし」からはじまり、第7章「未来傾斜」まで、順を追って、わかりやすく語られていました。

 統計がでてきますが、決定係数など理解できないことがありました。心理学でも、今まで読んだ書籍にも統計は出てきました。一見、関係のないところにも、統計は使われるようになっているようです。一度、勉強した方がいいかもしれません。

 形式です。文字の大きさ、行の長さ、行間など、読みやすかったです。図表もありました。
 文庫版あとがきに、興味がありました。単行本から数年後、著者は内容をどのように感じているのだろうか、と思ったからです。
 時の流れという点では、出版されてから、20年くらい経っています。
 本来持っている文化や価値観を変えるのは難しいようです。それは、人も組織も変わりないようです。

読書所要時間など

総所要時間(読み始めから編集終了まで)
10日6時間13分
読み始め
2017(平成29)年11月2日(木)午前10時01分~
読み終わり
2017(平成29)年11月11日(土)~16時09分
一通り読んだ時間
9日6時間8分
編集終了
2017(平成29)年11月12日(日)~16時14分
読んだ範囲
 カバー、帯、本書。著者紹介、参考文献は軽く目を通しました。奥付、広告は見ていません。

取り上げられた書物など

  • 『リエンジニアリング革命』 マイケル・ハマー氏&ジェームズ・チャンピー氏共著
  • 『企業文化(邦訳書名:シンボリック・マネジャー)』  テレンス・ディール氏&アレン・ケネディ氏共著
  • 『経営者の役割』 バーナード氏著
  • 『未来傾斜原理-協調的な経営行動の進化-』 高橋伸夫氏著

出来事

11月11日(土)プロ野球・日本ハムの選手・大谷翔平氏がメジャー挑戦を表明。

調べたこと

1 遣り過ごす(やりすごす)
2 無節操(むせっそう)
3 踏ん反り返る(ふんぞりかえる)
4 滑稽(こっけい)
5 前人未踏(ぜんじんみとう)
 前人未到(ぜんじんみとう)。
6 仕様もない(しょうもない)
7 スタンドプレー(grandstand play)
8 迂闊(うかつ)
9 ひょんな
10 平たい(ひらたい)
 本書では「ひらたくいえば」。
11 キャラクター(character)
12 パーソナリティー(personality)
13 加勢(かせい)
14 宥め賺す(なだめすかす)
15 叩き上げ(たたきあげ)
16 無茶苦茶(むちゃくちゃ)
17 矢継ぎ早(やつぎばや)
18 洒落(しゃれ)
19 麻痺(まひ)
 痲痺(まひ)。
20 目立つ(めだつ)
21 駆逐(くちく)
22 肝要(かんよう)
23 取捨選択(しゅしゃせんたく)
24 誘発(ゆうはつ)
25 不首尾(ふしゅび)
26 妙案(みょうあん)
27 尻拭い(しりぬぐい)
28 泥を被る(どろをかぶる)
29 繁昌(はんじょう)
 繁盛(はんじょう)。
30 半信半疑(はんしんはんぎ)
31 憤懣(ふんまん)
 忿懣(ふんまん)。
32 羽目(はめ)
33 悪びれる(わるびれる)
34 翻る(ひるがえる)
35 朝令暮改(ちょうれいぼかい)
36 手待ち(てまち)
 インターネットで調べました。
37 気後れ(きおくれ)
38 書き入れ時(かきいれどき)
39 オーライ(all right)
40 見通し(みとおし)
41 tit for tat
 しっぺ返し。本書では「お返し」を訳語にあてるべきとのこと。
42 フォートラン(FORTRAN)
 formula translation。
43 ブレークダウン(breakdown)
 本書に解説があります。
44 オーバーラップ(overlap)
45 ワンダーランド(wonderland)
46 インセンティブ(incentive)

以下余白

更新記録など

2017年11月13日(月) : アップロード