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読んでやる! 読んだもの
№97 『視覚科学』

 本書は、視覚に認知心理学を取り入れています。視覚については、まだまだ、わかっていないことたくさんあるようです。視覚と脳は密接に関係があり、訓練により、いくつかの見方を使い分けられるかもしれません。

『視覚科学』

副題など
 帯には、推薦者の言葉がありました。本書にある「推薦の言葉」を要約したもののようです。
著者など
 横澤 一彦(よこさわ かずひこ)氏著
出版社など
株式会社 勁草書房 さん
版刷など
 2010年2月第1版第1刷。読んだものは、2015年11月第1版第4刷。
ボリューム
 242ページ。237ページ以降は索引。

感じたこと

 「見る」ことの本を読むといつも思い出すことがあります。

 原動機付自転車の免許取り立て、新品スクーター買いたての、今から何年も前の話です。
 その日は夕方まで予定がなく、天気もよかったので、当時住んでいた近くの山へツーリングに行きました。スクーターでは初めての山道でした。気持ちは新鮮で運転を楽しんでいました。また、山道から見える景色はきれいで、何度も止まっては見とれていました。運転しながら景色も見ていました。
 そんなとき、急に前方にガードレールが現れたのです。そうです。よそ見運転です。景色に見とれていて、前をよく見ていなかったのです。ハンドルを切ってガードレールをかわすには手遅れです。しかし、ガードレールに真面(まとも)にぶつかれば、身体は飛んで行きます。ガードレールの向こうは崖です。落ちたらまず助かりません。ガードレールにぶつかったと思った瞬間、ハンドルが左側、崖側に自然に切れていったと思います。そして、身体が浮き始めたと思ったとき、スクーターのステップを蹴って、道路側にジャンプしました。
 身体が道路の上空を飛んでいるのがわかりました。さて、着地をどうしようかと考えていました。身体は、両腕と頭を前にうつぶせに横になって飛んでいました。ウルトラマンやアンパンマン、スーパーマンが飛ぶ格好です。あまり高く飛んでいないようでした。足から着地するのは、無理だと感じました。授業で習った柔道の受け身、前受身か前回り受身のどちらかでないとダメだと思いました。しかし、自分の体重、衝撃の大きさから、前受身は手や腕で支えきれないと感じました。その時、目の前に、小石の散らばったアスファルトがくっきりと見えました。「間に合わない」と思った瞬間、自然に前回り受身をはじめていました。主に右手が路面につき、ヘソを見ながら頭を腕の後ろに素早く持って行きました。そして、身体が回転した感触があった後、気を失っていました。後ろから来るバスのクラクションで、気を取り戻しました。バスのクラクションに気づかなければ、他の車にひかれていたかもしれません。受け身をしてから気を取り戻すまで、何回転したとか、どれほど気を失っていたのか、ぜんぜん覚えていません。何が何だかわかりませんでした。
 スクーターのところに行ってみると、ガードレールとブロックの間に挟まっていました。なかなか取り出せないでいると、ツーリングをしているグループに助けてもらいました。スクーターを起こして、前タイヤを真っ直ぐにすると、ハンドルは左30度くらいになっていました。バッテリーの液漏れはあるものの、ガソリン、オイル漏れはなく、エンジンとブレーキもきちんとかかりました。そのまま、1時間以上かけて、購入したバイク屋に行って、修理を依頼しました。バイク屋の主人が言うには、全損なので新しく買う方がよいとのことでした。無理にお願いして、5万円強で修理しました。ちなみに、新品は8万円弱です。
 スクーターを修理に出した後、その日の夕方の用事を済ませました。
 運がよかったのは、ぶつかったガードレールの下にブロックがあったことです。ブロックでスクーターが止まり、スクーターのステップを蹴ることが出来たのです。ブロックがなければ、スクーターごと、ガードレールの下に潜り込み、大けがをしたか、崖の下に落ちていたかもしれません。また、下り坂だったことも、身体への衝撃を和らげてくれたようです。また、当時、法的に着用義務のないヘルメットや、革手袋、長袖ジャンパーを着ていたことも、よかったようです。革手袋はボロボロでしたが、手は無傷(むきず)でした。木綿製ジャンパーも擦(こす)れた程度で破れていませんでした。ケガは、右ヒジの擦(こす)れたような打撲だけでした。この傷(きず)は、火傷(やけど)のケロイドのようになって、いまだに残っています。
 さて、この件でいつも不思議に思うのは、ガードレールを正面に見たときから、気を取り戻すまでの映像です。その一連の流れがスローモーションで、場面によっては静止画のように見えたことです。状況を理解し、どのように対処するのか決断をしようと思考しているのです。もちろん、直観のところもあります。
 この一連の流れは、一瞬のはずです。その一瞬でさまざまのことを考えて、決断し、実際に行動をしているのです。しかも、やたらに冷静なのです。緊張、リラックス、集中力、平常心などのどの言葉もその状況を言い表せません。現実の世界から、音のない静かな世界に移ったような感じでした。
 本書第3章のエピグラフに「飛んでいる矢は止まっている。-ゼノン」があります。私たちの、視覚、認知、意識、時間などは、相対的な関係にあるようです。

この書物を選んだ理由

 「見る」「視覚」にかかる本は、数冊取り上げてきました。しかし、これらは個別の事柄を取り上げていました。一般的、全体的に捕らえた視覚の本を読んでみたいと思いました。本書を大型書店で見つけました。

私の読み方

 「視覚科学」という分野の、入門書、教科書として著者は、本書を書かれたようです。割愛した項目があるそうですが、視覚にかかる一連の事柄は扱っているようです。本書の特徴は、視覚と認知心理学を融合させたことにあるようです。

 教科書というと、先生が生徒に教えるための本というイメージを私はもっています。先生が、言葉の読み方、解説、資料の付け足しをしながら、学習を進める感じです。
 入門書は、生徒が1人で学習するためのものという感じを私はもっています。言葉の読み方、説明、など最初に学ぶために独習できるもの、というイメージです。
 本書は、専門用語の丁寧な解説はあるものの、読み方については、記載が少なかったように感じます。実験についても、読んだだけではわからないところがありました。入門書というには、少し難があるように、私は感じました。

 本書は、視覚、認知心理学、脳などを扱う、いろんな学問が出てくる学際的なものです。日常で使いそうなもので、実は専門分野で使う言葉があります。たとえば、「有意(ゆうい)」という言葉です。心理学の統計処理でよく出てきます。しかし、日常で使ったとしても、そのまま流れていくような言葉です。門外漢の私にとっては、この区別が出来ません。しっかりと言葉の意味を受け取って、解釈しているのかに疑問を感じました。
 学際的な学問で、それぞれの分野がそれぞれの価値を持った言葉で語り合った場合、本当の理解や協力を得られるのだろうかと思いました。専門家は自分の分野だけはわかるので、その部分は理解が早いかもしれません。しかし、初学者にとって、いくつかの分野にまたがる独特の言葉を区別して理解するのは、非常に骨の折れることです。新しい分野の学問であるなら、むしろ、一般的な言葉に置き換えて、誰もが理解できる表記にして欲しいと思いました。誰もが読めると、その学問や分野に興味持つ人が出てきて、発展する可能性があるからです。たとえ興味があっても、取っつきにくいと、最初の段階で敬遠してしまいます。

 形式です。横書き、文字の大きさ、行の長さ、行間、上下左右、中央の余白は、適当で見やすかったです。横書きでも日本語の場合は読点「、」だと思うのですが、本書はカンマ「,」でした。
 索引がしっかりしていました。何回も使い、読みを助けてくれました。
 巻頭に「カラー図」があるのですが、該当するページから本を開き直すのは不便でした。該当するページにしおりを、巻頭カラー図のページに附箋(ふせん)をはさみ、すぐに必要なところを開(ひら)けるようにしました。同じページに図があれば便利ですが、カラーでの掲載は難しいのかもしれません。

 丁寧な日本語で書かれているにもかかわらず、なかなか読み進められませんでした。妙に雑念が多く、私のコンディションはあまりよくありませんでした。いくら興味があっても、調子が悪いとうんざりしてきます。同じところを何回も読んでいました。ふと、読めなかった頃を思い出していました。「感じたこと」で書いた冷静さが欲しいと思いました。

 読んだ順番です。推薦のことば、はじめに、おわりに、本文、おわりに、です。ページ順に読んでも、後からしまったということはないと思います。
 話は変わりますが、図6-14マリリンシュタイン錯視を、目から図までの距離をそのままにして、瞬きしながら見たり、横から見ると・・・・・でした。私はおもしろかったです。

読書所要時間など

所要時間
19日11時間23分
読み始め
2016(平成28)年8月24日(水)午前11時07分~
読み終わり
2016(平成28)年9月12日(月)~22時30分
読んだ範囲
 カバー、帯、本書。ただし、索引は必要なときに使い、参考文献、奥付、巻末の書籍広告は軽く目を通しました。

取り上げられた書物など

  • 『赤を見る』 ニコラス・ハンフリー氏著
  • 『Cognitive Psychology』 ナイサー氏著
  • 『Vision Science』 パーマー氏著

ひととき

 陸と埋め立て地の間に、海があり砂浜があります。海岸線から山を見ると、遠近感のある景色が見えました。

海岸から見た景色
 平成28年9月10日(土)撮影。

調べたこと

1 視覚(しかく)
2 科学(かがく)
3 学際(がくさい)
 参考:学祭(がくさい)。
4 追試(ついし)
5 トピック(topic)
6 進捗(しんちょく)
7 メタ-(meta-)
8 心許ない(こころもとない)
9 色褪せる(いろあせる)
10 的を射る(まとをいる)
 参考:当を得る(とうをえる)。
11 隔世の感(かくせいのかん)
12 学兄(がっけい、がくけい)
13 浅学非才(せんがくひさい)
 浅学菲才(せんがくひさい)。
14 俊英(しゅんえい)
15 株式会社ATR視聴覚機構研究所
 ATR(Advanced Telecommunications Research Institute International)。国際電気通信基礎技術研究所。インターネットでホームページを確認しました。
16 証左(しょうさ)
17 トレードオフ(trade-off)
 一方が成り立てば、もう一方が成り立たなくなる関係。本書カッコ書きに解説があります。
18 弁別(べんべつ)
19 平滑(へいかつ)
20 混色(こんしょく)
21 極彩色(ごくさいしき)
22 対照的(たいしょうてき)
23 測色学
 「そくしょくがく」と読むのでしょうか。辞書に「測色計(そくしょくけい)」がありました。インターネットでも調べました。
24 現象学(げんしょうがく)
25 エピグラフ(epigraph)
26 銀杏(いちょう、ぎんなん)
 「いちょう」と読めば木、「ぎんなん」と読めば実。
27 近傍(きんぼう)
28 歪み(ゆがみ、ひずみ)
29 歪(いびつ)
30 方形(ほうけい)
31 頑健に解釈(がんけんにかいしゃく)
 頑健性(がんけんせい、robustness)とは、必要と思われる条件が満たされていない場合でも、安定した結果を得られることでしょうか。統計用語のようです。インターネットで調べました。
32 外界(がいかい)
33 融像(ゆうぞう)
 インターネットで調べました。
34 斑(まだら)
35 縞(しま)
36 外挿(がいそう)
 推測すること。
37 剛体(ごうたい)
38 淘汰圧(とうたあつ)
 進化学で使われる言葉のようです。参考:選択圧(せんたくあつ)。インターネットで調べました。
39 テクスチャー(texture)
 「肌理(きめ)」。本書に解説があります。参考:「テクスチャーの知覚(texture perception)」、「肌理(きめ)の勾配(こうばい)」、「テクストン(texton)」。心理用語辞典を参考にしました。
40 分凝(ぶんぎょう)
 参考:「音脈分凝(おんみゃくぶんぎょう)」。心理用語辞典、インターネットなどで調べました。
41 フィルタリングモデル
 本書に解説があります。
42 反例(はんれい)
43 テクストン(texton)
 心理用語。本書に解説があります。
44 素
 「そ」と読むのでしょうか。本書では「表現素」「素原始スケッチ」で使われていました。調べましたがわかりませんでした。
45 小塊(しょうかい)
 インターネットで調べました。
46 端点(たんてん)
 インターネットで調べました。
47 パラダイム(paradigm)
 範列(はんれつ)のことでしょうか。
48 低次視覚
 調べましたがわかりませんでした。低次を器質の働きとし、高次を心の動きとしているのでしょうか。いずれにせよ、わかりやすい解説を探せませんでした。
49 同定(どうてい)
50 尖端(せんたん)
 参考:「先端(せんたん)」。
51 木の葉(このは)
 参考:「木の葉(きのは)」。
52 相応しい(ふさわしい)
53 実験パラダイム
 調べましたがわかりませんでした。ある現象について、さまざまな実験を範列とし、その共通性、仕組みを探るということでしょうか。
54 たじろぐ
55 統制(とうせい)
56 表象(ひょうしょう)
57 形相(ぎょうそう)
58 語彙(ごい)
59 曖昧模糊(あいまいもこ)
60 縺れ(もつれ)
61 群化(ぐんか)
 心理用語。
62 生起(せいき)
63 攪拌(かくはん)
64 布置(ふち)
65 餌場
 「えさば」と読むのでしょうか。
66 帰巣(きそう)
67 美醜(びしゅう)
68 審美眼(しんびがん)
69 思弁(しべん)
70 枯山水(かれさんすい)
71 石庭(せきてい)
72 庫裡(くり)
 庫裏(くり)。
73 方丈(ほうじょう)
74 フラクタル(fractal)
75 痙攣(けいれん)
76 災厄(さいやく)
77 ビープ音(びーぷおん)
78 定位(ていい)
79 モダリティー(modality)
 本書では「様相」。
80 衝立(ついたて)
81 局在(きょくざい)
82 骨相学(こっそうがく)
83 潜時(せんじ)
84 賦活(ふかつ)
85 拮抗(きっこう)
86 撮像(さつぞう)
 参考:「撮影(さつえい)」。
87 有意(ゆうい)
 統計用語。
88 吻側(ふんそく)
 インターネットで調べました。
89 把持(はじ)
90 DB
 本書では「患者DB」とありました。調べましたが、わかりませんでした。

以下余白

更新記録など

2016年9月13日(火) : アップロード