『動的平衡2』
- 副題など
- 「生命は自由になれるのか」
- 著者など
- 福岡 伸一(ふくおか しんいち)氏著
- 出版社など
- 木楽舎さん
- 版刷など
- 読んだものは、2011年12月初版第1刷
- ボリューム
- 254ページ
感じたこと
本書でパレートの法則が出てきました。読んだものの中にこの法則の記述のある書籍が数冊ありました。どうもこの法則が気になって仕方がありません。法則がすべてのことに当てはまるかどうかより、どのように考えればいいのか興味のあるところです。
釣り好きの友人に聞いた話です。体力を消耗しないように、魚はできるだけ動かないようにしているのだそうです。餌となるプランクトンや小魚などが来ると、その時に全力で獲物を捕るのです。それ以外は、潮の流れに身を任せたり、岩陰にじっとしています。魚には釣れる時間帯があり、朝、夕方が特にいいのだそうです。これは、プランクトンの活性と関係しているという説があるそうです。プランクトンに小魚が寄ってきて、さらに大きい魚が後を追います。魚種、季節によって、深夜、昼によく釣れることがあるそうです。捕食時間以外だと、魚は釣れないようです。見えている魚でも釣れないのです。魚は、四六時中、捕食活動をしていません。
業務の効率化を図るため遊んだ人員を作らないように、上司が言ったことがありました。係によっては、繁忙期があれば、閑散期もあります。繁忙期に、閑散期の係員が応援に行くようにするのです。これにより、繁忙期の係員の労働は軽減されます。さらに、他の係との交流もでき、職場が活性化されるのです。逆の見方をすれば、閑散期の係員にとっては、日常業務に加えて、慣れない新たな労働と心労が課されることになります。絶えず、緊張と労働が重く続くことになります。従来の繁忙期では、アルバイトを雇って乗り切っていました。他の係の人は、通常の業務をするのみで、自分たちの繁忙期に備えている感じなのです。他の係の人が応援に行くと、思わぬ軋轢(あつれき)を生じることがあります。繁忙期の係の状態を、閑散期の係の人が陰で評価をすることです。「大したことないのに応援を求める」とか「やり方が悪いんじゃないの」とかです。指示されたとおりに応援するだけならいいのですが、人間はそうはいきません。何となく感じたことを無責任に言うことがあるのです。こうなると、組織は不協和音で満ちてゆきます。
人間は、1日8時間の労働を全力で毎日過ごせるでしょうか。同じ人が繁忙期の係に派遣されるとしたら、その人は心身の健康を保てるのでしょうか。不平不満を持って仕事をすると疲労度は増します。一度病気になるとなかなか元に戻りません。
「兵を絶えず働かせてはならない。休むときに兵は休ませなければならない」というのを時代劇か特集番組で聞いた気がします。「休ませる」は、養う、育てるの意味で使われていたように思います。先ほどの繁忙期の係に閑散期の係員を応援する、というのは絶えず人員を働かせています。
弊サイトで取り上げた職場や働き方の本には、個性豊かなものが紹介されていました。大きい波が来始めたら、全員がサーファーになる。何年か勤めたら、給料をもらいながら、一定期間海外旅行ができる。等々です。ユニークな企業の人員は、集中と弛緩を上手に管理しているようです。仕事以外では、気分転換や見聞を広めているのです。彼らは、気力を充実させ、自己研修をしているのです。これらの企業は、社員を休ませ養い、質を高めているのです。
人間は絶えず全身全霊で働くと、どこかに歪みを生じてしまいます。働くことが美徳だという考え方が、自転車操業のような労働を生み出したのかもしれません。では、適切な労働とはどのようなものなのでしょうか。疲労回復、生活に必要な時間など差し引いた残りの時間を労働するのがいいのでしょうか。人間には、楽しみや団らんなど感情を穏やかにすることも必要です。なかなか、物差しになる基準が見当たりません。
ここで、パレートの法則を考えてみましょう。人によって寿命が違うので一概に言えませんが、次のように考えてはどうでしょう。生涯の労働できる期間の2割を働いたら、人並みの人生が送れる。1年の2割を働いたら、人並みの生活ができる。1日の2割を働いたら、人並みにその日を過ごせる。それで、1年を例にして計算すると、1年の2割を73日、1,752時間、1日4.8時間となります。1日8時間労働とすると、年間219日の勤務です。
週休2日の企業では、年間255日程度労働しています。パレートの法則からいくと、36日も多く働いています。有給休暇を年20日とし、使い切ったとしても、16日も多く働いています。法則からいうと、枠から外れています。この差は、株主への利益の配当、企業間の競争による消耗、コストの上昇などでしょうか。
さて、パレートの法則は経済学から生み出されています。本書では、生物学にもこの法則が当てはまると主張しているようです。アリを例にとっての記述がありました。アリは、個体、群れ、違う群れと別の生物の関わり合い、環境要因など人間社会に似ているところがあります。人間は、自分を特別扱いしていますが、生物です。最新鋭機器を使った経済活動といえども、生物の営みです。現象をみてこの法則が当てはまっているという記述を目にします。自然界において、この2対8が成り立つのであれば、人間にとっても同じことです。すなわち、人間の労働は、生涯の労働可能期間の2割働くのが最適ということになります。この「最適」という言葉を使ったのは、パレートの法則に間違いがなく、正しいものとした場合です。企業が、発展しそれを維持するためには、人員の労働時間をパレートの法則にそうようにするのがいいことになります。労働時間が長すぎず短すぎずです。今までに読んだ本の中には、労働時間の短い企業の紹介もありました。
お金に注目が集まりがちですが、経済は、人が生きていくためのものです。人を中心にして考えるべきなのです。人の労働時間をパレートの法則にそうようにする。それを中心に、経済や法律など社会構造を考えるのはどうでしょう。もし、パレートの法則が自然界の調和も示しているのなら、生活しやすい社会や環境ができるはずです。
話は変わりますが、食べ物に「二八そば」があります。「二」がそば粉なのか小麦粉なのか、「二八」で語呂合わせなのか諸説あるようです。「二八」は、食品の作りやすさやうまさ、利益の何を追求したのでしょうか。パレートの法則を使って、このことを考えてみると、新しい発見があるかもしれません。
この書物を選んだ理由
『動的平衡』を買ったときに、本書『動的平衡2』も手にしました。同じ作家、同じようなテーマで何が変わるのか興味がありました。
私の読み方
前回の「読んだもの№38『動的平衡』」と文字の大きさ、行の長さ、行間は同じでした。読みやすいと感じました。
専門用語を使う際には、注釈をつけると理解がしやすくなります。また、再読する際に、索引があると必要な箇所をすぐに見られるので便利です。本書には残念ながらありませんでした。
私には馴染みのない言葉がありました。また、今までに読んだ本を思い起こすと、ここは、ひらがなではとか、違う言葉に置き換えてもいいのでは、と感じるところがありました。それだけ、言葉には苦戦をしました。単なる科学の知識や考え方を記述したのではなく、小説や随筆などの文学作品に感じます。難しい言葉が、手を替え品を替え、出てくる感じがしました。味わって読むことができればいいのですが、調べて理解するのに精一杯で、余裕がありませんでした。
弊サイトは文章の中で言葉を理解するという方向で実践していますが、どうやって語彙力をつければよいのでしょうか。今後の課題にしたいと思います。
読書所要時間など
所要時間 : 8日22時間2分
読み始め : 2015(平成27)1月22日(木)AM11時54分
読み終わり : 2015(平成27)年1月31日(土)AM9時56分
読んだ範囲 : カバー、帯。本書の表紙から版刷の表記のあるページまで。目次も読みました。
取り上げられた書物など
- 『利己的な遺伝子』 リチャード・ドーキンス氏著
- 『働かないアリに意義がある』 長谷川英祐氏著
- 『ゴルドベルグ変奏曲』 バッハ氏作曲
その他、多数の本の紹介がありました。
出来事
- 中東で日本人人質事件。解放交渉が長期化の様相。
- 1月30日(金)家の近くに出没したイノシシ捕まる。
ひととき
ツグミでしょうか。ツグミは群れで飛び回っていました。撮影しようと近寄ると、一斉に飛び立ちました。やっとこさ撮影できた写真です。撮影した場所は、イノシシが出没していた公園です。この日は、風が強く吹いたり雨が降ったりやんだりと、冬によくある天気でした。
2015(平成27)年1月8日(木)撮影。
調べたこと
- 1 佇む(たたずむ)
- 2 隠喩法(いんゆほう)
- 3 躍動(やくどう)
- 4 同心円(どうしんえん)
- 5 ケルト(Celt)
- 6 つややか(艶やか)
- 7 ミクロ(micro)
- マイクロ。対義語は「マクロ(macro)」。
- 8 由(よし)
- 「因」「縁」。
- 9 被膜(ひまく)
- 「皮膜」との違いは?
- 10 伊藤 若冲(いとう じゃくちゅう)氏
- 画家。日本人。1716-1800。
- 11 アーカイブ(archive)
- 12 セレナーデ(Serenade)
- ドイツ語。
- 13 無限(むげん)
- 14 宇宙(うちゅう)
- 15 網膜(もうまく)
- 16 山稜(さんりょう)
- 尾根(おね)。
- 17 企み(たくらみ)
- 18 遠望(えんぼう)
- 19 朽ちる(くちる)
- 20 昇華(しょうか)
- 21 ナフタリン(Naphthalin)
- ドイツ語。英語はナフタレン(naphthalene)。
- 22 散開(さんかい)
- 23 消長(しょうちょう)
- 24 調律(ちょうりつ)
- 25 変調(へんちょう)
- 26 コーディネート(coordinate)
- 27 往還(おうかん)
- 28 同時(どうじ)
- 29 ふて腐れる(ふてくされる)
- 30 夢想(むそう)
- 31 一笑(いっしょう)
- 32 熟達(じゅくたつ)
- 33 手稿(しゅこう)
- 34 素描(そびょう)
- 35 長らく(ながらく)
- 36 多種多様(たしゅたよう)
- 37 乱舞(らんぶ)
- 38 素敵(すてき)
- 39 レイジー(lazy)
- 40 弁える(わきまえる)
- 41 マドンナ(Madonna)
- イタリア語。
- 42 コロニー(colony)
- 43 マーキング(marking)
- 44 閾値(しきいち、いきち)
- 45 ランダム(random)
- 46 指向性(しこうせい)
- 47 サブシステム(subsystem)
- インターネットで調べました。
- 48 トランキライザー(tranquilizer)
- 49 快哉(かいさい)
- 50 余すところなく(あますところなく)
- 51 玄人(くろうと)
- 52 気難しい(きむずかしい)
- 53 下放政策(かほうせいさく)
- 下郷運動(かきょううんどう)。
- 54 コマネズミ(独楽鼠、高麗鼠)
- 55 フレージング(phrasing)
- 56 ジーン(gene)
- 57 付言(ふげん)
- 附言。
- 58 原理主義(げんりしゅぎ)
- 59 千変万化(せんぺんばんか)
- 60 不稔性(ふねんせい)
- 61 挿し木(さしき)
- 62 接ぎ木(つぎき)
- 63 跋扈(ばっこ)
- 跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)
- 64 塵埃(じんあい)
- 65 穴蔵(あなぐら)
- 66 気嚢(きのう)
- 67 姿形(すがたかたち)
- 68 瞠る(みはる)
- 見張る。
- 69 波及(はきゅう)
- 70 倦怠(けんたい)
- 71 解毒剤(げどくざい)
- 72 美醜(びしゅう)
- 73 雪辱(せつじょく)
- 74 目頭(めがしら)
- 参考:目尻(めじり)
- 75 エコロジカル・ニッチ(ecological-niche)
- 76 バトンタッチ(baton touch)
- 和製英語。
- 77 保全(ほぜん)
- 78 夥しい(おびただしい)
- 79 強靱(きょうじん)
- 80 共進化(きょうしんか)
- 81 糸口(いとぐち)
- 82 BCAA(Branched Chain Amino Acids)
- 83 ロコモティブ・シンドローム(locomotive syndrome)
- 84 宮益坂(みやますざか)
- 85 感応(かんのう)
- 86 掠め取る(かすめとる)
- 87 孵る(かえる)
- 88 瑞瑞しい(みずみずしい)
- 89 粒立つ(つぶたつ)
- 90 嘗て(かつて)
- 91 千鈞の重み(せんきんのおもみ)
- 92 迸る(ほとばしる)
- 93 パラフィン(paraffin)
- 94 フリーズ(freeze)
- 95 ハングアップ(hang up)
- 96 供し手(きょうして)
- 供する。
- 97 ユニット(unit)
- 98 ブレークスルー(breakthrough)
- 99 青紫(あおむらさき)
- 「せいし」と読めば別意。
- 100 プラスミド(plasmid)
- プラスミッド。
- 101 煮沸(しゃふつ)
- 102 往往(おうおう)
- 103 ストレージ(storage)
- 104 ハンディ(handy)
- 105 解析(かいせき)
- 106 衒い(てらい)
- 107 礁湖(しょうこ)
- 108 触媒(しょくばい)
- 109 限局(げんきょく)
- 110 眩む(くらむ)
- 111 フェロモン(pheromone)
- 112 スリリング(thrilling)
- 113 匂い(におい)
- 参考:「臭い」は「くさい」とも読みますが、「におい」とも読みます。
- 114 強か(したたか)
- 115 所以(ゆえん)
- 116 凌ぐ(しのぐ)
- 117 一網打尽(いちもうだじん)
- 118 唐突(とうとつ)
- 119 嵌まる(はまる)
- 120 穿孔(せんこう)
- 121 気運(きうん)
- 「機運(きうん)」との違いは?
- 122 重鎮(じゅうちん)
- 123 軽口(かるくち)
- 124 疎か(おろか)
- 125 陸に(ろくに)
- 126 推論(すいろん)
- 127 勃発(ぼっぱつ)
- 128 徐徐(じょじょ)
- 129 不遇(ふぐう)
- 130 失意(しつい)
- 対義語は「得意(とくい)」。
- 131 後世(こうせい)
- 132 復讐(ふくしゅう)
- 133 オタク
- 参考:「御宅(おたく)」。
- 134 進化論(しんかろん)
- 135 仮説(かせつ)
- 136 鍛錬(たんれん)
- 137 名声(めいせい)
- 138 版図(はんと)
- 139 ドグマ(dogma)
- 140 質素(しっそ)
- 141 盟友(めいゆう)
- 142 相同(そうどう)
- ホモロジー(homology)。
- 143 挿げ替える(すげかえる)
- 144 襲来(しゅうらい)
- 来襲(らいしゅう)。
- 145 目途(もくと)
- 目処(めど)。
- 146 孤軍奮闘(こぐんふんとう)
- 147 胡乱(うろん)
- 148 預託(よたく)
- 149 粋(すい)
- 「粋を尽くす(すいをつくす)」「粋を集めて(すいをあつめて)」。参考:「粋(いき)」。
- 150 究明(きゅうめい)
- 151 リテラシー(literacy)
- 152 励起(れいき)
- 153 際限(さいげん)
- 154 偽装(ぎそう)
- 擬装(ぎそう)。
- 155 端無くも(はしなくも)
- 156 カタストロフィ(catastrophe)
- 157 リセット(reset)
- 158 森羅万象(しんらばんしょう)
- 159 摂理(せつり)
- 160 因果律(いんがりつ)
以下余白