『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』
朝日選書958
- 副題など
- 帯には「『負の力』が身につけば、人生は生きやすくなる。」とありました。
- 著者など
- 著者 : 帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)氏著
- 出版社など
- 株式会社 朝日新聞出版 さん
- 版刷など
- 2017年4月第1刷。
- ボリューム
- 254ページ。ただし、244ページ以降は「参考資料」です。
感じたこと
本書の主張とは違うかもしれませんが、漠然とした不安を思い出しました。
中学生の頃や、就職を意識し出すと、いろいろな不安がありました。
勉強していることが、役に立つのだろうか。今、やっている活動で将来大丈夫なのだろうか。就職できるのだろうか。結婚できるのだろうか。等々。
大人になってからいろんな人と話しをすると、何人か1人に不安の種類が違う人がいます。漠然としたものではなく、具体的な不安です。子どもの頃に、将来の目標を持ち、それを達成するために段階を追って1つ1つ努力を重ねてきた人です。このような人たちの不安は、試験に合格できるかや、努力を続けられるかどうかだったそうです。目的がはっきりしていると、不安も具体的なようです。そして、自分にできる対策を考え、実行したそうです。
たいていの人は、就職、結婚、出産、子育てなどをしながら、経験を積むことにより、漠然とした不安が解消していったと言います。あることが過去になると、事実として確定するのか不安はなくなります。将来、同じようなことが出てきても、経験がある程度不安を和らげてくれます。
もう一つあるのが、完成しないと気が済まない不安です。一段落もしないのに途中でおいたまま、その場を離れることです。例えば、宙ぶらりんの状態で週末を迎えることです。休日は仕事のことが気になって仕方がない人もいるようです。仕事を離れた時の、状態、次に何から始めるかを記憶し続け無ければなりません。休日は、その仕事のやり方が本当にそれでよかったのかどうか頭を悩ませることもあります。その結果、休日の間、緊張が続いたり、モチベーションの持続に気を使います。
このような人たちの中で、一際(ひときわ)、異色の人がいました。今まで出会った人の中で、この手の人は1人だけでした。
どのような人かというと。まず、子ども時から、将来に不安を感じたことがなかったそうです。そして、仕事がどのような段階、状態であろうと、途中できっぱりと中断できるのだそうです。その後、仕事のことが頭を過(よ)ぎることはないそうです。その人の行動を見ると、それがウソでないことがわかりました。仕事中の集中力が半端ではありません。そのことしか頭にありません。食事、会議、懇親会でも、その場の、そのことについてしかありません。懇親会では仕事の話しも出ますが、軽く流して、人との会話を楽しんでいました。何かで悩んで、寝られないなどということはないそうです。
この人を見て感じたのは、今しか見ていなし、目の前にあることしか考えていないようです。そして、目の前のことが変わると、掌(てのひら)を返したように、一瞬でそのモードに入るのです。意図的に気持ちの切り替えているというよりは、そのように人間ができているように感じました。
今のことに集中すれば、漠然した将来のことは考えにくいでしょう。今を集中できれば、かなりの成果を残せます。不安に苛(さいな)まれる時間がないとも言えます。
訓練して、この素早い切り替えができるのか、未だに疑問に思っています。これは、ひとつの才能ではないかと。
この書物を選んだ理由
『HARD THINGS-答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか-』を読んでいました。本書は『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』です。何か似ている気がしました。どこが違うんだろうかと思いました。
私の読み方
ネガティブ・ケイパビリティとは、わかりづらい言葉です。理解できたかは、はなはだ疑問です。
理由の1つは、この言葉が文学からきているからだと思います。私の読書レベルはまだまだですが、当然、読んだ本の数もわずかです。読む本の分野も広くはありません。特に文学は門外漢です。精々、学校の国語の授業で聞いたくらいです。
ですから、なぜ、シェイクスピア氏と紫式部氏がネガティブ・ケイパビリティと関係があるのか、その作家が書いた作品がどのように関係しているのか、わかりませんでした。
作家にネガティブ・ケイパビリティが求められるのは、本書にあったように思います。しかし、作家のどのような事態が、宙ぶらりんなのかわかりませんでした。何かを書こうとした時に、感じてはいるがどのように言葉で表すのかという苦悩なのでしょうか。それとも、書こうとする主題の真理を知るまでの苦痛なのでしょうか。いずれでもないかもしれませんね。
また、読む側にも同じくネガティブ・ケイパビリティがあるようです。先ほど書いた、かもしれない、です。作家の真意を読者がそのまま理解することは現実には不可能な気がします。作品と、読者の理解に折り合いを見つけるところは難しいものがあります。なぜなら、人は日々経験を重ねて感じ方や考え方が変わっていくからです。ストーリーは異口同音でも、作品の主張は何かについては、人それぞれ違う気がします。
読む前は、ネガティブ・ケイパビリティを知りたいと思いました。そして、本書により、言葉の説明や成り立ちを目にしました。
ネガティブ・ケイパビリティは、私たちの日常について回るものとの印象を持ちました。この力について、もっと詳しく解説が欲しいと感じました。私たちが持っている能力の中で、どの位置にあるものなのか。どんな場合に、有効で、または、害悪をなすことがあるのか。この力を制御する方法はあるのかどうか、です。
形式です。縦書きです。文字の大きさ、行長、行間、余白が適当で、文字が見やすかったと思います。
使われている言葉が難しいので、たくさん調べました。「調べたこと」に掲載したのは200項目ですが、実際に調べたのはかなりの数になります。掲載する項目を絞りました。
読む時間より調べている方が長かったかもしれません。調べて読むを繰り返しました。1段落、1項目の終わりまで読んでわからない文字に印をつけました。調べてから、再度、1段落、1項目のはじめから読むようにしました。
まずは文脈から意味を推察し、次に辞書などで推定しました。こうすることで、何を言いたいのかが、わかりやすいのではと考えました。現実には、内容が理解しづらいため、効果を感じられませんでした。
門外漢の私には、かなりハードルが高かったようです。文学好きや、作家を志望する人たちには、魅力的な本なのでしょうね。
読書所要時間など
- 所要時間
- 26日14時間42分
- 読み始め
- 2017(平成29)年7月7日(金)午前8時20分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年8月2日(水)~23時02分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。参考資料、奥付は軽く目を通しました。広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『地球をめぐる精神医学』 ジュリアン・レフ氏著
- 『論語』
- 『愚神礼讃』 デシデリウス・エラスムス氏著
※ その他、「参考資料」に多数の紹介がありました。
調べたこと
- 1 ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability)
- 本書に解説があります。
- 2 開架(かいか)
- 3 がらん
- 4 体得(たいとく)
- 5 推賞(すいしょう)
- 推称(すいしょう)。
- 6 聞き捨て(ききずて)
- 7 古稀(こき)
- 古希(こき)。
- 8 措定(そてい)
- 9 生半可(なまはんか)
- 10 忘恩(ぼうおん)
- 11 物悲しい(ものがなしい)
- 12 蔓延る(はびこる)
- 13 客死(かくし、きゃくし)
- 14 隙間(すきま)
- 15 澱む(よどむ)
- 16 絶唱(ぜっしょう)
- 17 籾殻(もみがら)
- 18 亀鑑(きかん)
- 19 人口に膾炙する(じんこうにかいしゃする)
- 20 若輩(じゃくはい)
- 弱輩(じゃくはい)。
- 21 出生(しゅっしょう、しゅっせい)
- 22 翳り(かげり)
- 23 奇しくも(くしくも)
- 24 許(もと)
- 25 継父(ままちち)
- 26 其処此処(そこここ)
- 27 尻目(しりめ)
- 後目(しりめ)。
- 28 奉公(ほうこう)
- 29 知己(ちき)
- 30 レジデント(resident)
- 本書では「研修医」。参考:インターン(intern)。医師の制度は現在ありません。
- 31 旧知(きゅうち)
- 32 内在(ないざい)
- 33 沈痛(ちんつう)
- 34 恩寵(おんちょう)
- 35 遊蕩(ゆうとう)
- 36 瑪瑙(めのう)
- 37 大御所(おおごしょ)
- 38 揺籃期(ようらんき)
- 39 パブリック・スクール(public school)
- 40 布く(しく)
- 敷く(しく)。
- 41 剰え(あまつさえ)
- 42 偉丈夫(いじょうふ)
- 43 混淆(こんこう)
- 混交(こんこう)。
- 44 不如意(ふにょい)
- 45 終生(しゅうせい)
- 46 駄洒落(だじゃれ)
- 47 科白(せりふ)
- 48 刀折れ矢尽きる(かたなおれやつきる)
- 本書では「矢尽き刀折れる」。「弓折れ矢尽きる」。
- 49 邂逅(かいこう)
- 50 女傑(じょけつ)
- 51 リハビリテーション(rehabilitation)
- 52 篠突く雨(しのつくあめ)
- 53 対峙(たいじ)
- 54 忌避(きひ)
- 55 甦る(よみがえる)
- 蘇る(よみがえる)。
- 56 僭越(せんえつ)
- 57 まごつく
- 58 老婆心(ろうばしん)
- 59 きょとん
- 60 棒読み(ぼうよみ)
- 61 応対(おうたい)
- 62 一期一会(いちごいちえ)
- 63 信奉(しんぽう)
- 64 検鏡(けんきょう)
- 65 高説(こうせつ)
- 66 友誼(ゆうぎ)
- 67 博覧強記(はくらんきょうき)
- 68 堪能(たんのう)
- 69 少壮気鋭(しょうそうきえい)
- 70 拙速(せっそく)
- 71 一顧(いっこ)
- 72 快刀乱麻(かいとうらんま)
- 快刀乱麻を断つ(かいとうらんまをたつ)。
- 73 巣窟(そうくつ)
- 74 捨象(しゃしょう)
- 75 のっぺらぼう
- 76 必発(ひっぱつ)
- インターネットで調べました。
- 77 一言片句(いちごんへんく)
- インターネットで調べました。
- 78 千鈞(せんきん)
- 本書では「千鈞の重み」。
- 79 差し出がましい(さしでがましい)
- 80 以心伝心(いしんでんしん)
- 81 伴侶(はんりょ)
- 82 遺す(のこす)
- 残す(のこす)。
- 83 正鵠を得る(せいこくをえる)
- 正鵠を射る(せいこくをいる)。参考:「的を射る(まとをいる)」。「当を得る(とうをえる)」。
- 84 キュア(cure)
- 本書では「治癒(ちゆ)」。
- 85 希死念慮(きしねんりょ)
- 86 通底(つうてい)
- 87 紛い(まがい)
- 88 見縊る(みくびる)
- 89 御破算(ごはさん、ごわさん)
- 90 びりっけつ
- 91 予後(よご)
- 医学用語。
- 92 釈迦に説法(しゃかにせっぽう)
- 93 下司の勘繰り(げすのかんぐり)
- 94 逢引き(あいびき)
- 95 所詮(しょせん)
- 96 安穏(あんのん)
- 97 生来(しょうらい、せいらい)
- 98 思念(しねん)
- 99 無分別(むふんべつ)
- 100 箍が外れる(たががはずれる)
- 101 戦慄(せんりつ)
- 102 旬日(じゅんじつ)
- 103 御祓い(おはらい)
- 104 古神道(こしんとう)
- 105 開口一番(かいこういちばん)
- 106 御幣(ごへい)
- 107 万年青(おもと)
- インターネットで画像を確認しました。
- 108 駆血帯(くけつたい)
- 109 二重盲検法(にじゅうもんけんほう)
- 110 結紮(けっさつ)
- 111 振戦(しんせん)
- インターネットで調べました。
- 112 彷彿(ほうふつ)
- 113 機序(きじょ)
- 114 昇華(しょうか)
- 115 押し並べて(おしなべて)
- 116 賦活(ふかつ)
- 117 苗床(なえどこ)
- 118 いみじくも
- 119 無垢(むく)
- 120 心眼(しんがん)
- 121 擱筆(かくひつ)
- 対義語は「起筆(きひつ)」。
- 122 鯉口(こいぐち)
- 123 快哉(かいさい)
- 124 五里霧中(ごりむちゅう)
- 125 刻印(こくいん)
- 126 脳裡(のうり)
- 脳裏(のうり)。
- 127 真髄(しんずい)
- 神髄(しんずい)。
- 128 先達(せんだつ、せんだち)
- 129 憧憬(しょうけい、どうけい)
- 130 手垢(てあか)
- 131 狭隘(きょうあい)
- 132 勘当(かんどう)
- 133 老いさらばえる(おいさらばえる)
- 老いさらぼう(おいさらぼう)。
- 134 肯く(うなずく)
- 135 潜航(せんこう)
- 136 興(きょう)
- 137 継子(ままこ)
- 138 譚(たん、ものがたり)
- 139 落窪物語(おちくぼものがたり)
- 140 糊口を凌ぐ(ここうをしのぐ)
- 141 奉幣使(ほうへいし)
- 142 入内(じゅだい)
- 143 生き霊(いきりょう)
- 144 死霊(しりょう)
- 145 恋路(こいじ)
- 146 御霊(みたま)
- 147 溢れる(あふれる)
- 148 生い立ち(おいたち)
- 149 のっぴきならぬ
- 150 戦く(おののく)
- 151 隠居(いんきょ)
- 152 懸想(けそう)
- 153 怨霊(おんりょう)
- 154 ドン・ファン(Don Juan)
- 155 オマージュ(hommage:フランス語)
- 尊敬。讃辞。
- 156 供人(ともびと)
- 157 莚(むしろ)
- 蓆(むしろ)、筵(むしろ)。
- 158 滂沱(ぼうだ)
- 159 漢籍(かんせき)
- 160 素読(そどく)
- 161 素養(そよう)
- 162 鷹揚(おうよう)
- 163 坩堝(るつぼ)
- 164 荘厳(そうごん)
- 参考:荘厳(しょうごん)。
- 165 親の七光り(おやのななひかり)
- 166 何糞(なにくそ)
- 167 放任主義(ほうにんしゅぎ)
- 168 野放図(のほうず)
- 169 骨子(こっし)
- 170 寛容(かんよう)
- 171 聖職者(せいしょくしゃ)
- 172 悪弊(あくへい)
- 173 禁書(きんしょ)
- 174 粛正(しゅくせい)
- 参考:粛清(しゅくせい)。
- 175 両刃の剣(もろはのつるぎ)
- 諸刃の剣(もろはのつるぎ)。
- 176 卑怯者(ひきょうもの)
- 177 無力(むりょく)
- 178 殺戮(さつりく)
- 179 侍医(じい)
- 180 扱き下ろす(こきおろす)
- 181 沸点(ふってん)
- 182 ユマニスト(humanisme:フランス語)
- ヒューマニズム(humanism)。
- 183 翻刻(ほんこく)
- 184 一家言(いっかげん)
- 185 大向こう(おおむこう)
- 186 大向こうを唸らす(おおむこうをうならす)
- 187 怯む(ひるむ)
- 188 坐視(ざし)
- 座視(ざし)。
- 189 綱領(こうりょう)
- 190 ボルシェヴィキ(Bol’sheviki:ロシア語)
- ボリシェヴィキ。
- 191 鬩ぎ合い(せめぎあい)
- 192 余燼(よじん)
- 193 恩典(おんてん)
- 194 反故(ほご)
- 反古(ほご)。
- 195 散華(さんげ)
- 196 交誼(こうぎ)
- 197 召集(しょうしゅう)
- 198 今生(こんじょう)
- 今生の暇乞い(こんじょうのいとまごい)。本書では「今上の別れ」。参考:今上(きんじょう、こんじょう)。
- 199 蔓延(まんえん)
- 参考:蔓延る(はびこる)。
- 200 擱く(おく)
以下余白