『読解力の基本』
- 著者など
- 速越 陽介(はやこし ようすけ)氏著
- 出版社など
- 日本実業出版社さん
- 版刷など
- 読んだものは、2010年10月初版
- ボリューム
- 174ページ
感じたこと
この本だって1つの意見、でしょうか。
本書は、「正確に読む」ことと「感想」とを分けようとしているように感じました。
「正確に読む」とは、誰に聞いても同じ答えが返ってくることです。書いてある内容、事実を字面から読み取ることです。学校の試験と同じで、答えが決まっています。「感想」は、読んで感じたことで、読者それぞれに違います。本書は、「正確に読む」ことに焦点をあてています。タイトルのとおりです。
学生時代に後輩から聞いた話で、いまだに忘れられないものがあります。
どこかの入学試験で、「筆者は何を述べたかったか」という国語の問題が出題されました。試験ですから当然に答えがあり、それは公開されました。同じ質問したところ、問題に採用された有名な作者は、入学試験の答えと違うことを言った、ということです。誰がどのように聞いたのかは、わかりません。この話が事実かどうかを私は確かめていません。この話を忘れられないのは、私がこの話を整理しきれないからです。
「試験の答え」と「作者の言い分」は、なぜ違うのでしょうか。
試験に出される文章は、一部分です。限られた文章から問題を作ろうとすると、その前後に書かれたことや本全体の主張を無視せざるを得ません。原作を読んだかどうかで答えが変わるのは、受験生に公平ではないからです。試験に出された文面で、答えを出さなければなりません。
作者は、自分の言い分を本にしています。本全体で言いたかったことに基づいて、試験の質問に答えたのでしょう。作者は、入学試験の答えが間違っているとは言っていません。おそらく、入学試験と自分の主張とが噛み合わない理由をわかっていたのでしょう。それゆえ、質問に対し、作者の立場から自ら主張したのかもしれません。
この話を聞いてすぐは、学校か作家のいずれかが間違っていると思いました。なぜなら、質問に対して、絶対的な答えが(1つだけ)あると思ったからです。ところが、立場によって、それぞれが正しいことがあるのです。
複雑な気持ちになるのは、学校が作者の主張と違う答えの問題を出してよいのか、ということです。一致していれば、この話を後輩から聞くことはなかったでしょう。この不一致がいろいろなことを考えさせてくれます。
この話から、読み方が変われば、本の解釈が、作者の主張と違ってくることがわかります。マニュアル(取扱説明書)では、機械の操作を目的どおりに動かせればいいので、必要なところだけ読めば、とりあえずは済みます。ところが、何らかの主義主張を伝える本については、そのようにはできていません。必要なところだけ読めば、その部分だけの解釈になります。作者の主張とかけ離れた理解になる可能性があります。最も大切なことは、作者が何を言いたいのかを知ることです。
このことから、本を読むときは、全部を読むのが大切なことがわかります。巻頭巻末の「はじめに」「おわりに」や解説などを読めば、さらに理解が深まりそうです。作者の主張を知ろうとしているわけですから。マニュアルでも、機械の特長、作られた目的などを読むと、日頃の機械の使い方が変わってきます。機械が長持ちしたり、効率のよい作業が期待できます。
すべての読者に、作者の言いたいことは何かの質問をして、全員の答えが一致するのでしょうか。読者の専門分野、経験により、若干の違いが出てきてもおかしくはありません。字面からの読解や語学の能力、知識の多少により差が出てくることもあるでしょう。読者は、自分寄りの解釈をしがちだということです。
作者の力量に負うところもあります。言葉を尽くしても、思うところを伝えられないこともあるはずです。書く技術の1つとして、テーマを絞ることがあるからです。正確さより、インパクトのある表現になってしまうことが考えられます。
字面から作者の真意を探るのは難しいのです。
本を読んでわかるのは、作者の考えの一部です。読書からすべてを得るのには限界があります。テレビのドキュメンタリー番組を見たり、大学の公開講座に参加したり、電車から街並みの変化を感じたり、人に話を聞いたりといろいろな体験をすることが必要です。知識を積み重ね、思考を高めるだけでなく、時代の流れ、人の考えやすることを知ることも大切です。真意を知りたければ、作者に直接聞くのが最良の方法でしょう。しかし、それでも、作者の真意にたどり着けるかどうかわかりません。
高度な読解力をもつ人が読書をし、その本に関する意見を言ったとします。それは、その人の、1つの見解に過ぎません。
この書物を選んだ理由
読解力がつけば、疲れにくい読みができると考えました。どのようにすれば読解力がつくのか、興味を持ちました。弊サイト『読んでやる』のテーマに、ストレートに合うようなタイトルの本をはじめて取り上げました。
私の読み方
どのような人たちを対象にした本なのでしょうか。社会人2、3年くらいまでの方なのでしょうか。明確には語られていませんでした。高校受験の勉強をしていたときのことを思い出しました。設問には必ずきちんとした答えがあるといった感じでした。
ヒントとして、71と+1がありました。あくまでもヒントなので、役に立つかどうかは読んだ人によるということでしょうか。
本書に「疲れる」という言葉がありました。パソコンで文学作品を長い時間読むと疲れるとありました。この原因と対策については触れられていませんでした。やはり、パソコンのディスプレイ(画面)を見続けると、疲れるようです。
本書も本が読めることを前提に書かれています。本書を読み、読書を続けることで読解力が向上すると主張します。以前の私のように、文字を見ると目や頭が痛くなる人は、読書を勧められても続けられません。文字を何の抵抗もなく見られて、文章を読めるのです。そうなれば、文字を見るのが楽しくなるかもしれません。
めずらしく横書きでした。文字の大きさ、行間など、№33『すっきり! わかりやすい! 文章が書ける』とほぼ同じです。4、5行が視界に楽に入ります。しかし、本書は、読めそうな気がするのですが、なかなか前へ読み進められません。形式は同じなのに、№33ほど読みやすくありません。考えられることは、抽象的な事柄が多いこと。それと、例文の題材が、私のあまり目にしない事柄で、書き方が真面目なのか冗談なのかわからないことです。また、命令、疑問などいろんな調子で書かれていました。なぜ、ここではこの調子なのかと戸惑うことがありました。私はどのようなスタンスでこの本を読めばいいのだろうか、といった感じです。本書を信用してもいいのだろうか、と。
コラムも同じような調子だったので、単調な感じが延々続く感じがしました。
難しそうな漢字にはフリガナがありました。やさしく書かれた文章だけに、使われた言葉を難しく感じました。
たくさんの本を読むように本書は勧めています。この言葉のない本であって欲しかった、と私は思いました。読後、もっと本が読みたい、と思う本です。
一見読みやすそうで、読みづらい本でした。
読書所要時間など
所要時間 : 3日20時間27分
読み始め : 平成26年12月8日(月)15時46分
読み終わり : 平成26年12月12日(金)午後12時13分
読んだ範囲は、カバー、帯、本書の最初から巻末の広告のところまで。
取り上げられた書物など
- 『串刺し教授』 筒井康隆氏著
- 『物語の構造分析』 ロラン・バルト氏著
など、その他、多数紹介されていました。
出来事
12月10日(水) 特定秘密保護法が施行。
ひととき
タヒバリです。海岸の石畳にいました。警戒心が強く、近づくとすぐに飛び立ってしまいます。運よく撮影できました。
平成26年12月8日(月)撮影。
調べたこと
- 1 理解(りかい)
- 2 読解(どっかい)
- 3 単語(たんご)
- 4 DTP(Desk Top Publishing)
- デスクトップパブリッシング。
- 5 ムーブ
- 有限会社ムーブ。
- 6 把握(はあく)
- 7 訓読(くんどく)
- くんよみ。
- 8 音読(おんどく)
- おんよみ。
- 9 漢語(かんご)
- 対義語は「和語(わご)」。
- 10 新米(しんまい)
- 新米を炊くときは水を少なめにします。
- 11 絶体絶命(ぜったいぜつめい)
- 12 プリン
- カスタード・プディング。
- 13 パンナコッタ(panna cotta)
- イタリア語。プリンとパンナコッタの違いを調べてみました。プリンは卵を使用し焼いて作ります。パンナコッタは、生クリームをゼラチンで固めたものです。インターネットなどで調べました。
- 14 敬体(けいたい)
- です体(ですたい)。
- 15 常体(じょうたい)
- である体(であるたい)。
- 16 ため口(ためぐち)
- 17 混用(こんよう)
- 18 工夫(くふう)
- 19 真逆(まぎゃく)
- 私の持っている辞書には載っていませんでした。インターネットで調べました。
- 20 意外(いがい)
- 21 天気雨(てんきあめ)
- 22 評論(ひょうろん)
- 23 トーン(tone)
- 24 基準(きじゅん)
- 25 構文(こうぶん)
- 26 角質(かくしつ)
- 27 常識(じょうしき)
- 28 打開(だかい)
- 29 所収(しょしゅう)
- 30 メッセージ(message)
- 31 所以(ゆえん)
- 32 異端(いたん)
- 33 あらすじ(粗筋)
- 34 ダイジェスト(digest)
- 35 普及(ふきゅう)
- 36 宝庫(ほうこ)
- 37 信憑性(しんぴょうせい)
- 38 醍醐味(だいごみ)
- 39 報道(ほうどう)
- 40 スクープ(scoop)
- 41 restrict
- 42 review
- 43 勧善懲悪(かんぜんちょうあく)
- 44 窮屈(きゅうくつ)
- 45 美化(びか)
- 46 ひょんな
- 47 克明(こくめい)
- 48 枠小説
- 本書に解説があります。
- 49 下女(げじょ)
- 「女中(じょちゅう)」。
- 50 体現(たいげん)
- 51 必竟(ひっきょう)
- 畢竟(ひっきょう)。
- 52 薄気味悪い(うすきみわるい)
- 53 貶す(けなす)
- 54 門外漢(もんがいかん)
- 55 ややこしい
- 56 感官(かんかん)
- 57 表象(ひょうしょう)
- 58 享受(きょうじゅ)
- 59 羅列(られつ)
- 60 猪突猛進(ちょとつもうしん)
- 61 造詣(ぞうけい)
- 62 白髪(しらが、はくはつ)
- 63 姑息(こそく)
- 一時しのぎ?小手先の?テレビ番組で誤用の多い言葉として紹介されていました。「人の目を欺くような」とか「卑怯(ひきょう)」などの意味とは違うようです。「根本的に解決しようとしない」という意味のようです。正誤ともに意味を知っておくと、読むときの手助けになりそうです。
- 64 モチベーション(motivation)
以下余白