中国の思想[Ⅻ] 『荘子』
- 副題など
- 帯には「自己回復の書。」「小知を捨て去り、無為自然に徹する。」「さかしらな『知』にこだわればこだわるほど、自分を見失っていく。」「人間存在の深淵を凝視し、自在な生を啓示した、魅力あふれる荘子の世界。」とありました。
- 著者など
- 岸 陽子(きし ようこ)氏訳
- 松枝茂夫氏・竹内好氏監修。
- 出版社など
- 株式会社徳間書店 さん
- 版刷など
- 1996年8月第3版第1刷。読んだものは、2000年7月第3版第3刷。
- 株式会社徳間書店さんの中国古典シリーズ。『中国の思想』全12巻の12巻目。
- ボリューム
- 284ページ。
感じたこと
何も考えること無く、読んでいました。読み終えると、スッキリした気持ちとともに、何か気怠(けだる)い力の抜けたような、力の入らないような感じになりました。
荘子の無為自然の思想は、遊説家や道を志すもの、個人を対象にしているようです。老子が国家や君主、幹部など、全体を対象に論じ、列子が庶民の感覚を確認しています。
荘子と対極にあるのが、徹底した作為を奨励する孔子だと考えられているようです。また、墨子は、庶民があたかも国家の主役のような錯覚を与えて、支持を得ています。儒家、墨家、道家は、より多くの支持を得るために、自分たちが正しいことを示すために、活動をしています。おかしな言い方ですが、思想の覇権争いとでもいうような感じです。
これらが流行った時代の中国では、相手との論戦により、各思想が淘汰されていったようです。無為自然を唱える荘子にあっても、別の思想を非難し、論破することで、生き残ったのです。これらの行為は、作為であり、我欲です。
いくら論戦に勝ったとしても、支持者が無ければ、思想は現代まで残りません。支持者は、思想の何に感じ入り、何を得ようとしてきたのでしょうか。また、これらの思想は、私たちの考えに少なからずあります。これらの考えは、習慣として、形式を受け継いできただけなのでしょうか。
孔子と大盗人・盗跖(とうせき)との、やり取りが心に残ります。
盗跖は、孔子の考えや、物事の道理について理解していたのです。盗跖は小国を脅かすほどの力を持っていました。人を動かし、ことをなす。一国の君主と盗跖の立場は変わりません。盗跖は、道理を実践して、その善し悪しを現実に知っていたのです。頭で考えた理路整然とした道理では、現実を治められないことを感じていたのです。
悪行のはずの盗賊が、これほどの勢力を持つまでに大きくなったのでしょうか。そして、仲間割れしない統治、統率力とは何でしょうか。
そこには、組織の規律、構成員の共感が、作用しています。善悪にかかわらず、功績があれば賞讃され、不正を働けば罰を受けます。大きな盗みを働いて仲間から賞讃され、頭(かしら)から褒美をもらうことで、仕事をした人は満足を得ます。しかし、その行状について、あらためて善悪を問われると、悪行だと答えるでしょう。それは、盗跖でも同じでしょう。
無為自然の思想により、自分の本質や物事の道理を得られたとしても、善悪の区別を忘れないようにしたいものです。
今している仕事が、正しいのかどうか、やり方は間違っていないか、人の道を確認してもいいかもしれません。組織の方針、上司の指示を抜きにして、1人の人間として、今やっていることが、いいことか悪いことかを問い直すということです。
こんなことばかり考えていたら、身を削るだけかもしれません。隠者になるしか道はないのかもしれません。
この書物を選んだ理由
中国の思想の続きです。株式会社徳間書店さんのシリーズで中国の思想を読んでいます。このたびは最終の12巻目の『荘子』です。
私の読み方
読みやすい文章で、内容も面白かったです。そのため、一度読み始めると、止(と)まりませんでした。
読み方は、見開きページを視界全体に捉え、はっきりと見えるところを1文字ずつ読んでいく、弊サイトの方法です。
読んだ順番は、カバー、帯、本書です。本書の最初の部分「・・・あたって」は、今まで読んだ中国の思想と同じですが、飛ばさずに読みました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 5日0時間33分
- 読み始め
- 2016(平成28)年6月29日(水)20時53分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年7月4日(月)~21時26分
- 読んだ範囲
- 訳文を読みました。原文、読みくだし文は、ほとんど読んでいません。訳者紹介などの奥付は、軽く目を通しました。広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『荘子集釈』 郭慶藩氏著
- 『十批判書』 郭沫若氏著
- 『淮南子』 劉安氏著
- 『史記』
その他、いくつかの書籍の記載がありました。
出来事
7月1日(金) バングラデシュのダッカで人質事件。日本人7人が死亡。
調べたこと
- 1 小知(しょうち)
- 小智(しょうち)。
- 2 無為(むい)
- 3 深淵(しんえん)
- 4 荘子(そうし、そうじ)
- 荘周(そうしゅう)。
- 5 鼎立(ていりつ)
- 6 押し並べて(おしなべて)
- 7 逍遙(しょうよう)
- 逍遥(しょうよう)。
- 8 厭世的(えんせいてき)
- 9 伍する(ごする)
- 10 超然(ちょうぜん)
- 11 郊祭(こうさい)
- 郊祀(こうし)。インターネットで調べました。
- 12 万乗の君(ばんじょうのきみ)
- 13 アカデミア(academia)
- 14 稷下(しょっか)
- 斉の都。漢和辞典で調べました。
- 15 没・・・(ぼつ・・・)
- 16 刪定(さんてい)
- 17 亡佚(ぼういつ)
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 18 朝三暮四(ちょうさんぼし)
- 19 生滅(しょうめつ)
- 20 開闢(かいびゃく)
- 21 渾沌(こんとん)
- 混沌(こんとん)。
- 22 天寿(てんじゅ)
- 23 才徳(さいとく)
- 24 忌避(きひ)
- 25 背馳(はいち)
- 26 端倪(たんげい)
- 27 卑小(ひしょう)
- 28 南冥(なんめい)
- 南溟(なんめい)。南の大海。
- 29 憧憬(しょうけい、どうけい)
- 30 無窮(むきゅう)
- 31 嘲弄(ちょうろう)
- 32 寂寥(せきりょう)
- 33 際疾い(きわどい)
- 34 名分(めいぶん)
- 35 アナーキスト(anarchist)
- 36 神仙思想(しんせんしそう)
- 37 現世利益(げんせりやく)
- 38 土俗(どぞく)
- 39 列仙(れっせん)
- 『列仙伝(れっせんでん)』は、劉向(りゅうきょう)氏が書いた、仙人の伝記。漢和辞典、インターネットで調べました。
- 40 蘇軾(そしょく)
- 人の名前。
- 41 枚挙に遑が無い(まいきょにいとまがない)
- 42 物我(ぶつが)
- 43 主客(しゅかく、しゅきゃく)
- 44 景(けい)
- 45 情(じょう)
- 46 逃避(とうひ)
- 47 観照(かんしょう)
- 48 怪奇(かいき)
- 49 梢(こずえ)
- 50 朝菌(ちょうきん)
- 51 鷦鷯(みそさざい)
- 52 神主(かんぬし)
- 53 大風呂敷を広げる(おおぶしきをひろげる)
- 54 法螺(ほら)
- 55 神人(しんじん)
- 56 飛竜(ひりょう、ひりゅう)
- 57 金石(きんせき)
- 58 しこたま
- 59 後裔(こうえい)
- 60 しがない
- 61 墨縄(すみなわ)
- 墨糸(すみいと)、墨壺(すみつぼ)。
- 62 差し金(さしがね)
- 曲金(まがりがね)、曲尺(まがりがね)。本書は「曲尺」を「さしがね」と読んでいます。「さしがね」は43ページ。198ページは「まがりがね」。
- 63 犂牛(りぎゅう)
- 64 図体(ずうたい)
- 65 塵外(じんがい)
- 66 犀利(さいり)
- 67 洞(うろ)
- 空(うろ)、虚(うろ)。
- 68 立ち初む(たちそむ)
- 69 シンフォニー(symphony)
- 70 大風(おおかぜ、たいふう)
- 71 一過(いっか)
- 「台風一過」がありますが、本書は「大風一過」。
- 72 実相(じっそう)
- 73 虚妄(きょもう)
- 74 外物(がいぶつ)
- 75 粗放(そほう)
- 疎放(そほう)。
- 76 鬩ぎ合う(せめぎあう)
- 77 凋落(ちょうらく)
- 78 嗟嘆(さたん)
- 嗟歎(さたん)。
- 79 浮躁(ふそう)
- おっちょこちょいのこと。漢和辞典で調べました。
- 80 真宰(しんさい)
- 81 困憊(こんぱい)
- 82 疲労困憊(ひろうこんぱい)
- 83 人倫(じんりん)
- 84 真知(しんち)
- 真智(しんち)。
- 85 枢(そぼそ)
- 86 超克(ちょうこく)
- 87 成虧(せいき)
- 調べましたが、わかりませんでした。「虧」は、「かける」「くずれる」「こわれる」という意味。
- 88 熱り立つ(いきりたつ)
- 89 不朽(ふきゅう)
- 90 和毛(にこげ)
- 毳(にこげ)。本書では「柔毛(にこげ)」。
- 91 詳らか(つまびらか)
- 審らか(つまびらか)。
- 92 廉潔(れんけつ)
- 93 一目散(いちもくさん)
- 94 至人(しじん)
- 95 高(たか)
- 96 高が知れる(たかがしれる)
- 97 早合点(はやがてん)
- 98 齷齪(あくせく)
- 99 けろり
- 100 結着(けっちゃく)
- 決着(けっちゃく)。
- 101 天倪(てんげい)
- 本書に解説があります。意味は違いますが、「あまがつ」とも読むようです。
- 102 桎梏(しっこく)
- 103 論う(あげつらう)
- 104 彷彿(ほうふつ)
- 髣髴(ほうふつ)。
- 105 神技(しんぎ)
- 参考:神業(かみわざ)。
- 106 目算(もくさん)
- 107 童子(どうじ)
- 108 常住坐臥(じょうじゅうざが)
- 109 終生(しゅうせい)
- 110 必定(ひつじょう)
- 111 荘重(そうちょう)
- 112 乱痴気(らんちき)
- 113 乱痴気騒ぎ(らんちきさわぎ)
- 114 抜き差しならぬ(ぬきさしならぬ)
- 115 阿諛(あゆ)
- 116 先哲(せんてつ)
- 117 放埒(ほうらつ)
- 118 蟷螂(かまきり)
- 螳螂(かまきり)、鎌切(かまきり)。
- 119 強意見(こわいけん)
- 120 おとなう
- 本書では「訪う(おとなう)」。
- 121 引きも切らず(ひきもきらず)
- 122 つべこべ
- 123 一物(いちぶつ)
- 「いちもつ」と読めば、別意」。
- 124 髻(もとどり)
- 125 糊口(ここう)
- 餬口(ここう)。
- 126 糊口を凌ぐ(ここうをしのぐ)
- 127 肉桂(にくけい、にっけい)
- 128 漆木(しつぼく)
- 「漆」は「うるし」。「漆」に「木」をつけたのは、塗料と区別するためでしょうか。調べましたが、よくわかりませんでした。
- 129 形象(けいしょう)
- 130 関頭(かんとう)
- 131 たじろぐ
- 132 矢頃(やごろ)
- 133 恬淡(てんたん)
- 恬澹(てんたん)。
- 134 形骸(けいがい)
- 135 忘失(ぼうしつ)
- 136 蘖(ひこばえ)
- 137 天神合一(てんじんごういつ)
- 138 敗残(はいざん)
- 139 挙措(きょそ)
- 140 従容(しょうよう)
- 141 帰依(きえ)
- 142 様相(ようそう)
- 143 師表(しひょう)
- 144 日月(じつげつ)
- 145 心許無い(こころもとない)
- 146 莫逆(ばくぎゃく、ばくげき)
- 147 莫逆の友(ばくぎゃくのとも、ばくげきのとも)
- 148 造物者(ぞうぶつしゃ)
- 造物主(ぞうぶつしゅ)のこと。
- 149 ひん曲げる(ひんまげる)
- 150 あべこべ
- 151 とかく
- 152 往生際(おうじょうぎわ)
- 153 瀕死(ひんし)
- 154 流離う(さすらう)
- 155 詰る(なじる)
- 156 借り物(かりもの)
- 157 達観(たっかん)
- 158 肝胆(かんたん)
- 159 遵奉(じゅんぽう)
- 160 仕来り(しきたり)
- 161 愛惜(あいせき)
- 162 喪礼(そうれい)
- 163 無礙(むげ)
- 無碍(むげ)。
- 164 あらまし
- 165 へたばる
- 166 絶え絶え(たえだえ)
- 167 透徹(とうてつ)
- 168 なまじ
- なまじい。
- 169 神通力(じんつうりき、じんずうりき)
- 170 心酔(しんすい)
- 171 窘める(たしなめる)
- 172 見透かす(みすかす)
- 173 眩惑(げんわく)
- 参考:幻惑(げんわく)。
- 174 迷妄(めいもう)
- 175 徒死(とし)
- 176 邪(よこしま)
- 177 然も(さも)
- 178 取り乱す(とりみだす)
- 179 得道(とくどう)
- 180 奔馬(ほんば)
- 181 匪賊(ひぞく)
- 182 内命(ないめい)
- 183 告げ口(つげぐち)
- 184 気を回す(きをまわす)
- 185 夜半(やはん)
- 186 たくしあげる
- 187 立居振舞(たちいふるまい)
- 188 一分(いちぶ)
- ほんのわずかのこと。読み方で意味が変わります。「いちぶ」「いっぷん」「いちぶん」。漢和辞典で調べました。
- 189 風采(ふうさい)
- 190 方履(ほうり)
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 191 玉玦(ぎょくけつ、ぎょっけつ)
- 192 縦横無尽(じゅうおうむじん)
- 193 のうのう
- 194 空空漠漠(くうくうばくばく)
- 195 吉祥(きちじょう、きっしょう)
- 196 皮相(ひそう)
- 197 報償(ほうしょう)
- 参考:「褒賞(ほうしょう)」。
- 198 武骨(ぶこつ)
- 無骨(ぶこつ)。
- 199 奴僕(ぬぼく)
- 200 陸沈(りくちん)
- 漢和辞典で調べました。
- 201 差し渡し(さしわたし)
- 202 衆知(しゅうち)
- 衆智(しゅうち)。
- 203 御偉方(おえらがた)
- 204 追尊(ついそん)
- 205 痩せさらばえる(やせさらばえる)
- 痩せさらぼう(やせさらぼう)。
- 206 善導(ぜんどう)
- 207 添乗り
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 208 怒髪(どはつ)
- 209 饒舌(じょうぜつ)
- 210 誑かす(たぶらかす)
- 211 唱導(しょうどう)
- 212 魂胆(こんたん)
- 213 怯む(ひるむ)
- 214 事蹟(じせき)
- 事跡(じせき)。参考:「事績(じせき)」。
- 215 愚考(ぐこう)
- 216 自給自足(じきゅうじそく)
- 217 強者(きょうしゃ)
- 218 甘言(かんげん)
- 219 関知(かんち)
- 220 褒賞(ほうしょう)
- 参考:「報償(ほうしょう)」。
- 221 伺候(しこう)
- 222 ずかずか
- 223 相好(そうごう)
- 224 相好を崩す(そうごうをくずす)
- 225 呆気(あっけ)
- 226 呆気にとられる(あっけにとられる)
- 227 雷電(らいでん)
- 228 勿怪(もっけ)
- 物怪(もっけ)。
- 229 勿怪の幸い(もっけのさいわい)
- 物怪の幸い(もっけのさいわい)。
- 230 阿る(おもねる)
- 231 知巧(ちこう)
- 智巧(ちこう)。
- 232 日月星辰(じつげつせいしん)
- 233 臨終(りんじゅう)
以下余白