『愚民社会』
- 副題など
- 帯には「日本は既に終わっていた!」
- 著者など
- 大塚 英志(おおつか えいじ)氏著
- 宮台 真司(みやだい しんじ)氏著
- 出版社など
- 太田出版さん
- 版刷など
- 2012年1月第1刷。読んだものは、2012年3月第5刷。
- ボリューム
- 308ページ
以上、共著
感じたこと
「・・・」
何について語ろうとしているのか、何を求めて対談しているのか、私にはよくわかりませんでした。多くの思想、主義主張を語っていますが、それに関する知識がないため、理解不能でした。
難しいことはわかりませんが、2人の著者が完全にお互いの言い分を理解しているとは思えませんでした。思想や哲学の知識についても、お二人の理解にズレ、温度差があるように感じました。それは、経験、環境により、解釈や価値観が人によって違うからなのでしょう。人によって、持っている知識、価値観は、違うということです。1人の著者の本だと、その内容がまったく正しいと思いがちです。対談形式は、この感覚を是正してくれそうです。
日本を変えるにはどうしたらいいのか、というのが本書のテーマであるようです。多くの知識や主義主張を取り出して、その方向性を探ろうとしているようです。それは、知識があれば、何でも解決でき、方向性が定まるというようにも見えます。学校の試験に解答するかのようです。問題点を探し出し、解決するような感じでしょうか。
たとえば、「おいしいハンバーグを作るにはどうしたらいいか」と「ゴールデンウィークに何をするか」という問題は、解決する方法が違います。
おいしいハンバーグを作りたいと思ったら、本やインターネットで調べたり、人に聞いたりします。この場合、大切なのは知識です。後は自らの工夫を重ねれば、自分の思うハンバーグに近づきます。
ゴールデンウィークに何をするかを決めるには、ハンバーグと同じようにはいきません。雑誌やインターネットで調べてもしっくりこないことがあります。人に聞くようなことでもないような気がします。ポイントは、自分が何をしたいか、ということです。したいことが定まらないと、調べる時間だけが過ぎていきます。調べたものの中から適当に選んで実行したとしても、自分の気持ちが満たされるかは疑問です。したいことが定まって、はじめて知識を活用できるのです。広々とした高原ででっかいおむすびを食べたいと思ったら、天気、行程、場所などの知識や情報を得ようとするでしょう。家族の意見や、年齢や体力などで、的は絞られていきます。
全人類の知識、知恵、主義主張を熟知していたとしても、どのようにすべきかを決められません。したいことが決まって知識が活用されます。したいことを実現するために知識を使うということです。
学校のテストはしたい(または、しなければならない)ことが既に決まっています。これは持っている知識をああでもないこうでもないと問題に当てはめる作業です。知識の正確さと量が必要になります。
学校のテストで「あなたのしたいことを述べよ。ただし、全校生徒にとって有益なものに限る」と出題されたら、ご覧の皆さんはどのようにお答えになるでしょうか。これに近いのが、文化祭や体育祭だと思います。テーマを決めるのはたいへんですが、その後は何とかなります。したいことを抽出し決めること、これが最も重要です。したいことの中には、他校との合同開催とか、文化祭と体育祭を統合するとか、廃止することも含まれます。
学校や会社で、自分たちでやりたいことを決める、という授業や研修はいかかでしょうか。
したいことがあってもなかなか言えないことがあります。その原因の1つに、それが正しいか間違っているかわからない、という思いがあります。この思いは、「したいこと」を学校のテストのように考えているのかもしれません。したいことに正誤はないはずです。人道や法令に反しなければ、検討してみるべきです。実行するかどうかは別の話です。
「あなたのしたいことを述べよ。ただし、国民にとって有益なものに限る」と誰かから聞かれたら、どう答えますか。
「・・・」
この書物を選んだ理由
日本や組織は変わったのかどうか。どうすれば変わるのかを知るために本書を取り上げました。本書の帯の背部分に「日本は既に終わっていた!」との衝撃的な文が目にとまりました。未だに、書籍『失敗の本質』の余韻を引きずっています。
私の読み方
本書の特徴は、対談形式、語句の解説がページの下欄にある、ことです。
対談形式は、2人の解釈や考え方の違いがわかり、内容を多面的に知ることができます。読んでいるとその議論に参加しているような感じでした。しかし、記述が冗長になり、目的や論点がぼやける傾向にあるようです。この形式に慣れていないせいか、読むのに苦労しました。2冊の本を読み比べしているようだからです。
語句の詳細な解説が、ページの下欄にありました。調べる手間は省けますが、本文から下欄の解説に意識が移ることになります。読みや理解のリズムが崩れてしまいます。本文の中で語句の説明をしながらの記述が欲しいところです。下欄に解説をしたことで、余白の少ないページがありました。調べたことや思ったことを書き込む私にとっては、見開きページの上下左右に余白が必要です。適当な余白は読みやすさにもつながります。
本文を他の本と比較すると、文字数は一行あたり5文字程度少なく、一行あたりの長さは15%程度短かったです。そのためか、本全体を視野に入れ、本文の5、6行をはっきりと見ることができました。下欄に解説があるため、ページの上の方に文章があります。そのため、真ん中に置く配置よりも、一行が短く見えるのかもしれません。余白は上より下を多くとる方が、読みやすいのかもしれません。
2ヶ月のブランク後、3冊目です。やっと、数行がはっきりと見えるようになってきました。
読書所要時間など
- 所要時間
- 11日0時間29分
- 読み始め
- 2015(平成27)年4月23日(木)AM5時48分
- 読み終わり
- 2015(平成27)年5月4日(月)AM6時17分
- 読んだ範囲
- カバー、帯、本書の表題部分から著者紹介のページまで。目次、ページ下欄の解説も読んでいます。巻末の書籍広告は見ていません。
取り上げられた書物など
- 『軟尖』 徳川夢声氏著
- 『日本列島改造論』 田中角栄氏著
- 『諸神流竄記』(『流刑の神々』) ハイネ氏著
※下欄の解説には多数の書籍が紹介されていました。
ひととき
ムスカリでしょうか。最近どこでもよく見かける花です。植えたとは思えないところに咲いています。繁殖力が強いのでしょうか。田舎の畑に咲いていました。
2015(平成27)年4月4日(土)撮影。
調べたこと
- 1 唱導(しょうどう)
- 唱道(しょうどう)。
- 2 上程(じょうてい)
- 上呈(じょうてい)と区別する。
- 3 追従(ついじゅう、ついしょう)
- 読み方によって意味を区別する。
- 4 苛む(さいなむ)
- 5 頓珍漢(とんちんかん)
- 6 小言(こごと)
- 7 難詰(なんきつ)
- 8 顰蹙を買う(ひんしゅくをかう)
- 9 サブカルチャー(subculture)
- 10 承服(しょうふく)
- 11 耳目に触れる(じもくにふれる)
- 12 コミットメント(commitment)
- 参考:コミット(commit)。
- 13 頽落(たいらく)
- 哲学者・ハイデッガーの使った言葉のようです。「主体的な人間」から「没個性的で一般的な人間」になることを「頽落」という言葉で表したようです。原言葉がどのようなものだったのか、造語なのか、翻訳によるものなのか、興味のあるところです。このことを知ると、「スーパーフラット」の言葉の使用や、著者の主張が理解できそうな気がします。
- 私の持っている辞書に記載はありませんでした。インターネットで調べると「ハイデッガー」関連であることがわかりました。『シグマ・ベスト 解明 倫理・社会』(文英堂さん)などを参考にしました。
- 14 剔抉(てっけつ)
- 15 直裁(ちょくさい、じきさい)
- 16 屠る(ほふる)
- 17 縦しんば(よしんば)
- かりに。
- 18 モチーフ(motif)
- フランス語。
- 19 アナキズム(anarchism)
- 20 リバタリアニズム(libertarianism)
- 21 棹さす(さおさす)
- 流れにのること。
- 22 御為ごかし(おためごかし)
- 23 ユニティ(unity)
- 24 改元(かいげん)
- 25 土人(どじん)
- 26 愚民(ぐみん)
- 参考:「愚民政策(ぐみんせいさく)」。
- 27 氷解(ひょうかい)
- 28 キャナライズ
- canalize? 「掘り下げた」、「方向づけた」という意味でしょうか。
- 29 フォークロア(folklore)
- 民間伝承。
- 30 エスノロジー(ethnology)
- 民俗学。
- 31 袂(たもと)
- 32 プレカリアート(precariat)
- 33 寄越す(よこす)
- 34 みすぼらしい
- 35 デッドエンド(dead end)
- 36 態(てい)
- 体(てい)。
- 37 ビルドゥングスロマン(Bildungsroman)
- ドイツ語。
- 38 依代(よりしろ)
- 39 巷間(こうかん)
- 40 膨縮(ぼうしゅく)
- インターネットで調べました。
- 41 韓流(はんりゅう、かんりゅう)
- 「はんりゅう」は、母国語音。
- 42 螺旋(らせん)
- 43 バイアウト(buyout)
- 44 美人局(つつもたせ)
- 45 枕探し(まくらさがし)
- 46 愚昧(ぐまい)
- 47 払底(ふってい)
- 48 ファナティック(fanatic)
- 49 銃後(じゅうご)
- 50 称揚(しょうよう)
- 51 八紘一宇(はっこういちう)
- 52 購う(あがなう)
- 贖う(あがなう)。
- 53 不意打ち(ふいうち)
- 54 ギミック(gimmick)
- 55 纏う(まとう)
- 56 マッチポンプ(match pump)
- マッチは、燐寸。和製英語。
- 57 スキーム(scheme)
- 58 澎湃(ほうはい)
- 59 リスペクト(respect)
- テレビのインタビューなどで、この言葉をよく耳にします。「尊敬」とはニュアンスが違うのでしょうか。
- 60 蒙昧(もうまい)
- 61 インプリケーション(implication)
- 62 ターム(term)
- 63 孕む(はらむ)
- 64 狡猾(こうかつ)
- 65 スノッブ(snob)
- 66 迂闊(うかつ)
- 67 翻身(ほんしん)
- 68 諧謔(かいぎゃく)
- 69 多士済済(たしせいせい、たしさいさい)
- 70 ウェルメード(well-made)
- 71 企投(きとう)
- 投企(とうき)に同じ。哲学用語。
- 72 憧憬(しょうけい、どうけい)
- 73 仮構(かこう)
- 74 灰燼に帰する(かいじんにきする)
- 75 斜に構える(しゃにかまえる)
- 文意によって、反対の意味になるようです。
- 76 忸怩(じくじ)
- 77 ケツを舐める(けつをなめる)
- 本書では、媚(こ)びへつらうという意味で使われているようです。
- ケツを舐めるとは、何からこのような表現になったのでしょうか。「尻を拭う(しりをぬぐう)」「尻拭き(しりふき)」に近いような気もします。この言葉は辞書に見当たりませんでした。インターネットでは、この2つの意味が混用されているとの記載がありました。
- 78 肉を切らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ)
- 参考:「皮を切らせて肉を切り、肉を切らせて骨を切る」。
- 79 利敵(りてき)
- 80 重石(おもし)
- 重し(おもし)。参考:「重石(じゅうせき)」は別意。
- 81 適う(かなう)
- 82 流竄(りゅうざん)
- 流刑(るけい)。
- 83 鮮い
- 「すくない」と読むのでしょうか。
以下余白