中国の思想[Ⅶ] 『易経』
- 副題など
- 帯には「未来への指針。」「運命を打開する英知。」「“占い”を神の託宣や宿命としてではなく、人生の法則を明らかにし、運命開拓をはかる道と捉えた古代中国人の英知、「易経」。深遠にして難解な原典が、画期的な現代語訳を得て、いま活き活きと甦る!」とありました。
- 著者など
- 丸山 松幸(まるやま まつゆき)氏訳
- 松枝茂夫氏・竹内好氏監修。
- 出版社など
- 株式会社徳間書店 さん
- 版刷など
- 1996年10月第3版第1刷。読んだものは、2009年6月第3版第8刷。
- 株式会社徳間書店さんの中国古典シリーズ。『中国の思想』全12巻の7巻目。
- ボリューム
- 314ページ
感じたこと
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」と言いますが。
もう、数十年前のことですが、友達との夕食後、手相で運勢判断をしてもらったことがあります。
占い師さんから、世間話などを交(まじ)えながら、いろんなことを聞かれました。その結果、私の運勢は、あまりよくありませんでした。
占い師さんは、たいへん穏やかで丁寧に受け答えをしてくれた方でした。話しやすい感じだったので、占ってもらった運勢を変える方法がないか聞いてみました。返ってきた答えは、できない、でした。しかし、占い師さんの大先生なら、変えることはできないとしても、その状況を和らげることができるかもしれないと言うのです。人は、運命を変えることはできないのです。
最後に、占い師さんが、何かを書いたメモを私に渡してくれました。そこには呪文のような言葉が並べられていました。それを覚えるまで見るように言われました。その内容は、人の道に関するものでした。退屈な日々でも、苦しい状況にあっても、自分を見失わず、人の道を歩むことが書かれていました。今から思えば、人の道さえ踏み外さなければ、よくない運勢でも一生を何とか過ごせる、ということなのでしょう。
私が占い師さんに占ってもらったのは、これが、最初で最後です。これより以前に、私が空想していた占いとは違い、かなり話を聞き、人となりを判断して、何かに照らし合わせて、将来を占っていました。何らかの確証を得て、未来を判断していたようです。
これより、少し後になりますが、深夜番組で、ある占い師さんが取り上げられていました。この占い師さんのところへは、苦しい状況を脱するために、相談に来る人たちがいました。商売がうまくいかなかったり、不幸が続く人たちです。占い師さんは、この恵まれない運命を変えることはできないといっていました。しかし、風水などを使って、悪い気をそらし、良い気が来るように、工夫をしていました。ただ、将来を占うだけでは、何のための占術であるのかわからない。人の苦しみを少しでも軽くしたい、というようなことを言っていました。インターネットでその名前で検索すると、すぐにヒットしました。今では、占いの世界では有名になられたようです。それだけ、人のために、占われたということでしょう。
人は努力すれば叶(かな)うと考えがちですが、必ずしもそうでないことがわかります。生い立ち、環境、人となり、タイミングなど、あらゆることが関係してくるからです。これらのことを客観的に分析し、将来を予測するのが占いです。言い換えると、占術は、当たるか当たらないかではなく、必要な項目について、冷静に分析して、蓄積されたデータから将来を予測しています。シンクタンクが経済予測をするのに近いのです。
悪あがきしても私たちは運命を変えることができません。運命を変えようと努力すれば、かえって行き詰まるかもしれません。そうであるなら、運命を受け入れ、自分に合うものを、できることをしてゆくしかありません。
行き詰まらないための分析、対策が、易経と思うようになりました。
当たる当たらないより、人の歩むべき道を選び、確実に進んでいくことのようです。
この書物を選んだ理由
中国の思想の続きです。株式会社徳間書店さんのシリーズで中国の思想を読んでいます。このたびは7巻目の『易経』です。
私の読み方
中国の思想の中で、孟子、老子などは学校で習いますが、易経という占いははじめて読みました。マンガには易者が出てきますし、ことわざなどもあり、生活に身近にある気がします。最近では、色々な占いがあり、易の影が薄いように感じています。
易は、実技を伴うものであり、きまりに従って占うことになります。本書の解題に、易の基礎基本が書かれています。教科書を読むようで、理解と覚えることがあるので、なかなか読み進められませんでした。本書に実技がなかったのは、幸いでした。実技がなくても、エッセンスに触れられたのは、本書の特長かもしれません。
本書を読み進めるうえで、28ページの八卦、37ページの「(付)」の占断の辞は、何度も何度も見返しました。このページには附箋(ふせん)を貼って、すぐに見られるようにしました。
六十四卦(ろくじゅうしか)・卦爻辞(かこうじ)を目次で見ると、これを読むのかと感じになります。辞書を片っ端から読んでいくようなイメージです。しかし、読み始めると、占いの流れや、考え方がわかるような気がします。本書の解説が、知識を与え、読む意欲をかき立ててくれます。じっくりと読むことができました。
本書の解題の中に読書に関するものがありました。15ページにあります。その中に「書物は読者との合作によってはじめて現実化する」(6行目一部抜粋)です。読書とは何かを考える上で参考になります。
読み方は、見開きページを視界全体に捉え、1文字ずつを読んでいく方法です。このたびは、解題の基本事項を確認するため、必要な箇所に、附箋(ふせん)、しおりをいつも以上に使いました。
一見しただけでは理解できないところがあり、読みが止まることが何度もありました。人生に疑問や迷いを感じる状況で、易を読むと理解できるのかもしれません。理解することも、覚えることも多かったという印象の易経でした。
読んだ順番は、カバー、帯、本書です。本書の最初の部分「・・・あたって」は、今まで読んだ中国の思想と同じですが、飛ばさずに読みました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 9日21時間17分
- 読み始め
- 2016(平成28)年5月18日(水)21時49分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年5月28日(土)~19時06分
- 読んだ範囲
- 本文のみを読みました。原文、読みくだし文は、読んでいません。訳者紹介などの奥付は、軽く目を通しました。広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『周易正義』 王弼氏・韓伯氏注
- 『説文解字(せつもんかいじ)』 許慎氏著
- 『易林』 焦贛氏著
- 『周易集注』 来知徳(らいちとく)氏著
その他、多数の書籍の記載がありました。
出来事
5月27日(金) 米大統領が被爆地・広島を訪問し、演説と対話。
ひととき
建物の非常用階段の裏にツバメが巣を作っていました。いつの間にか、雛(ヒナ)が巣から顔を出していました。
平成28年5月22日(日)撮影。
調べたこと
- 1 易経(えききょう)
- 易周(えきしゅう)、易(えき)。
- 2 未来(みらい)
- 3 運命(うんめい)
- これに似た言葉は、「宿命(しゅくめい、しゅくみょう)」「天命(てんめい)」「定め(さだめ)」「命数(めいすう)」「命運(めいうん)」「天運(てんうん)」「命(めい、みょう)」「運(うん)」「運勢(うんせい)」と様々あります。もっとあるかもしれません。
- 宿命は、仏教から来ているようです。「命」は暮らしのことで、この善し悪しが来世を決めるようです。前世の行いが、現世を定めるということです。
- 『岩波 仏教辞典』の「宿命(しゅくみょう)」の項は参考になります。
- 4 占い(うらない)
- 卜い(うらない)。
- 5 託宣(たくせん)
- 6 甦る(よみがえる)
- 蘇る(よみがえる)。
- 7 衍文(えんぶん)
- 8 脱文(だつぶん)
- 9 経文(きょうもん)
- 10 占筮(せんぜい)
- 11 筮辞(ぜいじ)
- 本書に説明があります。
- 12 体裁(ていさい)
- 13 易占(えきせん)
- インターネットで調べました。
- 14 占断(せんだん)
- 15 霊媒(れいばい)
- 16 巫(ふ)
- みこ。
- 17 祝(しゅく)
- 神官。
- 18 巫祝(ふしゅく)
- 19 亀卜(きぼく)
- 20 蓍筮(しぜい)
- 21 卜辞(ぼくじ)
- 22 会意(かいい)
- 23 暴威(ぼうい)
- 24 仮託(かたく)
- 25 絹布(けんぷ)
- 26 万人(ばんにん、ばんじん)
- 27 万様
- 調べましたがわかりませんでした。
- 28 牽強付会(けんきょうふかい)
- 牽強附会(けんきょうふかい)。
- 29 哲理(てつり)
- 30 概述
- 調べましたがわかりませんでした。
- 31 有為転変(ういてんぺん)
- 32 交感(こうかん)
- 33 背く(そむく)
- 叛く(そむく)。
- 34 憂患(ゆうかん)
- 35 厳酷(げんこく)
- 36 詔書(しょうしょ)
- 37 好尚(こうしょう)
- 38 端初
- 調べましたがわかりませんでした。
- 39 心得(こころえ)
- 40 精華(せいか)
- 41 衰乱(すいらん)
- 漢和辞典に載っていました。
- 42 不抜(ふばつ)
- 43 生成(せいせい)
- 44 操(みさお)
- 45 王業(おうぎょう)
- 46 極盛(きょくせい)
- 漢和辞典に載っていました。
- 47 化育(かいく)
- 48 慶福(けいふく)
- 49 一朝一夕(いっちょういっせき)
- 50 霜を履んで堅氷に至る(しもをふんでけんぴょういたる)
- 51 礼譲(れいじょう)
- 52 見紛う(みまがう)
- 本書では「見まごう」とあります。
- 53 経綸(けいりん)
- 54 血涙(けつるい)
- 55 しっくり
- 56 隠忍自重(いんにんじちょう)
- 57 暴虎馮河(ぼうこひょうが)
- 58 恭順(きょうじゅん)
- 59 勢子(せこ)
- 60 否塞(ひそく)
- 漢和辞典に載っていました。
- 61 具足(ぐそく)
- 62 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
- 63 盈満(えいまん)
- 64 法度(はっと)
- 65 雲集(うんしゅう)
- 66 年増(としま)
- 67 蠱惑(こわく)
- 68 篤実(とくじつ)
- 69 巡察(じゅんさつ)
- 70 綾(あや)
- 文(あや)。
- 71 爛熟(らんじゅく)
- 72 正色(せいしょく)
- 73 漆(うるし)
- 74 一陽来復(いちようらいふく)
- 75 推戴(すいたい)
- 76 美質(びしつ)
- 77 艱難(かんなん)
- 78 楊(よう)
- 枝が垂れ下がらない「やなぎ」のこと。垂れ下がる「やなぎ」は「柳」。
- 79 幾何(いくばく)
- 幾許(いくばく)。参考:幾何学(きかがく)。
- 80 幾許も無く(いくばくもなく)
- 81 ぐらつく
- 82 言訳(いいわけ)
- 言い分け(いいわけ)。
- 83 侍講(じこう)
- 84 憾み(うらみ)
- 85 明徳(めいとく)
- 86 政柄(せいへい)
- 参考:権柄(けんぺい)。
- 87 舌禍(ぜっか)
- 88 啀み合い(いがみあい)
- 89 幽鬼(ゆうき)
- 90 蟠り(わだかまり)
- 91 盈虚(えいきょ)
- 92 嵩に掛かる(かさにかかる)
- 93 疾風迅雷(しっぷうじんらい)
- 94 剛毅(ごうき)
- 豪毅(ごうき)。
- 95 沼沢(しょうたく)
- 96 婢(ひ)
- 下女(げじょ)のこと。
- 97 弁解(べんかい)
- 98 身命(しんめい、しんみょう)
- 99 同衾(どうきん)
- 100 聳動(しょうどう)
- 101 中天(ちゅうてん)
- 102 緯書(いしょ)
- 参考:経書(けいしょ)。
- 103 恭敬(きょうけい)
- 104 けち
- 吝嗇(りんしょく)。
- 105 廷臣(ていしん)
- 106 融通無礙(ゆうずうむげ)
- 「ず」に注意する。
- 107 稟性(ひんせい)
- 108 恭しい(うやうやしい)
- 109 斎戒(さいかい)
- 110 憧憧(しょうしょう)
- 落ち着かないこと。漢和辞典に載っていました。
- 111 思弁(しべん)
- 112 蒺藜(しつり)
- 本書では、304ページに「蒺藜に拠る」の解説があります。インターネットで画像を確認しました。
- 113 際会(さいかい)
- 114 後家(ごけ)
以下余白