『超訳 ニーチェの言葉』
- 副題など
- 帯には「人生を最高に旅せよ!」「あなたの知らなかったニーチェ。今に響く孤高の哲人の教え。」とありました。
- 著者など
- フリードリヒ・ヴェルヘルム・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche)氏著
- 白取 春彦(しらとり はるひこ)氏編訳
- 出版社など
- 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン さん
- 版刷など
- 2010年1月第1刷。読んだものは、2010年3月第11刷。
- ボリューム
- ページの表記はありません。項目の表記のみで、232項目。「はじめに」「目次」「参考文献」には、項目の表記はありませんでした。
感じたこと
超訳とは何でしょうか。国語辞典には載っていなかったので、インターネットで検索しました。すると、翻訳したものを、読む国の文化や国民性などに合わせて、訳者の意図を入れて作り直したもの、というイメージを持ちました。翻訳本は、何らかの形で訳者の意図が入るようですが、より強くそれが反映するということでしょうか。翻訳をすると、多少なりとも原作者の意図から離れる気がします。超訳とは、原作者の範囲をでないとしても、それを基にしたあらたな作品と捕らえるべきなのでしょうか。映画でいう、リメークのような感じなのでしょうか。こういう翻訳もあるという一例のように感じます。
中国の思想シリーズでは、原文、読みくだし文、訳文の表示があり、漢文の知識は学校で少し習ったので、ちょっとの馴染みはありました。しかし、本書の場合、直訳文が無いため、どこが超訳なのかわかりません。しかも、私は、ニーチェ氏の著書を読んだことがありません。「超」の部分がわからないので、本書は、原作者に近いのか、それとも翻訳者の作品とみるのか、読んでいてその位置づけが中途半端でした。少なくも、原作に忠実に翻訳をしていないだろうな、という感触を持ちました。
ニーチェ氏と聞くと、高校の倫理社会の授業を思い出します。今では、「神は死んだ」とか「ニヒリズム」を覚えていた程度です。「神は死んだ」は、当時内容をよく理解できませんでしたが、センセーショナルな文句です。神仏の存在すらわからないのに、なぜこれを語るのか、です。
さまざまな経験を積むと、本書の内容を理解しやすいのでは、と思いました。人間関係、自己への関心、正義など、自己の経験と照らし合わせて、理解をしようとします。しかし、本書のすべてを理解できたとは思えませんでした。全く、何を言っているのかわからないところもありました。これは、私には、まだまだ未経験のことがあり、まだ、成長の余地があるのだと、陽気に考えてしまいました。
さて、本書を読んでいて感じたのは、中国の思想と内容があまり変わらないことです。いずれの本も、現代人に役立つように翻訳をしたとの主張でした。しかも、いずれの本も扱う内容をも選択しています。どうしても似通ったものになるのかもしれません。
東洋と西洋では何がどう違うのか、私の知りたいところです。中国の思想は、事例を基に思想を作ってきた感じがします。先例を基に、注釈を加えるといったところでしょうか。
西洋の思想の1つとして、ニーチェ氏を理念的に感じました。普遍の真理を追究するといった感じです。
東洋と西洋どちらも、真理を求めていますが、それに行き着くルートが違うということです。
本書はよく売れているようです。理由はわかりませんが、私には1つ気になることがあります。それは、命令調で書かれているところです。「・・・せよ」とか「・・・するな」「・・・しなさい」などです。全体的に、上から目線で表現している感じです。
原作が、同じようなニュアンスの表現を使っているのかということ。そして、これは、精神論や根性論を読者が求めているのか、です。
ニーチェ氏は人を何かから解放させようとしています。しかし、読者はこの考えに拘束されたがっているのではないか、ということです。
売れる理由が本書に賛同するということなら、私たちは日頃どんな人生を歩んでいるのでしょうか。マニュアルだけに頼る、単純な動作ばかりをしているのでしょうか。そして、自分だけの人生に対しても、マニュアルのように考え行動しているかもしれません。
自分について考える、これが思考や価値観の縛(しば)りから解放される1つの方法なのかもしれません。この世で1人の、絶えず変化する心をもった人間に、マニュアルは十分な効果を期待できません。自分を知り、人生を考えることが、その一助となるようです。
余談ですが、知り合いから聞いた話です。
病院で検査を受ける、小学生2、3年生くらいの男の子が、採血を渋っていたそうです。女性看護師が2人がかりで、手を替え品を替え説得しても、なかなか採血に応じなかったそうです。長いやりとりが続きました。男の子は、身に降りかかった運命から逃れられないことをだんだんにわかってきたようでした。
看護師A : 「チクッとするよ。いち、にい、さん、ハイ」
男の子 : 「死んだぁ~!」
看護師B : 「おぅ~、死んだか」
看護師A : 「さぁ、生き返って、生き返って」
採血は無事に終わったそうです。
ニーチェ氏は自らを拘束する神の考えから、男の子は痛いという恐怖心から解放されるために「死んだ」を使いました。実際は死にませんが、そんな状況を受け入れてこそ見えてくるものがあるのかもしれません。
この書物を選んだ理由
私がある職場を辞めるときに、同僚から餞別(せんべつ)としてもらった本です。当時は、哲学書は難しいと決めつけて、積ん読を決めました。それから、数年経ち、だいぶ本を読めるようになったと思いはじめました。棚にあった本書が気になっていました。その時、中国の思想シリーズを読み終え、西洋の考えも知りたくなりました。ちょうど手元にあったので、この本を読むことにしました。
私の読み方
読書に役に立ちそうなことが多く書かれていました。
論語の「学びて思わざれば即ち罔(くら)く、思いて学ばざれば即ち殆(あやう)し」を思い出しました。
孔子と同じく書物を読むことを奨励しています。そして、自分で考えることもです。自分で何とかできる、努力をすれば叶うというといった、自己主導型とでも呼べそうな感じです。自然の流れに身を委ねるという考え方は、見当たらないように思います。
「Ⅸ 知について」には、「180勉強はよく生きることの土台となる」「182本を読んでも」「183読むべき書物」「185古典を読む利益」「201徹底的に体験しよう」「202考えは言葉の質と量で決まる」「213よく考えるために」があり、ニーチェ氏が読書をどのように活用していたのかがわかります。
「はじめに」は、わかりづらかったです。「現代人のためになるものを選別して・・・」とありました。この言葉が始終頭に残っていました。現代人のためになるものとは何か?です。後続を見ると、「金銭と利潤を絶対価値とする現代人に役立つ選別」と読み替えることができます。
「はじめに」と内容を照らし合わせると、「金銭と利潤の蓄積は美であり、徹底的に貪欲に追求する」主張もありだ、と本書は言っているようにも思えます。
金銭や利潤の追求というと、後ろめたさや罪悪を感じさせる論調があります。この追求が人間性の喪失になるというものです。この罪悪感は、環境などにより私たちがそのまま受け入れた価値観とも言えます。一方で、「金銭と利潤の追求が人間性を向上させる」を否定できるかどうかです。
価値観について、本書がどのように考えているのかを記していません。このことが、「現代人のためになるものを選別して・・・」が、何なのかがわからない原因のようです。
本書の主張が「価値は自分の頭で考える」であれば、本書の価値観を記すわけにはいかないでしょう。読者に考えてもらいたいからです。この場合でも、どのような基準で「選別」したのかわかりませんでした。
いずれにせよ、ニーチェ氏の考えから、十分な効用を得られるのでしょう。特定の価値観から自己を解放させ、本当の自分を知り、思う人生を歩む、ということでしょうか。
形式です。1ページ1項目となっています。短いもので、1行がありました。
ページの中心に文章があるので、左右の余白同じですが、ページによって余白の広さは違います。上下の余白は、下を少しだけ広く取ってありました。文章全体を視界に捕らえることができるので、楽に文字を見られました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 6日19時間23分
- 読み始め
- 2016(平成28)年7月19日(火)20時45分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年7月26日(火)~16時08分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。ただし、奥付は軽く目を通し、巻末の書籍広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 映画『2001年宇宙の旅』
巻末の参考文献に掲載があります。
出来事
7月26日(火) 神奈川県の障害者施設で入所者が殺傷される。
ひととき
動物の子供たちがたくさん動き始めました。
空を見上げると、変わった鳥を見つけました。中途半端な大きさの鳥です。この辺りには、トビがよく飛んでいます。小さいので、トビ(鳶)の子供のようです。
巣立って、飛ぶ練習をしていたようです。この日は風が強く、羽を広げたまま、空中に浮く練習をしていたようです。2羽が地上近くに浮いていました。
平成28年7月16日(土)撮影。
調べたこと
- 1 超訳(ちょうやく)
- インターネットで調べました。
- 2 孤高(ここう)
- 3 哲人(てつじん)
- 4 哲学(てつがく)
- 5 道徳(どうとく)
- 6 警句(けいく)
- 7 断章(だんしょう)
- 参考:断章取義(だんしょうしゅぎ)。
- 8 編纂(へんさん)
- 9 流言飛語(りゅうげんひご)
- 流言蜚語(りゅうげんひご)。
- 10 デマ
- デマゴギー(demagogy)の略。
- 11 彼岸(ひがん)
- 12 ニヒリズム(nihilism)
- 13 虚無主義(きょむしゅぎ)
- 14 代替物(だいたいぶつ)
- 参考:「代替(だいたい、だいがえ、だいかえ)」。
- 15 席巻(せっけん)
- 席捲(せっけん)。
- 16 インスパイア(inspire)
- 感化。ここでは、哲学への目覚めや啓発、の意味でしょうか。参考:インスピレーション(inspiration)。
- 17 Selbstheit
- ドイツ語。己。自己。参考:selbst+heit。
- 18 聞き耳を立てる(ききみみをたてる)
- 19 巣くう(すくう)
- 20 ジレンマ(dilemma)
- ディレンマ。
- 21 慢心(まんしん)
- 22 Freude
- ドイツ語。喜び。
- 23 エピキュリアン(epicurean)
- 快楽主義者。
- 24 流暢(りゅうちょう)
- 25 半可通(はんかつう)
- 26 突飛(とっぴ)
- 27 高笑い(たかわらい)
- 28 Leben
- ドイツ語。生。人生。
- 29 刺激(しげき)
- 刺戟(しげき)。本書では、両方の漢字が使われていました。
- 30 矮小(わいしょう)
- 31 障碍(しょうがい)
- 障害(しょうがい)。
- 32 忿懣(ふんまん)
- 憤懣(ふんまん)。
- 33 幻滅(げんめつ)
- 34 一心不乱(いっしんふらん)
- 35 Geistigkeit
- ドイツ語。心。精神の。
- 36 飛翔(ひしょう)
- 37 灼熱(しゃくねつ)
- 38 セカンドハウス(second house)
- 39 怖じ気付く(おじけづく)
- 40 虚栄心(きょえいしん)
- 41 見栄(みえ)
- 42 Freundschaft
- ドイツ語。友。友だちづきあい。
- 43 敬重(けいちょう)
- 44 Öffentlichkeit
- ドイツ語。世。社会。世間。
- 45 手数(てかず、てすう)
- 46 因習(いんしゅう)
- 47 うざったい
- 48 Menschlichkeit
- ドイツ語。人間性。人間味。博愛。
- 49 遺恨(いこん)
- 50 奥底(おくそこ、おうてい)
- 51 老獪(ろうかい)
- 52 ビジネスライク(businesslike)
- 53 鈍臭い(どんくさい)
- 54 渋渋(しぶしぶ)
- 55 言い募る(いいつのる)
- 56 言い立てる(いいたてる)
- 57 Liebe
- ドイツ語。愛。愛情。恋愛。
- 58 包む(くるむ)
- 59 ・・・込む(・・・こむ)
- 60 Wissenschaft
- ドイツ語。学問。科学。参考:Intelligenz。ドイツ語。知性。知力。
- 61 古典(こてん)
- 62 滋養(じよう)
- 63 抜け目(ぬけめ)
- 64 抜け目がない(ぬけめがない)
- 65 支離滅裂(しりめつれつ)
- 66 プロフェッショナル(professional)
- 対義語は、アマチュア(amateur)。
- 67 没頭(ぼっとう)
- 68 がさつ
- 69 産婆(さんば)
- 「206話し合いの効用」で使われていた言葉。この言葉は何を表しているのでしょうか。
- 70 蔑視(べっし)
- 71 あざとい
- 72 Schonheit
- ドイツ語。美。
- 73 心根(こころね)
- 74 侮蔑(ぶべつ)
- 75 恩寵(おんちょう)
- 76 切に(せつに)
- 77 矜持(きょうじ、きんじ)
- 矜恃(きょうじ、きんじ)。
- 78 佇まい(たたずまい)
- 79 まんじり
- 80 清清しい(すがすがしい)
- 81 余念(よねん)
- 82 余念が無い(よねんがない)
- 83 無造作(むぞうさ)
- 無雑作(むぞうさ)。
- 84 精確(せいかく)
- 参考:正確(せいかく)。
- 85 官能(かんのう)
- 86 気高い(けだかい)
以下余白