『読んだら忘れない読書術』
- 副題など
- 「精神科医が教える」
- 帯には「こうすれば、記憶に残すことができる!」
- 著者など
- 樺沢 紫苑(かばさわ しおん)氏著
- 出版社など
- サンマーク出版さん
- 版刷など
- 2015年4月初版。読んだものは2015年6月第10刷。
- ボリューム
- 251ページ
感じたこと
脱帽です。
「忘れない」言い換えれば、「ずっと覚えている」ということでしょうか。なんと素晴らしい読書でしょうか。それ以上にうらやましかったのは、スキマの時間を使って1日1冊を読んでいることです。しかも、著者の名付けた「深読」なのですから。
さて、「多くの本を読み、生産物を排出する。または、インプット&アウトプット」で、いつも思い出すことがあります。それは、作家の司馬遼太郎(しばりょうたろう)氏のことです。
司馬氏が作品を書くとき、それに関する書籍が東京・神田の古書店から消えたといいます。大量に本を買い込んでいたのです。消えたというのですから、10冊や20冊ではないはずです。おそらく、もっとはるか多くの冊数だったはずです。人物に関するものだけでなく、少なくともその時代の文化、風俗、方言などは、小説を書くには必要と考えられるからです。
実際に司馬氏はその大量の本を全部読んだのだろうかという疑問がありました。当時の私は、本を読んだとしても、1冊1週間以上はかかっていました。しかも、1日のほとんどを読書時間に充ててです。かつ、連続で次の本を読めませんでした。疲れて、気力が湧かないからです。自分の読書能力では、大量の本を読むだけに途方もない年数を要することになります。いや、一生かかっても読み終わらないでしょう。仮に読み終わったとしても、はじめの方に読んだ本の内容を忘れていることでしょう。
深夜にテレビのチャンネルをリモコンで次から次へと変えていたとき、たまたま、司馬氏についての特集番組をしていました。その中で、ある記者の司馬氏との忘れられない出来事を紹介していました。ある記者が司馬氏を取材した時の話です。取材用の資料を司馬氏に手渡しました。すると、司馬氏はほんの一瞬その資料をじっと見ただけでした。記者はそんな短い時間で読めるはずがないと思ったそうです。なぜなら、資料にはぎっしりと文字が詰まっていたからです。しかし、取材を進めると、その資料の内容に合致して話にブレはありませんでした。記者は、取材前に別のスタッフがその文書を予め渡していて、司馬氏がすでに読んでいたのだと思ったそうです。しかし、気になって本当にそんなに速く読んだのかどうかを確かめたくなりました。そこで、記者の作った資料で誰にも見せていないものを司馬氏に渡しました。すると、司馬氏は同じようにほんの一瞬じっと見ただけで、資料を記者に返しました。記者は、失礼を承知で、その資料を読んでいなければ答えられない質問をしました。すると、司馬氏は、即答し、資料の該当箇所を指摘したのです。記者は、手渡した資料の全てを司馬氏が一瞬で読んでいることに確信をもったそうです。
取材した記者は、文字を扱うプロです。書くこともですが、資料を読む能力もあるはずです。一般人の平均より、読むスピードは速いはずです。そんな記者を唸(うな)らせたのですから、司馬氏の読むスピードは驚異的だったのです。
しかも、記憶力も並大抵のものではなかったはずです。大量の資料を参考に1つの作品に仕上げるからです。現地取材もしたでしょうから、本以外の資料の点数だけでもかなりの数になったことでしょう。それらを覚えておかないと必要なときに見ることができません。どの本のどこに書いてあったかを探し出すのは、付箋を貼ったとしても、記憶が確かでなければ困難です。
私は、司馬氏の作品の作り方を知っているわけではありません。しかし、人間の記憶は、時間の経過とともに、正確さを失い、薄れていきます。このことを考えれば、記憶が定かな内に、作品を仕上げる必要があるのです。どれだけの資料を扱えるかは、記憶力と読むスピードに関係するのです。
さて、読むのが速い司馬氏ですが、資料の全てを飛ばさずに読んでいたのでしょうか。どんな読み方をしていたのでしょうか。今となっては本人に聴けないのでわかりません。大阪府東大阪市に司馬遼太郎記念館があります。もしかすると、その答えのわかる資料があるかもしれません。機会があれば、行ってみたいと思います。ちなみに、ホームページを見ると、映画の上映会や作家などの講演会なども開催しています。
この書物を選んだ理由
精神科医が書いた本ということで、購入しました。店頭にかなりの冊数があり、目立っていたのでこの本に気がつきました。
精神の分野のお医者様は、読書家にならざるを得ないようです。そして、哲学者や詩人のような表現をされる方が多いようです。弊サイトでは取り上げてはいませんが、子育てに関する本を著している精神科医の服部祥子氏がおられます。彼女は仕事に必要なため本を読んでしまうというようなことを何かに書いておられました。また、弊サイトで取り上げた本『精神医学から臨床哲学へ』から、著者・木村敏氏がかなりの量の読書をされていることがうかがえます。
このようなことから、もしかすると、医学部では、読書技術の講義があるのだろうか、という憶測をしてしまいました。
私もそんな技術を得られる。そんな期待から本書を読むことにしました。
私の読み方
残念ながら、私の求める内容ではありませんでした。本書は、既に本を読める人を対象にしているようです。弊サイトを始める前の私は、どんな本でも、1ページを読むのに、大体は8分から10分、酷いときには1時間以上もかかったことがありました。それはどうしてなのか、どうすれば文字を読み進められるのか、私にとっては問題なのです。著者は、スキマ時間に読んで1日1冊ですから、驚異的なスピードです。しかも、著者のいう「深読(しんどく)」なのですから、うらやましいかぎりです。私は、むしろ、このスピードで深読ができる方法を知りたいと思いました。
私が本書に期待したのは、どの精神科医も実践している共通の方法です。しかしながら、本書は、読書に長(た)けた1人の精神科医の方法を紹介しているものでした。また、本書は精神科医をうたっているので、臨床のデータを期待していました。しかしながら、心理学と脳科学からの研究の引用が主でした。もしかすると、患者様の個人情報保護の関係上、データを開示できなかったのかもしれません。
内容も今までに出版された読書技術の書籍とそれほどかわりません。文字をどのように見るのかなど、器官の使い方には触れていませんでした。むしろ、スローガンや扇動的な「◯◯せよ」「◯◯しなさい」など精神論的な印象を受けました。その根底には、本書から感じられる読書至上主義があるのかもしれません。(※本書には「読書至上主義」という言葉はありません。また、著者が、そのように主張しているわけでもありません。読んだ私が、著者ではなく、本書の内容をそのように感じたということです。誤解のないようにしてください。)
文章を読もうと試みても読めない。それはなぜか?
国語力があったり、過去に読書をしてきた人が読めない場合、脳の機能や精神の問題が考えられます。特に精神の部分で、どのようにすれば、再度、文章を読めるようになるのかについて、弊サイトは最も関心があります。文章を読めるようになることは、記憶にも関係してきます。この「読めない」から「読める」状態に移行する精神状態の過程がわかれば、よりよく文章を読む方法を考え出せる気がします。
何にも興味がない、勉強もできない、あまりよくものも知らない人が、文章を読めるようになるのか、という疑問があります。先ほどの潜在能力のある人とは逆の立場です。たとえば、子どもに本の読み方をどのように教えるのか、です。
働く人が読書技術に求めるのは、仕事に必要なマニュアルや書籍、文献、資料などをいかに正確に速く読み使いこなし、生産性の向上、売れる商品の開発などをするかにあるはずです。好き嫌いにかかわらず、文章を読めるようになることにあるのです。よく言われる方法に、好きなとか興味をもった気分を作って読む、というのがあります。この方法を試したことがありますが、私には無理でした。人の本性に反したことは難しいのです。
たとえば、好き嫌いにかかわらず勉強のできる人は、合否のプレッシャーはあっても、受験勉強はそれほど苦にならないはずです。しかし、勉強嫌いでできない人が、受験に臨むのは、相当な覚悟が必要になるはずです。その勉強が実社会に役立つかどうかもわからないのであればなおさらです。願わくは、勉強嫌いでできない人が、少なくとも勉強をする姿勢をもてる方法はないか、ということです。現状打開の糸口です。
本の嫌いな人でも、文章を読めるようにする方法です。もし、この方法があれば、本好きにとっても、より安定した文章の読み方ができるに違いありません。
弊サイトが目指しているのは、まさに、このことなのです。
体裁です。目次の文字がかなり小さく感じました。本文の文字は適当な大きさで読みやすかったです。図や表はなく、小さな絵を除けば、文字だけの本です。ページの上下の余白は適当ですが、左右の余白はもう少し多い方がいいように感じました。読みやすさのこともありますが、考えたり調べたりしたことをメモするスペースも必要です。どうしても欲しかったのは、引用した部分の文献の表示です。もっと詳しく知りたいと思ったときに便利です。
驚いたのは、非常にわかりやすい文章です。専門用語は解説を入れて記述をしています。語句も難しいものをほとんど使っていません。辞書やインターネットで調べることは、少なかったように感じました。読むのが楽な本でした。それだけに、著者の主張が正確に力強く伝わる本だと感じました。
本書を読んでいて、老眼が気になりませんでした。メガネを外して裸眼で寝て読みました。文字と眼球の距離は30㎝前後でした。距離は近いのですが、見開きページを視界に捕らえて、5、6行の文字がはっきりと見えました。老眼になる前とそれほど状況は変わりませんでした。
老眼になる前は、本を45㎝くらいの距離で読んでいました。本の見開きが視界に入り、文字がはっきり見えれば読めます。本の距離を調整すれば、老眼であっても読めるのです。老眼になる前と同じ距離で読むには、老眼鏡を作ればよいということになります。視力の矯正は大切です。疲れ具合にも影響してくるからです。
私の見え方の状況です。メガネは老眼鏡ではなく近視用です。裸眼での見え方は、近くは見えますが、それ以外の遠くとごく近くははっきりと見えない状態です。メガネをかけると、遠くは見えますが、ごく近くは焦点が合いません。ごく近くは、裸眼の方がまだはっきりと見えます。
今の私は『知的生産の技術』梅棹忠夫氏著を参考に読書に挑戦しています。もう少し読むスピードがアップしてから、本書の方法を検討したいと思います。そんなに速く本を読める日が来るのかどうかわかりませんが。
読書所要時間など
- 所要時間
- 6日17時間58分
- 読み始め
- 2015(平成27)年8月9日(月)午前11時23分~
- 読み終わり
- 2015(平成27)年8月16日(日)~午前5時21分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書。ただし、巻末の書籍広告は見ただけです。
取り上げられた書物など
- 『書くことについて』 スティーヴン・キング氏著
- 『プレゼンテーションZen』 ガー・レイノルズ氏著
- 『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』 ジョンJ.レイティ氏、エリック・ヘイガーマン氏共著
- 『15歳若返る脳の磨き方』 苫米地英人氏著
※その他多数の本の掲載がありました。第8章に31冊の本の紹介があります。
出来事
8月12日(水) 中国・天津市の化学物質倉庫で爆発事故。死傷者多数。
ひととき
原不動滝(はらふどうだき)です。兵庫県宍粟市波賀町原(ひょうごけんしそうしはがちょうはら)にあります。日本滝百選に選ばれています。
滝から流れ落ちる水はきれいで冷たく、涼をとるには最適の場所です。多くの家族が川遊びを楽しんでいました。私も年がいもなく子供と思いっきり遊んでしまいました。全身ずぶ濡(ぬ)れです。
近くに楓香荘(ふうかそう)という施設があり、波賀温泉につかり食事をしました。私は鹿肉メンチカツカレーをいただきました。鹿肉メンチカツは、あっさりとしていて、あまりクセはありませんでした。これ以外で鹿肉を使ったものに、鹿肉ハンバーグ定食、鹿肉のたたきがありました。近くには鮎釣りで有名な揖保川があるので、鮎の塩焼きも注文しました。天然か養殖かはわかりませんが、頭と骨を残して内蔵まで全部食べてしまいました。
注意したいのは、ヤマビルです。この辺りには鹿がおり、ヤマビルもいます。特に、入場料を支払う小屋から滝までの山道は注意が必要です。ふくらはぎにヤマビルのついた人に伝えたところ、事なきを得ました。吸われたのか、出血の止まらない方もいました。テレビ番組やインターネットでヤマビルを見たことはありますが、私が本物を見たのは初めてです。ヤマビル対策として、専用のスプレーや薬剤を準備した方がいいかもしれません。ヤマビルは、塩やアルコール、ハッカ水、ハッカ油に弱いそうです。
2015(平成27)年8月2日(日)撮影。
調べたこと
- 1 羅列(られつ)
- 2 支離滅裂(しりめつれつ)
- 3 驚愕(きょうがく)
- 4 奇天烈(きてれつ)
- 漢字は当て字。
- 5 奇書(きしょ)
- 6 日本三大奇書
- 『ドグラ・マグラ』夢野久作氏著、『黒死館殺人事件』小栗虫太郎氏著、『虚無への供物』中井英夫氏著。
- 『匣の中の失楽』竹本健治氏著を入れて四大奇書ともいわれているそうです。
- いずれの本も推理小説です。
- インターネットで調べました。
- 7 外界(がいかい)
- 8 炸裂(さくれつ)
- 9 シークエンス(sequence)
- 「連続」という意味。参考:シリーズ(series)。
- 10 付箋(ふせん)
- 附箋(ふせん)。
- 11 レビュー(review)
- 「書評」「批評」のこと。
- 12 一石二鳥(いっせきにちょう)
- 13 論旨(ろんし)
- 14 眼差し(まなざし)
- 目差し(まなざし)。
- 15 メンター(mentor)
- 指導者、助言者。指導を受ける側をメンティー(mentee)。
- 16 キュレーター(curator)
- 学芸員のこと。
- 17 メルマガ
- 「メールマガジン」の略。和製語。
- 18 レコメンド(recommend)
- 推薦する。
- 19 コンシェルジュ(concierge)
- フランス語。
- 20 セレンディピティ(serendipity)
- 21 秀逸(しゅういつ)
- 22 ハイライト(highlight)
- 23 俯瞰(ふかん)
- 参考:「鳥瞰(ちょうかん)」。
以下余白