中国の思想[Ⅴ] 『墨子』
- 副題など
- 帯には「『兼愛』とは何か。」「平等と非戦の論理。」「うちつづく戦乱・収奪を峻拒し、敢然と平等無差別・非戦論をとなえた墨子。敵視され抹殺されながら、はるかのちの近代中国革命の地下水脈ともなった、その根元的な変革思想とは―。」とありました。
- 著者など
- 和田 武司(わだ たけし)氏訳
- 松枝茂夫氏・竹内好氏監修。
- 出版社など
- 株式会社徳間書店 さん
- 版刷など
- 1996年12月第3版第1刷。読んだものは、2005年8月第3版第3刷。
- 株式会社徳間書店さんの中国古典シリーズ。『中国の思想』全12巻の5巻目。
- ボリューム
- 301ページ
感じたこと
墨子の思想は、焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)により大打撃を受けたようです。
元々、遊説家(ゆうぜいか)は、栄達を計るために自らの思想を主張していたようです。あるときは君主の見解を誉め称え、時には諫(いさ)める。君主とのこの駆け引きにより、信頼を得、官位を得る。しかし、この思想の根本は、君主のためにつくられたもののはずです。君主があっての国家です。
墨子の考えは、人民の生活を安定させることが、国家を強くすると説いています。他国を攻めて、領土拡大、権益獲得をする必要はないと。しかし、どのような国でも君主が必要です。戦国時代に、この人民中心のように感じられる考えを実現しようとする君主がいるとは思えません。なぜなら、君主は自らを律しなければならなくなるからです。他国の君主は権力を振り回しているのに、自国で出来ないとは・・・、となります。
話は変わりますが。ワーキングプアという言葉を聞くようになってだいぶ経ちますが、未だに、貧富の差が深刻な状況にあるようです。富の一極集中が、多くの貧困者を生む原因の1つのようです。弊サイトで取り上げた『まんがでわかる ピケティの「21世紀の資本」』でも考えさせられました。ここで私が感じたのは、資本家にはストックがありますが、労働者にはストックが何もありません。
労働者はお互いに生産継続の働きをしています。これは評価しにくいものです。たとえば、工場や職場で働く人たちを全員一気に回顧し、経験の無い人たちを頭数そろえて配置したことを考えればわかります。以前と同じように生産性を上げるのには長い時間がかかるはずです。少しずつ従事する人が入れ替わるのと、余計な負担がかかるので、そのことを評価しないのでしょう。この労働者のノウハウは、価値あるストックなのです。継続されるべき価値への配当を労働者に分配してもおかしくはありません。この労働者ストックを評価すれば、組織は磐石なはずです。
ところで、経営者は、資本家を無視するわけにはいきません。資本家へは出来るだけ高い配当を考えるのです。コストである人件費を出来るだけ削る努力が求められるのです。言い換えれば、削った人件費を配当に回すとも言えそうです。ですから、今までに無かった労働者のストックという考えをし、評価してはならないのです。いったん口にすれば、経営者は、資本家、労働者の板ばさみとなり、組織は混乱します。理由は、富の分配にあります。自分たちの利権を主張し、富を奪い合うのです。
さて、仮に上記の説が真理をつくものであっても、リーダーはそれについては何もできないでしょう。人の欲望をかき立て、組織自体が崩壊するかもしれないからです。それは、リーダーが道を弁(わきま)えていたとしても叶(かな)わないことでしょう。
人の性分は、紀元前から進化していないのです。
この書物を選んだ理由
中国の思想の続きです。株式会社徳間書店さんのシリーズで中国の思想を読んでいます。このたびは5巻目の『墨子』です。
私の読み方
本書の「貴義」に「読書」の項がありました。
墨子が多くの書物を持っていたことがわかります。そして、書物に何を求めるべきなのかのヒントをくれる気がしました。
原文を私なりに解釈すると。世の中で何が必要かはわかっている。人々への説明は様々なものがいる。個人の理解度が違うためだ。そのため、書物が増えた。簡単に言うと、内容は同じだが、読者の経験、学(がく)は一人ひとりちがうので、それに合わせて書物が増えた、ということ。
そう考えてみると、同じテーマで同じ内容なら、自分のレベルにあった読みやすい書物を選ぶのが最良の方法と言えます。定評のある本が読みづらい場合、別の本を選んだ方がいいことになります。書物以外にも情報を得る手段は、詳しい人に聞いたり、ビデオ、テレビ、公開講座などがあります。要は、内容を把握し理解することにあります。さらに、それらから新たなものを生み出せれば言うことはありません。
確か、中国の思想『孟子』にも「経典も全部は信用しない」がありました。紀元前から多くの書物があったことがわかります。そして、思想家はそれらに目を通していたこともわかります。当時は、読書は情報を得る有力な手段のはずです。しかし、師の、ひととなりを目の当たりにし、言動をリアルタイムで見聞することは、それ以上に価値があるはずです。これは現在でも言えることでしょう。本物に触れてこそ、わかることがあるはずです。
読み方は、見開きページを視界に捉えて、1文字ずつを読んでいく弊サイトの方法です。
形式は、他の中国の思想と同じです。
Ⅴまで読みましたが、書籍の目次までの最初の「・・・あたって」は、同じです。そして、この部分を飛ばさずに読みました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 14日12時間54分
- 読み始め
- 2016(平成28)年4月11日(月)午前11時55分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年4月26日(火)~午前0時49分
- 読んだ範囲
- 本文を主に読みました。原文、読みくだし文は、一部を読みました。広告は見ていません。訳者紹介などの奥付は、軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- 『墨子閒詁』 孫詒譲氏著
- 『墨子学案』 梁啓超氏著
- 映画『殺人狂時代』 チャールズ・チャップリン氏監督他
- 『十批判書』 郭沫若氏著
お知らせ
2016年5月14日(土)訂正(アップデート日は別)
「版刷など」で、「全13巻」(誤)を「全12巻」(正)に訂正しました。
出来事
4月20日(水) 国内自動車メーカーが、燃費試験を不正に操作したことを発表。
4月22日(金) 神戸で橋桁が落下。新名神の建設中。
ひととき
アスファルトとコンクリートの隙間(すきま)に生えていました。多くの自動車が行き交う道路ですが、しっかりと根付いているようでした。
スミレ(菫)に華麗なイメージを持っていましたが、場所を選ばない生命力に驚きます。
平成28年4月9日(土)撮影。
調べたこと
- 1 墨子(ぼくし)
- 2 兼愛(けんあい)
- 参考:別愛。「べつあい」と読むのでしょうか。
- 3 平等(びょうどう)
- 4 非戦(ひせん)
- インターネットで調べました。
- 5 戦乱(せんらん)
- 6 峻拒(しゅんきょ)
- 7 敵視(てきし)
- 8 抹殺(まっさつ)
- 9 地下(ちか)
- 10 根元(こんげん)
- 根源(こんげん)、根原(こんげん)。
- 11 解題(かいだい)
- 12 疾く(とく)
- 13 兼併(けんぺい)
- 14 東奔西走(とうほんせいそう)
- 15 異軍突起
- 調べましたがわかりませんでした。
- 16 役夫(えきふ)
- 17 唾棄(だき)
- 18 下積み(したづみ)
- 19 絶学(ぜつがく)
- 20 文物(ぶんぶつ)
- 21 染む(しむ)
- 沁む(しむ)、浸む(しむ)、滲む(しむ)。
- 22 形骸(けいがい)
- 23 黙視(もくし)
- 24 轄(くさび)
- 楔(くさび)。
- 25 躬行(きゅうこう)
- 有言実行ということでしょうか。
- 26 空理空論(くうりくうろん)
- 27 親疎(しんそ)
- 28 尊卑(そんぴ)
- 29 絶賛(ぜっさん)
- 絶讃(ぜっさん)。
- 30 弾劾(だんがい)
- 31 歴訪(れきほう)
- 32 信奉(しんぽう)
- 「shinpou」。
- 33 生殺(せいさつ)
- 34 生殺与奪(せいさつよだつ)
- 35 排列(はいれつ)
- 配列(はいれつ)。
- 36 口角泡を飛ばす(こうかくあわをとばす)
- 37 穀潰し(ごくつぶし)
- 38 直く(なおく)
- インターネットで調べました。
- 39 諡(おくりな)
- 贈り名(おくりな)。
- 40 湛す(ひたす)
- 「ひたす」とは難しい読み方です。インターネットでも調べました。
- 41 憂き身(うきみ)
- 42 浮き身を窶す(うきみをやつす)
- 憂き身を窶す(うきみをやつす)。
- 43 副葬(ふくそう)
- 44 金殿(きんでん)
- 45 金殿玉楼(きんでんぎょくろう)
- 46 徳目(とくもく)
- 47 縁故(えんこ)
- 48 痛憤(つうふん)
- 49 優遇(ゆうぐう)
- 50 竹帛(ちくはく)
- 51 宗族(そうぞく、しゅうぞく)
- 52 縊り殺す(くびりころす)
- 53 委曲(いきょく)
- 54 厩舎(きゅうしゃ)
- 55 悖る(もとる)
- 戻る(もとる)。
- 56 恃む(たのむ)
- 頼む(たのむ)、憑む(たのむ)。
- 57 醇風(じゅんぷう)
- 淳風(じゅんぷう)。
- 58 陋習(ろうしゅう)
- 59 賤人(せんじん)
- 60 綸紐
- 本書では「うちひも」。辞書、インターネットで調べましたが、この字の読み方はわかりませんでした。国語辞典には「打紐(うちひも)」が載っていましたが、これのことでしょうか。
- 61 旗指物(はたさしもの)
- 62 殉葬(じゅんそう)
- 参考:殉死(じゅんし)。
- 63 哭泣(こっきゅう)
- 64 服喪(ふくも)
- 65 縗(さい)
- 喪服(もふく)のこと。
- 66 絰(てつ)
- 喪に服したときに付ける帯(おび)。
- 67 腹(はら)
- 68 空かす(すかす)
- 透かす(すかす)。
- 69 怨む(うらむ)
- 恨む(うらむ)、憾む(うらむ)。
- 70 僭上(せんしょう、せんじょう)
- 71 沙汰(さた)
- 72 神酒(みき、しんしゅ)
- 73 耜(すき)
- 74 胸懸(むながい)
- 鞅(むながい)。
- 75 深山(しんざん、みやま)
- 76 深山幽谷(しんざんゆうこく)
- 77 福禄(ふくろく)
- 78 賞賜(しょうし)
- 79 寄食(きしょく)
- 80 放擲(ほうてき)
- 抛擲(ほうてき)。
- 81 暴く(あばく)
- 発く(あばく)。
- 82 曲直(きょくちょく)
- 83 正す(ただす)
- 糺す(ただす)、質す(ただす)。
- 84 手合(てあい)
- 85 悪口(あっこう)
- 86 悪口雑言(あっこうぞうごん)
- 87 繁文(はんぶん)
- 88 繁文縟礼(はんぶんじょくれい)
- 89 作務(さむ)
- 90 凍餒(とうたい)
- 91 勿体振る(もったいぶる)
- 92 知らぬ顔の半兵衛(しらぬがおのはんべえ)
- 半兵衛とは戦国武将の竹中半兵衛のようです。参考:「しらんかおのはんべえ」。インターネットなどで調べました。
- 93 荷担(かたん)
- 加担(かたん)。参考:荷物を担ぐのは「荷担」。
- 94 行跡(こうせき)
- 行迹(こうせき)。
- 95 穢らわしい(けがらわしい)
- 汚らわしい(けがらわしい)。
- 96 復む
- 本書では「ふむ」。漢和辞典で意味を調べました。
- 97 したり顔(したりがお)
- 98 寄寓(きぐう)
- 99 松永弾正(まつながだんじょう)
- 松永久秀(まつながひさひで)のこと。仕えていた三好家を滅ぼし、足利義輝将軍を殺した。下剋上の典型的な人のようです。
- 100 首領(しゅりょう)
- 101 無道(むどう)
- 102 流言(りゅうげん)
- 103 縄目の恥(なわめのはじ)
- 104 為出かす(しでかす)
- 105 ストイシズム(stoicism)
- 106 行脚(あんぎゃ)
- 107 七難八苦(しちなんはっく)
- 108 純一(じゅんいつ)
- 109 義侠(ぎきょう)
- 110 挙措(きょそ)
- 111 鼻持ちならなぬ(はなもちならぬ)
- 112 面皮(めんぴ)
- 113 直弟子(じきでし)
- 114 画一(かくいつ)
- 劃一(かくいつ)。
- 115 骨折り損(ほねおりぞん)
- 116 笏(こつ、しゃく)
- 117 無用の用(むようのよう)
- 118 辣腕(らつわん)
- 119 図図しい(ずうずうしい)
- 120 毒刃(どくじん)
- 121 挫く(くじく)
- 122 左甚五郎(ひだりじんごろう)
- 日光東照宮の眠り猫で有名な建築彫刻の職人のようです。
- 123 此見よがし(これみよがし)
- 124 冶金(やきん)
以下余白