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読んでやる! 読んだもの
№103 『日本語練習帳』

 自分をわかってもらいたい、その人を知りたいと思ったときに、人は言葉を発します。そして、お互いが知る努力をしないと、言葉を理解できないと、著者は考えていたようです。本書の読みやすい理由がわかった気がしました。

『日本語練習帳』

副題など
 手に入れた本に、帯はありませんでした。インターネットを見ると、帯には「著者六十年の日本語研究から語る習練の手順」とありました。
著者など
 大野 晋(おおの すすむ)氏著
出版社など
株式会社 岩波書店 さん
版刷など
 岩波新書。1999年1月第1刷。読んだものは、2016年1月第59刷。
ボリューム
 215ページ

感じたこと

 高校の1年か2年の夏休みに、朝日新聞の天声人語を3週間だけノートに書き写しました。なぜ、それをしようと思ったかというと、中学校の国語の先生の影響です。
 中学校の国語の先生は、1年から3年間同じ先生でした。確か、3年生の時だったと思うのですが、その先生が、毎日、天声人語をノートに書き写していることを授業で話されたことがありました。朝日新聞だけでなく、新聞には、このようなコラムがあります。これは、時事などの話題性、考え方だけでなく、文章も練りに練っているというのです。書き写すことで、自分の文章が磨かれるように感じるのだそうです。
 当時、それを聞いた私は、そういうこともあるんだなぁ~、くらいにしか思っていませんでした。高校の夏休み前に、ふと、そのことを思い出しました。やることもないんだから、先生の言ったことを試してみるか、という気持ちでした。
 いざ、写しはじめると、たいへんなことがわかりました。写し終えるのに、40分程度かかるのです。書くと、手がだるくなるくらい、多くの文字があることがわかりました。ぱっと見は少ないように感じますが、書くとなると多く感じました。3日くらいすると、手がだるくなり、止めたいと思いました。頑張って、当初の計画どおり3週間ちょっと続けました。しかし、2度としたいとは思いませんでした。その理由は、時間がかかること、手が辛いこと、書き写す効果に疑問を持ったからです。
 今から思えば、生徒である私は、人に伝える文章を書いたことがありませんでした。ところが、先生は、PTAや生徒向け、研究会などで文章を書く機会が多くあるのです。書く人にとって、総合的に優れた文章を写すことは、最も参考になったはずです。ただ書き写すだけですが、無意識のうちに、表現や考え方が広がっていくのでしょう。
 最近、読書感想文の書き方で、型を使って教えることの可否についての議論を知りました。本書には、感想文で文章を作るのがうまくなるとは考えられないことが書かれていました。この考え方では、型があってもなくても、作文技術には影響がない、となります。ですから、型で教えて、多くの文章を書かせた方がいいのです。多くの文章を書いた方が、書くことに慣れるからです。慣れるにつれ、型を破ろうとするはずです。文章についても、自分で工夫し始めるはずです。書かないことには、始まりません。
 自分で工夫するとは、自分で書いて見てどうかと考えることです。考えることが、文章の上達には欠かせないということでしょうか。そうすると、本書でいう「縮約」は、効果的と言えます。素材そのものを生かし、その必要な部分を拾い上げるからです。これは、書いた人の考えを酌めるかどうかでしょうか。さらに、要約すると、自分の言葉で表現することになります。縮約は理解、要約は表現と言えそうです。どちらも考えることが必要なので、作文技術の向上にはいいのかもしれません。
 さて、3週間程度の写しでは、私の作文技術は向上しませんでした。ただ、辛かったことしか覚えていません。
 文章を書くのもセンスだといいます。先生によると、何を書かせても、毎回、これはと思わせる生徒がいるそうです。それは、教えてできるものではないそうです。
 今から思うとあの時の40分は何だったのだろうか、と思います。縮約をやっていたら、もっと本を読めるようになったのでしょうか。
 今、これを書いている時も、人に何かを文章で伝えることは難しいと思います。

この書物を選んだ理由

 平成28年9月5日(月)付け朝日新聞(朝刊)に、大野晋氏の紹介がありました。そこに、本書『日本語練習帳』のことが書かれてありました。新聞に書かれた著者の人となりを見ると、読みたいと強く思いました。すぐにインターネットで購入しようと思いましたが、売り切れでした。1ヶ月ほどして、手に入れることができました。

私の読み方

 本書は、日本語の細かいところに気を配り、その違いを知ることに努めています。その違いを知り、読んだり書いたりすると、わかりやすく伝わり易いようです。そして、練習問題があり、理解しやすいように作られていると感じました。
 圧巻は、「Ⅴ敬語の基本」の最後にある「終わりのお茶を飲みながら」です。著者の言葉についての考え方が書いてあります。肩肘を張らない、飾らない、わかりやすい記述は、この考え方が根底にあると思いました。この部分は、読書、作文に大切なものだと感じました。相手がいてこその言葉だと知りました。ご覧の皆様へは、この部分をお読みになることをお勧めします。

 形式です。新書形式です。昔の新書『知的生産の技術』と比べると、行の長さはわからない程度に短く、文字は大きく、行間は広くなっています。今の新書は、文字を見やすくなっています。

 さて、本書の練習問題です。苦戦したのは、敬語でした。言葉がパッと出てきません。よく考えても間違えました。縮約の問題はしませんでした。何やかやと不正解で、散々でした。自慢できる点数ではないので、公表を控えます。やはり、縮約はすべきだったかなぁ~。

 読み方は、ページ順に読みました。なるほどと思うことが多い本でした。いい本ですので、ご覧の皆様も、ぜひ、ご一読ください。

読書所要時間など

所要時間
12日3時間48分
読み始め
2016(平成28)年11月2日(水)午前10時43分~
読み終わり
2016(平成28)年11月14日(月)~14時31分
読んだ範囲
 本文。目次も読んでいます。奥付は軽く目を通し、それ以降は読んでいません。

取り上げられた書物など

  • 『「は」と「が」』 野田尚史氏著
  • 『方法序説』 デカルト氏著

 これ以外にも、多くの書籍の記載がありました。

出来事

 11月8日(火) 博多駅前で大規模な陥没。
 11月8日(火) アメリカ大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ氏が当選。

ひととき

 ひっつき虫です。種が開いていないときに、枝を少しつけたままちぎり、子供の時に、友達と投げ合って遊んでいました。枝があると、ちょうどひっつく面が先に飛んでいきます。
 小さく細い種が服によくひっつきます。毛糸で編んだ服にはよく付き、取るのも一苦労しました。
 この手の草には、コセンダングサ(小栴檀草)とアメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)があるのをはじめて知りました。種の細いのがコセンダングサで、平たいのがアメリカセンダングサのようです。ひっつき虫には他に、豆にトゲを付けたようなオナモミもありましたね。
 写真は「コセンダングサ(小栴檀草)」です。

コセンダングサ
 平成28年11月8日(火)撮影。

調べたこと

1 日本語(にほんご、にっぽんご)
2 練習(れんしゅう)
3 帳(ちょう)
4 読本(とくほん)
5 特質(とくしつ)
6 糸口(いとぐち)
 緒(いとぐち)。
7 Kral(クラール)
 ドイツ語。簡潔な。はっきりした。本書では「澄明(ちょうめい)」。
8 und(ウント)
 ドイツ語。英語で言う「and」のようなもの。
9 deutlich(ドイトリヒ)
 ドイツ語。わかりやすい。読みやすい。本書では「区別明瞭」。
10 澄明(ちょうめい)
11 明瞭(めいりょう)
12 単語(たんご)
13 敏感(びんかん)
 対義語は「鈍感(どんかん)」。
14 ニュアンス(nuance)
 フランス語。
15 内心(ないしん)
16 貫通(かんつう)
17 気脈を通ずる(きみゃくをつうずる)
18 コピーライター(copywriter)
19 鎬を削る(しのぎをけずる)
 インターネットで鎬(しのぎ)を図で確認しました。
20 苦心(くしん)
21 咎め立て(とがめだて)
22 楔形文字(くさびがたもじ、けっけいもじ、せっけいもじ)
23 改新(かいしん)
24 違い目(ちがいめ)
25 曇る(くもる)
26 蓄える(たくわえる)
27 味得(みとく)
28 漢語(かんご)
29 辿る(たどる)
30 滋味(じみ)
31 微か(かすか)
32 義絶(ぎぜつ)
33 義歯(ぎし)
34 和語(わご)
 倭語(わご)。
35 造語(ぞうご)
36 情趣(じょうしゅ)
37 音節(おんせつ)
38 willful
 故意の。
39 negligence
 過失。
40 Waldstein
 ドイツの伯爵の名前。ベートーヴェンのピアノソナタ第21番。伯爵に献呈したことから、この名前がついたようです。インターネットで調べました。
41 賛(さん)
 讃(さん)。
42 達見(たっけん)
43 過ぎる(よぎる)
44 薄衣(うすぎぬ)
45 極致(きょくち)
46 承ける(うける)
47 着想(ちゃくそう)
48 夜警(やけい)
49 遠退く(とおのく)
50 片田舎(かたいなか)
51 胚胎(はいたい)
52 呻吟(しんぎん)
53 節する(せっする)
54 左国史漢(さこくしかん)
55 水嵩(みずかさ)
56 国原(くにはら)
57 強み(つよみ)
 本書では「強味(つよみ)」。
58 問い詰め(といつめ)
 「問い詰める」を名詞のように扱った形でしょうか。
59 傍観(ぼうかん)
60 雁行(がんこう)
61 一徹(いってつ)
62 無帽主義(むぼうしゅぎ)
 昔は帽子をかぶるのが普通だったようです。それに対して、帽子をかぶらない人の主義をいうようです。
63 取り成り(とりなり)
64 ずるずる
65 典拠(てんきょ)
66 拗音(ようおん)
67 冤罪(えんざい)
68 論証(ろんしょう)
69 騒然(そうぜん)
70 本統(ほんとう)
 調べましたが、わかりませんでした。
71 どさくさ
72 内実(ないじつ)
73 免許皆伝(めんきょかいでん)
74 極意(ごくい)
75 火吹き竹(ひふきだけ)
76 常住(じょうじゅう)
77 平明(へいめい)
78 縮約(しゅくやく)
79 達意(たつい)
80 細心(さいしん)
81 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
82 ファッショ(fascio)
 イタリア語。
83 的を射る(まとをいる)
 参考:当を得る(とうをえる)。
84 折しも(おりしも)
85 首を傾げる(くびをかしげる)
86 軽軽(けいけい)
 参考:軽軽(かるがる)。
87 仕手(して)
88 机辺(きへん)
89 減殺(げんさい)
90 要約(ようやく)
91 骨皮筋右衛門(ほねかわすじえもん)
92 覚書(おぼえがき)
93 錯綜(さくそう)
94 せかせか
95 寸詰まり(すんづまり)
96 ギボン(Edward Gibbon)
 イギリスの歴史家。
97 アクナトン
 古代エジプトの人名。インターネットで調べました。
98 白文(はくぶん)
99 錯雑(さくざつ)
100 運用(うんよう)
101 湛える(たたえる)
102 堪能(たんのう)
103 粗略(そりゃく)
104 没却(ぼっきゃく)
105 大家(たいか)
 参考:大家(たいけ、だいこ、おおや)。
106 諒解(りょうかい)
107 遇する(ぐうする)
108 基底(きてい)
109 祖語(そご)
110 根柢(こんてい)
 根底(こんてい)。
111 打っ付け(ぶっつけ)
112 年嵩(としかさ)
113 尊大語(そんだいご)
114 威儀(いぎ)
115 座り(すわり)
 坐り(すわり)。
116 心性(しんせい)
 「しんしょう」とよめば、仏教語。
117 罵詈(ばり)
118 卑下(ひげ)
119 対者(たいしゃ)
120 寝衣(しんい)
121 応酬(おうしゅう)
122 差し置く(さしおく)
123 頗る(すこぶる)
124 礼法(れいほう、らいほう)
125 粉本(ふんぽん)
126 経緯(いきさつ)
127 這這の体(ほうほうのてい)
128 退散(たいさん)

以下余白

更新記録など

2016年11月15日(火) : アップロード