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読んでやる! 読んだもの
№63 『どんな本でも大量に読める「速読」の本』

 本書は、従来の速読の欠点を補った「高速大量回転法」という速読法を紹介しています。この方法は、フォトリーディングと同じように、各種試験に効果を発揮するようです。しかしながら、著者は、読書の本質とは何かを自問自答し始めています。これは、速読が普通の読書になったことを意味しているのかもしれません。入り口が何であろうと、読書の果ては同じなのかもしれません。

『どんな本でも大量に読める「速読」の本』

著者など
宇都出 雅巳(うつで まさみ)氏著
出版社など
大和(だいわ)書房さん
版刷など
2014年4月第1刷。※本書は、2011年10月に出版された単行本を文庫版にしたもののようです。
ボリューム
199ページ

感じたこと

 高等学校の授業を思い出しました。

 英文法の先生が「28回見たら一生忘れないといわれています」と授業中にいっていました。ある本に書いてあったと言うのです。英文法の授業ですから、文法だけでなく、単語、構文なども覚える必要があります。
 「ゲームがうまくなろうと思ったらどうするの?」と古文の先生がある生徒にききました。生徒は「・・・」。「何回もやるんやろ!」。「アイドルの歌を歌おうと思ったら、何回も聴いて、何回も歌うやろ。勉強もそれと同(おんな)じや」と。ちなみに、この古文の先生は、『古文研究法』小西甚一(こにしじんいち)氏著を何回も読んで覚えてしまったと言っていました。それだけ古文に惚(ほ)れ込んだとも。
 歴史の臨時の先生の授業では、「大学受験の歴史で合格点を取るためには、最低でも教科書を5、6回は読まなければならない」と。

 まるでドラゴン桜という受験マンガでも見ているような感じです。しかし、何回も「見る」「読む」「やる」は昔からの常道(じょうどう)であり、正攻法なのです。
 亡くなった父がよく言っていたのは、問題集を何回もすること、でした。父は試験に合格し職を得たそうです。戦後間もない物資の不足していた頃の話で、運よく問題集を手に入れたそうです。他に本がないので、それしかすることがなかったとも言えるのですが。
 私の中学や高等学校の時代も、受験については同じことが言われていました。そして、昨今の受験でも、チラシや広告などを見ていると、繰り返しは必須のようです。繰り返しは、時代を超えて、人間の性質に基本的に通用するやり方なのです。
 しかし、同じことを何回もするのは、案外難しいことです。興味のあることならまだしも、嫌でしようのない学校の勉強などとんでもないことです。それが大切だとわかっていても、感情が許しません。感情の持ち方、興味の維持の仕方、好奇心の活性の方法について知るほうがいいのではないかと思えます。しかし、そんな都合のよい方法は見当たりません。
 仕事を確実にこなす方法の1つに、仕事に必要な知識を何回も確認する、があるそうです。関係する法律、契約書、手順などを定期的に一通り確認することだそうです。これをすると、思い込みやいい加減な作業を減らすことができ、確度の高い仕事になるようです。
 人が生きていくうえで、繰り返しは大切ですね。

この書物を選んだ理由

 速読をテーマに読んでいます。インターネットで探した1冊です。

私の読み方

 著者の速読経験は相当なものです。受けた速読の教室講座は10以上で、200万円以上の費用を使ったとのことです。しかも、始めたのが今から約30年前で、大学生の時からです。◯◯道とつくものでは師範になっているはずです。この貴重な経験が本書を成したのですから、非常に貴重な内容です。

 フォトリーディングも著者の開発した『高速大量回転法』も、試験対策を目的としているように見えます。速読の尺度を試験に求めることから、このことがうかがえます。
 また、高速大量回転法は、フォトリーディングの目の使い方ができればなおさら、できなくても大丈夫と主張します。そして、速読の欠点を克服したのが、高速大量回転法との主張です。

 読書を上手になるには、同じ本を何回も読むことだ、と学校で習ったことがあります。同じ内容を読むわけですから、飽きない本でありたいものです。
 読書好きは、いろいろなことを言っています。たとえば、とりあえずは、はじめから最後までさっと目を通さないと気が済まない、とか。本棚は、全ての本の背表紙が見えなければ意味がない、とかです。
 本書によれば、これらのことを速読では教えてくれないそうです。しかし、速読が読書の範疇に含まれるなら、これらの情報は自分で得なさいということでしょうか。速読に焦点を絞り込んだため、思考の狭窄(きょうさく)が起こったのかもしれません。

 注目すべきことは、長期間に大量の本を読んだ著者が、読書の本質を意識し始めたことです。著者の主張する速読の欠点は、読書の達人がやってきたことばかりだからです。著者の主張するストックの活用は、小学校の先生から次のように教わりました。読んだ本の数が増えると、知識や読み方が向上し、読むスピードがさらに速くなる、と。著者は当たり前に速く読めるようになったのでしょう。要は、速読=普通読み、の感覚になったのです。
 私の高校生の頃に、速読を教えてくれる人は誰もいませんでした。しかし、学校から帰宅して、本を1、2冊、多いときには3冊を読む同級生がいたのです。読書感想文コンクールでは、全学区で毎年好成績を収めていました。そのことから、書籍の選択、内容の把握、読後の発想など、読書技術は、かなり高度であることがわかります。
 普通の読書から入るか速読から入るか、入り口は違っても、行き着くところは同じなのかもしれません。

 高速大量回転法が、速読の目の使い方を必要としない、と言っています。しかしながら、私の経験上、文字を見るときの目の使い方を学校で習ったことがありません。そして、このことを教えてもらったら、もっと早く本を読めるようになったと思います。
 おそらく、著者と読書の得意な同級生とは、同じ目の使い方をしているはずです。
 読書がうまくなるには、実際に本を読んでいく必要があります。せめて、目の使い方だけでも最初に知っていれば、苦痛は少ないはずです。

 さて、体裁です。
 1行38文字程度。文字は、文庫版のため小さめです。しかし、1行あたりの長さが短いので、はっきりと見えます。
 図は、1行の長さを邪魔しないように、1ページにまとめてあります。難しい言葉も少なく、平易な表現に努めています。読みやすい書籍でした。

読書所要時間など

所要時間
4日10時間3分
読み始め
2015(平成27)年10月13日(火)午前9時05分~
読み終わり
2015(平成27)年10月17日(土)~19時08分
読んだ範囲
 カバー、帯、本書の全て。ただし、著者紹介のある奥付は軽く目を通しました。

取り上げられた書物など

  • 『読書力』 齋藤孝氏著
  • 『速読の科学』 佐々木豊文氏著
  • 『あなたもいままでの10倍速く本が読める』 ポール・R・シーリィ氏著
  • 『記憶力を強くする』 池谷裕二氏著
  • 『読書と社会科学』 内田義彦氏著

 ※ その他、いくつかの書籍が取り上げてありました。

ひととき

シオアシヤビーチ

 六甲山の展望台から撮影した写真です。埋め立て地に砂浜が見えました。帰宅後、調べたところ、「潮芦屋(しおあしや)ビーチ」でした。
 インターネットで検索すると、写真をふんだんに使った立派なサイトがたくさんヒットしました。よく見ると、これらは自治体はなく、個人の方が作ったものでした。それほど、この潮芦屋緑地・ビーチがみんなに愛されているということでしょうか。
 弊サイトが名称を確認したサイトは、芦屋市役所の公園緑地課のページです。しかし、読み方は確認できませんでした。ビーチの近くに芦屋市立潮芦屋交流センターがあり、その読み方が「しおあしや」なので、間違いがないとの判断をしました。
 平成27年10月14日(水)撮影。

 

調べたこと

1 然うは問屋が卸さない(そうはとんやがおろさない)
 載っているのかな?と思いながら辞書を引きました。辞書、故事ことわざ辞典にありました。
2 本末転倒(ほんまつてんとう)
3 ギャップ(gap)
4 蓄積(ちくせき)
5 チャプター(chapter)
章。
6 ストック(stock)
7 元も子もない(もともこもない)
8 我慢(がまん)
9 共感(きょうかん)
10 詮索(せんさく)
11 俄然(がぜん)
12 ダイナミック(dynamic)
13 コラボレーション(collaboration)
14 レバレッジ(leverage)
 辞書の意味は、梃(てこ)の力。比喩として、効力、影響力など。それとも、経済用語の意味なのでしょうか。
 弊サイトで取り上げた『あたらしい働き方』本田直之氏著の中にもこの言葉がありました。本書は、本田直之氏の「レバレッジ・リーディング」を取り上げています。「レバレッジ」という言葉の解説がありました。「投資活動」で「投資・コスト対リターン」のことです。本田氏のいう「レバレッジ」をやっとわかったという気分です。
15 迂回(うかい)
16 早とちり(はやとちり)
17 情景(じょうけい)
18 シチュエーション(situation)
19 既成概念(きせいがいねん)
「既成」+「概念」。
20 シフト(shift)
21 呪縛(じゅばく)
22 新奇(しんき)
23 俄(にわか)
24 攫う(さらう)
25 平坦(へいたん)
26 本望(ほんもう)
27 考量(こうりょう)
28 後生大事(ごしょうだいじ)
29 侵す(おかす)
30 積ん読(つんどく)
31 真逆(まぎゃく)
 私の持っている辞書にこの言葉はありません。流行語を取り扱った書籍には、「正反対」という意味で掲載がありました。弊サイトで取り上げた書籍にも、「真逆」を使ったものが複数ありました。既に市民権を得ているようです。国語辞典に載る日は、近いかもしれません。
32 装丁(そうてい)
装幀(そうてい)、装釘(そうてい)。
33 反芻(はんすう)
34 触覚(しょっかく)
「触角(しょっかく)」と区別する。
35 トリガー(trigger)
引き金(ひきがね)。きっかけ、誘因。
36 のっぺらぼう
37 縁遠い(えんどおい)
38 プロセス(process)
39 懸け離れる(かけはなれる)
40 偏重(へんちょう)
41 小手先(こてさき)

以下余白

更新記録など

2015年10月21日(水) : アップロード
2015年10月22日(木) : 一部削除
2016年1月23日(土) : レスポンシブ様式に改装