『人間の基本』
- 副題など
- 帯には、以下の文言がありました。
- 「恐るべきは、精神の貧困である」
- 「人生を無駄にしないための全八話」
- 著者など
- 曽野 綾子(その あやこ)氏著
- 出版社など
- 新潮新書さん
- 版刷など
- 2012年3月発行。読んだものは、2012年4月2刷。
- ボリューム
- 191ページ
感じたこと
人間の基本とは何か?抽象的なため、わかりづらいように感じました。
読んですぐは、著者は何を語りたいのかよくわかりませんでした。というのも、各章はエッセイのように書かれています。著者の体験の中で、感じたこと、考えたことなど、著述しているだけという印象を受けます。この各章が、人間の基本を説明するのにどのような役割を果たしているのか不思議です。
何が言いたかったのだろう。その後、本書のことが気になっていました。著者は、いろいろな経験をされています。小説家だけでなく、団体の役員なども務めていらっしゃったようです。著者のような経験を私はしたことがありません。人間を見る目、処し方など広範囲で深いと推測します。ですから、各章の語りは、ただ書いているのではなく、意味のあるもののはずです。
気になったものに、人は生まれながらに不平等という記述がありました。人によって能力が違うのです。勉強ができる人はその能力があるのです。学校時代は、勉強ができる人が有利です。そして、社会人となってからも、知識の習得方法、記憶力、思考力などの面で有利です。その逆に何の取り得もない人もいます。人間関係に長け、人柄がよければまだ救われます。しかし、その能力さえ無い人もいるのです。あらゆる場面で、つらい目に遭うことでしょう。また、その場面にさえ参加できないこともあります。
楽あれば苦ありといいますが、ずっと苦を経験していると、それが当たり前になるのです。この場合、楽を知らないので幸せとも言えます。
能力だけでなく、性格、環境などあらゆることに人は不平等です。それはそれぞれの人生が違うことにも似ています。いや、それらが違うからこそ、それぞれの人生を歩めるのです。
こんなことを考えていると、過去の喜怒哀楽の出来事がどうでもよくなってきます。自分では、能力や性格などを変えることができないからです。自分に与えられたもので人生を歩んでいくことを受け入れざるを得ません。これから先にも、過去の喜怒哀楽と同じような出来事が起こることでしょう。
そうだからといって、手をこまぬいているわけにもいきません。ふて腐れていても何も起こりません。元々が不平等なら、自分のしたいことをするのが、自らの人生に素直です。周囲に同調したり、真似をすることは、他人の人生の後追いをするようなものです。元々が違うのですから、同じ軌跡を残せるはずはありません。きっと、多くの努力をするわりに報われない満足度の低いものになるかもしれません。
以上のようなことを考えていると、とりとめのないような内容が、現実味を帯びてきます。それは、自分を受け止めて、受け入れることです。過去の出来事、自分に出来ること出来ないこと、環境、条件など、すべてを認めて受け入れるのです。それにより、本当の自分の人生を歩み始めることが出来るのです。
人間の基本とは、自分が人生を歩む、に尽きます。人の倫(みち)を考え実践しながら自分の人生を歩むことです。心の中のことなのでわかりづらいですが、本書はこのことを主張していると私は思いました。各章で語られたことは、人がつまずきやすいところを取り上げているようです。
このような本を読むと必ず次のような話を思い出します。ユダヤ教のある指導者の話です。「神はなぜ人間をつくられたのか?」の疑問に、「人間は物語を話すのが好きだから」と聞こえたそうです。一人の人生は、後にも先にも同じものはなく、その人だけの物語です。結果として、人間は自分の物語を作っているのです。神がそれを見ているということでしょうか。自分の物語は、放っておいても出来上がりますが、自分である程度作ることができます。成否はコントロールできませんが、何かに果敢にチャレンジしたストーリーを付け加えることができます。また、予期せぬハプニングが物語に躍動感を持たせます。気に入らなければ、今すぐ物語を終わらせることもできます。私たちは、神が聞く話を作るために人生を歩んでいるわけではありません。しかし、もし、神の立場で自分の物語を聞けるとしたらどうでしょう。きっと、興味をかき立てられる話を聞きたいと思うでしょう。そのためには、動き続けるしかありません。ずっと寝たままでは物語は単調です。失敗し続ける人生でも躍動感はあります。何か自分に言い聞かせているようになってしまいました。
最後に。本書には人間の基本が何であるのか、明確な答えの記述がないように、私は感じます。最終ページにそれらしきことが書いてありますが、得心がいきません。各章も何となく語っている世間話のようです。すべてが、何となく曖昧模糊です。しかし、自分なりに、こうでもないああでもないと思案していると、あることに気づきました。これは作家の酔狂ではないかと。理詰めに論を展開し、最後に答えを書くような野暮をしないのです。「何でそんなことをするのかって。当たり前じゃないですか。みんな違う人生なんだから、あなたが考えることなんですよ」。どこからか、そんな声が聞こえてきました。私も老いぼれたものです。いや、そうではなく、本書は、人生における読者を試しているのです。
この書物を選んだ理由
『失敗の本質』に未だに気持ちが離れません。当時の人たちはどのように感じていたんだろうか。そんな疑問から、本書『人間の基本』を見つけました。大東亜戦争という時代から考えると、著者の書籍が気になりました。知りたいのは、人間の基本に、戦時中の精神論が含まれるかどうかです。当時の市民が、それをどのように感じていたかです。
私の読み方
あまり難しい言葉を使うことなく、読みやすい書籍でした。文字ばかりですが、リズムが一定になるので、流れよく読めます。
読み方は弊サイトの読み方です。見開きページを視界に捕らえ、必要な箇所を意識で読む方法です。
何でこんな書き方にしたのだろうか。著者は何が言いたかったのだろう。読後に、やたら頭の中をこのことがぐるぐる回っていました。読書をしてこんな感じになるのは、久しぶりです。考えさせられる本でした。
読書所要時間など
- 所要時間
- 9日6時間50分
- 読み始め
- 2015(平成27)年6月1日(月)午前11時40分~
- 読み終わり
- 2015(平成27)年6月10日(水)~18時30分
- 読んだ範囲
- 本書の本体にかかる部分以外は、軽く目を通しました。
取り上げられた書物など
- 『神よりの逃走』 マックス・ピカート氏著
- 『アンデスの聖餐(せいさん)』 クレイ・ブレアJr.氏著
- 『「アイヒマン調書」イスラエル警察尋問録音記録』 Jochen von Lang氏著
その他、多数の本の紹介がありました。
出来事
2015(平成27)年6月17日(水) 改正公職選挙法が参議院で可決。現在20歳からの選挙権が、18歳からに。来年夏の参議院選挙から。
ひととき
ネムノキの花です。毛筆を広げたように細長いものは、雄しべだそうです。見ていると、羽毛でできた扇子のように優雅です。
2015(平成27)年6月15日(月)撮影。
調べたこと
- 1 狂奔(きょうほん)
- 2 サーモスタット(thermostat)
- 3 翼状針(よくじょうしん)
- インターネットで調べました。画像を確認しました。
- 4 ダイン
- 住友化学園芸株式会社さんのホームページを見ました。
- 5 展着剤(てんちゃくざい)
- 6 不可触民(ふかしょくみん)
- インドの枠外の最下層の身分。
- 7 雑魚寝(ざこね)
- 8 牧童(ぼくどう)
- 9 目くじらを立てる(めくじらをたてる)
- 10 スツール(stool)
- 11 チェーンスモーカー(chain smoker)
- 12 反芻(はんすう)
- 13 色街(いろまち)
- 14 風紀(ふうき)
- 15 レリーフ(relief)
- 16 告解(こっかい)
- 17 既成(きせい)
- 18 独善(どくぜん)
- 19 追従(ついじゅう)
- 参考:追従(ついしょう)。
- 20 揚幕(あげまく)
- インターネットで画像を確認しました。
- 21 宛行扶持(あてがいぶち)
- 22 業突張り(ごうつくばり)
- 強突張り。
- 23 化けの皮(ばけのかわ)
- 参考:化けの皮を現(あらわ)す。化けの皮が剝(は)げる。
- 24 羞恥(しゅうち)
- 25 凡庸(ぼんよう)
- 26 饗応(きょうおう)
- 27 贅沢(ぜいたく)
- 28 阿る(おもねる)
- 29 耳障り(みみざわり)
- 30 一角(ひとかど)
- 一廉(ひとかど)。
- 31 小母さん(おばさん)
- 親戚ではありません。参考:伯母、叔母。
- 32 みみっちい
- 33 モルグ(morgue)
- インターネットで調べました。
- 34 教祖(きょうそ)
- 35 五十歩百歩(ごじっぽひゃっぽ)
- 参考:「ごじゅっぽ」
- 36 徹頭徹尾(てっとうてつび)
- 37 治癒(ちゆ)
- 38 昂然(こうぜん)
- 39 do-gooter
- 本書に解説があります。
- 40 拝火教(はいかきょう)
- インターネットで調べました。
- 41 コーカシアン優越論
- 参考:コーカソイド(Caucasoid)。白人優越主義。インターネットで調べました。
- 42 搗く(つく)
- 舂く(つく)。
- 43 ヒンドゥ教
- インターネットで調べました。
- 44 ダーリット
- インターネットで調べました。
- 45 ブラフミン
- インターネットで調べました。
- 46 パトロネージ(patronage)
- フランス語。
- 47 井の中の蛙、大海を知らず(いのなかのかわず、たいかいをしらず)
- 48 島国根性(しまぐにこんじょう)
- 49 精巧(せいこう)
- 50 笊(ざる)
- 51 招く(まねく)
- よんでくれること。
- 52 道楽(どうらく)
- 53 酔狂(すいきょう)
- 粋狂。
- 54 天賦(てんぷ)
- 55 振興(しんこう)
- 56 端正(たんせい)
- 57 経木(きょうぎ)
- 58 畏敬(いけい)
- 59 ・・・風情(・・・ふぜい)
- 60 嗤う(わらう)
- シニカルな笑いのようです。参考:笑う(わらう)。
- 61 付和雷同(ふわらいどう)
- 附和雷同。
- 62 終息(しゅうそく)
- 終熄。
- 63 美学(びがく)
- 64 執拗(しつよう)
- 65 辛気臭い(しんきくさい)
- 66 シェルショック(shell shock)
- インターネットで調べました。
- 67 脆い(もろい)
- 68 埒(らち)
- 69 JOMAS(Japan Overseas Missionary Activity Sponsorship)
- 海外邦人宣教者活動援助後援会。ホームページを確認しました。
- 70 虎穴には入らずんば虎児を得ず(こけつにはいらずんばこじをえず)
- 71 紐付き(ひもつき)
- 72 錚錚(そうそう)
- 73 綸子(りんず)
- 74 アジ演劇
- アジプロ演劇(Agit-prop Theater)。辞書では「アジプロ」で載っていました。
- 思想を広めるための演劇のようです。本書の場合、文化大革命を国家に浸透させるための演劇ということです。インターネットでも調べました。
- 75 compassion
- 76 綽綽(しゃくしゃく)
- 77 陵辱(りょうじょく)
- 78 咄嗟(とっさ)
- 79 傍(そば)
- 参考:傍ら(かたわら)。
- 80 アナクロニズム(anachronism)
- 81 俯瞰(ふかん)
- 82 灼熱(しゃくねつ)
- 83 陰険(いんけん)
- 84 野暮(やぼ)
- 85 惻隠の情(そくいんのじょう)
- 86 機微(きび)
- 87 皆目(かいもく)
- 88 横飯(よこめし)
- 89 妖婆(ようば)
- 90 談論風発(だんろんふうはつ)
- 91 提灯(ちょうちん)
- 92 プロダクティブ(productive)
- 93 一石二鳥(いっせきにちょう)
- 94 剝げる(はげる)
- 95 やましい(疚しい、疾しい)
- 96 呆ける(ぼける)
- 惚ける。
- 97 義歯(ぎし)
- 98 胃瘻(いろう)
- インターネットで画像を確認しました。
- 99 奇蹟(きせき)
- 奇跡。
- 100 瀕死(ひんし)
- 101 お終い(おしまい)
- お仕舞い。
- 102 算段(さんだん)
- 103 呟く(つぶやく)
- 104 明瞭(めいりょう)
- 105 瓦礫(がれき)
- 106 野営(やえい)
- 107 剝く(むく)
- 108 暫定的(ざんていてき)
- 109 トリアージ(Triage)
- 110 煌煌(こうこう)
- 111 モッブ(mob)
- 112 団扇(うちわ)
- 113 僻地(へきち)
- 114 野天(のてん)
- 115 穿つ(うがつ)
- 116 アップ・ツー・デート(up to date)