『新書1冊を15分で読む技術』
- 副題など
- 「スーパー速読1週間」
- 著者など
- 日本速読協会(にほんそくどくきょうかい) 井田 彰(いだ あきら)氏著
- 出版社など
- 祥伝社新書さん
- 版刷など
- 2009年12月初版第1刷。読んだものは、2011年3月第2刷。
- ボリューム
- 219ページ
感じたこと
これが速読か!といった感じです。弊サイトで取り上げた書籍で、その多くが速読の必要性を主張していました。
速読というと、飛ばして読むイメージがありました。しかし、本書の速読は一字一句はっきりと読むもので、飛ばし読みとは、まったく異なります。この読み方で、新書1冊を15分で読めるのはスゴイと思いました。
さて、本書を読んで、思い出したことがありました。本書の中に「一点集中法」というのがあります。このトレーニングとはまったく違う話ですが・・・。
私が小学校4年生の国語の時間に、担任の先生が、あるお坊さんの話をしました。あるお坊さんは、一点を見つめる修行をしていたそうです。来る日も来る日も、一点を見つめ続けたそうです。やがて、見つめていたところに、穴があいたそうです。そして、そのお坊さんは書物を読むのが上手だったそうです。
どうして穴が開いたのでしょうか。眼力は微小ながらも、長く続けることで、そうなったのかもしれません。ことわざにいう、水滴石をうがつ、ということでしょうか。この「一点を見つめること」と「書物を上手に読めること」に関連性はあるのでしょうか。
この話を聞いた小学校4年生の私は、家に帰ると、さっそく一点を見る練習をはじめました。お坊さんが座禅をしているイメージから、姿勢を正して、試してみました。機会あるごとに、そのような見方をしました。時間を計ってやっていたわけではありませんので、長い場合でも5分はしていなかったと思います。おそらく1ヵ月くらいは、その練習を続けたと思います。しかし、私の本を読めない状況は変わりませんでした。その後も、思い出したときに、懐かしく思いながら、一点を見つめることがありました。
私が当時試したことを思い返してみると。
一点に焦点を合わせて、一点だけしか見えないようにみると、一点までの距離にもよりますが、眼球が非常に疲れます。長時間、この見方はできません。頭もフラフラして、姿勢も安定しません。
何となく一点を眺めると、一点は見えているものの、見ているという感触がありません。この一点は、本当にこの形なのか?と思ってしまうのです。しかし、眼球に力を入れないので、姿勢は崩れにくくなります。時間も少しだけ長く続けられます。
ところで、このお坊さんは、どのように一点を見つめていたのでしょうか。おそらくお坊さんも、はじめは私と同じ状態ではなかったかと思います。しかし、お坊さんの修行の目的は、仏に近づくことであり、悟りを開くことです。このことを考えると、一点だけを見たり、何となく眺めたりというのは、当てはまらないようです。非常に精神的な活動であり、体の使い方だけの問題ではありません。
私が思うに、お坊さんの修行は、自分とは何か、この世とは何かを感じ取る方法のようです。一点を見る自分とは、今どこにいて、そこでは何が起こっていて、周囲はどう動いているのか、を知る必要があります。そうでなければ、自分が何であるか、何をすべきかが、わかりません。この認知機能に関係するのが、心と体です。心と体は、お互いに影響し合っています。そのいずれを、緊張させても、緩めすぎても、その機能を十分なものにはできません。素の自分、本当の自分でものを見たり感じたり考えたりする必要があるのです。
このように考えると、眼球を作為的に動かして見たり、速く読むことに気を取られるのは、何らかの歪みを生じ、本当のものが見えなくなるようにも思います。ある感情、先入観が、対象物を違うものに見せてしまうかもしれません。
さて、このお坊さんは、修行の果てに、どんな見方をするようになったのでしょうか。想像でしかありませんが、眼球も気持ちも素の使い方で見るようになったと思うのです。眼球と気持ちに特定の使い方や思いはなく、あるがまま、ということです。見えるものを見えたままに、見ることです。
ただ、目蓋(まぶた)を開ける。見えたものをあるがままに見る。そんな感じではなかったでしょうか。はじめは何となく見えていた一点をはっきりと認識できるようにしたのです。眼球ではなく、心(脳)で見ることです。
眼球や肩、全身の余分な力が抜けていたと想像します。それだけに、自分の置かれた周囲の状況がよくわかるようになったはずです。なぜそのように思うかというと、自律訓練法の過程で、そういった感覚を生じることがあるからです。自分から周囲に感覚が向いていくことです。もっと進むと、自分も環境も同じ感覚で、しかも、自分も含めた全体を見る感覚になるのかもしれません。
お坊さんが読み上手と言われたのは、文字を正確に読み、解釈が自分の考えに囚(とら)われなかったからでしょう。一点を見つめる修行でそれを会得したのです。穴が開くとは、悟りを開いたことを意味しているようです。
以上のことは、あくまで、下種(げす)の勘繰りですが。
今から十数年前に『知ってるつもり?!』というテレビ番組で、北条早雲という戦国武将を取り上げていました。早雲は禅宗を学び、その姿勢を持ち続けたようです。番組のエンディングは、早雲の言葉で締めくくられていました。『あるをばあるとし、無きをばなきとす』。
※ 『知ってるつもり?!』は、YouTubeで見ることができます。「知ってるつもり 北条早雲」で検索してみてください。
この書物を選んだ理由
速読とはどのようなものか知りたかったのです。一字一句か、文字を飛ばして読むのか知りたかったのです。インターネットで速読の本を探しました。速読の書籍は、結構な数があり、その方法も様々なようです。どの本にするかで時間を費やしてしまいました。
私の読み方
本書の優れているのは、読む書籍が何を言おうとしているかわからなければならない、と主張していることです。本書の速読の前提は、内容の理解にあるのです。ただ字面だけ速く追っても、内容がわからなければ、時間の無駄になります。結果的に、遅読になってしまいます。
しかしながら、読めなかった時の私がこの本を試した場合、あまり効果が無かったかもしれません。パッと見た目、誰もが思いつくような、こんな練習法で速く読めるはずがないと感じてしまいます。過去に、雑誌などで似たような練習法があり実際に試しましたが、確信が持てませんでした。本書には、目の筋肉を使うとありました。この記述を見れば、私はきっと、目に力を入れて読んだことでしょう。スポーツのトレーニングと同じという記述から、結果がでないことに、練習が足りないからだと思ったかもしれません。
最も大切なことは、脳で読んでいることを実感する、ことにあります。しかし、その実感を説明だけで知るのは難しいことです。そこで、とりあえずトレーニングをして、体験からその感覚をつかむような伝え方に本書はなっているようです。
わかりづらく、誤解を招く原因の1つに言葉の問題があります。
「目」には、人間の器官だけでなく、精神的な働きを表す意味もあります。ですから、「目」と書かれていると、「見る」と「読む」が一緒になっているので、意味を混同しがちです。器官の「目」は「眼球」に、「見る」は「視線」とか「焦点」、「映る」などを使うと区別しやすくなります。
「眼球」の役割は脳に外界の状況の情報を送ることです。その情報を受けとった脳は、外界の状況を認識し分析します。次に、脳は、感じたり、理解したり、行動したり、無視したりと精神活動をします。
精神活動にとって、必要なのは、鮮明なより多くの情報です。眼球に力を入れて見ようがそうでなかろうが、鮮明なより多くの情報を脳に送ることです。
この鮮明なより多くの情報を得る眼球の使い方です。眼球に力を入れてより広くはっきりと見えるようにすることもできますが、眼球の力を抜いても、ある程度、広範囲がはっきりと映ります。
眼球に力を入れると、疲れの原因になります。また、視野や焦点の命令を眼球にするなど、脳に余分な負荷をかけます。眼球に力を入れると眼圧が上がるのであれば、眼球の病気になりやすいかもしれません。眼球の力を抜くことも、意識し過ぎると、脳に負担をかけてしまいます。ですから、最も良いのは、ただ目蓋(まぶた)を開け、ただ、対象物に視線を向けるだけでよいのです。対象物だけでなく、広範囲がはっきりと映っていることに気づくはずです。
脳で読んでいることを実感するには。
前に述べた状態で、文章のあるページを見ます。できるだけ、時間をかけて、ゆっくりと正確に見ていきます。ある文字に視線を固定すると、はっきりと映る範囲も動きません。これは、眼球を動かしていないことを意味します。視線を向けたある文字の周囲がはっきり映っていると思います。次に、そのはっきりと映った範囲の図形や文字が何であるか理解します。すると、視線を固定しているにもかかわらず、いくつかを認識できたことがわかります。
これが、脳で見ていることを実感できる方法です。眼球と脳の働きの違いも何となくわかるような感じがします。
「よく見なさい」と言われたら、眼球に力を入れて対象物だけに焦点を合わせて見ようとしがちです。これが、見当違いの行動だということがわかります。脳に映ったものが何であるのかを知りたいのですから、眼球に力を入れる必要はありません。対象物を見ようと眼球に力を入れてしまうと、はっきりと映る範囲が狭くなります。その結果、違いのわかる基準になったり比べるものが少なくなり、鮮明な認識ができなくなる可能性があります。
さて、本書のトレーニングを試してみました。目と意識の使い方は、弊サイトの方法を使いました。
「一点集中法」です。目蓋(まぶた)を開けて、見える範囲の中の一点を見ると、姿勢や呼吸が乱れません。もしかすると、目と意識の使い方で、精神の安定や集中力を高められるのかもしれません。
1分間に何文字読めるかというファースト・チェックを試しました。結果は、約635文字でした。読んだところの単語・熟語などは、まったく思い出せませんでした。チェックへの慣れや、文章への興味のこともありますが、散々な結果にがっかりです。
各トレーニングは、スムーズにこなすことができました。ランダムに並べられた文字が何を表しているのかのトレーニングは、すぐにイメージできたのでリズミカルにできました。
巻末に1分間でどれだけ読めるかのトレーニングがあります。今まで、本書を読みトレーニングをしてきました。結果は、約650文字でした。文字数もそうですが、読んだ言葉の思い出しも、ファースト・チェックとほとんど同じでした。私の場合、本書のチェックの結果だけを見ると、トレーニングの効果はなかったと言えます。しかしながら、チェック項目にはありませんが、視線が安定したように感じます。また、落ち着きができ、気持ちにゆとりを持って、巻末を読んでいたように感じます。本書のトレーニングに慣れてくれば、今よりは速く読める、という手応えを感じました。
体裁です。
目次が見づらいです。見開きで、1週間の工程を表示しようとしているようですが、文字が小さく、ブロックの範囲を作ることで、次にどこを読めばいいのか迷ってしまいます。本書には索引がありません。その役割も目次が果たすことになります。また、訓練日の記入欄がありますが、メモ欄も欲しいところです。1ページに1日か2日分の余裕のある目次で、わかりやすい方がトレーニングをする本としては使いやすいと思います。
本文の文字の大きさ、1行の長さ、行間、上下左右見開きの中心の余白は適当で読みやすかったです。チェックやトレーニングで使われた文章は、新書と同じように作られていました。本書の本文と比較した場合、文字も小さく行も長いため、たいへん見づらく感じました。このギャップは、かなりのものでした。
読書所要時間など
- 所要時間
- 6日4時間21分
- 読み始め
- 2015(平成27)年9月9日(水)22時27分~
- 読み終わり
- 2015(平成27)年9月16日(水)~午前2時48分
- 読んだ範囲
- カバー、本書の全部。ただし、奥付、書籍広告は軽く目を通しました。トレーニングなどを実際に試してみました。
取り上げられた書物など
- 『言霊』 井沢元彦氏著
- 『「考え方」の風土』 桜井邦朋氏著
- 『頭をよくするちょっとした「習慣術」』 和田秀樹氏著
出来事
9月10日(木)茨城県常総市の鬼怒川の堤防が決壊。死者や家屋が流されるなどの被害があった。
9月14日(月)熊本県の阿蘇山が噴火。
ひととき
久しぶりによく晴れた気持ちのいい一日でした。そんな天気につられて、子供と外出しました。行き先は兵庫県神戸市東灘区にある人工島の六甲アイランドです。初めて、六甲ライナー(神戸新交通六甲アイランド線)に乗りました。列車は高架の軌道を走ります。陸地から六甲大橋を渡りきるまでの景色に見とれてしまいました。高架から見える住吉川は、水もきれいで、魚が水面をはねていました。自然の豊かさに驚きました。
当日は、写生大会のようで、多くの親子連れが、画用紙に絵を描いていました。写生大会の受付場所には、いくつかの展示ブースがありました。たとえば、神戸どうぶつ王国さんがルリコンゴウインコ、バンドー神戸青少年科学館さんはテーブルサイエンス(簡単な実験)などです。実験では、子供より私の方が夢中になってしまいました。プロペラをつけた風船が、青空に吸い込まれそうです。それを子供たちがどこまでも追いかけていました。
2015(平成27)年9月13日(日)撮影。アイランドセンター駅南側から南にあるマリンパーク駅に向かってシャッターを切りました。
調べたこと
- 1 パイオニア(pioneer)
- 2 断言(だんげん)
- 3 想起(そうき)
- 4 原資(げんし)
- 5 ルーチン(routine)
- 6 湾曲(わんきょく)
- 7 太古(たいこ)
- 8 愕然(がくぜん)
- 9 目新しい(めあたらしい)
- 参考:「真新しい(まあたらしい)」。「目の当たり(まのあたり)」。
- 10 フィジカル(physical)
- 11 ペナルティ(penalty)
- 12 専心(せんしん)
- 13 インスピレーション(inspiration)
- 14 雑食(ざっしょく)
- 15 中吊り広告(なかづりこうこく)
- 車内の天井から吊された広告のこと。参考:「宙吊り(ちゅうづり)」。
- 16 案外(あんがい)
- 17 キャッチアップ(catch up)
- 18 厳密(げんみつ)
- 19 ステージ(stage)
- 20 フリーペーパー(free paper)
以下余白