『ビジョナリー カンパニー』
原題は『BUILT TO LAST』
- 副題など
- 「時代を超える生存の原則」
- 原副題は「SUCCESSFUL HABITS OF VISIONARY COMPANIES」
- 帯には「時代を超えて際立った存在であり続ける企業の本質を明らかにした『時代を超える』経営書。」とありました。
- 著者など
- ジム・コリンズ(JIM COLLINS)氏&ジェリー・ポラス(JERRY PORRAS)氏共著
- 山岡 洋一(やまおか よういち)氏訳
- 出版社など
- 株式会社 日経BPマーケティング さん
- 版刷など
- 1995年9月1版1刷。読んだものは、2015年11月1版50刷。
- ボリューム
- 469ページ。ただし、392ページから付録になっています。441ページ以降は参考文献です。
感じたこと
伝統とは何かということでしょうか。
伝統を語るには、それなりの期間、様々な試練を耐えて生き続けることが必要です。そして、繋(つな)ぐことで伝統があると言える気がします。
かなり前に、武道を習っている知人から聞いた話です。
雑談している時に、先生が次のような話をされたそうです。
心残りなのは後継者を育てなかったこと。若い時は技術を身につけるのが楽しくて仕方がなかった。ところが、年を取るにつれ、身体が動かなくなってきた。練習生に十分な指導のできない日が増えている。今まで会得してきたことを伝えているが、練習生が身につけるのに時間がかかる。自分1人の時間では足りない。さらに発展させて欲しいと願うが、叶(かな)いそうにない。そして、教え子以外の指導員が道場を引き継ぐのは不本意だ。
今は核家族の多い日本ですが、昔は3世代が同居する生活が普通だったようです。よほどのことがない限り、長男が跡(あと)を継いでいたようです。娘しかいない家の場合、婿養子を迎えて、家を絶やさないようにしていたそうです。
戦国時代で東西が争う場合、家を2つに分けて、それぞれの陣営に参加したそうです。いずれにせよ、どちらかの家は残ります。戦に参加しない方法もあります。しかし、恩賞をもらえませんし、命懸けで恭順の意を表していません。やがて、攻め滅ぼされるのは、目に見えています。そうでなくても、仲間はずれにされ、没落するのは時間の問題です。
家の場合、子孫を残すことが大切です。これは理屈ではなく、生物が持っている本能です。しかし、どのように子孫を繁栄させるかは、先祖の行動と考えによります。先ほどの武道の話であれば、先生がいかに後継者を育てるのかによります。
由緒ある家は、引き継ぐものを守るため、家を繋(つな)ぐ考えをするようです。自由な核家族の場合、たいていは個人の活動を中心に考えるようです。
では、由緒ある家と、自由な核家族では、子供や後継者の育て方に違いはあるのでしょうか。
厳しく育てる、というのをよく聞きます。厳しくとはどういうことなのでしょうか。監督者に従わなければ、体罰を加えることでしょうか。間違いのあるたび、注意することでしょうか。それとも、監督者の考えを骨身にたたき込むことでしょうか。
ウワサを聞くかぎり、このような厳しさで真面(まとも)に育った人はいないようです。ひねくれるか、劣等感で動けないか、特定の考えに囚われてしまうようです。これは、子供だけでなく、部下についても同じです。その人のいいところが、発揮されません。
甘やかして育てた場合も同じようです。甘やかすとは、何もかも御膳立てすることです。進むべきコースを用意し、予想される障害を取り除いて、歩ませることです。窮屈に感じれば、ひねくれるようです。無難にコースを通過しても、現実に挫折(ざせつ)することがあるようです。この場合、柔軟に対応できないようです。
厳しいや甘やかすことに共通するのは、監督者の考えを押しつけていることです。言い換えれば、監督者の欲求を叶(かな)えようとしています。ここには、特定の人間像の押しつけか、召使いの扱いでしかないように思えます。
しかしながら、どのような人間になるのがいいのかと問われて、正解があるとも思えません。また、そのように育てられるかも疑問です。そうすると、自分で判断して行動できる人になればよいとなります。
そして、後継者には、適性とその意志がいります。その上で、引き継ぐ側が、必要な知識や経験を伝えることになるはずです。家や組織が繁栄するためには、伝える側のエゴを自制することになります。徐々に、できることを増やし、自信をつけてもらいます。
いずれにせよ、一度に全てをできないので、それなりの時間はかかるはずです。
技術は、人や組織に関係なく進歩を続けます。今はなくても、技術を取り入れることはできます。
このように考えると、独り立ちできるように育てることが必要です。これは、由緒ある家であろうが、自由な核家族であろうが、同じことです。
違いは後継者のいない場合です。他から探すことになります。その中から、適任の人を選び、さらに、その地位を全うできるように育てることになります。
どのように世代を繋(つな)ぐのか、その一連の流れが伝統だ、という気がしてきました。
この書物を選んだ理由
今まで読んだ本に、本書を紹介するものがいくつかありました。人的資源の観点から、組織に関するものを読みたいと思いました。
私の読み方
非常に強い刺激を受けた本でした。何も知らない門外漢(もんがいかん)の私は強烈な印象を持ちました。しかし、よくご存じの専門家の方々の方がより強烈なイメージを受けられたのではないでしょうか。今までの見方が変わったかもしれませんね。
「ビジョナリー カンパニー」は本書が作った言葉のようです。定義について書いてありました。しかし、具体的で詳細な指標がないため、どの企業がそれに該当するのか、私には区別がつきませんでした。ただ、基本理念を持って、経営幹部が世代交代しているのが、ビジョナリー カンパニーなのでしょうか。
ビジョナリー カンパニーの特徴を際立たせるために、比較対象企業とを比較しています。ビジョナリー カンパニーもそうなのですが、比較対象企業の選定基準も、もう一つ理解に苦しみます。
そして、本書は哲学など様々なことを参考にしたようです。それは、真理を追究する姿勢だと感じました。しかしながら、ビジョナリー カンパニーと比較対象企業を二項対立のような形で分析しているのに疑問を感じました。2つを比べるのは、当事者間では事実でも、他の関係において、普遍性があるとは思えません。そして、いくつかの業界の同業2社の比較も、です。違う業界の2社で比較しても同じように感じます。
普遍性を見いだすのであれば、業界を決めたなら、その全ての企業を対象に特徴を明確にするべきではなかったかと思います。できれば、業界に関係なく、普遍性を追求した方がよかったような気がします。
ビジョナリー カンパニーという概念は、私には、わかったようなわからないような感じです。それを前提に論を語るのは、カルトのような感じがします。なぜなら、ビジョナリー カンパニーを特定する絶対的な尺度がないからです。曖昧模糊(あいまいもこ)としたものを盲信して、普遍性の抽出を試みているように感じました。
読んだ順番です。「謝辞」「はじめに」「目次」「おわりに」「付録」それから本文を読みました。「おわりに」は、最初と最後の2度読みました。この順番で読むと、無理なく読めた気がします。自然な流れで、著者が何を言いたいのかわかる気がしました。
形式です。文字の大きさ、行の長さ、行間、上下左右見開きページ中央の余白は適当で読みやすかったです。
あるといいなと思ったのは、索引です。また、専門用語の解説があれば、さらに理解が深まったと思います。
読書所要時間など
- 所要時間
- 18日11時間35分
- 読み始め
- 2017(平成29)年1月18日(水)午前11時40分~
- 読み終わり
- 2017(平成29)年2月5日(日)~23時15分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。ただし、付録2と、付録4参考文献は、文字を眼で追いましたが、読んでいません。奥付は軽く目を通しました。巻末の書籍広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『種の起源』 チャールズ・ダーウィン氏著
- 『MADE IN JAPAN』 盛田 昭夫氏他著
- 『会社という概念』 ピーター・F・ドラッカー氏著
- 『マネジメント』 ピーター・F・ドラッカー氏著
- 『エクセレント・カンパニー』 トム・ピーターズ氏&ロバート・ウォータマン氏共著
- 『創造する経営者』 ピーター・ドラッカー氏著
これ以外にも、多くの書籍、映画などの記載がありました。
出来事
1月23日(月)~24日(火) 鳥取県の国道、高速道路で大雪のため、車が立ち往生。
ひととき
強い風に霧のような雨が混じる寒い日でした。公園に植えてある梅が、たくさんの花を咲かせていました。
平成29年2月6日(月)撮影。
調べたこと
- 1 BUILT TO LAST
- 直訳すると「衰えない事業の構築」とでもなるのでしょうか。
- 2 SUCCESSFUL HABITS OF VISIONARY COMPANIES
- 直訳すると、「先見的な企業の繁栄する習慣」でしょうか。
- 3 ビジョナリー カンパニー(VISIONARY COMPANIES)
- 本書に「未来志向の企業」「先見的な企業」と解説があります。
- 4 謝辞(しゃじ)
- 5 先入観(せんにゅうかん)
- 参考:「先入見(せんにゅうけん)」「先入主(せんにゅうしゅ)」。
- 6 苛立つ(いらだつ)
- 7 色褪せる(いろあせる)
- 8 羊皮紙(ようひし)
- インターネットで画像を確認しました。
- 9 手前味噌(てまえみそ)
- 10 普遍的(ふへんてき)
- 11 理念(りねん)
- 12 足跡(あしあと、そくせき)
- 13 崇拝(すうはい)
- 14 寓話(ぐうわ)
- 15 先見の明(せんけんのめい)
- 16 氾濫(はんらん)
- 17 胡散臭い(うさんくさい)
- 18 曖昧(あいまい)
- 19 カリスマ(charisma)
- 20 畏敬(いけい)
- 21 ダイナミクス(dynamics)
- ダイナミックス。原動力。
- 22 偏向(へんこう)
- 23 入念(にゅうねん)
- 24 行った(おこなった)
- 参考:「行った(いった)」。形は同じですが、読み方意味が違います。文脈から察するしかないようです。
- 25 独創(どくそう)
- 26 重石(おもし)
- 重し(おもし)。参考:「重石(じゅうせき)」と読めば、別の意味。
- 27 述懐(じゅっかい)
- 28 起爆剤(きばくざい)
- 起爆薬(きばくやく)。
- 29 卓越(たくえつ)
- 30 雷撃機(らいげきき)
- 31 志向(しこう)
- 32 編纂(へんさん)
- 33 生真面目(きまじめ)
- 34 凡庸(ぼんよう)
- 35 腰蓑(こしみの)
- 36 レイ(lei)
- 37 アソシエーツ(associates)
- 仲間。事業の仲間。本書では「従業員」。
- 38 迷走(めいそう)
- 39 讃える(たたえる)
- 40 思し召し(おぼしめし)
- 41 相通ずる(あいつうずる)
- 42 糸状虫(しじょうちゅう)
- フィラリア。インターネットで画像を確認しました。
- 43 蔓延(まんえん)
- 44 肝に銘ずる(きもにめいずる)
- 45 痕跡(こんせき)
- 46 贅沢(ぜいたく)
- 47 趣意書(しゅいしょ)
- 48 崇高(すうこう)
- 49 訝しがる(いぶかしがる)
- 50 戯言(たわごと)
- 51 懐柔(かいじゅう)
- 52 素朴(そぼく)
- 素樸(そぼく)。
- 53 御門違い(おかどちがい)
- 54 生え抜き(はえぬき)
- 55 訓辞(くんじ)
- 56 エンベロープ
- 「envelope(包み、おおい)」でいいのでしょうか。「限界」は単語だけでみると「limit」「bound」などです。
- 57 突っ伏す(つっぷす)
- 58 演壇(えんだん)
- 59 教化(きょうか)
- 60 厳粛(げんしゅく)
- 61 欺瞞(ぎまん)
- 62 独善(どくぜん)
- 63 フィルター・チップ(Filter Tip)
- タバコの吸い口につけるもの。実験器具のピペットの先端につけるものも同じ名称のようです。インターネットで調べました。
- 64 美辞(びじ)
- 65 麗句(れいく)
- 66 公言(こうげん)
- 67 ウエイ
- 「way」でしょうか。「○○流」「○○式」。それとも、企業に「○○way」という文言があるのでしょうか。
- 68 信条(しんじょう)
- 69 草創(そうそう)
- 70 陰陽(いんよう、おんよう、おんみょう)
- 71 レイオフ(layoff)
- 72 プロトタイプ(prototype)
- 73 BHAG(Big Hairy Audacious Goals)
- ビーハグ。本書の定義で、「社運を賭けた大胆な目標」。
- 「hairy」の意味は「毛深い」です。しかし、アメリカのスラングで「困難な」「危ない」という意味があるようです。
- 「audacious」は「大胆な」「厚かましい」などの意味です。
- インターネットなどで調べました。
- 74 怯む(ひるむ)
- 75 ゴリアテ(Goliath)
- ゴリアト。
- 76 ダビデ(David)
- ダヴィデ。イスラエルの王。
- 77 傲慢(ごうまん)
- 78 カオス(chaos)
- 79 檄を飛ばす(げきをとばす)
- 80 酔狂(すいきょう)
- 粋狂(すいきょう)。
- 81 徹頭徹尾(てっとうてつび)
- 82 仕掛かり品(しかかりひん)
- 仕掛品(しかけひん)。
- 83 苦悶(くもん)
- 84 不遜(ふそん)
- 85 自負(じふ)
- 86 熾烈(しれつ)
- 87 好例(こうれい)
- 対義語は「悪例(あくれい)」。
- 88 旺盛(おうせい)
- 89 傑出(けっしゅつ)
- 90 ダイナミック(dynamic)
- 189ページ最後から4行目。
- 精力的な。原動力的な。活動的な。「ダイナミクス」は名詞、「ダイナミック」は形容詞として扱っているようです。辞書の意味ではわかりづらく感じます。
- 後半の文脈から、「基本理念が進歩に及ぼす原動力に・・・」ということでしょうか。
- 91 喝采(かっさい)
- 92 穿る(ほじくる)
- 93 信奉(しんぽう)
- 94 同質(どうしつ)
- 95 カルト(cult)
- 本書では「新興宗教」。
- 96 同化(どうか)
- 97 極端(きょくたん)
- 98 洗脳(せんのう)
- 99 上梓(じょうし)
- 100 軌跡(きせき)
- 101 門衛(もんえい)
- 102 固執(こしゅう、こしつ)
- 103 ・・・アイト(・・・ite)
- ・・・人。・・・信奉者。
- 104 銘文(めいぶん)
- 105 気高い(けだかい)
- 106 温情主義(おんじょうしゅぎ)
- 107 執着(しゅうじゃく、しゅうちゃく)
- 108 株式オプション制度
- ストックオプション(stock option)。経済用語。
- 109 アドリブ(ad lib)
- 110 エプロン(apron)
- インターネットで画像を確認しました。
- 111 単刀直入(たんとうちょくにゅう)
- 112 逆鱗(げきりん)
- 113 分水嶺(ぶんすいれい)
- 114 変異(へんい)
- 115 自然淘汰(しぜんとうた)
- natural selection。
- 116 四面楚歌(しめんそか)
- 117 身上(しんじょう)
- 118 金科玉条(きんかぎょくじょう)
- 119 生来(しょうらい、せいらい)
- 120 手放し(てばなし)
- 121 叱責(しっせき)
- 122 機軸(きじく)
- 123 没落(ぼつらく)
- 124 旗手(きしゅ)
- 125 グル(guru)
- 第一人者。指導者。助言者。
- 126 招聘(しょうへい)
- 127 コングロマリット(conglomerate)
- 128 君臨(くんりん)
- 129 庇護(ひご)
- 130 盟友(めいゆう)
- 131 陥る(おちいる)
- 132 一頭地を抜く(いっとうちをぬく)
- 133 贅肉(ぜいにく)
- 134 真摯(しんし)
- 135 エンパワーメント(empowerment)
- 従業員に権限を与える経営方式。
- 136 TQC(Total Quality Control)
- トータル クオリティ コントロール。統合的品質管理。全社的品質管理。
- 137 一文惜しみの百知らず(いちもんおしみのひゃくしらず)
- 一文吝みの百知らず(いちもんおしみのひゃくしらず)。
- 138 小心翼翼(しょうしんよくよく)
- 139 セグメント(segment)
- 区分。部分。ここでは、市場の区分や部分のことのようてす。
- 140 顧客サービス指数(GSI)
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 141 抱負(ほうふ)
- 142 真髄(しんずい)
- 神髄(しんずい)。
- 143 一貫性(いっかんせい)
- 144 冷ややか(ひややか)
- 145 感銘(かんめい)
- 肝銘(かんめい)。
- 146 リクルート(recruit)
- 147 パラダイム(paradigm)
- 148 伝統(でんとう)
- 149 喧伝(けんでん)
- 150 一心不乱(いっしんふらん)
- 151 風通し(かぜとおし)
- 152 ピケット(picket)
- ピケ。
- 153 学習曲線(がくしゅうきょくせん)
- 154 風靡(ふうび)
- 155 改定(かいてい)
- 156 煙幕を張る(えんまくをはる)
- 157 報いる(むくいる)
- 酬いる(むくいる)。
- 158 乖離(かいり)
- 159 インスピレーション(inspiration)
- 160 愕然(がくぜん)
- 161 奥底(おくそこ、おうてい)
- 162 派閥(はばつ)
- 163 エゴ(ego)
- 自我。ラテン語。
- 本書では「エゴイズム(egoism)」の略として「エゴ」を使っているようです。
- 164 向こう傷(むこうきず)
- 165 切除(せつじょ)
- 166 闇雲(やみくも)
- 167 先見(せんけん)
- 168 陳腐(ちんぷ)
- 169 アトランダム(at random)
- 170 低落(ていらく)
- 171 ルーツ(roots)
- 大本(おおもと)。
- 172 煮詰める(につめる)
- 173 敢然(かんぜん)
- 174 機関(きかん)
- 175 トレンド(trend)
- 176 サテライト・オフィス(satellite office)
- 177 懸念(けねん)
- 178 足をすくう(あしをすくう)
- 179 憂き目(うきめ)
- 180 予断(よだん)
- 181 痘痕(あばた)
- 疱瘡の跡。ここでは、欠点、悪いところ、醜いところ、の意味のようです。
- 182 放逐(ほうちく)
- 183 appendix
- 付録。
- 184 notes
- 備忘録。
- 185 interlude
- 挿話。エピソード。
以下余白