『性格心理学への招待[改訂版]』
新心理学ライブラリ=9
- 副題など
- 副題は「自分を知り他者を理解するために」
- 著者など
- 著者 詫摩 武俊(たくま たけとし)氏
瀧本 孝雄(たきもと たかお)氏
鈴木 乙史(すずき おとし)氏
松井 豊(まつい ゆたか)氏
他共著 - 監修 梅本 堯夫氏
大山 正氏 - 出版社など
- 株式会社 サイエンス社 さん
- 版刷など
- 1990年5月初版。読んだものは、2009年9月改訂版第9刷。
- ボリューム
- 267ページ。ただし、249ページ以降は、「引用文献」「人名索引」「事項索引」「執筆者紹介・分担」です。
感じたこと
本書のBOX11に「化粧と性格」がありました。そういえば・・・、と入院中のことを思い出しました。
入院患者は、男女ともほとんどが高齢者です。手術をした場合、入院期間は短くて2週間です。手術をすると3日はベッドで安静にするので、他の患者さんに会うことはありません。しかし、リハビリが始まると、土日祝日も入れて毎日、他の患者さんと顔を合わせます。
患者や家族の集う大部屋や、廊下、リハビリ室で感じたのは、どの入院患者さんも小綺麗なことです。
男性患者であれば、無精ひげが1人や2人いても不思議はありません。しかし、皆さん洗面をし、ひげを剃り、レンタルパジャマも普通に着ていました。
女性患者さんも、お化粧はしていないようでしたが、レンタルパジャマをお洒落に着こなし、髪の毛は整っていました。
入院は集団生活の場です。自分が無精だと他の人に不快な思いをさせてしまいます。パジャマを定期的に替えたり、食後の歯磨きも大切なことです。
自分の身なりだけでなく、立ち居振る舞いも快適に過ごすには必要だと思いました。
動けるようになって、洗面所で歯を磨きました。体が不自由なので、洗面台は水などで濡れ、ひどい状態になりました。自分から見て、次の人は不快だろうなと感じました。
ふと横を見ると、高齢の女性が洗面を終えるところでした。同じように、洗面台はひどく汚れていました。女性はあらかじめ取っておいたペーパータオルで洗面台を拭き始めました。すると、ピッカピッカになりました。
なるほど、使い捨てのペーパータオルを使えば、少ない労力できれいにできます。私も、右へならえです。すると、良心の呵責(かしゃく)から解放されました。
手術後、はじめて洗面所を訪れた時、どの台もあまりきれいではありませんでした。使ったままの汚れた状態でした。ある時、洗面所を複数人で使うことがありました。最初の1人が洗面台をきれいにすると、他の人も同じようにしていました。
このことを思い返して、私が感じたことがあります。なぜ、皆さんが洗面所をきれいにしたかです。理由を考えてみると、
1 他人の目を気にした
2 汚したことに罪の意識を感じた
3 次に使う人のことをおもんばかった
があります。
この複数人が使ったとき以降、洗面所はきれいなときが多くなりました。掃除は日に2回ほどですので、おそらく使った人がその都度汚れを拭いたのだと思います。
このことを考えると、自分が快適に過ごしたいから、きれいにしたのでしょう。自分の使用後、次に使うのが自分の場合、きれいな方がいいですからね。自宅でもあまりにも汚れたら、少しはきれいにします。
自分が快適にということでは、1~3の理由も含まれます。自他共に、嫌な思いをしないように行動しているようです。
自分の使った洗面台をきれいにすること。これは「身だしなみ」ではないかと思いました。化粧が外に見せる気遣いだとすると、身だしなみは内面の気遣いではないかと。
「化粧水や乳液を顔につけるのは身だしなみで、化粧ではない」と友達に言われたことがあります。当時、「化粧」と「身だしなみ」の関係がよくわかりませんでした。
先ほどの「身だしなみは内面の気遣い」として考えると、化粧水や乳液は自分の肌を健康に保つためにしています。これは自分のためです。仮に、化粧水も使わずに、肌がカサカサでボロボロだったら、周りの人は気味悪がるかもしれません。この場合、自他共に不快にならないようにしています。
入院生活を快適に過ごすには、挨拶や、言葉遣い、立ち居振る舞いは大切です。健常者であれば、常識とかマナーで語られることが多く、半ば強要する人もいます。しかし、これらは法律のように強制できないのに、です。
入院すると、自分が人に迷惑をかけていることを実感します。それと同時に、人の求めに応じられないし、他の患者さんに求められないことを知ります。常識やマナーを実践できないし、通用しません。
そんな中で私が感じたのは、「身だしなみ」です。身だしなみは自分のことです。どの程度にするかは自分が決めることです。自分の身だしなみについて、他人にとやかく言われる筋合いはありません。
1人の振る舞いに感化され、周りの人の身だしなみへの志が高くなるなら、もっと快適に過ごせるはずです。今で言う、インスパイア(inspire)でしょうか。このことは、健常者でも同じだと思います。
高齢の女性の世代は、起居動作の厳しい教育を受けたのかもしれません。かなりの時間が流れても、その行いが変わらないのは、女性の性格かもしれません。
入院患者に化粧のない病棟だからこそ、身だしなみに思いが及んだのかもしれません。それでも、「化粧」と「身だしなみ」を明確に区別する自信が今もありません。何となく、身だしなみについては、イメージできるかなという感じです。
この書物を選んだ理由
読書では、読者の性格も関係するのでは、と思いました。大学で使われるような性格の入門書を探しました。素人でも読めるような本です。
書店、インターネットで探しました。決め手は、『心理学』(2004年3月初版。無藤隆氏他共著。株式会社有斐閣さん)に紹介されていたことです。
この本も買ってから数年ほど積ん読になっていました。どうも専門の入門書や、教科書というのは堅苦しく、読むのが困難というイメージを私が持っているからでしょうか。
検査入院の少し前から、新しい本の確保がなく、病院では物色できません。入院病棟では様々な人に出会います。せっかくの機会なので、性格の勉強でもするか、との気分で読むことにしました。本は家族に病室まで持ってきてもらいました。
私の読み方
心理学や精神医学という言葉を聞いて、いつも思うのは、なぜ、同じような分野が並立するのか、です。
心理学では精神医学の言葉や内容が出てきます。同じく精神医学でも、心理学の実験や言葉、内容が出てきます。心理学と精神医学を1つにした方が、合理的に思えます。
医学は、病気やケガの治療をします。本人や他者が訴える苦痛を和らげたり取り除いたりするのが医学の役割でしょうか。
心理学は、人とは何かを知るためにあるようです。正常であっても、1人や集団の心の動きを探ろうとしています。
心理学でも精神医学でも、普通とは何の定義がないようです。性格もいろいろあり、感じ方も様々です。何が正常なのかわからなければ、心の作用を測定したり、治療の効果を確認しづらいように思うのですが。たとえ正常がある程度の範囲であっても、基準のようなものが必要に思うのです。
一般の本の感覚で心理学の本を読むと、とりあえずは読めます。ところが、時々、アレッと思うことがあります。どこでどう間違ったのか、話の筋が通らなくなることがあります。
その理由の1つは、言葉にあるようです。
素人には、心理学用語と一般の言葉の区別がつかないことがあります。心理学用語とわかって、調べて読めば、書いてあることがわかります。一般の言葉として読むと、後になって、なんで? となります。また、業界用語のように、辞典には載らない学会用語があるようです。
また、心理学には流派があるようです。ある心理学辞典に載っている用語が、別の辞典には無いことがあります。また、言葉は違いますが、同じ意味をさすものもあります。流派により、言葉が使い分けられているようです。心理学を一通り解説した本では、その区別がつかないため、素人は困惑します。前章のあの言葉は一体何だったのかと。
さらに、心理学には、感情を表す言葉がよく出てきます。嫉妬、憤怒、羞恥、哀惜などです。これらの言葉は、受け手の性格や人生により温度差があるように感じます。感情の言葉について、客観的な定義ができていません。というより、できないようです。また、解離性の遁走、離人症状などは、言葉でいくつかの角度から解説をしていますが、実感を持てません。
おそらく心理学で扱う範囲が急速に広がりすぎて、言葉が乱立したようです。専門家にはわかりやすくても、門外漢にはきびしい環境です。
形式です。
横書きです。文字は小さく感じますが、文字の間、行間、左右上下見開きページ中央の余白が適当で読みやすかったです。
紙のことです。光の当たり具合によっては、紙に反射して、文字が見づらい時がありました。
特定のテーマを取り上げたBOXがあり、退屈せずに読めました。この中のいくつかは、ある組織にいた時に研修で習ったことがありました。新聞や、世間で話題になったものもあり、楽しく読ませていただきました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 39日10時間46分
- 読み始め
- 2017(平成29)年6月4日(日)午前10時45分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年7月13日(木)~21時31分
- 読んだ範囲
- 本書。ただし、「引用文献」「人名索引」「事項索引」は必要な時に使い、「執筆者紹介・分担」と奥付は軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- 『天才の心理学』 クレッチマー氏著
- 『「甘え」の構造』 土居 健郎氏著
- 『タテ社会の人間関係』 中根 千枝氏著
- 『日本人の心理』 南 博氏著
- 『ものの見方』 笠 信太郎氏著
これ以外にも、多くの参考文献の紹介がありました。
調べたこと
- 1 鑑みる(かんがみる)
- 2 清新(せいしん)
- 3 精髄(せいずい)
- 4 体裁(ていさい)
- 5 学際(がくさい)
- 6 冗漫(じょうまん)
- 7 根回し(ねまわし)
- 8 散見(さんけん)
- 9 新人類(しんじんるい)
- 10 団塊の世代(だんかいのせだい)
- 11 凝視(ぎょうし)
- 12 統御(とうぎょ)
- 13 無神経(むしんけい)
- 14 羞恥(しゅうち)
- 15 悔悟(かいご)
- 16 叙述(じょじゅつ)
- 17 遅鈍(ちどん)
- 18 爬虫類(はちゅうるい)
- 19 足早(あしばや)
- 20 相関(そうかん)
- 21 孤高(ここう)
- 22 偏屈(へんくつ)
- 23 定見(ていけん)
- 24 信念(しんねん)
- 25 見損なう(みそこなう)
- 26 見直す(みなおす)
- 27 愚直(ぐちょく)
- 28 買い被る(かいかぶる)
- 29 見縊る(みくびる)
- 30 屈託(くったく)
- 31 猫被り(ねこかぶり)
- 32 粗野(そや)
- 33 けちんぼ
- けちん坊(けちんぼう)。
- 34 箴言(しんげん)
- 35 叡智(えいち)
- 英知(えいち)、叡知(えいち)。
- 36 類型学(るいけいがく)
- 37 観相学(かんそうがく)
- 38 骨相学(こっそうがく)
- 39 筆跡学(ひっせきがく)
- 40 思弁(しべん)
- 41 気運(きうん)
- 42 内観法(ないかんほう)
- 43 被験体(ひけんたい)
- 動物の場合。人間の時は「被験者(ひけんしゃ)」。
- 44 外界(がいかい)
- 45 直観(ちょっかん)
- 参考:直感(ちょっかん)。「直感」はすぐに感じること。「直観」はすぐに知る、わかること。
- 46 構想(こうそう)
- 47 斬新(ざんしん)
- 48 ユニーク(unique)
- 49 コンフリクト(conflict)
- 葛藤(かっとう)。
- 50 動因(どういん:drive)
- 内部の作用。参考:誘因(ゆういん:incentive)。外部の作用。動機=動因+誘因。
- 51 操作的用語
- 操作主義と関係があるのでしょうか。わかりませんでした。
- 52 撚糸(よりいと)
- 53 生彩(せいさい)
- 精彩(せいさい)。
- 54 弁別(べんべつ)
- 55 査定(さてい)
- 56 通
- 「とおり」「つう」どう読むのでしょうか。本書では「・・・の通状況的・・・」。
- 57 骨子(こっし)
- 58 首尾一貫(しゅびいっかん)
- 59 断片的(だんぺんてき)
- 60 細心(さいしん)
- 61 訓戒(くんかい)
- 訓誡(くんかい)。
- 62 歪曲(わいきょく)
- 63 交流分析(こうりゅうぶんせき)
- TA(transactional analysis)。
- 64 天真爛漫(てんしんらんまん)
- 65 尖鋭化(せんえいか)
- 66 狂信(きょうしん)
- 67 機智(きち)
- 機知(きち)。
- 68 諧謔(かいぎゃく)
- 69 享楽(きょうらく)
- 70 実際家(じっさいか)
- 71 卑俗(ひぞく)
- 72 嗜好(しこう)
- 73 無味乾燥(むみかんそう)
- 74 鈍麻(どんま)
- 75 凝り性(こりしょう)
- 参考:懲り性(こりしょう)。
- 76 慇懃(いんぎん)
- 77 悲愴(ひそう)
- 参考:悲壮(ひそう)。
- 78 審美(しんび)
- 79 折衷(せっちゅう)
- 折中(せっちゅう)。
- 80 些細(ささい)
- 81 流暢(りゅうちょう)
- 82 煽てる(おだてる)
- 83 搾取(さくしゅ)
- 84 巷間(こうかん)
- 85 プロフィール(profile)
- 86 モザイク(mosaic)
- 87 平板(へいばん)
- 88 錯綜(さくそう)
- 89 ウィット(wit)
- 90 鈍重(どんじゅう)
- 91 退嬰的(たいえいてき)
- 92 偏執病(へんしゅうびょう)
- パラノイア(paranoia)。
- 93 易感
- 図から「感じやすさ」という意味でしょうか。調べましたが、わかりませんでした。
- 94 隠退(いんたい)
- 参考:引退(いんたい)。
- 95 演繹的(えんえきてき)
- 参考:帰納的(きのうてき)。
- 96 憤激(ふんげき)
- 97 補償(ほしょう)
- 心理学語。
- 98 虚勢(きょせい)
- 99 生得的(せいとくてき)
- 100 敬虔(けいけん)
- 101 贅沢(ぜいたく)
- 102 享楽的(きょうらくてき)
- 103 島嶼(とうしょ)
- 104 既往症(きおうしょう)
- 105 ゆとり
- 106 注視(ちゅうし)
- 107 愛他的行動(あいたてきこうどう)
- 利他的行動(りたてきこうどう)。心理学辞典を見ました。
- 108 憐れみ(あわれみ)
- 哀れみ(あわれみ)。
- 109 哀惜(あいせき)
- 110 品性(ひんせい)
- 111 品位(ひんい)
- 112 初志貫徹(しょしかんてつ)
- 113 鷹揚(おうよう)
- 114 伝承(でんしょう)
- 115 別離(べつり)
- 116 散文的(さんぶんてき)
- 117 分子生物学(ぶんしせいぶつがく)
- 118 寄与(きよ)
- 119 鎮静(ちんせい)
- 120 犠牲(ぎせい)
- 121 否応無しに(いやおうなしに)
- 122 無頓着(むとんちゃく)
- 123 居心地(いごこち)
- 124 野心(やしん)
- 125 足掻く(あがく)
- 126 枯死(こし)
- 127 リストアップ(list up)
- 和製語。
- 128 固執(こしゅう、こしつ)
- 129 猜疑(さいぎ)
- 130 嫉妬(しっと)
- 131 神神しい(こうごうしい)
- 132 峻別(しゅんべつ)
- 133 留巣性(りゅうそうせい)
- 134 脳髄(のうずい)
- 135 ダイナミック(dynamic)
- この言葉を日本語にするのは難しいと感じます。
- 1つは物の動きを表す「動的な」「動きのある」「原動力」など意味です。人の動きでは「精力的」「活動的」「躍動的な」意味が。医学語では「機能的」と使われるようです。
本書では「このような、ダイナミックな親子関係」とありました。文脈から、「このように機能する親子関係」または「このように動く親子関係」言い換えてはどうでしょうか。それでも、わかりづらい気がします。
ダイナミックやダイナミクスはイメージしやすい便利な言葉です。しかし、それをわかりやすく日本語にするのは難しく思います。文脈から何となくわかるため読み流しますが、しっかりと意味を確認すべき言葉だと思っています。 - 136 新奇(しんき)
- 137 固着(こちゃく)
- 心理学語。
- 138 歪み(ゆがみ、ひずみ)
- 139 列挙(れっきょ)
- 140 ハロー効果(はろーこうか、halo effect)
- 光背効果(こうはいこうか)。心理学語。
- 141 向性(こうせい、version)
- 気質における外向、内向のこと。心理学語。
- 142 手巾(はんかち)
- 143 仕草(しぐさ)
- 仕種(しぐさ)。
- 144 香気(こうき)
- 145 乖離(かいり)
- 146 生起(せいき)
- 147 床しい(ゆかしい)
- 148 リラクゼーション(relaxation)
- リラクセーション。
- 149 貶す(けなす)
- 150 パブリック(public)
- 対義語は「プライベート(private)」。
- 151 残忍(ざんにん)
- 152 輪郭(りんかく)
- 153 遺憾(いかん)
- 154 徴候(ちょうこう)
- 155 萎縮(いしゅく)
- 156 発散(はっさん)
- 157 卑怯(ひきょう)
- 158 虞犯少年(ぐはんしょうねん)
- 本書では「虞犯行為」。
- 159 嗜癖(しへき)
- 160 mal-
- 「悪・・・」「不良・・・」など。
- 161 相異(そうい)
- 参考:相違(そうい)。
- 162 寛解(かんかい)
- 163 捲し立てる(まくしたてる)
- 164 焦燥(しょうそう)
- 焦躁(しょうそう)。
- 165 念慮(ねんりょ)
- 166 DSM-Ⅳ
- 最新版は「DSM-5」。
- 167 境界(きょうかい)
- 境界性パーソナリティ障害(きょうかいせいpersonalityしょうがい)、境界性人格障害(きょうかいせいじんかくしょうがい)。医学語。
- 168 嘔気(おうき)
- 169 離人症(りにんしょう)
- 現実感を喪失した症状、のようです。
- 170 罹患(りかん)
- 171 俗説(ぞくせつ)
- 172 氾濫(はんらん)
- 173 穏和(おんわ)
- 174 カルチャーショック(culture shock)
- 175 皮相(ひそう)
- 176 極論(きょくろん)
以下余白