『裁判官の爆笑お言葉集』
幻冬舎新書031
- 副題など
- 帯には「判事の皆さん、おかしすぎます!」とありました。
- 著者など
- 著者 : 長嶺 超輝(ながみね まさき)氏著
- 出版社など
- 株式会社幻冬舎 さん
- 版刷など
- 2007年3月第1刷。読んだものは、2007年5月第8刷。
- ボリューム
- 219ページ。ただし、218ページ以降は「主な参考文献・サイト」です。
感じたこと
入院中、最後に読んだ本です。
組織で働いていると、上司が法曹ではないかと思うことがありました。ある職場にいた時に、私の隣のセクション(A課)で起こった事件をお話しします。
ある日、副所長が、A課のスタッフ全員に会議室に集まるように言いました。そして、私に、A課の留守番をするように言いました。
小一時間ほどして、A課のスタッフが戻ってきました。そのスタッフは全員、怪訝(けげん)そうな顔つきでした。全員が席に座ると、年長のスタッフが口火を切りました。そして、さらに1時間ほど、ひそひそ話しのスタッフだけの会議をしていました。「何のことかしら」「どういうことだろう」などの声が微(かす)かに聞こえてきました。その雰囲気から、ただならぬものを感じました。
留守番をしたこともあり、気になりました。日頃から世間話をしているスタッフ(甲氏)に、事情を聞きました。すると、次のような話でした。
副所長が言うには。A課のスタッフY氏が相談に来た。Y氏は、仲間はずれにされ1人で仕事をしている、と訴えている。そんなことをする理由と、Y氏を入れて全員で仕事をする手立てを考えよ。とのこと。A課全員が招集された日、Y氏は職場を休んでいました。
副所長は、頭ごなしにA課全員に強い口調で言ったそうです。ところが、心当たりのないA課スタッフは、???だったそうです。ですから、副所長の要求に答えられなかったのです。その後も、A課員1人1人が副所長に呼び出され、事情を聞かれていました。
隣のセクションにいた私は、A課をいつもうらやましく思っていました。みんなが仲良さそうに楽しそうに仕事をしていたからです。外見からも、訴えたY氏が1人浮いているとは微塵も感じませんでした。
3週間ほどたった頃、A課のゴタゴタは収まりかけていました。再度、いつものスタッフ・甲氏に成り行きを聞きました。
すると、次の話がありました。Y氏が具体的な出来事を言ったわけではないが、思い当たることが1つある。定期的な作業でのこと。通常はスタッフ全員で分担を決め、手分けしてこなしている。作業工程と分量、確実性を考えると1人ではできない。ある時、Y氏が1人で作業したいので、自分の分量を分けて欲しいと言ってきた。初めての試みだったので、スタッフ全員で話し合った。その結果、Y氏の主張を認めた。その際、困ったことがあったらヘルプをするように言った。また、作業中も、定期的に声をかけた。しかし、Y氏からの要請は何もなかった。Y氏が1人でした仕事はこれだけ。
結局、真相がうやむやのうちに、Y氏へ、もっと配慮をするように副所長からスタッフ全員へ指導があった。Y氏を除く、スタッフ全員が当初から悪者と決めつけられ悪行とされた、Y氏のわがままの尻ふきをさせられた、濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)だ、と感じた。
この事件の本質は、悲劇の被害者を装って何らかの対価を得ようとすることのようです。
同僚や部下の悪口、無能さをでっちあげ、仲間はずれにされているとか、業績が伸びないなどと、上司に訴えるのです。一般に、人は被害者のことを本当のことと思い込みやすいのだそうです。このケースのように、1人対多数ではなおのことです。この思い込みを利用して、自らの欲求を満たそうとするのです。例えば、自己顕示や出世などの欲を満たしたり、孤独感をなくしたり、です。
管理監督職だけでなく、一般のスタッフも、このことは頭に入れておく必要があります。訴えの内容について、キチンと調べる必要があります。当事者だけでなく、その周囲からの情報収集はやっておくべきです。公正に処理すべきです。
さて、その後のA課です。モチベーションはガタ落ちでした。仕事の能率は下がり、スタッフから笑顔が消え、重苦しい雰囲気になりました。自らの希望でY氏は翌年に転勤しましたが、その後遺症は残ったままでした。完全に組織としての機能を失っていました。
この書物を選んだ理由
積ん読の1冊です。10年ほど前に買った本です。裁判官という職業柄、爆笑になる言葉を法廷で言うのだろうか、に興味を持ちました。やがて本を読めるようになった時に、息抜きの1冊として考えていました。
積ん読の間に、同じような内容のテレビ番組を見ました。そして、この本を買ったことも忘れていました。入院中に、家族に持ってきてもらいました。
私の読み方
本書で取り上げられた裁判のいくつかは、テレビニュースで見たことがあります。裁判官も人間なんですね。
見開き2ページで、1件の裁判を取り上げていました。
被告人の行状、判決がわからないと、どんな裁判かわかりません。そのうえ、爆笑のお言葉を取り上げるとなると、それ相当の文字数になるはずです。
ところが、裁判官のお言葉、発言時の状況、解説、と3つのパートに分けていました。それにより、少ない文字数でも、内容を記述できたのでしょうね。
お見事だと思いました。
本書でいいなと感じたのは、コラムです。
裁判所のあまり目にすることのないことが書かれていました。また、マスメディアでの言葉の使い方もありました。
裁判は専門家同士のぶつかり合いで、それを一般人が理解するのは難しいということでしょうか。しかも、マスメディアの裁判に関する言葉も独特の気がしました。
読むと、そういうことかと、わかった気になります。
「感じたこと」を書こうとした時、何も思い浮かびませんでした。その理由として、あまりにも内容が個別だからです。また、刑事事件であり、ネガティブ、人様に勧められる内容でもありません。
お言葉それ自体は爆笑物でも、その土台となった事件は笑えません。どうも、私の中では複雑な気分でした。ギリシア神話、パラドックス、反面教師などが思い浮かびましたが、適当な言葉が出てきませんでした。
いつもなら、マーカーを引く部分があるですが、このたびはほとんどありませんでした。
形式です。
新書形式です。本書は、文字の大きさ、字体、タテ・ヨコ書きを使い分けていました。文字だけの本ですが、かなり見やすくなっています。図や表があったような錯覚がありました。
本書は、裁判を見に行こうかな、という気にさせてくれます。
読書所要時間など
- 所要時間
- 43日1時間29分
- 読み始め
- 2017(平成29)年6月11日(日)15時22分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年7月24日(月)~16時51分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。ただし、著者略歴、奥付は軽く目を通し、巻末の書籍広告は見ていません。
取り上げられた書物など
※ 「主な参考文献・サイト」に多数の紹介がありました。
出来事
7月18日(火) 聖路加国際病院名誉院長の日野原 重明(ひのはら しげあき)さんが死去。105歳。
ひととき
兵庫県宍粟(しそう)市波賀(はが)町戸倉(とくら)峠にある「滝流しそうめん」を食べに行きました。
そうめん一人前は700円でした。そうめんがいくらかまとまって、何回か流れてきます。最後に、サクランボが流れて来て終わりでした。
そうめんは、長い樋(とい)を流れてきます。箸で取れなかったそうめんは、最後にザルに落ちます。食べ終わって、ふと、ザルを見ると、青虫が入っていました。
自然が濃いところで、風が心地よかったです。
写真は、流しそうめんの設備で、横に渡してある鉄柱に止まったトンボです。近かったのですが、カメラを向けても逃げませんでした。
以上、平成29年7月21日(金)撮影。
調べたこと
- 1 裁判(さいばん)
- 2 裁判官(さいばんかん)
- 3 爆笑(ばくしょう)
- 4 償い(つぐない)
- 5 執拗(しつよう)
- 6 悪びれる(わるびれる)
- 7 激昂(げっこう、げきこう)
- 激高(げっこう、げきこう)。
- 8 説諭(せつゆ)
- 本書に解説があります。
- 9 二項対立(にこうたいりつ)
- 10 置いてきぼり(おいてきぼり)
- 置いてけ堀(おいてけぼり)。
- 11 苦笑(くしょう)
- 12 失笑(しっしょう)
- 13 将又(はたまた)
- 14 感涙(かんるい)
- 15 歴とした(れっきとした)
- 16 気紛れ(きまぐれ)
- 17 風上に置けぬ(かざかみにおけぬ)
- 18 ぱったり
- 19 桃源郷(とうげんきょう)
- 20 行状(ぎょうじょう)
- 21 屁理屈(へりくつ)
- 22 しゃあしゃあ
- 23 いけ・・・
- 24 贅沢(ぜいたく)
- 25 素敵(すてき)
- 26 ぐる
- 27 尊貴(そんき)
- 28 画期的(かっきてき)
- 劃期的(かっきてき)。
- 29 指南(しなん)
- 30 生来(しょうらい、せいらい)
- 31 気弱(きよわ)
- 32 レア(rare)
- 33 膨大(ぼうだい)
- 34 咳き込む(せきこむ)
- 35 雲助(くもすけ)
- 蜘蛛助(くもすけ)。
- 36 紛い(まがい)
- 37 無宿者(むしゅくもの)
- 38 賛否(さんぴ)
- 39 両論(りょうろん)
- 40 非業(ひごう)
- 41 袋叩き(ふくろだたき)
- 42 卑怯(ひきょう)
- 43 十把一絡げ(じっぱひとからげ)
- 44 時節柄(じせつがら)
- 45 気運(きうん)
- 46 ざっくばらん
- 47 警鐘(けいしょう)
- 48 一張羅(いっちょうら)
- 49 法服(ほうふく)
- 法衣(ほうい、ほうえ)。
- 50 しおらしい
- 51 バリエーション(variation)
- 52 派生(はせい)
- 53 吝か(やぶさか)
- 54 知らん振り(しらんぷり)
- 55 悔悛(かいしゅん)
- 56 容赦(ようしゃ)
- 57 傍聴(ぼうちょう)
- 58 愛唱(あいしょう)
- 59 けんもほろろ
- 60 飄飄(ひょうひょう)
- 61 真摯(しんし)
- 62 毒突く(どくづく)
- 63 僻み(ひがみ)
- 64 庇う(かばう)
- 65 萎える(なえる)
- 66 因習(いんしゅう)
- 67 癒着(ゆちゃく)
- 68 職責(しょくせき)
- 69 血迷う(ちまよう)
- 70 断罪(だんざい)
- 71 慢心(まんしん)
- 72 放蕩(ほうとう)
- 73 目の当たり(まのあたり)
- 74 虚空(こくう)
- 75 傍若無人(ぼうじゃくぶじん)
- 76 手堅い(てがたい)
- 77 常套手段(じょうとうしゅだん)
- 78 人面獣心(じんめんじゅうしん)
- 79 えげつない
- 80 半信半疑(はんしんはんぎ)
- 81 年端(としは)
- 年歯(としは)。
- 82 後ろめたい(ういろめたい)
- 83 揉める(もめる)
- 84 酌量(しゃくりょう)
- 85 遅咲き(おそざき)
- 84 機微(きび)
- 85 勘繰る(かんぐる)
- 86 哀切(あいせつ)
- 87 入水(じゅすい)
- 88 洋の東西を問わず(ようのとうざいをとわず)
- 89 愛憎(あいぞう)
- 90 青い鳥(あおいとり)
- 童話。幸福は身近にある、という意味でしょうか。
- 91 気長(きなが)
- 92 棄却(ききゃく)
- 棄却は、内容をみたうえで斥(しりぞ)けること。参考:却下(きゃっか)は、内容をみないで斥(しりぞ)けること。
- 93 熟年(じゅくねん)
- 94 辛抱(しんぼう)
- 95 縺れ(もつれ)
- 96 勘違い(かんちがい)
- 97 付き纏う(つきまとう)
- 98 バイタリティー(vitality)
- 99 イケメン(いけ面)
- 100 獰猛(どうもう)
- 101 連む(つるむ)
- 102 轢く(ひく)
- 103 逆撫で(さかなで)
- 104 ホラー(horror)
- 105 一世を風靡する(いっせいをふうびする)
- 106 年甲斐(としがい)
- 参考:年甲斐もない。
- 107 冥福(めいふく)
- 108 吐露(とろ)
- 109 リミッター(limiter)
- 110 ・・・方(・・・かた)
- 本書では「お三方」。
- 111 火の車(ひのくるま)
- 112 紛糾(ふんきゅう)
- 113 前(ぜん)
- 本書では「公判前整理手続き」。「ぜん」とルビがありました。
- 参考:「期日前投票」を「きじつぜんとうひょう」または「きじつまえとうひょう」と聞きます。関係者は「ぜん」でわかるようですが、一般の人は「まえ」がわかりやすいと思います。
- 114 夜明け(よあけ)
- 115 代読(だいどく)
- 116 魔が差す(まがさす)
- 117 敬意(けいい)
- 118 苗(なえ)
- 119 堅実(けんじつ)
- 120 空空しい(そらぞらしい)
- 121 見栄を張る(みえをはる)
- 122 叱咤(しった)
- 123 駄駄っ子(だだっこ)
- 124 キュート(cute)
- 125 倍(ばい)
- 126 熱血漢(ねっけつかん)
- 127 襟を正す(えりをただす)
- 衿を正す(えりをただす)。
- 128 散財(さんざい)
- 129 断罪(だんざい)
- 130 パフォーマンス(performance)
- 131 リップサービス(lip service)
- 132 滔滔(とうとう)
- 133 某(なにがし)
- 何某(なにがし)。
- 134 百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)
以下余白