中国の思想[Ⅷ] 『管子』
- 副題など
- 帯には「覇者の条件。」「いかに政治力を養うか。」「群雄割拠の春秋時代、斬新な経済政策を基盤に、巧みな人心掌握術で斉を最強国家たらしめた名宰相・管仲。現実に政権を担った者のみが語り得た、実践的政治論の真髄!」とありました。
- 著者など
- 松本 一男(まつもと かずお)氏訳
- 松枝茂夫氏・竹内好氏監修。
- 出版社など
- 株式会社徳間書店 さん
- 版刷など
- 1996年9月第3版第1刷。読んだものは、2009年6月第3版第4刷。
- 株式会社徳間書店さんの中国古典シリーズ。『中国の思想』全12巻の8巻目。
- ボリューム
- 283ページ
感じたこと
今から20年ほど前の新聞記事を思い出しました。必要性がなかったのでスクラップはしていません。いまだに、私の記憶にあります。内容は次のようなものです。
老人が生活保護を申請したところ、自治体の職員が来て、エアコンを取り外しました。その後、生活保護は認められました。生活保護の開始間もない頃、自治体の職員が訪問したところ、老人は死んでいました。時期は夏で、死因は脱水でした。住宅の置かれた環境は、騒音や煤煙(ばいえん)があり、窓を開けにくい状況にあったそうです。
当時、この件はテレビでも取り上げられました。しかしながら、その後、尾を引くことはありませんでした。ここでの議論は、エアコンが贅沢(ぜいたく)品なのか、健康で文化的な生活水準を維持するためのものなのか、でした。
エアコンの事案以降も、自治体が生活保護を渋り手遅れになったこと、収入を申告せずに保護を受け取る不正受給者、受給者のパチンコ、資力を持つ家族が扶養しない、などがニュースになりました。
このエアコン事件のことを私が覚えているのは、考えても解決策が見当たりそうにないからです。考えが堂々巡りするのです。法を適正に運用する方法です。
自治体の職員の立場から考えると。自治体が決めた生活保護の規定どおりに運用したので、仕事に落ち度はなかったはずです。
被保護者(生活保護を受ける人)にとっては、取り付けているエアコンをわざわざ取り外すのかとなります。あまりにも、法の運用が杓子定規(しゃくしじょうぎ)だと感じるでしょう。しかし、食べていくことが必要なので、自治体の職員に従うしかありません。
生活保護を受けていない人たちから見れば、税金で他人を養うという不満を持つ人もいるでしょう。困ったときはお互い様と思う人もいるでしょう。
国家はこれをどのように考えるでしょうか。法が趣旨どおりに運用されていると評価するでしょうか。それとも、エアコン事件は個別事案で、全体としては、適正だと評価するでしょうか。
『管子』には、遺族年金や生活保護の考えがありました。紀元前にその発想はすでにあったのです。管仲は、仕える身ですから、君主の意向にそい、国を強くするのが仕事です。
君主が戦死者の遺族への手当の相談をしたところ、貧民や病人、身寄りのない老人まで扶養する考えを管仲は示しています。この手当が戦死者に関係する者だけを扶養するのかは定かではありません。富国を考えると、戦死者の関係者だけでなく、困窮している者すべてと私は推察しました。
管仲が扶養する対象者を広げたとして。人間の情愛から出たものなのか、明日は我が身なのか、富国強兵の一心なのか、これ以外のなにか、から出た考えなのでしょうか。仮に、国家の財政が豊かな場合、管仲は、君主に扶養する提言をしたでしょうか。
空想はさておき、管仲が、人の感情がどのように動くのかをわかっていたのは確かです。これがわかるには、管仲自身が、豊かな感情を持ち、人の気持ちを察する能力に長(た)けていたと言えそうです。
一見、管仲の金を上手に工面するのに目を奪われ、経済至上主義のようなイメージがあります。しかし、その根底には、感情の流れをくむ、人間中心の考えがあります。お金ははっきりとわかりますが、人の感情までも、はっきりと管仲はわかっていたようです。人間の感情がわかれば、金の工面は大したことではないと管仲が言いそうな気がします。
生活保護法は、「生命を最低限維持する」ものではなく、「健康で文化的な生活水準を維持する」と国が決めたものです。このことを考えると、被保護者(生活保護を受ける人)の年齢、健康状態や、地域、環境など、法の運用は、個別性が高いと言えます。そして、立場により、様々な感情が生まれます。ありがたみを感じるどころか、怒りを感じる生活保護だとしたら・・・。やはり、この問題は難しいですね。民主主義の時代の人ではありませんが、管仲ならどのように考えたでしょうか。
この書物を選んだ理由
中国の思想の続きです。株式会社徳間書店さんのシリーズで中国の思想を読んでいます。このたびは8巻目の『管子』です。
私の読み方
前回は『易経』で経験したことのない内容でしたが、このたびの『管子』で感覚が元に戻りました。
紀元前の話にもかかわらず、現代の考え方や制度が似ており、苦痛なく読めました。ただ、私は民主主義の時代に生まれ育ってきているので、君主時代の感覚として読んだとは言えません。君主からの恩恵なのか、相互扶助なのか、では、感覚に大きな違いがあります。
読み方は、見開きページを視界全体に捉え、はっきりと見えるところを1文字ずつ読んでいく、弊サイトの方法です。中国の思想シリーズは8巻目ですが、形式にだいぶ慣れました。
読んだ順番は、カバー、帯、本書です。本書の最初の部分「・・・あたって」は、今まで読んだ中国の思想と同じですが、飛ばさずに読みました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 6日1時間49分
- 読み始め
- 2016(平成28)年5月31日(火)14時43分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年6月6日(月)~16時32分
- 読んだ範囲
- 訳文のみを読みました。原文、読みくだし文は、読んでいません。訳者紹介などの奥付は、軽く目を通しました。広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『管子』 房玄齢(ぼうげんれい)氏注
- 『管子集校(かんししっこう)』 郭沫若氏、聞一多氏、許維遹氏共著
- 『管子補正』 猪飼敬所氏著
- 『管子纂詁』 安井息軒氏著
その他、多数の書籍の記載がありました。
出来事
6月3日(金) 北海道で5月28日(土)から行方不明になっていた小学2年生を6日ぶりに保護。
ひととき
ジョギングのコースにいつも気になっていた木があります。毎年、5月中旬頃に花を咲かせ、秋には黄色い実をつけます。
花が咲いたので、木の名前を調べてみました。栴檀(センダン)でした。
たくさんのクマバチが、花の蜜を採っているようでした。横切るときは、いつもクマバチが立ちはだかるので、恐い思いをしています。
平成28年5月22日(日)撮影。
調べたこと
- 1 管子(かんし)
- 管仲(かんちゅう)の著述のこと。「子(し)」は、一説を立てた人、または、その著述したもの。参考:「諸子百家(しょしひゃっか)」。
- 2 覇者(はしゃ)
- 3 覇道(はどう)
- 4 掌握(しょうあく)
- 5 実践(じっせん)
- 6 真髄(しんずい)
- 神髄(しんずい)。
- 7 盟主(めいしゅ)
- 8 七言絶句(しちごんぜっく)
- 9 真骨頂(しんこっちょう)
- 10 節(ふし)
- 11 軽重(けいじゅう、けいちょう)
- 本書では「物価調整」。
- 12 朝貢(ちょうこう)
- 13 気宇(きう)
- 14 勃興(ぼっこう)
- 15 役牛(えきぎゅう)
- 16 列伝(れつでん)
- 17 布帛(ふはく)
- 18 素封家(そほうか)
- 大金持ちのこと。
- 19 進士(しんし、しんじ)
- 20 千古(せんこ)
- 21 貶す(けなす)
- 22 散佚(さんいつ)
- 散逸(さんいつ)。
- 23 片言隻句(へんげんせっく)
- 24 一長一短(いっちょういったん)
- 25 煎じ詰める(せんじつめる)
- 26 身命を賭する(しんめいをとする)
- 27 建議(けんぎ)
- 28 二心(ふたごころ、にしん)
- 弐心(ふたごころ、にしん)。
- 29 扶ける(たすける)
- 助ける(たすける)、輔ける(たすける)。
- 30 乾時(けんじ)
- 場所?方角? 調べましたが、わかりませんでした。
- 31 終息(しゅうそく)
- 32 揶揄(やゆ)
- 33 野放図(のほうず)
- 34 殉忠(じゅんちゅう)
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 35 こじつけ
- 36 ・・・めく
- 37 腹芸(はらげい)
- 38 供出(きょうしゅつ)
- 39 犀(さい)
- 辞書の絵で動物を確認。
- 40 不逞の輩(ふていのやから)
- 41 迂遠(うえん)
- 42 信賞必罰(しんしょうひつばつ)
- 43 猟官(りょうかん)
- 44 恩沢(おんたく)
- 45 深山幽谷(しんざんゆうこく)
- 46 貧賤(ひんせん)
- 47 拘泥(こうでい)
- 48 陰徳(いんとく)
- 49 依怙贔屓(えこひいき)
- 50 専断(せんだん)
- 擅断(せんだん)。
- 51 威儀(いぎ)
- 52 共鳴(きょうめい)
- 53 無心(むしん、むじん)
- 心を持たないもの。
- 54 棟木(むなぎ)
- 55 収攬(しゅうらん)
- 56 言行一致(げんこういっち)
- 57 虫がいい(むしがいい)
- 58 虫(むし)
- 59 躬行(きゅうこう)
- 60 僥倖(ぎょうこう)
- 61 貧窮(ひんきゅう)
- 62 什器(じゅうき)
- 63 拝命(はいめい)
- 64 破綻(はたん)
- 65 地味(ちみ)
- 参考:「地味(じみ)」の意味と区別する。
- 66 肥沃(ひよく)
- 67 勤しむ(いそしむ)
- 68 放漫(ほうまん)
- 69 緊縮(きんしゅく)
- 70 報償(ほうしょう)
- 71 言上(ごんじょう)
- 72 跋扈(ばっこ)
- 73 不穏(ふおん)
- 74 誅求(ちゅうきゅう)
- 75 貢物(こうぶつ、こうもつ)
- 参考:「貢ぎ物(みつぎもの)」。
- 76 兵刃(へいじん)
- 77 併呑(へいどん)
- 78 潰走(かいそう)
- 79 献納(けんのう)
- 80 内帑金(ないどきん)
- 81 封禅(ほうぜん)
- 82 荘重(そうちょう)
- 83 閉門(へいもん)
- 84 蟄居(ちっきょ)
- 85 やもめ
- 女性は「寡」「寡婦」「孀」。男性は「鰥」「鰥夫」。
- 86 奇計(きけい)
- 87 扁額(へんがく)
- 88 恐懼(きょうく)
- 89 一挙両得(いっきょりょうとく)
- 参考:「一石二鳥(いっせきにちょう)」。
- 90 危殆(きたい)
- 91 彫物師(ほりものし)
- 92 栄利(えいり)
- 93 栄達(えいたつ)
- 94 孝養(こうよう)
- 95 末事
- 調べましたが、わかりませんでした。
- 96 須く(すべからく)
- 97 発揚(はつよう)
- 98 徳望(とくぼう)
- 99 布く(しく)
- 100 籠絡(ろうらく)
- 101 廉直(れんちょく)
- 102 横紙破り(よこがみやぶり)
- 103 奇を衒う(きをてらう)
- 104 都城(とじょう)
- 105 救窮
- 本書に説明があります。
- 106 末梢的(まっしょうてき)
- 107 慴伏(しょうふく)
- 懾伏(しょうふく)。
- 108 翻案(ほんあん)
- 109 亡国(ぼうこく)
- 110 紊乱(びんらん)
- 111 勿体振る(もったいぶる)
- 112 掩う(おおう)
- 113 ティピカル(typical)
以下余白