中国の思想[別巻] 『中国の故事名言』
- 副題など
- 帯には「中国古典の精髄。」「脈々と息づく珠玉のことば。」「『人間』とは何か。『生きる』とは何か。比類なき経験と洞察が凝縮された英知の源泉を集大成。人物事典・地図・年表を加えた決定版!」とありました。
- 著者など
- 和田 武司(わだ たけし)氏・市川 宏(いちかわ ひろし)氏編
- 松枝茂夫氏・竹内好氏監修。
- 出版社など
- 株式会社徳間書店 さん
- 版刷など
- 1997年3月第3版第1刷。読んだものは、2010年6月第3版第7刷。
- 株式会社徳間書店さんの中国古典シリーズ。『中国の思想』の別巻。
- ボリューム
- 394ページ。本文は329ページまで。331ページ以降は「人物小事典」「関連地図」「関連年表」でした。
感じたこと
中国の思想のシリーズを読んで感じたのは、思想家が、論戦したり、君主に進言していることです。
なぜ、このような行為をするのでしょうか。自身の考えが正しいことを主張するためでしょうか。それとも、自らが、政治的権力を得るためにしたものでしょうか。さらには、人々、君主から平民に至るまで、平穏に生活を送り、生涯を暮らすための言動なのでしょうか。
シリーズを読んでいると、下剋上や、人を陥れたり、自己の利益を謀ったりするのが、普通の人間であるように感じました。そのため、法律を守ったり、人の道を歩むことが、ことさらにクローズアップされ、後世に思想が受け継がれてきたのかもしれません。要は、人の道に外れることはわかっているが、人間の本性がその行為をしてしまう。誰もがそんな目に遭うかもしれないが、他人には道に外れたことをしてしまう。誰もが、そんな目に遭いたくないから、理想を主張するといった感じでしょうか。
現実問題として、法律なしでも成り立つ人間関係、信頼関係を築けることが最も安定していると言えそうです。
儒家の影響は大きいと感じました。
勉強すれば、努力すれば、叶(かな)う、報(むく)われるというのも、この影響ではないかと思いました。しかし、現実は、違います。
そして、人間を労働の規格品として扱うようになったのも、この考えからはじまったのではないかと感じました。学校を卒業していれば、一律に仕事ができるという考え方です。現実には、性格や能力に差があり、同じ学校を卒業していても、人材の資質はそれぞれに違います。
孔子は、弟子を一律に指導していません。個性に合わせた対応をしています。弟子の個性を発揮させるように、指導していたようです。儒家が栄えた理由は、弟子を次期の指導者に育てることに成功したことにあります。
このように考えると、経営者やリーダーは、人材の個性を活用する工夫が求められます。人材の資質と組合せ、職務内容により、人材配置をすることです。自分の目で人材を観察し、人材の活躍できる場を提供できるかにあります。孔子のように、実践と問答を通じて、弟子の特徴を知り、それを生かそうとするなら、適材適所は叶(かな)うかもしれません。
複数の評価者の人物評価が一致するのは、組織の価値観が硬直化しているかもしれません。組織に多様性がないため、人材配置に柔軟性を発揮できません。また、評価と人材の活用とは、手法が違うように感じます。
そして、このことは、弟子と、師匠、同僚の間でも同じです。お互いの資質をわかり合ってこそ、十分なコミュニケーションができるはずです。
仕事には、知識と経験、思考と実践の積み重ねも大切です。チームが有機的に動くには、自身の資質の向上と、お互いの資質を知ること、が鍵と言えそうです。
特殊に感じたのは『易経』です。占いとのことですが、十分に活用できていない気がしました。
筮竹(ぜいちく)やサイコロなどを使って、卦(「け」または「か」)を決めます。これを占い師が、判断し将来を予測するのです。
『易経』は、過去に起きた事例をもとに、卦を決めたといいます。人間の心理からもたらされる行動と結果について、統計学のようにデータを卦により分類したことになります。そうであるなら、偶然に任せて卦を決めるのは、データを有効に活用したとは言えません。すべての卦を見渡し、現状がどの卦なのかを特定すべきです。その上で、詳細な現状の分析と、行動の転換、将来の方針の判断材料とするのが適切です。
少なくとも、人間の陥りやすい傾向からは、意志を持って脱することができるかも知れません。これ以外は天命であり、意志ではどうにもならず、受け入れ、動向を見守るしかありません。
当たる当たらないではなく、現状を正確に把握し、先例から処し方の指針とすべきなのです。『易経』は思想の実践結果をまとめたもの、と言えるかもしれません。
さて、思想は何のためにあるのでしょうか。人間を知るため、生きるため、子孫を残すためでしょうか。紀元前から今日に至るまで、人の道を外れた行為がなかったことはありません。そして、記録に残るのは、君主などの国家レベルであり、平民レベルではもっと多くの悪逆非道があったはずです。わかっているのは、氷山の一角だということです。
人の道や法律を守っても、酷い目に遭う。しかし、守らなければ、犯罪者になってしまう。思想は、人を守ってくれません。
このように考えてくると、何が起こっても不思議はありません。起こったことに、賞讃、非難、恨み、憎しみを持つのが当然とも思えます。そして、何をしても構わない気がしてきます。自分の欲求や感情を満たせば、それでいいという考え方です。
私たちは1人では生きていけません。多くの人たちが支え合って生活をしています。そして、多くの人たちを結びつけるのは、信頼です。信頼がなければ、疑心暗鬼に囚われます。この集団の信頼を保つのは、組織ではなく、個人の信頼についての考え方とその振る舞いによります。この考え方と振る舞いが、思想ではないかと思いました。
中国の思想の12巻まで読みましたが、いずれの思想の根底にあるのは、信頼関係の保持だと感じました。法術、性善説、性悪説、兼愛、無為自然、易、兵法などです。個々の信頼がなければ、日々の生活、国家の安寧、国防もままならないからです。
教科書では、思想を先ほどの性善説とか無為自然などの表面的な言葉を表示しているに過ぎません。その根底にある共通するものには、触れていない気がします。このように考えると、1つの思想を信奉するのは、表面的な理解になっているかもしれません。多くの思想とその解説に触れ、すべての思想の根底にあるものを探し続けることが、答えに近づく唯一の方法かもしれません。
思想は何のためにあるのか、どのような役割を果たすのかについて、答えは見つからない気がします。おそらく、私たちのあり方や生き方を考え実践し続けることなのでしょう。それが、信頼を築ける方向にあるならいいのですが。
この書物を選んだ理由
中国の思想の続きです。株式会社徳間書店さんのシリーズで中国の思想を読んでいます。このたびは別巻『中国の故事名言』です。
当初はハンドブックとして使っており、読む気はまったくありませんでした。中国の思想・全12巻の締めくくりとして、復習の意味も込めて、通読することにしました。
私の読み方
本書の「中国の故事名言」「人物小事典」は、五十音順になっています。事典として使うにはいいのですが、順番に読むのは苦痛でした。その理由は、話が系統立っていないことにあります。今読んでいる項目と次に関連性がありません。そのため、読み進めるための推察が役に立ちにくいのです。パート毎に、気持ちを入れ替えて、読むという感じです。単調な作業の繰り返しのようでした。
形式は、上下2段縦書きです。1行が短いので、全体がはっきりと見えました。しかし、次から次へと読めそうで読めませんでした。その理由は、形式より内容によるのだと感じました。項目毎に完結したものは、読みにくかったです。
中国の思想全巻を通して感じたこととして。
すべての思想が取り上げられているわけではないこと。編集者の意図により、内容が取捨選択されています。その上で、現代語訳が本文という書籍です。
訳文は、訳者の意図がどうしても入るはずです。訳文と原文とは別作品と考えた方がよさそうです。選ばれた原文は、編者の意図を汲(く)んだものです。
このことから、中国の思想シリーズは通読しましたが、思想を理解したとは思えません。取り上げた書籍は、1つの解釈を示しているということです。
原文を読むには、漢文の知識、歴史的背景、人物のデータなどかなりの広範囲を調べる必要があり、いくら時間があっても足りません。翻訳は専門家に任せる方が得策です。
いくつかの他の翻訳本を読んで、ある程度の理解ができる気がします。このたびは、徳間書店さんで、「『中国の思想』刊行委員会」で、一通(ひととお)り、中国の思想を概観したという感じです。
読み方は、見開きページを視界全体に捉え、はっきりと見えるところを1文字ずつ読んでいく、弊サイトの方法です。
読書所要時間など
- 所要時間
- 121日21時間5分(ハンドブックとして使い始めてから)
- 読み始め
- 2016(平成28)年3月18日(金)午前5時12分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年7月18日(月)~午前2時17分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本文。ただし、「関連地図」は、眺める感じで見ました。奥付は、軽く目を通しました。広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『韓詩外伝(かんしげでん)』
- 『孔子家語(こうしけご)』
- 武経七書(ぶけいしちしょ)・・・『孫子(そんし)』『呉子(ごし)』『尉繚子(うつりょうし)』『六韜(りくとう)』『三略(さんりゃく)』『司馬法(しばほう)』『李衛公問対(りえいこうもんたい)』。
- 『晏子春秋(あんししゅんじゅう)』
その他、多数の書籍の記載がありました。
出来事
7月13日(水)頃 天皇陛下が生前退位の意向をお示しに。
7月15日(金) トルコでクーデター。未遂に。
ひととき
百日紅(サルスベリ)の花が、満開です。最近は街路樹にサルスベリを植えるようです。街でよく見かけます。
私が見たサルスベリの花は、赤と白でした。インターネットを見ると、紫やピンクなど花に個性があるようです。
クマバチが花に集まっていました。蜜をとるのに忙しいようです。
平成28年7月16日(土)撮影。
調べたこと
- 1 名言(めいげん)
- 2 精髄(せいずい)
- 3 脈脈(みゃくみゃく)
- 4 ハンドブック(handbook)
- 5 常態(じょうたい)
- 6 憚る(はばかる)
- 7 甲斐(かい)
- 8 遊俠(ゆうきょう)
- 9 寓意(ぐうい)
- 10 エキスパート(expert)
- 11 丞相(じょうしょう、しょうじょう)
- 12 帷幄(いあく)
- 13 傑物(けつぶつ)
- 14 後顧の憂い(こうこのうれい)
- 15 引見(いんけん)
- 16 隠退(いんたい)
- 参考:引退(いんたい)。
- 17 啖呵を切る(たんかをきる)
- 18 出色(しゅっしょく)
- 19 歓心を買う(かんしんをかう)
- 20 四角四面(しかくしめん)
- 21 糟糠の妻(そうこうのつま)
- 22 陪席(ばいせき)
- 23 懇請(こんせい)
- 24 躍起(やっき)
- 25 片片(へんぺん)
- 26 せせら笑う(せせらわらう)
- 27 気障(きざ)
- 28 科白(せりふ)
- 台詞(せりふ)。
- 29 嘶く(いななく)
- 30 むくつけ
- 31 燎原(りょうげん)
- 32 燎原の火(りょうげんのひ)
- 33 荘重(そうちょう)
- 34 内訌(ないこう)
- 35 襟度(きんど)
- 36 怨嗟(えんさ)
- 37 通性(つうせい)
- 38 友誼(ゆうぎ)
- 39 偉才(いさい)
- 40 算盤をはじく(そろばんをはじく)
- 十露盤をはじく(そろばんをはじく)。
- 41 仄見える(ほのみえる)
- 42 這這の体(ほうほうのてい)
- 43 大望(たいもう、たいぼう)
- 44 篤学(とくがく)
- 45 硬骨漢(こうこつかん)
- 46 横目使い(よこめづかい)
- 横目遣い(よこめづかい)。
- 47 図星(ずぼし)
- 48 剣突(けんつく)
- 49 殺し文句(ころしもんく)
- 50 及第(きゅうだい)
- 51 足添(すうきょう)
- 52 一頭地を抜く(いっとうちをぬく)
- 53 不偏不党(ふへんふとう)
- 54 荒唐無稽(こうとうむけい)
- 55 捏ち上げる(でっちあげる)
- 56 窮境(きゅうきょう)
- 57 不立文字(ふりゅうもんじ)
- 58 合変
- 調べましたが、わかりませんでした。文脈から、「臨機応変」のことのようです。
- 59 杯盤狼藉(はいばんろうぜき)
- 60 ペテン
- 61 柳眉(りゅうび)
- 62 柳眉を逆立てる(りゅうびをさかだてる)
- 63 素寒貧(すかんぴん)
- 64 がらんどう
- 参考:伽藍堂(がらんどう)。
- 65 獅子奮迅(ししふんじん)
- 66 口惜しい(くちおしい、くやしい)
- 参考:悔しい(くやしい)。
- 67 一糸乱れず(いっしみだれず)
- 参考:一糸まとわず(いっしまとわず)。
- 68 帰投(きとう)
- 69 矢庭に(やにわに)
- 70 姦邪(かんじゃ)
- 奸邪(かんじゃ)。
- 71 君側の奸(くんそくのかん)
- 72 カムフラージュ(camouflage)
- フランス語。カモフラージュ。
- 73 弛む(たゆむ)
- 74 世人(せじん)
- 75 仮借無い(かしゃくない)
- 76 壮途(そうと)
- 77 ドン・キホーテ
- スペイン。
- 78 毒突く(どくづく)
- 79 奇特(きとく、きどく)
- 80 朝議(ちょうぎ)
- 81 徴発(ちょうはつ)
- 参考:挑発(ちょうはつ)。
- 82 ほくそ笑む(ほくそえむ)
- 83 潮(しお)
- 汐(しお)。
- 84 訥弁(とつべん)
- 85 人口に膾炙する(じんこうにかいしゃする)
- 86 奇観(きかん)
- 87 有為(ゆうい)
- 参考:「有為(うい)」は、仏教語。
- 88 逐客(ちくかく、ちっかく)
- 漢和辞典とインターネットで調べました。
- 89 生国(しょうごく、しょうこく)
- 90 デスペレート(desperate)
- 絶望的。
- 91 鼻白む(はなじろむ)
- 92 洒脱(しゃだつ)
- 93 俊才(しゅんさい)
- 駿才(しゅんさい)。
- 94 順境(じゅんきょう)
- 対義語は「逆境(ぎゃっきょう)」。
- 95 好(よしみ)
- 誼(よしみ)。
- 96 主上(しゅじょう、しゅしょう)
- 97 紊乱(ぶんらん、びんらん〔慣用読み〕)
- 98 慣用読み(かんようよみ)
- 99 説客(ぜいかく)
- 100 温容(おんよう)
- 101 創建(そうけん)
- 102 陪乗(ばいじょう)
- 103 沈鬱(ちんうつ)
- 104 涵養(かんよう)
- 105 難局(なんきょく)
- 106 挽回(ばんかい)
- 107 謹直(きんちょく)
- 108 斐然(ひぜん)
- 立派なさま。漢和辞典で調べました。
- 109 弘毅(こうき)
- 110 一朝(いっちょう)
- 111 輔翼(ほよく)
- 112 御鉢が回る(おはちがまわる)
- 113 望見(ぼうけん)
- 114 算を乱す(さんをみだす)
- 115 潰走(かいそう)
- 116 推輓(すいばん)
- 推挽(すいばん)。
- 117 仙境(せんきょう)
- 仙郷(せんきょう)。
- 118 肖る(あやかる)
- 119 響動もす(どよもす、とよもす)
- 参考:響動めく(どよめく)。
- 120 ファシスト(fascist)
- 121 鄙事(ひじ)
- 122 愚民政策(ぐみんせいさく)
- 123 方士(ほうし、ほうじ)
- 124 一半(いっぱん)
- 125 筆先(ふでさき)
- 126 頂門の一針(ちょうもんのいっしん)
- 127 廊門
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 128 直情径行(ちょくじょうけいこう)
- 129 身命(しんめい、しんみょう)
- 130 ざっくばらん
- 131 寵愛(ちょうあい)
- 132 狼煙(のろし)
- 烽火(のろし)。
- 133 討手(うって)
- 134 呼び水(よびみず)
- 参考:経済用語。「誘い水政策(さそいみずせいさく)」。または「呼び水政策(よびみずせいさく)」。
- 135 天(てん)
- 本書では「天から・・・」。
- 136 肯んずる(がえんずる)
- 137 痛憤(つうふん)
- 138 名うて(なうて)
- 139 無間(むけん、むげん)
- 140 無間地獄(むけんじごく)
- 141 ノンシャラン(nonchalant)
- フランス語。
- 142 しかつめらしい
- 143 師傅(しふ)
- 144 中子(ちゅうし)
- 145 自刎(じふん)
- 146 打っ違い(ぶっちがい)
- 打っ違え(ぶっちがえ)。
- 147 通暁(つうぎょう)
- 148 覆滅(ふくめつ)
- 149 いんちき
- 150 如何様(いかさま)
- 151 野盗(やとう)
- 参考:野党(やとう)。夜盗(やとう)。
- 152 官途(かんと)
- 153 幣物(へいもつ、へいぶつ)
以下余白