『職業としてのAV女優』
- 副題など
- 帯には「日当3万円、倍率25倍、年齢不問」とありました。
- 著者など
- 中村 淳彦(なかむら あつひこ)氏著
- 出版社など
- 株式会社幻冬舎さん 幻冬舎新書
- 版刷など
- 2012年5月第1刷。読んだものは2012年6月第4刷。
- ボリューム
- 237ページ
感じたこと
本書の著者の考えは、AV女優という職業はやめた方がよい、ということでしょうか。
私が気になるのは、社会的な性の役割という意味の「ジェンダー」という言葉です。
ジェンダーの考え方として利潤を追求する経済至上主義や活動を支えるもの、と私は思っていました。
AV女優という職業はまさにこのジェンダーに当てはまります。本来の生殖の立場ではなく、利潤を求める活動です。そこには、生物の根源である生殖を離れて、あらゆる好奇心に応じた快楽を利潤に変える経済活動になっています。
仮に、性を「生殖+快楽」と考えます。そして、人が繁栄するために、生殖行為を促すために「+快楽」があるとします。そこに経済が入り込んでくると、「生殖+快楽」+「経済」になります。この状態で、私たちは生きています。
性を売るというのは、経済が「快楽+経済」の形です。これらを合わせると「生殖+快楽」+「快楽+経済」となります。しかし、性の快楽を「生殖」用と「経済」用に生身の人間が区別するのは、感覚的に難しいことです。「生殖+「快楽」+経済」が、性の商品化をした状態だと思います。性の商品化に違和感を持つのは、「快楽」が生殖の本能と経済の板挟みになっているからです。
既に存在すると思いますが、「生殖」+「快楽+経済」や「生殖+快楽」+「快楽+経済」を持った人々が増えるかもしれません。そうなれば、性についての後ろめたさはなくなり、倫理観も変わるかもしれません。私たちが生物として持っていた「生殖」が失われていくかもしれません。
性の商品化以外について、筋力は男性に、会話は女性に、求められるのを強く感じます。そこには、生殖行為はなくても、性の特徴を生かした役割をしており、性の存在があります。脳の働きにも性差があるようです。結果は同じでも、その受け取り方、理解、処理などに置いて、仕事の進め方や負担に性差があるのです。ここから、「男女は同じように仕事をしていない」と「どのようなシチュエーションであっても性から逃れられない」がわかります。
女性の社会進出とよく聞きますが、この言葉もジェンダーと同じように聞こえます。先ほどの利潤を追求する経済至上主義と関係しているように感じるからです。利潤追求に女性を参加させようとしているのです。その概念を表す言葉がジェンダーであり、スローガンの役割をしているように思えます。考えてみると、人は生まれると社会参加をしています。経済から考えても、生まれたとき(※厳密に言うと生まれる前)から消費しています。消費があるから生産し利潤が生まれるのです。
この社会進出という言葉は、利潤を追求するための立場なのです。しかし、利潤は特定の人々に集中しており、貧富の差は拡大しています。この特定の人々にさらなる利益をもたらす言葉なのです。労働者が多くなると各人の取り分は少なくなるが、それを統括する経営者や資本家の利益は増えることがあるからです。語弊はありますが、搾取できる労働者を増やそうとしているとも言えます。この搾取されている感覚は、労働者全体で薄まります。そして、「ジェンダー」と「社会進出」という言葉が、搾取されているという実感をマヒさせるのです。
大学の公開講座で脳科学を受講したことがありました。脳は男女により、その特徴があるのだそうです。セロトニン、ドーパミン、アドレナリンなどの物質について一般的な説明がありました。その講義の中で、先生は「どうも、性ホルモンが、何らかの重要な働きをしている」と言いました。私たちの脳が十分に機能するためには、性ホルモンの働きが何らかの鍵を握っているという感じでした。性別により機能する性ホルモンが違うとも言えます。人が人として十分な能力を発揮するには、それぞれの性として生きることとなります。男は男として、女は女としてということです。脳は男性で身体が女性の場合を考えてみると、性同一障害を思い浮かべます。脳と身体に性のねじれがある場合、感情など人としての機能が十分に働かないと考えられるのです。しかも、男と女はそれぞれ特徴を活用して人類を発展させてきました。このことから、男と女があって人、と言えるのです。
女性は、丈夫な子どもを産み、育てることが生物としての役割です。そして、男性が、その環境を整え、維持するのが役割です。さらに、女性と男性が子孫を繁栄させるという方向に力を合わせなければ、よりよい結果を残せません。
経済しか見ていないような世の中になっている気がします。今の状態を続けると、やがて、人材の面で経済が衰退するかもしれません。それは、国力にも反映します。そのキーは、やはり人材です。
その人材を作るには、生物としての人の性質に則した環境を整えることです。不自然な環境はどこかで歪みを生じます。性の特徴、個の性質を踏まえた、社会のあり方が求められます。十分な環境で育った人材は、社会をよりよいものにしてくれるはずです。さらに、もう一つ必要なのが、人材を受け入れる側です。受け入れる側が、そのことに気づき、考え方を修正、自らを律し行動を起こさなければ事態は変わりません。なぜなら、受け入れる側が低劣だと、優秀な人材を活躍させられないからです。その結果、意欲を失わせるなど人材をダメにしてしまいます。これは、個人、組織、社会などのすべてについて言えることです。
さて、このように考えてくると、「ジェンダー」という言葉が、決して経済至上主義の言葉でないことがわかります。ある性をもって人は生まれます。それは、私たちに多大な影響を与えています。というよりは、それが主なのです。「子孫繁栄」と「ジェンダー」を考えるとき、人は生まれたときから社会進出をしています。子孫繁栄、社会の質の向上をさせるには、ジェンダーについての研究、応用が欠かせないのです。「ジェンダー」は私たちにとって重要な言葉です。人がいるところ、ジェンダーはいつも付いて回るのです。
※ 性同一障害については、厚生労働省のホームページに「こころの病気を知る」に「性同一障害」の記述があります。ジェンダーという言葉の説明もありました。
この書物を選んだ理由
性は取り扱いを間違えば遊興的なものになってしまいます。性は人間の根幹をなすものです。この本質に近づけるなら、より効率的な心身の使い方がわかるはずです。非常に難しいのですが、避けて通れないお題に挑戦することにしました。
性に関するものの4冊目です。生物、管理制度、個人の特性ときて、このたびは社会活動の分野になるでしょうか。性を考えたとき、広範囲で的を絞りきれません。それは、人が性を持っているからです。この性は、多岐多様に影響を与えます。そして、これを知ることは、私たちを向上させるものと考えています。その中には、技術の習得、書物の理解と応用が含まれます。
という思いから、本書を読むことにしました。
私の読み方
AV女優を職業という観点からの記述は斬新でした。著者は長らく取材を続けており、この業界に通じています。冷静にAV女優業は何かを、立場を変えて伝えようとしています。それは、想像ではなく真実が語られています。
抜粋には週刊誌があり、机上の空論ではなく、生の情報を扱っているという感じがありました。
形式は、新書タイプです。読みやすい記述でした。理解するために読み返すところは少なかったように思います。
読む順番は、はじめに、目次、おわりに、本文の順番です。本文を読む前に「おわりに」を読むと、内容をつかみやすくなります。ノンフィクションは読み方によって誤解することも考えられるので、「はじめに」と「おわりに」で著者の意図を知っておくほうがいいかもしれません。
読書所要時間など
- 所要時間
- 9日20時間19分
- 読み始め
- 2016(平成28)年1月22日(金)14時28分~
- 読み終わり
- 2016(平成28)年2月1日(月)~午前10時47分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。ただし、奥付は軽く目を通し、広告は読んでいません。
取り上げられた書物など
- 『東京ノアール』 東良美季氏著
※ その他多くの書籍の紹介がありました。
出来事
1月28日(木) 経済財政政策担当大臣が現金授受疑惑で辞任。
1月29日(金) 日本銀行がマイナス金利政策の導入を決定。
調べたこと
- 1 職業(しょくぎょう)
- 2 AV(adult video)
- 和製語。
- 3 女優(じょゆう)
- 4 ルーチン(routine)
- ルーティン。
- 5 包括(ほうかつ)
- 6 変質(へんしつ)
- 7 頷く(うなずく)
- 8 怯える(おびえる)
- 脅える(おびえる)。
- 9 意気揚揚(いきようよう)
- 10 頭打ち(あたまうち)
- 11 厳選(げんせん)
- 12 殺到(さっとう)
- 13 クライアント(client)
- 14 清楚(せいそ)
- 15 十人十色(じゅうにんといろ)
- 16 リンク(link)
- 17 フェロモン(pheromone)
- 18 御洒落(おしゃれ)
- 19 殆ど(ほとんど)
- 20 ボーダーレス(borderless)
- 境目のないこと。
- 21 疑心暗鬼(ぎしんあんき)
- 参考:疑心暗鬼を生ず。
- 22 淑やか(しとやか)
- 23 援助交際(えんじょこうさい)
- 24 貞操(ていそう)
- 25 未曾有(みぞう)
- 26 耳慣れる(みみなれる)
- 耳馴れる(みみなれる)。
- 27 日比谷野音(ひびややおん)
- 日比谷野外音楽堂(ひびややがいおんがくどう)。インターネットで公式ホームページを見ました。
- 28 ソールドアウト(sold out)
- 売り切れ。
- 29 オリコン(オリジナル コンフィデンス)
- オリコン株式会社様のホームページを見ました。
- 30 チャートイン(chart in)
- 和製語。ヒットチャート(順位表)に載ること。参考:ランキング(ranking)。
- 31 符丁(ふちょう)
- 符帳(ふちょう)。合い言葉(あいことば)。寿司屋でいうと「がり」「あがり」「ガレージ」などの隠語があります。
- 32 踏襲(とうしゅう)
- 33 頭角を現す(とうかくをあらわす)
- 34 入れ込み(いれこみ)
- 35 冠(かんむり)をつける
- 参考:冠する(かんする)。
- 36 グロス(gloss)
- 差し引きのない。対義語は「ネット(net)」で、純益(必要なものを差し引いた残り。手取り)。
- 37 淋しい(さびしい、さみしい)
- 寂しい。
- 38 ブレーク(break)
- ブレイク。
- 39 瑕疵(かし)
- 40 刺青(いれずみ、せきせい、しせい)
- 41 マイノリティ(minority)
- 少数派。対義語は、マジョリティ(majority)。
- 42 ネガティブ(negative)
- 43 謳う(うたう)
- 44 訴求(そきゅう)
- 45 因みに(ちなみに)
- 46 諸諸(もろもろ)
- 47 ペナルティー(penalty)
- 48 カテゴリー(Kategorie)
- ドイツ語。
- 49 範疇(はんちゅう)
- 50 口を挟む(くちをはさむ)
- 51 落ち(おち)
- 52 絶品(ぜっぴん)
- 53 きく
- 聞く:自然と耳に入ってくること。
- 聴く:自分から耳に入れること
- 訊く:自分から質問すること。
- 54 経由(けいゆ)
- 55 斡旋(あっせん)
- 56 隠蔽(いんぺい)
- 57 美味しい(おいしい)
- インターネットで調べました。
- 58 健全(けんぜん)
- 59 アウトロー(outlaw)
- 60 チーマー
- 和製語。
- 61 匂い(におい)
- 62 魑魅魍魎(ちみもうりょう)
- 63 一攫千金(いっかくせんきん)
- 64 レッドゾーン(red zone)
- インターネットで調べました。
- 65 臑に疵を持つ(すねにきずをもつ)
- 脛(すね)に傷を持つ。
- 66 強者(きょうしゃ)
- 67 治外法権(ちがいほうけん)
- 68 胡散臭い(うさんくさい)
- 69 女衒(ぜげん)
- 70 悪徳(あくとく)
- 71 ナイーブ(naive)
- 72 タブー(taboo)
- 73 凄まじい(すさまじい)
- 74 遜色(そんしょく)
- 75 蒔く(まく)
- 76 スペック(specification)
- 77 容姿端麗(ようしたんれい)
- 78 揃う(そろう)
- 79 終息(しゅうそく)
- 80 門戸(もんこ)
- 81 敷居(しきい)
- 82 敷居が高い(しきいがたかい)
- 83 アウトサイダー(outsider)
- 84 悶悶(もんもん)
- 85 没頭(ぼっとう)
- 86 遵守(じゅんしゅ)
- 順守(じゅんしゅ)。
- 87 パーソナリティー(personality)
- パーソナリティ。
- 88 サイコパス(psychopath)
- 精神病質者。
- 89 漂着(ひょうちゃく)
- 90 スパイラル(spiral)
- 渦巻や螺旋の形のこと。過去の読んだものに同じ言葉があり、「負のスパイラル」を「負の連鎖」と読み替えるとよくわかったことがありました。
- 91 一花(ひとはな)
- 92 一花咲かす(ひとはなさかす)
- 93 カミングアウト(coming out)
- 94 晒す(さらす)
- 曝す(さらす)。
- 95 必至(ひっし)
- 96 黒船(くろふね)
- 外部勢力の参入により既存勢力が何らかの衝撃をうけること。
- 97 カオス(chaos)
- 大混乱。
- 98 ビジネスライク(businesslike)
- 99 マーケティング(marketing)
- 100 欠片(かけら)
- 101 コンプライアンス(compliance)
- 法令遵守(ほうれいじゅんしゅ)。
- 102 一筋縄(ひとすじなわ)
- 103 クリエーター(creator)
- クリエイター。
- 104 ズリネタ
- インターネットで調べました。
- 105 ダンピング(dumping)
- 106 インディーズ(indies)
- 107 群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)
- 108 粗製濫造(そせいらんぞう)
- 粗製乱造(そせいらんぞう)。
- 109 傍目(はため)
- 110 膠着(こうちゃく)
- 111 刹那的(せつなてき)
- 112 正攻法(せいこうほう)
- 113 粛清(しゅくせい)
- 参考:粛正(しゅくせい)と区別する。
- 114 趣向(しゅこう)
- 115 玄人(くろうと)
- 116 拍車(はくしゃ)
- 117 拍車を掛ける(はくしゃをかける)
- 118 敵う(かなう)
- インターネットで調べました。参考:「適う(かなう)」「叶う(かなう)」。
- 119 リリース(release)
- 120 日常茶飯(にちじょうさはん)
- 参考:日常茶飯事(にちじょうさはんじ)。
- 121 拭う(ぬぐう)
- 122 震撼(しんかん)
- 123 怪死(かいし)
- 124 真犯人(しんはんにん)
- 125 拗れる(こじれる)
- 126 完遂(かんすい)
- 127 三下り半(みくだりはん)
- 128 頒布(はんぷ)
- 129 幇助(ほうじょ)
- 130 がさ
- 131 指弾(しだん)
- 132 片が付く(かたがつく)
- 133 怨念(おんねん)
- 134 抜擢(ばってき)
- 135 戦戦恐恐(せんせんきょうきょう)
- 戦戦兢兢(せんせんきょうきょう)。
- 136 勃発(ぼっぱつ)
- 137 草創(そうそう)
- 138 格差(かくさ)
- 139 フロント企業
- 企業舎弟(きぎょうしゃてい)。非合法団体の支援企業。インターネットで調べました。
- 140 出来高(できだか)
- 141 美人局(つつもたせ)
- 142 守代
- 「もりだい」と読むのでしょうか。「みかじめ料」のことのようです。インターネットなどで調べました。
- 143 堅気(かたぎ)
- 144 キャリアアップ(carrier up)
- 145 足を洗う(あしをあらう)
- 146 世情(せじょう)
- 147 リハビリ(rehabilitation)
- 148 安直(あんちょく)
- 149 若気の至り(わかげのいたり)
- 150 登竜門(とうりゅうもん)
- 151 地に足の着いた(ちにあしのついた)
- 152 意図的(いとてき)
- 153 豪遊(ごうゆう)
- 154 罷り通る(まかりとおる)
- 155 後ろ指を指す(うしろゆびをさす)
- 156 二の舞(にのまい)
- 157 野望(やぼう)
- 158 機能不全家庭(きのうふぜんかてい)
- 機能不全家族(きのうふぜんかぞく)とも。インターネットで調べました。
- 159 ネグレクト(neglect)
- 160 アダルトチルドレン(adult children)
- 161 パラサイト(parasite)
- 162 優柔不断(ゆうじゅうふだん)
- 163 マザコン
- マザーコンプレックス(mother complex)。
- 164 姑(しゅうと)
- 「姑」は女、「舅(しゅうと)」は男。
- 165 誤魔化し(ごまかし)
- 当て字。参考:胡麻菓子(ごまかし)。
- 166 破天荒(はてんこう)
- 167 屈折(くっせつ)
- 168 張本(ちょうほん)
- 169 張本人(ちょうほんにん)
- 170 八方(はっぽう)
- 171 所以(ゆえん)
- 172 終焉(しゅうえん)
- 173 セーフティーネット(safety net)
- 174 蔑む(さげすむ)
- 175 ノアール(noir)
- 暗黒。闇。フランス語。
以下余白