中国の思想[Ⅺ] 『左伝』
- 副題など
- 帯には「人間存在の本質。」「興亡期に見る人間の原型。」「『春秋五覇』の壮大な治乱興亡と、その渦中でくりひろげられた多様な人間のドラマを、簡潔・雄渾な筆致で活写する。人間学の原点ともいうべき書。」とありました。
- 著者など
- 松枝 茂夫(まつえだ しげお)氏訳
- 松枝茂夫氏・竹内好氏監修。
- 出版社など
- 株式会社徳間書店 さん
- 版刷など
- 1997年1月第3版第1刷。読んだものは、2009年6月第3版第4刷。
- 株式会社徳間書店さんの中国古典シリーズ。『中国の思想』全12巻の11巻目。
- ボリューム
- 295ページ。
感じたこと
もの言う株主という言葉を聞くようになってから、働き方が変わっていったように感じます。利益最優先のあまり、スタンドプレーが横行し、目立たない仕事は軽視されているようです。
組織に勤める人は、生活をするために働いています。生活に必要なお金を得るためです。
働く人には、どのように働くのかということと、人生をどのように歩むのかということがあります。
働き方は、職業を選ぶことから、仕事の進め方など多岐にわたります。
一例として、組織内で新しい仕事の押し付け合いがあります。その仕事とは、評価の低い雑用の仕事です。まず、セクション間で、その後、構成員の間で、押し付け合いをします。たいていは、力関係で担当者が決まります。ところが、評価の高いと思われる仕事は、幹部が適したセクションや人に仕事を割り振りします。そこには、あきらかに人間関係が存在します。一幹部の個人的な選考で決まる場合があります。
ならば、公正な選考により、仕事を割り振りすれば、となります。しかし、公正な選考をしようとしても、人には感情があるので、組織外の人であっても難しいかもしれません。外部の人に依頼すると、何もわかっていないと、内部から不満がでるかもしれません。
どのような方法をとるにせよ、新しい仕事の割り当ては、しこりを残しやすいと言えます。
評価の低いと思われる仕事を引き受けた場合、セクションのリーダーは、構成員から交渉能力のなさ、無能ぶりを批判されます。自ら進み出て、このような仕事を引き受けた場合、その構成員は、セクション内でバカ扱いされます。みんなの嫌がる仕事を引き受ける犠牲的行動は、組織内で賞讃されることはまずありません。その後、雑用が押し寄せ、評価の高い仕事を任されることはありません。バカという評価と、引き受けた雑用で他の仕事をこなす余裕がないからです。
同じ時間と労力をかけるなら、評価の高い仕事をしたいのが人情です。言うまでもなく、仕事を完遂(かんすい)した暁(あかつき)には、自らへの高い評価と褒美(ほうび)が待っているからです。自尊心を満たすこともできます。
結果として、達成度が低いとしても、新しい試みであり、あまり悪い評価にはならないようです。むしろ、チャレンジ精神を評価されるかもしれません。
同じ組織内で貢献しているにもかかわらず、引き受ける仕事で、構成員からの見られ方は違ってきます。人は、損得で物事を考えています。少ない労力でより多くの利益を得る。簡単に言えば、楽して儲けることです。
分業体制の組織では、得だと思う仕事ばかりをできるわけではありません。それぞれに役割を持つことで、その役割に徹することができます。雑用の引き受け手があるから、それ以外の人が仕事に集中できるのです。
そして、犠牲的行動を見過ごすのに、違和感があります。必要な仕事をして、バカ扱いと低評価は、理不尽です。
犠牲的行動を何とかするには、損得ではなく、人の生き方をどのように考えるのかが鍵のようです。人の生き方と言えば、哲学や思想があります。弊サイトが取り扱っている中国の思想もその中に入ると思います。
組織のために働くという気概は、その人が、どのように考え、行動したか、によります。目に見える形では評価しづらいのです。金儲けを目的としての仕事と、人のためにする仕事は、考え方とやり方が違います。結果は同じでも、仕事の範囲、奥行き、深さ、労力が違ってきます。ここには、人としてどのように行動するかも含まれます。心の問題でもありますが、哲学や思想も含まれます。
気概は、心の問題や、哲学、思想で評価するしかありません。個人的なものを除いて、一般に知られている哲学や思想を基に、気概をどのように考えるか検討すべきかもしれません。
『左伝』の時代は、思想による考え方と行動と、業績の両方をもって、評価しているように感じます。仕事を任せる前提して、考えと行いを弁(わきま)えた人を選んでいます。その中から、それぞれの仕事について、できる能力のある人を選んでいます。いくら能力があっても、信頼関係と人の和を乱すような人材は、組織を自壊させるからです。
人は気まぐれです。主義主張はコロコロ変わり、利益が目の前にあれば、豹変(ひょうへん)することもあります。人に思想の行動を求めたり、思想を安定して実践するのは、難しいことです。
『左伝』は、物語風にして、このことをわかりやすく伝えていると思いました。
この書物を選んだ理由
中国の思想の続きです。株式会社徳間書店さんのシリーズで中国の思想を読んでいます。このたびは11巻目の『左伝』です。
私の読み方
11巻目で楽に読めるだろうと思ったのは、幻想でした。
言葉、形式、人間関係が今までとは違う感じがしました。形式は、章の最初に年表があり、その下段にわかりやすい解説がありますが、読み方にてこずりました。人間関係がわかって、内容を理解できるようです。国の系図の表記があり便利ですが、臣下についてもキチンと押さえておかないと、事の次第がわからなくなります。何度も見返して、人名を確認しました。進んだり戻ったりの読みは、時間がかかり、イライラしました。
最後まで読み通せたのは、内容が面白かったからです。面白いと感じることは、読みに大切だと感じました。
読み方は、見開きページを視界全体に捉え、はっきりと見えるところを1文字ずつ読んでいく、弊サイトの方法です。
読んだ順番は、カバー、帯、本書です。本書の最初の部分「・・・あたって」は、今まで読んだ中国の思想と同じですが、飛ばさずに読みました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 6日1時間26分
- 読み始め
- 2016(平成28)年6月22日(水)13時44分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年6月28日(火)~15時10分
- 読んだ範囲
- 訳文を読みました。原文、読みくだし文は、ほとんど読んでいません。訳者紹介などの奥付は、軽く目を通しました。広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『左氏会箋』 竹添進一郎氏著
- 『周書』
- 『国語』
- 『詩経』
その他、いくつかの書籍の記載がありました。
出来事
6月24日(金) イギリスの国民投票、EU(欧州連合)を離脱の選択。
ひととき
梅雨に入る前に撮っていたオキザリスです。
平成28年5月22日(日)撮影。
調べたこと
- 1 本質(ほんしつ)
- 2 原型(げんけい)
- 参考:原形(げんけい)。
- 3 渦中(かちゅう)
- 4 雄渾(ゆうこん)
- 5 原点(げんてん)
- 6 左伝(さでん)
- 春秋左氏伝のこと。
- 7 成語(せいご)
- 8 繫ける(かける)
- むすびつけて。
- 9 乱臣賊子(らんしんぞくし)
- 10 筆誅(ひっちゅう)
- 11 刪定(さんてい)
- 12 筆削(ひっさく)
- 13 素っ気無い(そっけない)
- 14 字裏
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 15 深奥(しんおう)
- 16 述作(じゅっさく)
- 17 気味(きみ)
- 18 公羊学派(くようがくは)
- 19 紛紛(ふんぷん)
- 20 調べましたが、わかりませんでした。
- 21 大儒(たいじゅ)
- 22 才識(さいしき)
- 23 太刀打ち(たちうち)
- 24 陋劣(ろうれつ)
- 25 贋物(にせもの)
- 偽物(にせもの)。
- 26 敷き写し(しきうつし)
- 27 虚虚実実(きょきょじつじつ)
- 28 講釈師(こうしゃくし)
- 29 張り扇(はりおうぎ)
- 30 眉に唾をつける(まゆにつばをつける)
- 31 伏線(ふくせん)
- 32 常套(じょうとう)
- 33 浮誇(ふこ)
- 34 馳駆(ちく)
- 35 雞(にわとり)
- 36 老獪(ろうかい)
- 37 陰険(いんけん)
- 38 逆産(ぎゃくざん)
- 39 強談判(こわだんぱん)
- 40 宿志(しゅくし)
- 41 推参(すいさん)
- 42 常永久(とことわ)
- 43 直書(じきしょ)
- 44 会葬(かいそう)
- 45 稲虫(いなむし)
- 46 改葬(かいそう)
- 47 手兵(しゅへい)
- 48 小斂(しょうれん)
- 本書に説明があります。
- 49 大斂(だいれん)
- 本書に説明があります。インターネットでも調べました。
- 50 夭逝(ようせい)
- 51 悖逆(はいぎゃく)
- 52 順道(じゅんどう)
- 53 墓穴を掘る(ぼけつをほる)
- 54 御目見得(おめみえ)
- 55 耄碌(もうろく)
- 56 家宰(かさい)
- 57 泣き寝入り(なきねいり)
- 58 謀反(むほん)
- 59 剽悍(ひょうかん)
- 60 糾合(きゅうごう)
- 鳩合(きゅうごう)。
- 61 ・・・風情(ふぜい)
- 62 情理(じょうり)
- 63 豺狼(さいろう)
- 64 寄寓(きぐう)
- 65 お俠(おきゃん)
- 66 徴求(ちょうきゅう)
- インターネットで調べました。
- 67 閲兵(えっぺい)
- 68 友誼(ゆうぎ)
- 69 悶死(もんし)
- 70 破目(はめ)
- 羽目(はめ)。
- 71 近従
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 72 怯懦(きょうだ)
- 73 不愍(ふびん)
- 不便(ふびん)、不憫(ふびん)。
- 74 雌伏(しふく)
- 75 官途(かんと、かんど)
- 76 扶植(ふしょく)
- 77 詰る(なじる)
- 78 元も子もない(もともこもない)
- 79 危急(ききゅう)
- 80 民生(みんせい)
- 81 畀う(あたう)
- 与えること。
- 82 名案(めいあん)
- 参考:妙案(みょうあん)。
- 83 鼻を明かす(はなをあかす)
- 84 目に物見せる(めにものみせる)
- 85 宣戦(せんせん)
- 86 一興(いっきょう)
- 87 稽首(けいしゅ)
- 啓首(けいしゅ)。
- 88 戦役(せんえき)
- 89 渡河(とか)
- 90 凱旋(がいせん)
- 91 論功行賞(ろんこうこうしょう)
- 92 盤踞(ばんきょ)
- 蟠踞(ばんきょ)。
- 93 雄才(ゆうさい)
- インターネットで調べました。
- 94 大略(たいりゃく)
- 95 親征(しんせい)
- 96 叛服常無し(はんぷくつねなし)
- 97 才略(さいりゃく)
- 98 不祥(ふしょう)
- 参考:不祥事(ふしょうじ)。
- 99 事も無げ(こともなげ)
- 100 憤然(ふんぜん)
- 101 掩う(おおう)
- 102 豪語(ごうご)
- 103 有終の美(ゆうしゅうのび)
- 104 端座(たんざ)
- 端坐(たんざ)。
- 105 言寄せる(ことよせる)
- 事寄せる(ことよせる)。
- 106 斬り結ぶ(きりむすぶ)
- 切り結ぶ(きりむすぶ)。
- 107 危地(きち)
- 108 天晴れ(あっぱれ)
- 遖(あっぱれ)。
- 109 此見よがし(これみよがし)
- 110 天佑(てんゆう)
- 天祐(てんゆう)。
- 111 ぐうの音も出ない(ぐうのねもでない)
- 112 折しも(おりしも)
- 113 機略(きりゃく)
- 114 縦横(じゅうおう)
- 115 昵懇(じっこん)
- 116 リフレイン(refrain)
- 117 悪辣(あくらつ)
- 118 貪婪(どんらん)
- 119 野垂れ死に(のたれじに)
- 120 唆す(そそのかす)
- 嗾す(そそのかす)。
- 121 奔命(ほんめい)
- 本書195ページに解説があります。
- 122 憂さ晴らし(うさばらし)
- 123 遊軍(ゆうぐん)
- 124 友軍(ゆうぐん)
- 125 威望(いぼう)
- 126 英主(えいしゅ)
- 127 隠栖(いんせい)
- 隠棲(いんせい)。
- 128 等閑(なおざり)
- 参考:御座なり(おざなり)。
- 129 得得(とくとく)
- 130 難渋(なんじゅう)
- 131 帳消し(ちょうけし)
- 132 密通(みっつう)
- 133 近侍(きんじ)
- 134 斬死(ざんし)
- 漢和辞典に載っていました。
- 135 照覧(しょうらん)
- 136 壟断(ろうだん)
- 137 婉曲(えんきょく)
- 138 鼬ごっこ(いたちごっこ)
- 139 一筋縄(ひとすじなわ)
- 140 度肝を抜く(どぎもをぬく)
- 141 薪采者(きこり)
- 本書に説明があります。木こりのことでしょうか。調べましたが、わかりませんでした。
- 142 継母(ままはは)
- 143 下問(かもん)
- 144 豪胆(ごうたん)
- 剛胆(ごうたん)。
- 145 露見(ろけん)
- 露顕(ろけん)。
- 146 肯んずる(がえんずる)
- 147 幽閉(ゆうへい)
- 148 一味(いちみ)
- 149 じたばた
以下余白