『最強の働き方』
- 副題など
- 「世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓」。カバーには「新人からベテランまで すべての段階で差をつける」とありました。帯には「学歴、頭のIQと仕事能力は関係ない!コレができなければ永遠に二流!」「一流と二流を分ける最重要スキル習慣+考え方」「仕事のIQを高めよ」「普通の人でも天才・エリートに勝てる超実践的教科書」「誰でも実践できる『最強の働き方』を体系化」などとありました。
- 著者など
- ムーギー・キム氏著
- 出版社など
- 東洋経済新報社 さん
- 版刷など
- 2016年7月27日発行
- ボリューム
- 375ページ
感じたこと
新入社員のときに上司から言われたことをずっと考え続けたことがありました。
ある仕事に参加するために申込用紙が必要になりました。その申込用紙は1枚が5円程度で10枚ほど買いました。会社に戻ってから、交通費とともにこの用紙代を請求するかどうか迷いました。わずか50円ばかりの金額です。しかし、公私混同はいけないと思い請求書を上司に渡しました。
すると上司に、このくらいの金額だったら、自分のポケットマネーで払っておくのが、社会人のたしなみだ、というようなことを言われました。やっぱり請求しなければよかったと思うのですが、腑(ふ)に落ちません。
公私混同のいけないことは新人研修で学んだことです。交通費500円程度の請求は許されて、仕事に必要な用紙代50円程度は担当者の負担というのは、いくらの金額で線引きをするのか根拠があいまいです。
では、会社の仕事で、お釣りが50円残った場合、担当者の財布に入れてよいのか、という疑問が出てきます。財布に入れた場合、着服です。金額からいって、刑事告訴されることはないでしょうが犯罪です。
こんな疑問を持ち続けて、10年ほど経った頃、組織を変わり、簿記を勉強していました。同時に、次のような問題が出てきました。
どの組織でも決算があります。できれば、その期に金の流れがすべて処理できれば、キレがよく気持ちがいいものです。ところが、事務手続きの不具合から、当期の端数金額を次期に計上することが発生しました。上司は、当期に組み込んではどうか、その方が理解しやすいし、幹部にも説明しやすいと言いました。上司からそのようにせよという命令がなかったため、決まりどおりの処理をしました。
帳簿をつけるのは、お金の出し入れを正確に把握(はあく)するためです。決まりに基づかない記帳は、事務能力を問われます。そして、業務の検査で指摘を受けた場合、事情を説明すれば理解を得られるでしょうが、正しい記帳にするよう指導を受ける可能性があります。その場合、各種資料の作り直しをすることになります。
それから数年経ち、融通のきかない処理が本当によかったのかどうか、頭の隅にありました。この問題の本質は、帳簿は何のためにあるのか、です。
この時思ったのは、帳簿は記録である、ということです。業務報告はいろいろありますが、帳簿も報告書の1つだということです。現実に起こったとおりに記述するのがいいのです。
例えば、端数処理が会計年度をまたがっていた場合、その理由が気になります。単なる業務のミスなのか、契約上仕方のないことなのか、などです。ミスの場合は仕事のシステムについて、契約では変更や解約など、業務の改善ができます。しかし、これに気づいて判断するのは上司や幹部です。正確に記された帳簿であれば、適切な改善が期待できます。ですから、現場の担当者は正確に帳簿をつける必要があると私は考えました。
さて、用紙代50円を請求するか否かの問題です。今の私なら迷わず請求します。請求することが、事実を伝える報告になるからです。
これと似たものに自主的なサービス残業があります。残業をした人が、残業代を請求しないことです。残業代が支給されないので、請求しないという人もいると思います。しかし、正確な残業時間がわからなければ、適正な人員数や合理的な業務を考えられません。その端緒すら、上司や幹部は気づかないかもしれません。
とは、言ったものの、未だにこの件は自問自答をしています。ご覧の皆様はどのように考えますでしょうか。
この書物を選んだ理由
最近は、積ん読本ばかりを読んでいました。新しい本を読みたいと思いました。書店のおすすめコーナーから選んだ1冊です。
私の読み方
ビジネスの啓発本でしょうか。
本書では「一流」と「プロフェッショナル」が中心にあるというか、売りにしているようです。あこがれを思わせる「一流」と「プロフェッショナル(プロ)」という言葉をどのように捕らえればよいのか迷うことがあります。
「一流」とはどういうことでしょうか。レベルの高い仕事をする人をいうのでしょうか。プロ野球の解説者が、バッターは3割打って一流、と言っていました。この場合、打つことに関して一流ということです。
しかし、○流芸能人とかいうテレビ番組を見ていると、仕事以外の分野で評価をしているように感じます。芸能人の場合、テレビに出演するだけでもかなりのレベルだと思います。芸能人の○流のランク付けには、無理があります。一流芸能人と言われる人が、どのようなリアクションをするのかを興味本位で見る番組だと思います。
仕事、私生活、人柄の何で一流なのか、わからないのです。すべてがそろわなければ、一流とは言えないのでしょうか。「一流」を「全能」と同じ意味で使っていると感じることが多くあります。
「プロフェッショナル」も同様です。その分野の専門家や職業の人のことをいうようです。当然、この意味でのプロは技量的に程度の差があります。しかし、「一流」と同じ意味で使われていると感じることは多々あります。プロ野球選手は全員プロですが、その中で3割バッターはさらにプロというわけです。よく聞く、プロ中のプロでしょうか。言い方としては、全員が同じプロですから、「一流」の方がわかりやすい気がしますが。
最強を目指す場合、全知全能を求めるのは仕方のないことかもしれません。
言葉から受ける印象には注意が必要です。
本書は77カ条の教訓を書いていますが、似たような話を聞いたことがあります。
私は組織をいくつか経験していますが、異口同音のことがありました。味わいがあり、私が聞いたことのない言葉です。そのうち、違う人が同じようにいうのを聞いて、なぜだろうと疑問を持つようになりました。
あるとき、研修だと思いつきました。昇進した時、研修を受けることが多いのです。言葉が、テキストに書いてあったり、講師が言ったりするのです。私が受講した研修でも言葉を引用するケースは多くありました。講義する企業が変わってもそれほど内容はかわらないように感じます。
職場、家庭環境を考えてみると、そのような言葉に巡り遭うチャンスはほとんどありません。研修で手っ取り早く、部下の心をつかむ方法を習得しているのです。その言葉は、自らの人生や知識の蓄積から出たものではなく、付け焼き刃のようなものだったのです。しかし、やがてその言葉が受講生の言葉となっていくこともあるようです。
業務を支障なく遂行するためには、手っ取り早く部下を手なずけることが必要です。そのための研修は効果的です。職位ごとの研修で、組織が円滑に動くように仕組まれているように感じるからです。
人の発する言葉には、いろんな意味、目的があるようです。
本書の教訓77カ条は、著者が経験したことの中からの言葉ということです。私のように読書が苦手な人にとって、77カ条は苦痛です。一言で、これだ、というものが欲しいのです。本書の目的の中に「自分らしい天職を選ぶ」「自己実現」という言葉がありました。これが本書を貫くコンセプトなのでしょうか。
私の勝手な解釈から、本書の主張をひとことで言うなら「自分らしくあるために、自分をできるようにしていく」ということになります。
形式です。文字、1行の長さ、行間、上下左右の余白は適当で読みやすかったです。見開きページの真ん中の余白はもう心持ち広い方が読みやすい気がしました。
青いページ、青いマーカーをした文、青い文字など、何が書いてあるのか、どこを強調しているのかわかるようにしてありました。しかしながら、私はマーカーを使用するため、太い文字への青色マーカーには、使いにくさを感じました。
専門用語があり、言葉の解説があれば助かると思いました。
著者が働いてきた企業と年功序列の日本の企業との違いの解説があれば、さらに理解しやすかったような気がします。
読んだ順番です。ページの順番に読みました。「はじめに」と「おわりに」は、最初に読むようにしていますが、このたびは「おわりに」を読むのを忘れていました。最後に「おわりに」を読んでも、しまった!ということはありませんでした。
読書所要時間など
- 所要時間
- 6日19時間12分
- 読み始め
- 2016(平成28)年8月30日(火)21時21分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年9月6日(火)~16時33分
- 読んだ範囲
- 帯、カバーの裏表、本書。ただし、奥付は軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- 『ハーバード・ビジネス・レビュー』
- 『ビジョナリー・カンパニー』 ジェームズ・C・コリンズ氏、ジェリー・I・ポラス氏共著
調べたこと
- 1 最強(さいきょう)
- 2 段階(だんかい)
- 3 IQ(intelligence quotient)
- IQ(知能指数)=(MA〔精神年齢〕/CA〔生活年齢〕)×100。
- 参考:DQ(発達指数,development quontient)。ISS(知能偏差値,intelligence standard score)。
- 4 ブルネイ・ダルサラーム(Brunei Darussalam)
- 国の名前。マレーシアの隣国。
- 5 MBA(Master of Business Administration)
- 経営学修士。実践性をそなえたリーダーを養成する課程を経た人のようです。
- 6 きらびやか
- 7 学歴(がくれき)
- 8 経歴(けいれき)
- 9 自己実現(じこじつげん,self-actualization,self-realization)
- 参考:アイデンティティ(identity)。欲望の実現と区別する。
- 10 咀嚼(そしゃく)
- 11 プライベート・エクイティ(private equity)
- 12 腐心(ふしん)
- 13 イグノーベル賞(Ignobel prize)
- 14 鏤める(ちりばめる)
- 15 根差す(ねざす)
- 16 シニカル(cynical)
- 17 ユニコーン本
- 伝説、想像上、架空、非現実的などの本という意味でしょうか。
- 18 奇を衒う(きをてらう)
- 19 モンテカルロシミュレーション
- インターネットで調べました。
- 20 DCF(Discounted Cash Flow)法(method)
- 21 リアルオプション(real option)
- インターネットで調べました。
- 22 体幹(たいかん)
- 23 リプライ(reply)
- 24 ドラフト(draft,draught)
- 草稿、草案。
- 25 あざとい
- 26 与太話(よたばなし)
- 27 マトリクス(matrix)
- マトリックス。
- 28 デッドライン(deadline)
- 締め切り。
- 29 ファシリテート(facilitate)
- 促進させる。
- 30 悠然(ゆうぜん)
- 31 威風堂堂(いふうどうどう)
- 32 割愛(かつあい)
- 33 怪訝(けげん)
- 34 一流(いちりゅう)
- 35 プロフェッショナル(professional)
- 36 フレームワーク(framework)
- 物事を考えるうえで、諸条件を漏らさずにチェックするためのチャートのようなものでしょうか。インターネットで調べました。
- 37 MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)
- 「ミーシー」「ミッシー」と読むようです。「重複遺漏なきよう」という感じでしょうか。インターネットなどで調べました。
- 38 ロジックツリー
- 「logic tree」でいいのでしょうか。ロジカルシンキング(logical thinking)の1つの手法のようです。インターネットで調べました。
- 39 フレームワーク、MECE、ロジックツリー
- インターネットで調べると、この3つは、研修などのパンフレットでよく見る図です。見ることにより、具体的に物事を把握、シミュレーション、創造ができそうです。しかし、見ることは、あたかもそれが真実であるかのような錯覚を起こさせるかもしれません。取り扱いには、細心の注意が必要かもしれません。
- 40 奇しくも(くしくも)
- 41 当意即妙(とういそくみょう)
- 42 ボルテージ(voltage)
- 43 一事が万事(いちじがばんじ)
- 44 舌を巻く(したをまく)
- 45 コングロマリット(conglomerate)
- 46 ピラミッド構造(pyramid structure)
- ロジカルシンキング(logical thinking)の1つの手法のようです。インターネットで調べました。
- 47 ガネーシャ
- ヒンドゥー教の神の1つ。富の神様のようです。参考:神様を数えるときは「柱(はしら)」を使います。遺骨も「柱(はしら)」を使うことがあります。
- 48 獅子の心臓(ししのしんぞう)
- 神話から来ているのでしょうか。心臓に放たれた矢が折れたとか。意味は、「心臓に毛が生えた」とか「心臓が強い」などに近いのでしょうか。
- 49 アロケーション(allocation)
- 辞書での意味は「割り当て」。本書ではカッコ書きがあります。
- 50 アソシエート(associate)
- 同僚。一緒に働く仲間。
- 51 サスペンダー(suspender)
- ズボン吊り。インターネットで画像を確認しました。
- 52 炸裂(さくれつ)
- 53 ガラケー
- ガラパゴスケータイの略。高機能ながら、一部の地域でしか使えない携帯電話のことのようです。
- 54 辟易(へきえき)
- 55 キャピタル(capital)
- 56 リアルオプション(real options)
- インターネットで調べました。
- 57 似非(えせ)
- 似而非(えせ)。
- 58 INSEAD
- インシアード。ビジネススクールの名前。
- 59 エクセキューション(execution)
- 実行。一連の考えを実行、管理することでしょうか。
- 60 アントレプレナーシップ(entrepreneurship)
- 本書では「企業家精神」。
- 61 ユニコーン企業(unicorn企業)
- ベンチャーキャピタルの1つ。非上場で評価額が高い。インターネットで調べました。
- 62 駆逐(くちく)
- 63 磐石(ばんじゃく)
- 64 笑止千万(しょうしせんばん)
- 65 プロアクティブ(proactive)
- 66 リアクティブ(reactive)
- 67 侃侃諤諤(かんかんがくがく)
- 68 遣っ付け仕事(やっつけしごと)
- 69 食い千切る(くいちぎる)
- 70 切迫(せっぱく)
- 71 呟く(つぶやく)
- 72 ボトルネック(bottleneck)
- 73 レガシー(legacy)
- 遺産。功績?。
- 74 グリット(grit)
- 勇気。闘志。
- 75 サンク・コスト(sunk cost)
- 埋没費用。
- 76 めげる
- 77 稀有(けう)
- 希有(けう)。222ページの後に、ふりがなのついたもの(294ページ)が出てきました。
- 78 やっかむ
- 79 口を酸っぱくする(くちをすっぱくする)
- 口が酸っぱくなる。
- 80 公明正大(こうめいせいだい)
- 81 畏縮(いしゅく)
- 参考:萎縮(いしゅく)。
- 82 脳裏(のうり)
- 脳裡(のうり)。
- 83 過ぎる(よぎる)
- 84 しれっと
- 85 オンパレード(on parade)
- 86 360度評価(さんびゃくろくじゅうどひょうか)
- インターネットで調べました。
- 87 豪放磊落(ごうほうらいらく)
- 88 クレリックシャツ(cleric shirt)
- 和製語。インターネットで画像を確認しました。
- 89 ベンチマーク(bench mark)
- 90 ど壺(どつぼ)
- 91 エキセントリック(eccentric)
- 92 アンカーマン(anchorman)
- 93 ボリウッド(Bollywood)
- インドの映画業界。インターネットで調べました。
- 94 横展開(よこてんかい)
- 同列のモノに対して情報を共有化するという意味でしょうか。インターネットで調べました。
- 95 若造(わかぞう)
- 若僧(わかぞう)、若蔵(わかぞう)。参考:若作り(わかづくり)。
- 96 ちんけ
- 97 せびる
- 98 頓挫(とんざ)
- 99 スピン・オフ(spin-off)
- 100 コミット(commit)
- 101 新物(あらもの)
- 本書には関係ありませんが、お店に行くとサンマがありました。札には「新物」の表示です。読み方と意味を調べました。「荒物(あらもの)」とも書くそうです。生(なま)、新鮮なものという意味のようです。獲れたてというイメージでしょうか。冷凍や塩をしていない、手を加えていないというようにも感じます。
- 今年も脂ののったサンマを食べるつもりです。どうか、サンマが豊漁でありますように。
- ※平成28年10月16日追記: どのお店に行っても「しんもののサンマ」とアナウンスしていました。「あらもの」というと、ほうきやちりとりをイメージします。「しんもの」の方がわかりやすい気がします。「しんもの」は市民権を得ているようです。
以下余白