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読んでやる! 読んだもの
№106 『入門 人的資源管理(第2版)』

 人材をどのように管理するのかについて、日本の組織の取り扱いについて、本書は書かれています。専門用語を解説しながらなど、わかりやすい工夫が随所に見られます。

『入門 人的資源管理(第2版)』

副題など
 帯には「日本の人事労務管理の原点がここにある」とありました。
著者など
 奥林 康司(おくばやし こうじ)氏、上林 憲雄(かんばやし のりお)氏、平野 光俊(ひらの みつとし)氏編著
 ただし、執筆者紹介に、他に14名の記載がありました。
出版社など
株式会社 中央経済社 さん
版刷など
 2003年5月第1版。読んだものは、2016年2月第2版第20刷。
ボリューム
 313ページ。286から313ページは文献一覧、索引、執筆者紹介です。

感じたこと

 キャリアは、大きく2つの定義に分かれるようです。1つは職業を中心としたもの、もう一つは人生の歩み方といったものです。
 本書の考え方は、冒頭に述べられているように、「職業人としての経歴」です。人生の中で職業に特化した経歴です。それは、人的資源をどのように扱うのかが、経営学の1分野だからでしょうか。
 組織を運営する側から人材を見た場合、機械やモノと変わらないようです。人件費はコストであり、大きな枠組みの中で、労働者に方向性と動きを与えるのが、経営者の役割としているようです。人材は、利益を上げる道具のようです。
 しかし、雇われる側から職場を見ると、人生の一部分でしかありません。確かに、生活を維持するためには職業は必要ですが、特定の組織に執着する必要はありません。生活費を確保し、自分の人生を豊に過ごせればいいのです。
 経営者と労働者では、キャリアについての考え方や感じ方は違うようです。労働者の引退は、どのような意味を持つのでしょうか。

 私が組織にいた時、管理職が異口同音に言っていたのが、「キャリアを積め」でした。しかし、私が目にしたのは、定年退職し再雇用された人たちの待遇です。勤務は週4日、賃金は恐ろしく下がっていました。
 定年退職者の中には、現役の人たちより能力、実力、人脈を持ち、成果を上げられる人はたくさんいます。それが、定年日の翌日、再雇用の日から著しく待遇が変わるのです。もちろん、現役時と同じ地位と仕事をするわけではありません。仕事の内容は、現役を支える補助の仕事です。元部下だった人たちの命令を受けて、その仕事をこなすのです。
 賃金だけでなく、精神的な負担も大きいと感じました。わずか1日の違いで、これほどまでに差をつけるのか、私には信じられませんでした。
 キャリアを積めば、夢のような世界にでも行けるような錯覚をしているようです。キャリアを積んで何になるのか、何のためのキャリアなのか、訳がわかりません。常識的に考えれば、キャリアを積めば、待遇はよくなるはずです。しかし、そうはならないのです。この状態を目の当たりにして、誰が将来に希望を持てるでしょうか。
 最近、裁判でこのことが争われているようですが、社会状況?から妥当との判決が出たものもあるようです。しかし、積んだキャリアから判断すると、それに見合った人材の活用ができていないと言えます。技術の職人さんは特にそうです。いきなり実力がなくなるわけではありません。定年制や、給与の年功序列のような考え方は、現状に即していません。

 気になるのは、評価です。経営者も含めた人材の評価が、十分でない気がします。特定の尺度で評価すると、ある特性は見えてきます。しかし、実際の感覚と評価には、何らかの違いがあるように感じます。
 基準となる尺度に問題があるのか、評価項目が足りないからなのか、です。評価に何を求めるのかという価値観もあります。
 経営から評価を考えると、生産性の効率が軸になります。どれだけの生産ができるかという機械的な評価にならざるを得ないようです。それは、手工業における、正確に多く作れるかという職種を対象にしたものでしょう。
 対人を目的とするサービス業では、手先の器用さ、機械の熟練度だけでは評価できません。お客さんがリピーターとなり、そのお客さんが別のお客さんを連れてきてくれることも大切だからです。また、安定した仕事には、ムードメーカーがキーになることもあります。
 生産性からだけでなく、人として特性の把握(はあく)も必要だということです。個性をどのように評価するかです。これは、人としての価値ではなく、人としてどのような役割をしているのかということです。一見、今までと同じ評価に思えますが、機械的な能力ではなく、人の感じ方を軸としたということに違いがあります。
 もう一つ気になるのが、評価の使い方です。評価は、評価する側の一方向のものが多いようです。評価したものを評価された人に開示すべきです。開示することで、評価された人は、他人と自分の感覚のすり合わせができます。組織での位置づけもはっきりします。何をすれば認められるのか、どの分野に進めばいいのか、当たりをつけることができます。そして、具体的な努力目標をたてられます。
 評価に希望を見いだせない場合、従業員は組織を去るかもしれません。しかし、この場合でも、自分の特性を知っていれば、次に進みやすくなります。組織が退職者の再出発を支援する場合でも、フォローしやすいはずです。
 十分な評価と、評価する側とされる側が評価を共有することで、キャリアは変わると思います。当然、給与体系が変わることも予想されます。

この書物を選んだ理由

 人的資源管理って何?で、読んでみることにしました。図らずも、前回のテーマ、キャリアについて記述がありました。

私の読み方

 本書は、学部専門課程の学生が対象だと書いてありました。
 教科書とのことで、読みやすく基本的な事項を取り上げているようです。本書を使いながらの講義を聞けば、より理解が深まったかもしれません。
 私は1人で読みましたが、専門用語を解説しながら、わかりやすい言葉と表現で本書は記述されていました。専門書としては、読みやすかったと思います。
 ただ、複数の執筆者のためか、言葉の意味が若干違うように感じたところがありました。また、専門用語と一般の言葉が、混交しているのではと思うところもありました。この場合、受講していれば、すんなりと理解できたと思います。
 社会人を経験した私は、時代の流れを思い出しながら、感慨深いものがありました。私が学校を卒業してすぐに読んでも、実感を持てなかったと思います。時代とともに経験するのは、本を読む上でも必要だと感じました。

 教科書なので基本的で確実な内容を取り上げていると思います。しかしながら、覚えることが多いので、単調になり、読みが停滞しました。
 そんな中で疑問に思ったことがあります。人間性を組織はどのように扱っているのだろうか。また、同窓者、アルバイト・嘱託社員、同郷出身者などの任意団体が、組織に与える影響はどうか。同調圧力、ウワサ、派閥の影響力はないのだろうか。組織はそれをどのように捕らえ、対処しようとしているのか知りたいと思いました。

 形式です。
 学術書らしく横書きです。縦書きに比べ、1行が短いため、楽に視界に入ります。パーセンテージなどの数字、英語があっても、楽に見ることができました。
 ポイント、キーワードを章の始めに取り上げ、章末に演習問題、文献を取り上げるなどの工夫がありました。ちなみに、章末の演習問題は、読みましたが、調べてまではやりませんでした。

読書所要時間など

所要時間
23日4時間21分
読み始め
2016(平成28)年12月7日(水)午前9時48分~
読み終わり
2016(平成28)年12月29日(木)~14時09分
読んだ範囲
 カバー、帯、本書。ただし、「文献一覧」は本文に記載がある時に確認しました。「事項索引」「人名・企業名索引」は必要な時に使いました。「執筆者紹介」「編著者紹介」、奥付は軽く目を通しました。巻末の書籍広告は目を通しました。

取り上げられた書物など

  • 『キャリア・ダイナミクス』 E.H.シャイン氏著
  • 『キャリア発達の心理学』 宗方比佐子氏、渡辺直登氏編著

 これ以外にも、多くの書籍の記載がありました。

出来事

 12月9日(金) 韓国大統領の弾劾訴追案が可決。
 12月14日(水) カジノ解禁法案が成立。
 12月22日(木) 新潟県糸魚川市で大火災。

調べたこと

1 入門(にゅうもん)
2 人的(じんてき)
3 人的資源(じんてきしげん)
4 管理(かんり)
5 コラム(column)
6 トピックス(topics)
7 典拠(てんきょ)
8 functions
 複数形で、職能、職務など、組織での職業に関しての機能を表した言葉になるようです。
9 リーダーシップ(leadership)
10 –ship
 リーダーシップのリーダーは、指導者などの意味。シップがつくと、リーダーの①立場や地位、②その能力や資質のことをいうようです。チームのまとめ役としては、統率力という意味でしょうか。
11 体現(たいげん)
12 コミットメント(commitment)
 専門用語と一般的な意味を区別。専門用語は、本書に解説があります。一般的な意味の1つは、関わり合い、ということです。献身、傾倒、という意味でしょうか。
13 大括り(おおぐくり)
 インターネットで調べました。
14 妬む(ねたむ)
15 スキル(skill)
 参考:エキスパート(expert)。
16 ネガティブ(negative)
17 挫折(ざせつ)
18 産出(さんしゅつ)
 参考:算出(さんしゅつ)。
19 エッセンス(essence)
20 零細企業(れいさいきぎょう)
21 委譲(いじょう)
22 マネージャー(manager)
23 統制(とうせい)
24 グローバル(global)
25 介在(かいざい)
26 新奇(しんき)
27 インセンティブ(incentive)
 この言葉を調べるとしっくりくるものが見当たりません。意欲向上の刺激、でしょうか。意欲の誘因、言い換えれば、意欲を掻き立てることやもの、という意味です。簡単にいうと、やる気にさせる、とか、その気にさせる、ことやものとなります。
 文脈によっては、意欲、報奨金や物の意味になるようです。
28 フレキシブル(flexible)
29 定常(ていじょう)
30 ナレッジワーカー(knowledgeworker)
 知識労働者。
31 マーチャンダイザー(merchandiser)
32 自助(じじょ)
33 努力(どりょく)
34 boundary
 境界。boundarylessは、境界のない、という意味でしょうか。
35 変幻自在(へんげんじざい)
36 protean
 変幻自在な。
37 コア(core)
 中核。
38 OJT(on-the-job training)
 対義語は「off-JT」。
39 焚き付ける(たきつける)
40 リストラクチュアリング(restructuring)
 略して、リストラ。
41 梯子(はしご)
 梯(はしご)。
42 イントラネット(intranet)
43 原資(げんし)
44 オペレーション(operation)
45 担保(たんぽ)
46 コンピテンシー(competency)
47 アセスメント(assessment)
 査定。
48 ブレークダウン(breakdown)
49 稀少(きしょう)
 希少(きしょう)。
50 天職(てんしょく)
51 パラプロフェッショナル(para-professional)
 高度な職業の助手をする専門家、でしょうか。インターネットで調べました。
52 勘案(かんあん)
53 乱造(らんぞう)
 濫造(らんぞう)。
54 高原状態(こうげんじょうたい)
 プラトー(plateau)は高原のこと。心理学では、学習の停滞時期のことをいうようです。本書の場合、キャリア・プラトーを扱っています。そのプラトーの言葉が、高原状態を意味しています。キャリア・プラトーは昇進停滞となります。
55 愁眉(しゅうび)
56 乖離(かいり)
57 顕在(けんざい)
58 減殺(げんさい)
59 払拭(ふっしょく)
60 ヘイ・システム(Hey system)
 インターネットで調べました。
61 APS評価
 インターネットでも調べましたが、わかりませんでした。
62 年俸(ねんぽう)
63 逓増(ていぞう)
 対義語は「逓減(ていげん)」。
64 慈恵(じけい)
65 温情主義(おんじょうしゅぎ)
66 様相(ようそう)
67 施策(しさく、せさく)
68 憂慮(ゆうりょ)
69 陳腐(ちんぷ)
70 淘汰(とうた)
71 自立(じりつ)
72 自律(じりつ)
73 差異(さい)
 参考:「差違(さい)」。
74 HR
 Human Resourcesの略。日本でいう人事部のことのようです。
75 志向(しこう)
76 イニシアチブ(initiative)
77 封鎖(ふうさ)
78 平準(へいじゅん)
79 受諾(じゅだく)
80 基幹(きかん)
81 モラール(morale)
82 紙挟み(かみばさみ)
 フォルダーのこと。本書では「紙鋏」で、誤字でしょうか。
83 折鞄(おりかばん)
84 俎上(そじょう)
85 コミット(commit)
 関係すること。
86 ロックイン(lock-in)
 閉じ込める、監禁するなどの意味。本書に解説があります。
87 互酬性(ごしゅうせい)
88 事中(じちゅう)
 インターネットで調べましたが、掲載サイトが少なく、よくわかりませんでした。
89 末子(まっし、ばっし、すえこ)
90 片面(へんめん、かためん)
91 反故(ほご)
 反古(ほご)。
92 反故にする(ほごにする)
93 喫緊(きっきん)
94 筋(すじ)
95 論(ろん)
96 パラダイム・シフト(paradigm shift)
97 NIEs
 ニーズ。新興工業経済地域。Newly Industrializing Economiesの略。
98 参観(さんかん)
99 ビジネススクールIMD
 インターネットで調べましたが、よくわかりませんでした。
100 準拠(じゅんきょ)
101 ロイヤリティー
 loyaltyは「忠義、誠実」などの意味。royaltyは著作権などの使用料のこと。
102 辿る(たどる)
103 コンフリクト(conflict)
 軋轢(あつれき)、衝突。
104 牽引(けんいん)
105 相応しい(ふさわしい)

以下余白

更新記録など

2016年12月29日(木) : アップロード