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読んでやる! 読んだもの
№127 『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』

 ガンになった人を対象にした本です。診断の受け止め方、心の状態、治療、生活にわたるまで丁寧にわかりやすく書かれています。民間療法を否定しないのは、患者の立場での記述だと感じました。手元に置いておきたい1冊です。

『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』

 別冊『患者必携 わたしの療養手帳(普及新版)』つき

副題など
 帯には、「『社会とのつながり』『患者さんの手記』をより充実! すべてのがんに共通する情報をまとめた普及新版です。」とありました。
著者など
著者 : 国立研究開発法人 国立がん研究センターがん対策情報センター さん編著
出版社など
株式会社 学研メディカル秀潤社 さん
版刷など
 2013年9月第1版第1刷。読んだものは、2017年2月第1刷第4刷。
ボリューム
 『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』は、223ページ。ただし、215ページ以降は、「索引」、「協力者一覧」、「制作者一覧」、「がんの冊子」の一覧表、です。
 別冊『患者必携 わたしの療養手帳(普及新版)』は、64ページです。手帳なので読むところは少ないです。書き込むように作られています。

感じたこと

 まだ若い頃の話。就職が決まって、アルバイトをしていました。ところが、しばらくして、体調がおかしくなりました。家族に言われ、病院に行きました。検査したところ、モノができていました。大事にいたるものではなかったのでホットしましたが、結果がでるまではヒヤヒヤしていました。それから数年の治療で完治しました。
 ガンだったらどうしようという不安がありました。将来、ガンになったらどうしようとも思いました。努力して、せっかく就職が決まったのに・・・。自分の人生が呪われているようにも感じました。
 それから数十年後に、父がガンになりました。わかった時は手遅れで、治療のしようがないと医師から言われました。父はその時どういう気持ちだったでしょうか。心中を察すると、胸を締め付けられます。父は「そうか」と一言。延命治療を望みませんでした。せめて、食事療法だけでも、と家族の意向を父は受け入れました。食事を作り、父の元に届けました。しかし、父は食べ物がのどを通りませんでした。亡くなる2週間ほど前に、食事療法を止めました。父の死後、食事療法を後悔しました。食べられる時に好きな物を食べてもらえばよかったと思いました。
 モノができただけでも、私はかなりのショックを受けました。父がガンの時、頭の中が真っ白で、何をどこから手をつけてよいのかわかりませんでした。ガンになってから、自分で情報を収集しようとすると後手に回ります。専門用語が混じった書籍を見ても、字面を追うだけです。心が乱れた状態では、頭にも入りません。手っ取り早いのは、ガンの医療に詳しい人に話を聞くことです。少なくとも、わからないことは質問できます。当時はそんなことさえも思いつきませんでした。
 ガンを早期発見、早期治療すれば、より長く生きられると言われています。最近の新聞には、1滴の血液でガンを発見する検査を実用化するという記事があったように思います。ガンだけでなく、すべての病気を早期発見できる検査ができるといいですね。

この書物を選んだ理由

 腰の手術で入院した病院が、がん診療連携拠点病院でした。そこには、医療の情報コーナーがありました。書籍やパンフレットなどたくさんの資料がありました。歩行訓練のついでに立ち寄りました。
 父にがんが見つかった時、家族もわたしも何から手をつけてよいのかわかりませんでした。そして、右往左往していました。約2ヶ月後に、父は亡くなりました。わたしは、父の力になれませんでした。自分が無力で、悔しくて残念でなりませんでした。取っ掛かりさえ見つけられなかったのですから。
 人は年を取ると、誰でもがんになる可能性があるのだそうです。先祖や親戚、家族に、がんになった人がいない場合でも、油断は禁物なのだそうです。やはり、早期発見、早期治療が大切です。
 そんな悔しい思いから情報コーナーを見ていて、この本と出会いました。病院で見たのは、2013年版で、このたび読んだものの旧版だと思います。この本を知っていれば・・・、と当時のことを振り返っていました。

私の読み方

 この本を読んで、『癒す心、治る力』アンドルー・ワイル氏著、『精神医学から臨床哲学へ』木村敏氏著を思い出しました。
 『癒す心、治る力』アンドルー・ワイル氏著は、世界の医療を紹介しています。それぞれの特長について記されており、免疫を中心に、健康を保つ方法を考えています。ガンについて、著者の考え方が具体的に述べられています。ボリュームがあるので、最初に「第三部 もし病気になったら」を読めば、心構えや方針は決まる気がします。本書に奇跡的治癒の一例が示され、著者の次のようなコメントがありました。ひとりの人間に奇跡的治癒が起こるなら全ての人にも起こりうる、と。治癒した人の忠告として、道は必ずあり、探し続けること、とも。諦(あきら)めないことが大切なようです。何か『やり抜く力(GRIT)』アンジェラ・ダックワーク氏著のような感じです。
 『精神医学から臨床哲学へ』木村敏氏著で、民間療法に対する私の考えは変わりました。著者のご家族の方が西洋医学でガンを根治できず、その後、民間療法を始めたことが書かれていました。それにより西洋医学で宣告された余命期間を超えていました。民間療法も効果があると感じました。

 形式です。横書き。文字、行の長さは適当で、行間を少し広めに取ってあり、文字が非常に見やすかったです。字体、太字、絵、図、一覧表、コラムなど、メリハリがあり、読む気を維持できました。専門用語も解説をしながらの記述や、「用語の解説」「索引」があり、わかりやすさ、使いやすさに配慮がありました。別冊『患者必携 わたしの療養手帳』は、よくできていました。

 この本を知っていれば、時間をかけず、もっと楽に自分の望むように、私は腰の手術ができたと思います。ガン以外の病気にも、本書は役に立つと思います。ガンの部分を別の病気に置き換えて読むと、方針や気持ちが固まる気がします。

 ガンと知ったら、かなり強いショックを受けるはずです。その状態で、文字を読める冷静さがあるかは疑問です。ガンになる前から、誰でもガンに罹り、心の段階があることを知っておいた方がいいと思いました。
 本書巻頭の「患者必携ガイドマップ」は、わかりやすいですが、文字ばかりです。これとは別に、1枚物(または、見開き2ページで)の流れ図(フローチャート)のようなものが欲しいと思いました。自分の置かれた状態や、治療がどの位置にあるのかわかります。これがわかれば、落ち着きを取り戻し、治療に前向きになれると思うからです。

 私の入院した病院には患者専用のパソコン、無料Wi-Fiが設置されていました。パソコンを使っている人は少ないのですが、1人の使用時間が長いように感じました。スマートフォンがあれば、いつでも情報を得られます。
 入院する際は、充電器を必ず持っていきましょう。電話をしたり、情報を見ていると、思う以上にバッテリー(電池)を使います。

 定価が880円+税に驚きました。単行本ではめずらしい低価格だと感じました。しかし、これほどの内容なら、1世帯に1冊配布すべきだと思いました。きっと、ガンだけでなく、病気とともに、ワーク・ライフ・バランスの質の向上と実践を、社会全体で行うようになると思うからです。

 本書は、ガンとわかった人に、どのように対処すべきかをわかりやすく書いてありました。それは、治療に時間のかかる病気にも対応できる内容でした。
 たいていの人は、おそらく、ガンになると、「心ここにあらざれば視(み)れども見えず」になると思います。本を読める状態ではなくなります。まずは、医療関係者の話を聞き、気持ちが一段落してから本書を読んだ方がいいかもしれません。
 できれば、健康な時に、本書に目を通しておくのがよいと思いました。少なくとも、本書があることを知っていれば、時間と労力を無駄にすることはないと思います。
 備えあれば患(うれ)えなしです。読まなくても、目を通すだけでも、手元に置いておくだけでも、万一の時に役立つと思います。本書を読むことを強くお勧めします。

読書所要時間など

所要時間
19日22時間23分
読み始め
2017(平成29)年8月5日(土)午後12時05分~
読み終わり
2017(平成29)年8月25日(金)~午前10時28分
読んだ範囲
 カバー、帯、本書(『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』&別冊『患者必携 わたしの療養手帳』)

取り上げられた書物など

  • 「がん情報サービス」「http://ganjoho.jp」 国立がん研究センターがん対策情報センターさん
  • 「がん情報サイト」「http://cancerinfo.tri-kobe.org/」 公益財団法人 先端医療振興財団さん
  • 『わたしも、がんでした。』 国立がん研究センターがん対策情報センターさん編著
  • 「医療情報サービスMinds(マインズ)」さん「http://minds.jcqhc.or.jp/」
  • がん情報サービス 地域のがん情報「http://ganjoho.jp/public/support/prefectures/index.html」
  • 冊子『あなたの家のかえろう』「おかえりなさい」プロジェクト事務局さん
  • 『がんの補完代替医療ガイドブック』厚生労働省さんのがん研究助成「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究班」さん編集

 がんの冊子の一覧が巻末にあります。ウェブサイト「がん情報サービス」で見られるようです。

 その他、多くのウェブサイト(ホームページ)、冊子の紹介がありました。

 本書に掲載はありませんが、病院の情報コーナーで知ったことです。
 ・ 「NPO法人 希望の会」さんのホームページ
 ・ 冊子『もしかしたらスキルス胃がん-治療開始前に知りたかったこと-』スキルス胃がん患者・家族会 特定非営利活動法人 希望の会 さん編、「NPO法人 希望の会」さんのホームページからダウンロードできるようです。

ひととき

 散歩に出かけました。歩行訓練の一環なので、いつもの場所です。見慣れた鳥のサギ(鷺)2羽を撮(と)りました。同じ種類だと思っていましたが、クチバシが黒と黄色で違っていました。インターネットで種類を調べましたが、わかりませんでした。

 コサギ?でしょうか。
コサギ

 ダイサギ?
ダイサギ

 2枚とも、平成29年8月14日(月)に撮影しました。

調べたこと

1 がん対策推進基本計画
 厚生労働省のホームページに掲載があります。
2 がん診療連携拠点病院
 厚生労働省のホームページに掲載があります。病院の一覧表もありました。
3 皆無(かいむ)
4 インフォームドコンセント(informed consent)
 本書に解説があります。
5 ソーシャルワーカー(social worker)
6 リハビリテーション(rehabilitation)
 リハビリ。インターネットでも調べました。
7 ピアサポート(peer support)
 同じ立場の人の相互扶助でしょうか。
8 親身(しんみ)
9 カンファレンス(conference)
 本書で、専門の知見に基づいた検討、に当たるようです。
10 キャンサーボード(cancer board)
 インターネットで検索すると、厚生労働省さんの「参考資料1-1 キャンサーボードについて」がヒットしました。詳しく書かれています。
11 レスパイト入院(respiteにゅういん)
 本書に解説があります。
12 褥創(じょくそう)
 本書では「床ずれ」。参考:褥瘡(じょくそう)、蓐瘡(じょくそう)。
13 清拭(せいしき)
 本書では「体を拭くこと」。
14 懸命(けんめい)
15 FDG
 本書に解説があります。造影剤のことでしょうか。
16 鎮静剤(ちんせいざい)
17 間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
18 間質性(かんしつせい)
 インターネットで調べました。
19 刺入(しにゅう)
 インターネットで調べました。
20 急性期(きゅうせいき)
 本書では「治療直後」。参考:回復期(かいふくき)。
21 静脈(じょうみゃく)
 参考:動脈(どうみゃく)。
22 舌苔(ぜったい)
23 灌注(かんちゅう)
24 転帰(てんき)
25 均霑(きんてん)
26 重複(じゅうふく、ちょうふく)
 本書では、2つの読み方が明記されていました。
27 イレウス(ileus)
 腸閉塞。
28 行性(こうせい)
 本書では「リンパ行性転移」。インターネットで調べました。

以下余白

更新記録など

2017年8月25日(金) : アップロード