『視覚科学』
- 副題など
- 帯には、推薦者の言葉がありました。本書にある「推薦の言葉」を要約したもののようです。
- 著者など
- 横澤 一彦(よこさわ かずひこ)氏著
- 出版社など
- 株式会社 勁草書房 さん
- 版刷など
- 2010年2月第1版第1刷。読んだものは、2015年11月第1版第4刷。
- ボリューム
- 242ページ。237ページ以降は索引。
感じたこと
「見る」ことの本を読むといつも思い出すことがあります。
原動機付自転車の免許取り立て、新品スクーター買いたての、今から何年も前の話です。
その日は夕方まで予定がなく、天気もよかったので、当時住んでいた近くの山へツーリングに行きました。スクーターでは初めての山道でした。気持ちは新鮮で運転を楽しんでいました。また、山道から見える景色はきれいで、何度も止まっては見とれていました。運転しながら景色も見ていました。
そんなとき、急に前方にガードレールが現れたのです。そうです。よそ見運転です。景色に見とれていて、前をよく見ていなかったのです。ハンドルを切ってガードレールをかわすには手遅れです。しかし、ガードレールに真面(まとも)にぶつかれば、身体は飛んで行きます。ガードレールの向こうは崖です。落ちたらまず助かりません。ガードレールにぶつかったと思った瞬間、ハンドルが左側、崖側に自然に切れていったと思います。そして、身体が浮き始めたと思ったとき、スクーターのステップを蹴って、道路側にジャンプしました。
身体が道路の上空を飛んでいるのがわかりました。さて、着地をどうしようかと考えていました。身体は、両腕と頭を前にうつぶせに横になって飛んでいました。ウルトラマンやアンパンマン、スーパーマンが飛ぶ格好です。あまり高く飛んでいないようでした。足から着地するのは、無理だと感じました。授業で習った柔道の受け身、前受身か前回り受身のどちらかでないとダメだと思いました。しかし、自分の体重、衝撃の大きさから、前受身は手や腕で支えきれないと感じました。その時、目の前に、小石の散らばったアスファルトがくっきりと見えました。「間に合わない」と思った瞬間、自然に前回り受身をはじめていました。主に右手が路面につき、ヘソを見ながら頭を腕の後ろに素早く持って行きました。そして、身体が回転した感触があった後、気を失っていました。後ろから来るバスのクラクションで、気を取り戻しました。バスのクラクションに気づかなければ、他の車にひかれていたかもしれません。受け身をしてから気を取り戻すまで、何回転したとか、どれほど気を失っていたのか、ぜんぜん覚えていません。何が何だかわかりませんでした。
スクーターのところに行ってみると、ガードレールとブロックの間に挟まっていました。なかなか取り出せないでいると、ツーリングをしているグループに助けてもらいました。スクーターを起こして、前タイヤを真っ直ぐにすると、ハンドルは左30度くらいになっていました。バッテリーの液漏れはあるものの、ガソリン、オイル漏れはなく、エンジンとブレーキもきちんとかかりました。そのまま、1時間以上かけて、購入したバイク屋に行って、修理を依頼しました。バイク屋の主人が言うには、全損なので新しく買う方がよいとのことでした。無理にお願いして、5万円強で修理しました。ちなみに、新品は8万円弱です。
スクーターを修理に出した後、その日の夕方の用事を済ませました。
運がよかったのは、ぶつかったガードレールの下にブロックがあったことです。ブロックでスクーターが止まり、スクーターのステップを蹴ることが出来たのです。ブロックがなければ、スクーターごと、ガードレールの下に潜り込み、大けがをしたか、崖の下に落ちていたかもしれません。また、下り坂だったことも、身体への衝撃を和らげてくれたようです。また、当時、法的に着用義務のないヘルメットや、革手袋、長袖ジャンパーを着ていたことも、よかったようです。革手袋はボロボロでしたが、手は無傷(むきず)でした。木綿製ジャンパーも擦(こす)れた程度で破れていませんでした。ケガは、右ヒジの擦(こす)れたような打撲だけでした。この傷(きず)は、火傷(やけど)のケロイドのようになって、いまだに残っています。
さて、この件でいつも不思議に思うのは、ガードレールを正面に見たときから、気を取り戻すまでの映像です。その一連の流れがスローモーションで、場面によっては静止画のように見えたことです。状況を理解し、どのように対処するのか決断をしようと思考しているのです。もちろん、直観のところもあります。
この一連の流れは、一瞬のはずです。その一瞬でさまざまのことを考えて、決断し、実際に行動をしているのです。しかも、やたらに冷静なのです。緊張、リラックス、集中力、平常心などのどの言葉もその状況を言い表せません。現実の世界から、音のない静かな世界に移ったような感じでした。
本書第3章のエピグラフに「飛んでいる矢は止まっている。-ゼノン」があります。私たちの、視覚、認知、意識、時間などは、相対的な関係にあるようです。
この書物を選んだ理由
「見る」「視覚」にかかる本は、数冊取り上げてきました。しかし、これらは個別の事柄を取り上げていました。一般的、全体的に捕らえた視覚の本を読んでみたいと思いました。本書を大型書店で見つけました。
私の読み方
「視覚科学」という分野の、入門書、教科書として著者は、本書を書かれたようです。割愛した項目があるそうですが、視覚にかかる一連の事柄は扱っているようです。本書の特徴は、視覚と認知心理学を融合させたことにあるようです。
教科書というと、先生が生徒に教えるための本というイメージを私はもっています。先生が、言葉の読み方、解説、資料の付け足しをしながら、学習を進める感じです。
入門書は、生徒が1人で学習するためのものという感じを私はもっています。言葉の読み方、説明、など最初に学ぶために独習できるもの、というイメージです。
本書は、専門用語の丁寧な解説はあるものの、読み方については、記載が少なかったように感じます。実験についても、読んだだけではわからないところがありました。入門書というには、少し難があるように、私は感じました。
本書は、視覚、認知心理学、脳などを扱う、いろんな学問が出てくる学際的なものです。日常で使いそうなもので、実は専門分野で使う言葉があります。たとえば、「有意(ゆうい)」という言葉です。心理学の統計処理でよく出てきます。しかし、日常で使ったとしても、そのまま流れていくような言葉です。門外漢の私にとっては、この区別が出来ません。しっかりと言葉の意味を受け取って、解釈しているのかに疑問を感じました。
学際的な学問で、それぞれの分野がそれぞれの価値を持った言葉で語り合った場合、本当の理解や協力を得られるのだろうかと思いました。専門家は自分の分野だけはわかるので、その部分は理解が早いかもしれません。しかし、初学者にとって、いくつかの分野にまたがる独特の言葉を区別して理解するのは、非常に骨の折れることです。新しい分野の学問であるなら、むしろ、一般的な言葉に置き換えて、誰もが理解できる表記にして欲しいと思いました。誰もが読めると、その学問や分野に興味持つ人が出てきて、発展する可能性があるからです。たとえ興味があっても、取っつきにくいと、最初の段階で敬遠してしまいます。
形式です。横書き、文字の大きさ、行の長さ、行間、上下左右、中央の余白は、適当で見やすかったです。横書きでも日本語の場合は読点「、」だと思うのですが、本書はカンマ「,」でした。
索引がしっかりしていました。何回も使い、読みを助けてくれました。
巻頭に「カラー図」があるのですが、該当するページから本を開き直すのは不便でした。該当するページにしおりを、巻頭カラー図のページに附箋(ふせん)をはさみ、すぐに必要なところを開(ひら)けるようにしました。同じページに図があれば便利ですが、カラーでの掲載は難しいのかもしれません。
丁寧な日本語で書かれているにもかかわらず、なかなか読み進められませんでした。妙に雑念が多く、私のコンディションはあまりよくありませんでした。いくら興味があっても、調子が悪いとうんざりしてきます。同じところを何回も読んでいました。ふと、読めなかった頃を思い出していました。「感じたこと」で書いた冷静さが欲しいと思いました。
読んだ順番です。推薦のことば、はじめに、おわりに、本文、おわりに、です。ページ順に読んでも、後からしまったということはないと思います。
話は変わりますが、図6-14マリリンシュタイン錯視を、目から図までの距離をそのままにして、瞬きしながら見たり、横から見ると・・・・・でした。私はおもしろかったです。
読書所要時間など
- 所要時間
- 19日11時間23分
- 読み始め
- 2016(平成28)年8月24日(水)午前11時07分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年9月12日(月)~22時30分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。ただし、索引は必要なときに使い、参考文献、奥付、巻末の書籍広告は軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- 『赤を見る』 ニコラス・ハンフリー氏著
- 『Cognitive Psychology』 ナイサー氏著
- 『Vision Science』 パーマー氏著
ひととき
陸と埋め立て地の間に、海があり砂浜があります。海岸線から山を見ると、遠近感のある景色が見えました。
平成28年9月10日(土)撮影。
調べたこと
- 1 視覚(しかく)
- 2 科学(かがく)
- 3 学際(がくさい)
- 参考:学祭(がくさい)。
- 4 追試(ついし)
- 5 トピック(topic)
- 6 進捗(しんちょく)
- 7 メタ-(meta-)
- 8 心許ない(こころもとない)
- 9 色褪せる(いろあせる)
- 10 的を射る(まとをいる)
- 参考:当を得る(とうをえる)。
- 11 隔世の感(かくせいのかん)
- 12 学兄(がっけい、がくけい)
- 13 浅学非才(せんがくひさい)
- 浅学菲才(せんがくひさい)。
- 14 俊英(しゅんえい)
- 15 株式会社ATR視聴覚機構研究所
- ATR(Advanced Telecommunications Research Institute International)。国際電気通信基礎技術研究所。インターネットでホームページを確認しました。
- 16 証左(しょうさ)
- 17 トレードオフ(trade-off)
- 一方が成り立てば、もう一方が成り立たなくなる関係。本書カッコ書きに解説があります。
- 18 弁別(べんべつ)
- 19 平滑(へいかつ)
- 20 混色(こんしょく)
- 21 極彩色(ごくさいしき)
- 22 対照的(たいしょうてき)
- 23 測色学
- 「そくしょくがく」と読むのでしょうか。辞書に「測色計(そくしょくけい)」がありました。インターネットでも調べました。
- 24 現象学(げんしょうがく)
- 25 エピグラフ(epigraph)
- 26 銀杏(いちょう、ぎんなん)
- 「いちょう」と読めば木、「ぎんなん」と読めば実。
- 27 近傍(きんぼう)
- 28 歪み(ゆがみ、ひずみ)
- 29 歪(いびつ)
- 30 方形(ほうけい)
- 31 頑健に解釈(がんけんにかいしゃく)
- 頑健性(がんけんせい、robustness)とは、必要と思われる条件が満たされていない場合でも、安定した結果を得られることでしょうか。統計用語のようです。インターネットで調べました。
- 32 外界(がいかい)
- 33 融像(ゆうぞう)
- インターネットで調べました。
- 34 斑(まだら)
- 35 縞(しま)
- 36 外挿(がいそう)
- 推測すること。
- 37 剛体(ごうたい)
- 38 淘汰圧(とうたあつ)
- 進化学で使われる言葉のようです。参考:選択圧(せんたくあつ)。インターネットで調べました。
- 39 テクスチャー(texture)
- 「肌理(きめ)」。本書に解説があります。参考:「テクスチャーの知覚(texture perception)」、「肌理(きめ)の勾配(こうばい)」、「テクストン(texton)」。心理用語辞典を参考にしました。
- 40 分凝(ぶんぎょう)
- 参考:「音脈分凝(おんみゃくぶんぎょう)」。心理用語辞典、インターネットなどで調べました。
- 41 フィルタリングモデル
- 本書に解説があります。
- 42 反例(はんれい)
- 43 テクストン(texton)
- 心理用語。本書に解説があります。
- 44 素
- 「そ」と読むのでしょうか。本書では「表現素」「素原始スケッチ」で使われていました。調べましたがわかりませんでした。
- 45 小塊(しょうかい)
- インターネットで調べました。
- 46 端点(たんてん)
- インターネットで調べました。
- 47 パラダイム(paradigm)
- 範列(はんれつ)のことでしょうか。
- 48 低次視覚
- 調べましたがわかりませんでした。低次を器質の働きとし、高次を心の動きとしているのでしょうか。いずれにせよ、わかりやすい解説を探せませんでした。
- 49 同定(どうてい)
- 50 尖端(せんたん)
- 参考:「先端(せんたん)」。
- 51 木の葉(このは)
- 参考:「木の葉(きのは)」。
- 52 相応しい(ふさわしい)
- 53 実験パラダイム
- 調べましたがわかりませんでした。ある現象について、さまざまな実験を範列とし、その共通性、仕組みを探るということでしょうか。
- 54 たじろぐ
- 55 統制(とうせい)
- 56 表象(ひょうしょう)
- 57 形相(ぎょうそう)
- 58 語彙(ごい)
- 59 曖昧模糊(あいまいもこ)
- 60 縺れ(もつれ)
- 61 群化(ぐんか)
- 心理用語。
- 62 生起(せいき)
- 63 攪拌(かくはん)
- 64 布置(ふち)
- 65 餌場
- 「えさば」と読むのでしょうか。
- 66 帰巣(きそう)
- 67 美醜(びしゅう)
- 68 審美眼(しんびがん)
- 69 思弁(しべん)
- 70 枯山水(かれさんすい)
- 71 石庭(せきてい)
- 72 庫裡(くり)
- 庫裏(くり)。
- 73 方丈(ほうじょう)
- 74 フラクタル(fractal)
- 75 痙攣(けいれん)
- 76 災厄(さいやく)
- 77 ビープ音(びーぷおん)
- 78 定位(ていい)
- 79 モダリティー(modality)
- 本書では「様相」。
- 80 衝立(ついたて)
- 81 局在(きょくざい)
- 82 骨相学(こっそうがく)
- 83 潜時(せんじ)
- 84 賦活(ふかつ)
- 85 拮抗(きっこう)
- 86 撮像(さつぞう)
- 参考:「撮影(さつえい)」。
- 87 有意(ゆうい)
- 統計用語。
- 88 吻側(ふんそく)
- インターネットで調べました。
- 89 把持(はじ)
- 90 DB
- 本書では「患者DB」とありました。調べましたが、わかりませんでした。
以下余白