『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』
「ハイ アウトプット マネジメント」のルビがありました。
- 副題など
- 「人を育て、成果を最大にするマネジメント」
- 帯には「シリコンバレーのトップ経営者、マネジャーに読み継がれる真の傑作、待望の復刊!」とありました。
- 著者など
- 著者 : アンドリュー・スティーヴン・グローブ(Andrew Stephen Grove)氏著
- 序文執筆者 : ベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)氏著
- 訳者 : 小林 薫(こばやし かおる)氏訳
- 出版社など
- 株式会社 日経BP社 さん
- 版刷など
- 2017年1月第1版第1刷。読んだものは、2017年5月第1刷第7刷。
- ボリューム
- 333ページ。ただし、328ページ以降は「最後にもうひとつ-これからの行動指針チェック・リスト」です。
※ 2015年に米国で出版されたペーパーバック版の翻訳。1984年『ハイ・アウトプット・マネジメント』、1996年『インテル経営の秘密』(いずれも株式会社 早川書房さん、発行)の原書を基に翻訳したとのことです。
感じたこと
風通しのよい組織、という言葉を思い出しました。
以前勤めていた職場で、この言葉はよく使われており、私は忘れられませんでした。「風通しのよい」とはどういうことなのだろうか、です。
当時、私が感じていたのは、組織が生産性を上げるための情報交換というふうに捕らえていました。何らかの支障が生じたり、効率を上げるテクニックが見つかった場合に、関係するセクションに情報をすぐに行き渡らせることだと思っていました。
その後、直接の生産性にかかわることだけではないと考えるようになりました。人間関係や、手抜き、不正など、風通しの対象は多岐にわたります。負の要素の場合、計画された工程を歪(ゆが)めてしまいます。また、組織としての正常な動きができなくなります。
そこには、何らかの感情のわだかまりが原因と思われることがあります。好き嫌いや、配属への不満などいろいろありそうです。
部下からみて上司は、命令を発したり、働きを評価する人です。組織が上司を任命したので、信頼せざるを得ません。
たいていの場合、上司はある程度経験を積んでいます。入社後すぐに管理職になるのはめずらしいことだと思います。そして、それなりに年を取っています。
ここで問題なのは、上司が人間性や人格までも優れていると考えることです。組織が上司を任命したのは、その職を果たせる能力が見込まれるからです。年を取ったのは、その能力をつけるのにそれなりの年月を要したからです。
上司を任命するのは、組織の生産性を上げる能力でしかありません。人間性や人格が不要ではないとしても、主な評価基準ではありません。むしろ、人間性や人格は、年月が経てば、誰でもそれなりに向上していると楽観視されているようです。
部下だけでなく、上司もそのように感じているようです。仕事の報告をすると、首を傾(かし)げる上司がいます。あたかも部下がウソつきだと決めつけるのです。部下が合理的な段取りを提案すると、不要な何かを付け加えたり、難癖を付けないと気の済まないようなこともあります。
ここには、上司が培ってきた知識や経験があります。しかし、時間が経つにつれ、事態は変化しています。理不尽な言動の基には、部下より上司の方がすべての面で優れているという思いがあるようです。
これは、上司部下の関係だけでなく、親子でも同じです。宿題をみる時、親は往々にして、自分のミスに気づきません。問題もそうですが、その対応においてもです。
元同僚から聞いた話があります。他の同僚の虚偽の密告により、陥(おとしい)れられたそうです。上司に一方的に捲(まく)し立てられたそうです。間(かん)、髪(はつ)を容(い)れずに、「何も言うな」と上司は強く締めくくったそうです。
上司は事実をたしかめようともしなかったそうです。元同僚が言うには、上司や組織への信頼は一瞬にして消えたそうです。誰も信用できなくなったそうです。
部下上司に関係なく、人間の感情はいかようにも変化します。風通しのよい組織、それは幻想か、聞こえのよい戯言(たわごと)のようです。
この書物を選んだ理由
№116『HARD THINGS』に本書が取り上げられていました。気になっていたので、読むことにしました。
私の読み方
「レバレッジ」「トレードオフ」のわかりやすい意味が本書にありました。
今までに取り上げた書籍『ナリワイをつくる』『あたらしい働き方』『どんな本でも大量に読める「速読」の本』にこれらの言葉がありました。これらの書籍を読んだ時、この言葉の意味がしっくりきませんでした。ところが、本書に記載された意味で考えるとわかりやすくなります。もしかすると、これらの著作者は、本書を読んでいたのかもしれませんね。
著者によると、本書の読書時間は8時間くらいと、巻末に書いてありました。この本を8時間で読むのはかなり早いと感じました。1ページを1分から1分半で読むことになります。
冒頭でも、自宅の本棚のことが書いてありました。このことから、著者はかなりの量の本を読んでいたはずです。また、読むスピードもかなり速かったと考えられます。
本書の内容から察するに。著者はただ本を読んでいるだけではありません。得た知識を実践しています。それは、経済経営、心理学などで、法則や理論が明記されています。そして、理論と現実のズレを摺(す)り合わせるように本書は書かれています。
アメリカ人の討論や評価などへの感情が書いてありました。日本人と変わらないと感じました。著者は、人間の本質を研究していたようです。そして、生産性の動作と、人間の持つ感情との関係性に注目していたようです。
教えられてできるようになり、生産性を上げるようになると、役に立っているという誇らしさを人は持ちます。そして、その教えられたことは、動きです。
ところが、この生産性を評価する段になると、人は感情的になります。期待や喜び、恐れや失望、憤怒(ふんぬ)などです。これは自分の気持ちとの相克ですが、評価した人に感情は向けられます。自分は一所懸命にやっているという感情と、生産の結果に関係性はないのです。
この生産性の動きと、人の感情、の位置づけ関連づけは絶妙です。人間性や人格の問題ではなく、組織の運営の課題が考えの中心にあります。
法則や理論を持ち出しながらも、それぞれの持ち場の人が、組織に役立っていると感じるように著者は考えているようでした。
形式です。文字は少し小さめでした。行の長さ、行間、文字の間隔、余白は適当と思われるのですが、読みづらいものがありました。紙の色と、文字の太さに関係があるのかもしれません。何となく、目がチカチカする気がしました。
読んでいて、吸い込まれるような感じがありました。物事の本質から、現場の成果向上を考えているようだったからです。単なる思いつきや偶然ではなく、1つ1つを丁寧に調べて実践して・・・PDCA(plan do check act)サイクルのような仕事ぶりです。成功を収めた著者ですが、失敗例の記述は、取り付く島があるような気にさせてくれます。本質を追究しようとする仕事ぶりは、素の人間の尊厳への心遣いだったのでしょうか。
いつも、これはと思うところにマーカーをするのですが、今まで取り上げた本の中で、一番多かったかもしれません。色も、イエロー、ピンク、オレンジ、グリーン、ブルーとカラフルになりました。
人間の本性は、孔子や老子などの中国の思想の時代から変わっていないようです。本質に基づいた本書は、時代に褪(あ)せることはないと思いました。
運営サイドの内容ですが、経営・経済の分野で、いの一番に読んでおきたかった本でした。
読書所要時間など
- 所要時間
- 31日0時間46分
- 読み始め
- 2017(平成29)年7月13日(木)22時07分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年8月13日(日)~22時53分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。奥付は軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- 『組織の中の人間』 ウィリアム・H・ホワイト二世氏著
- 『ピーターの法則』 ローレンス・ピーター氏著
ひととき
今年はエノコログサ(猫じゃらし)の当たり年なのか、よくはえています。大きくてフサフサしています。
撮影日平成29年7月25日(火)
海を見ると、最近よくボラが跳ねています。数回連続で水面から飛び出します。
撮影日平成29年8月6日(日)
調べたこと
- 1 high
- 2 output
- 3 management
- マネジメント。マネージメント。
- 4 HIGH OUTPUT MANAGEMENT
- 直訳すると、質の高い生産管理、でしょうか。
- 5 TED(Technology Entertainment Design)
- インターネットで調べました。
- 6 決死(けっし)
- 7 マネジャー(manager)
- マネージャー。本書では、管理監督職、中間管理職を言っているようです。
- 8 カジュアル(casual)
- 文脈から「制約の少ないように」の意味でしょうか。国語辞典や英和辞典の意味をそのまま当てはめると、意味が少しおかしくなります。
- 9 意思(いし)
- 学校の授業では「意思(いし)」は法律で使う言葉と習ったと思います。参考:意志(いし)。
- 10 献辞(けんじ)
- 献詞(けんし)。
- 11 認める(したためる)
- 12 猛襲(もうしゅう)
- 13 とどのつまり
- 14 セカンド・ベスト(second best)
- 2位。
- 15 帰着(きちゃく)
- 16 ミドル・マネジャー
- 調べると、「ミドル・マネジメント」が「中間管理職」となっていました。その職を務める人のことでしょうか。
- 17 フォアマン(foreman)
- 本書では「職長」。会社で言うと、末端の集団の「係長」「班長」「リーダー」なのでしょうか。
- 18 結節点(けっせつてん)
- 19 ショック・ウエーブ(shock wave)
- 衝撃波。
- 20 アナロジー(analogy)
- 本書では「たとえ」。類似、類推。
- 21 所以(ゆえん)
- 22 エネルギッシュ(energisch:ドイツ語)
- 23 即応(そくおう)
- 24 差し(さし)
- 25 喧伝(けんでん)
- 26 時時刻刻(じじこっこく)
- 27 先見の明(せんけんのめい)
- 28 リエンジニアリング(reengineering)
- 本書では「リエンジニア」。
- 29 支度(したく)
- 仕度(したく)。
- 30 目玉(めだま)
- 31 目玉商品(めだましょうひん)
- 本書では「目玉品」。
- 32 アセンブリー(assembly)
- 本書では「組立て・まとめあげ」。本書45ページに「アセンブリー・ステップ」として、解説があります。
- 33 内示(ないじ)
- 34 ドライラン(dry run)
- 予行演習。
- 35 ペイ(pay)
- 36 マンパワー(manpower)
- 人的資源。人力。
- 37 トレードオフ(trade-off)
- 本書では「損得の比較考量」。一般的には「二律背反の関係にある」こと。
- 38 踏み躙る(ふみにじる)
- 39 インジケーター(indicator)
- 本書では「インディケーター」で、「指標」。
- 40 露呈(ろてい)
- 41 ブラックボックス(black box)
- 42 マーチャンダイジング(merchandising)
- 43 要員(よういん)
- 44 プロット(plot)
- 図に描く。グラフにする。他には「計画、筋書き、構想、区画」など。
- 45 進捗(しんちょく)
- 46 趨勢(すうせい)
- 47 怪しからず(けしからず)
- 本書では「けしからん」。
- 48 気心(きごころ)
- 49 パーキンソンの法則
- 50 思量(しりょう)
- 51 御釈迦(おしゃか)
- 52 根を下ろす(ねをおろす)
- 53 十全(じゅうぜん)
- 54 一押し(ひとおし)
- 55 溢す(こぼす)
- 56 洩れ(もれ)
- 漏れ(もれ)。
- 57 慰留(いりゅう)
- 58 ナッジング(nudging)
- 本書では「突っつき、一押し」。注意を促す。
- 59 的を射る(まとをいる)
- 参考:当を得る(とうをえる)。
- 60 翻意(ほんい)
- 61 具に(つぶさに)
- 備に(つぶさに)、悉に(つぶさに)。
- 62 隘路(あいろ)
- 63 ミーティング(meeting)
- 64 祟り(たたり)
- 65 当否(とうひ)
- 66 寡聞(かぶん)
- 67 節減(せつげん)
- 68 腹蔵(ふくぞう)
- 69 膝を交える(ひざをまじえる)
- 70 不案内(ぶあんない、ふあんない)
- 71 堕する(だする)
- 72 勿体振る(もったいぶる)
- 73 上役(うわやく)
- 74 指し棒(さしぼう)
- 指示棒(しじぼう)。ポインター。
- 75 勧奨(かんしょう)
- 76 最中(さなか)
- 参考:最中(さいしゅう)。最中(もなか)。
- 77 企図(きと)
- 78 造詣(ぞうけい)
- 79 エクスパティーズ(expertise)
- 本書では「専門能力」。専門家の意見。専門知識。
- 80 ステータス・シンボル(status symbol)
- 81 ロール・プレーイング(role playing)
- 本書では「ロール・プレイング」。
- 82 オブザーバー(observer)
- 83 黒雲(くろくも、こくうん)
- 84 旗幟(きし)
- 85 どぎつい
- 86 付和雷同(ふわらいどう)
- 附和雷同(ふわらいどう)。
- 87 畏し(かしこし)
- 恐し(かしこし)。
- 88 ゴッドファザー(godfather)
- 89 面子(めんつ)
- 90 諾否(だくひ)
- 91 出し抜け(だしぬけ)
- 92 払拭(ふっしょく)
- 93 鳩首凝議(きゅうしゅぎょうぎ)
- 94 鳴り物入り(なりものいり)
- 95 歩留まり(ぶどまり)
- 96 諺(ことわざ)
- 97 MBO
- 目標管理。
- 98 御多分に洩れず(ごたぶんにもれず)
- 99 出帆(しゅっぱん)
- 100 入れ子(いれこ)
- 入れ籠(いれこ)。
- 101 ダブる
- 102 什器(じゅうき)
- 103 調度(ちょうど)
- 104 備品(びひん)
- 105 あからさま
- 106 グローブの法則
- 本書に解説があります。
- 107 溜まり(たまり)
- 108 払底(ふってい)
- 109 一石二鳥(いっせきにちょう)
- 110 カフェテリア(cafeteria)
- 111 弁護(べんご)
- 112 明明白白(めいめいはくはく)
- 113 タスク・フォース(task force)
- プロジェクトチーム。
- 114 蚤の市(のみのいち)
- 115 ユートピア(utopia)
- 理想郷。
- 116 年配(ねんぱい)
- 年輩(ねんぱい)。
- 117 支離滅裂(しりめつれつ)
- 118 血道をあげる(ちみちをあげる)
- 119 身勝手(みがって)
- 120 親和(しんわ)
- 121 ぽかん
- 122 中年の危機
- 『心理学』(株式会社有斐閣さん)、インターネットを参考にしました。
- 123 勘所(かんどころ)
- 124 躍起(やっき)
- 125 増進(ぞうしん)
- 126 自給自足(じきゅうじそく)
- 127 漸減(ぜんげん)
- 128 打ち拉ぐ(うちひしぐ)
- 129 発意(はつい)
- 130 薦める(すすめる)
- 参考:「勧める(すすめる)、奨める(すすめる)」。
- 131 パーセプション(perception)
- 認知。
- 132 行儀(ぎょうぎ)
- 133 掻い摘まむ(かいつまむ)
- 134 信を置く(しんをおく)
- 135 後知恵(あとぢえ)
- 136 皮相(ひそう)
- 137 ワークシート(worksheet)
- 138 黒子(くろご、くろこ)
- 黒衣(くろご、くろこ)。「こくし」と読めば別意。
- 139 廉直(れんちょく)
- 140 無様(ぶざま)
- 不様(ぶざま)。
- 141 皆目(かいもく)
- 142 士気(しき)
- 143 スポットライト(spotlight)
- 144 メリット制(meritせい)
- 本書では「メリット方式」。
- 145 首尾一貫(しゅびいっかん)
- 146 急遽(きゅうきょ)
- 147 やっつけ仕事(やっつけしごと)
- 本書では「やっつけ」。
- 148 レパートリー(repertory)
- 149 老朽化(ろうきゅうか)
- 150 お座敷がかかる(おざしきがかかる)
以下余白