『日本的霊性 完全版』
- 著者など
- 鈴木 大拙(すずき だいせつ)氏著
- 出版社など
- 角川ソフィア文庫さん
- 版刷など
- 読んだものは、2010年〔平成22年〕3月初版
- ボリューム
- 473ページ
感じたこと
難解です。非常に難しかったです。戦中戦後時の記述、仏教用語、抽象的に考えることなど、わかりにくい要素が絡み合っていました。
著者は、霊性を理解するには体験しなければわかりにくいと語っています。それは仏教のことだけでなく、私たちが仕事や生活で経験しなければわからないことと同じだとも言っています。畳の上の水練では泳げるようにならないのです。
この考えを弊サイトに当てはめてみると、次のようになると思います。
本好きはたくさんいますが、本や文書などを読む技術は、それを意識しない限り、その妙味を理解できない、ということです。
ほとんどの本好きは、私が思うに、文字や文章を読むのが得意で、弊サイトが取り組んでいる課題など気にもとめないことでしょう。そして、自分の好きな分野、小説、コミックなど、楽しく読んでいることだと思います。そして、その人たちは、不得意な分野においても、本嫌いや読書の苦手な人たちよりも、十分な対応ができていると考えられます。本好きは、文字や文章を読むうえで有利な立場あります。
しかし、この日本的霊性の考え方をもってすれば、やや違った見解が得られます。
親鸞氏は「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」と説いています。法律の世界では、善意とは何も知らないことを、悪意とは事情を知っていることをいうそうです。これを当てはめてみると、善人は読書の技法についてほとんど何も知らない人、悪人とは自然に読書法を身につけた人ということができます。
善人は読書が苦手であることを意識しています。しかし、それを克服するために、どのような読書法であっても、努力を続けていけば、やがて自分の読書スタイルを見いだせるのです。すでに、善人は、読めないという試練を嫌というほど味わっているのです。何をしても救われるのです。そして、読めないことを知っているだけに、読めたことに救われるのです。
悪人は、読書が得意なので、既に自分の読書スタイルを持っています。しかし、そのスタイルは意識して身につけたものではなく、自然に出来上がったものです。ですから、突然読めなくなるスランプ状態や他の読書技術を習得するときには、暗闇をさまようことになります。しかし、読書法というものを自らが求めれば、自分のスタイルを持っていただけに、その効果は目を見張るものがあるはずです。元々の技術に加え、試練を潜(くぐ)るだけに、善人以上に救われることでしょう。
読書技術が他力であるとすれば、自力である禅の立場からはどのように考えられるのでしょうか。
文字や文章の塊である本などと向き合ったとき、対決してはいけないのです。本は本であるが、自分は自分であるのです。しかし、本の内容を把握するには、本と一体化する必要があります。本を一つの枠のない円と考えれば、その中心に我が身を置くことになります。
しかし、これは、他力本願といわれる親鸞氏の考え方とも符合します。我が身が本か、本が我が身か、ということです。すなわち、我が身と本が一体とならない限り、読書技術の神髄を感じることはできないということです。
以上述べたことは、私の理解が正しければのことです。また、仏教関係者の方々には、軽々しくこのようなたとえをしたことをお許しください。
いずれにせよ、その技術を意識しながら実践し続ければ、本を読めるようになるということは間違いないと思われます。また、そのように私は願っています。
この書物を選んだ理由
今まで弊サイトで取り上げた本で、『腸能力』長沼敬憲氏著の中に、感情と直感とともに霊のことが書かれていました。霊とは何かたいへん気になっていました。鈴木大拙氏がどんな人で何をした人かはわかりませんが、名前だけは知っていました。タイトルの日本的霊性に興味を覚えたので読むことにしました。
私の読み方
本書には注釈がありました。注のある文を読んでから、その都度注釈を読みました。注釈を読むと書いてあることがわかるように感じました。わかりやすい注釈でした。
わからない言葉については、一区切りがついたところで、調べるようにしました。しかし、その言葉の意味がわからないと理解できないと感じたときは、その時に調べました。読むリズムを崩さないことと理解することの両立が大切だと思います。特に、本書は考えながら読むような本なので、思考を中断されると、考えていたことを忘れてしまうことがありました。また、言葉の意味がわからないと内容を理解できないため、先に読み進めることが難しいように感じました。思考を必要とするので、前に書かれていることを理解できないと、後の文章はわかりません。
巻末に解説がありました。読み始めたときは、余分な知識を入れるよりも、素直に自分の感覚で読んだ方がいいと考えていました。本文を読み終えたとき、ついでだから読んでみました。すると、本書の内容が身近に感じられました。本書をよくわかるような気がしました。解説を先に読んでいた方が、おそらく、理解は深かっただろうと思います。2度読みになるかもしれませんが、巻末にある「あとがき」や「解説」などは、先に読んだ方が深く読めるような気がします。物語であれば、結末を知るのは楽しみを奪います。しかし、何かについての論を述べたものは理解するのを中心にする方がいいと思いました。
宗教については、学生時代に倫理社会で習った程度です。とても、本書を理解したとは思えません。日頃から、これらに関する言葉や知識に気をつけていないと、理解は難しいと思いました。少しずつでも、この分野に興味を持てば、理解は深まると思いました。本書の何でもないような言葉が、実は仏教用語で、私が思う意味と違っていると感じたことがありました。それに気づかずに読んでいるかもしれません。縁無き衆生は度し難し、ということなのかもしれません。
読み方を考えさせられる本でした。
読書所要時間など
所要時間 : 27日3時間36分
読み始め : 平成26年10月24日(金)18時22分
読み終わり : 平成26年11月20日(木)21時58分
読んだ範囲は、カバー、凡例、目次から解説まで。
取り上げられた書物など
- 『禅と日本文化』
- 『浄土系思想論』
- 『宗教経験の事実』
- 『教行信証』
- 『消息集』
- 『歎異抄』
- 『神皇正統記』
- 『近代の超克』
出来事
11月10日(月) 俳優の高倉健さん死去。
11月17日(月) 国際自然保護連合(IUCN)が、太平洋クロマグロを絶滅危惧種としてレッドリストに掲載。
ひととき
ユリカモメです。冬がやってきました。一斉に飛び立つと、人の投げるエサに群がっていました。
平成26年11月17日(月)撮影。
調べたこと
- 1 霊(れい)
- 対義語は「肉」。
- 2 感慨無量(かんがいむりょう)
- 3 一朝一夕(いっちょういっせき)
- 4 潰決(かいけつ)
- 決潰(けっかい)。
- 5 畢竟するに(ひっきょうするに)
- 6 固陋(ころう)
- 7 群集心理(ぐんしゅうしんり)
- 8 保躬
- 「やすみ」「ほきゅう」なんと読むのでしょうか。辞書、インターネットで調べましたがわかりませんでした。
- 9 起臥(きが)
- 10 精神(せいしん)
- 11 縹緲(ひょうびょう)
- 縹渺。
- 12 跛行(はこう)
- 13 対蹠(たいしょ)
- 14 交驩(こうかん)
- 交歓。
- 15 如上(じょじょう)
- 16 啐啄(そったく)
- 17 啐啄同時(そったくどうじ)
- 18 知悉(ちしつ)
- 19 所依(しょえ)
- 20 志那(しな)
- 21 横超(おうちょう)
- 他力のこと。
- 22 竪超(じゅちょう)
- 自力のこと。
- 23 会下(えか、えげ)
- 24 外縁(がいえん)
- 25 大悲(だいひ)
- 26 光被(こうひ)
- 27 闡明(せんめい)
- 28 衆生(しゅじょう)
- 29 唯識(ゆいしき)
- 30 因果応報(いんがおうほう)
- 31 善因善果(ぜんいんぜんか)
- 対義語は「悪因悪果(あくいんあっか)」。
- 32 ・・・底(・・・てい)
- 「・・・のような」。
- 33 崛起(くっき)
- 34 改竄(かいざん)
- 35 感興(かんきょう)
- 36 詠草(えいそう)
- 37 輯める(あつめる)
- 38 嬰孩(えいがい)
- 39 歌垣(うたがき)
- 40 境涯(きょうがい)
- 41 六道輪廻(ろくどうりんね)
- 42 夢幻泡影(むげんほうよう)
- 43 沙弥満誓(しゃみまんぜい、さみまんぜい)
- 歌人の名前。
- 44 宗教(しゅうきょう)
- 45 倭琴(やまとごと)
- 46 涅槃(ねはん)
- 47 彼岸(ひがん)
- 48 褻瀆(せつとく、せっとく)
- 49 慟傷(どうしょう)
- わかりませんでした。
- 50 読誦(とくしょう)
- 51 審美(しんび)
- 52 繞る(めぐる)
- 53 感応道交(かんのうどうこう)
- 54 枝折(しおり)
- 55 根蔕(こんたい)
- 56 情調(じょうちょう)
- 57 破戒無慙(はかいむざん)
- 58 澆季(ぎょうき)
- 59 逢著(ほうちゃく)
- 逢着。
- 60 佶屈聱牙(きっくつごうが)
- 61 個己
- 「ここ」とでも読むのでしょうか。
- 62 律動(りつどう)
- 63 真骨頂(しんこっちょう)
- 64 賺す(すかす)
- 65 歟(か、や)
- 66 徒爾(とじ)
- 67 流謫(るたく、りゅうたく)
- 68 撞著(どうちゃく)
- 撞着。
- 69 起請(きしょう)
- 70 邂逅(かいこう)
- 71 捲し立てる(まくしたてる)
- 72 箙(えびら)
- 73 風尚(ふうしょう)
- 74 障礙(しょうげ)
- 障碍。
- 75 名詮自性(みょうせんじしょう)
- 名詮。名詮自称。
- 76 頡頏(きっこう、けっこう)
- 77 一筆勾下(いっぴつこうげ)
- インターネットで調べました。
- 78 爐鞴(ふいご)
- この字では、該当がありませんでした。鞴。
- 79 靄(もや)
- 80 漾う(ただよう)
- 81 鞠躬如(きっきゅうじょ)
- 82 厭離穢土(えんりえど)
- 83 欣求浄土(ごんぐじょうど)
- 84 墻(しょう)
- 牆。かきね。
- 85 布子(ぬのこ)
- 86 言挙げ(ことあげ)
- 87 能事(のうじ)
- 88 能事畢る(のうじおわる)
- 89 宣揚(せんよう)
- 90 忽諸(こっしょ)
- 91 忖度(そんたく)
- 92 儼存(げんそん)
- 厳存。
- 93 能所(のうじょ)
- 94 函蓋相応ず(かんがいあいおうず)
- 95 憑依(ひょうい)
- 96 回互
- なんと読むのでしょうか。調べましたがわかりませんでした。
- 97 随順(ずいじゅん)
- 98 気宇(きう)
- 99 酸鼻(さんび)
- 100 有為(うい)
- 101 転変(てんぺん)
- 102 驀直(まくじき)
- ばくちょく。
- 103 教学(きょうがく)
- 104 顰み(ひそみ)
- 105 顰みに倣う(ひそみにならう)
- 西施の顰みに倣う。
- 106 虚仮(こけ)
- 107 素懐(そかい)
- 108 すけをさす
- 助をさす。
- 109 恃む(たのむ)
- 110 売卜者(ばいぼくしゃ)
- 111 三心(さんしん)
- 112 五念門(ごねんもん)
- 113 四修(ししゅ)
- インターネットで調べました。
- 114 番匠(ばんじょう、ばんしょう)
- 115 妙好人(みょうこうにん)
- 116 求道(ぐどう)
- 117 編輯(へんしゅう)
- 編集。
- 118 千仞(せんじん)
- 千尋。
- 119 勇猛果敢(ゆうもうかかん)
- 120 敢為(かんい)
- 121 眉宇(びう)
- 122 咒陀羅尼(しゅだらに)
- 「咒」は「呪」。インターネットなどで調べました。
- 123 逼る(せまる)
- 124 出離(しゅつり)
- 125 復る(かえる)
- 126 帰命(きみょう)
- 127 這裏(しゃり)
- 「裡」は「裏」。
- 128 甚麼物(なにもの?)
- インターネットなどで調べましたが、納得できる答えは見当たりませんでした。
- 129 枘鑿相容れず(ぜいさくあいいれず)
- 130 覿面(てきめん)
- 131 汎神論(はんしんろん)
- 132 鉋(かんな)
- 133 倶胝(くてい)
- 134 言詮(げんせん)
- 参考:言筌(げんせん)。
- 135 直叙(ちょくじょ)
- 136 計較(けいかく)
- 137 覚え帳(おぼえちょう)
- 138 衒気(げんき)
- 139 肺腑(はいふ)
- 140 彫琢(ちょうたく)
- 141 貶剝(へんばく)
- 142 貪瞋痴(とんじんち)
- 143 会通(えつう)
- 144 娑婆(しゃば)
- 145 浄土(じょうど)
- 146 竹篦(しっぺい)
- 147 什具(じゅうぐ)
- 148 肉団心(にくだんしん)
- 心臓のこと。
- 149 剣呑(けんのん)
- 150 拄杖(しゅじょう、ちゅうじょう)
- 151 払子(ほっす)
- 152 岫(くき)
- 153 看経(かんきん)
- 154 偈(げ)
- 155 実相(じっそう)
- 156 垂語(すいご)
- 垂示(すいじ)。
- 157 破天荒(はてんこう)
- 158 罅隙(かげき)
- 159 看破(かんぱ)
- 160 倚る(よる)
- 161 已める(やめる)
- 162 咄(とつ)
- 「とつ」の読み方でよいのでしょうか。何か特別な読み方があるような気がしますが。インターネットなどで調べました。
- 163 小参(しょうさん)
- 164 方丈(ほうじょう)
- 165 示衆(じしゅ)
- 166 円融(えんゆう、えんにゅう)
- 167 無礙(むげ)
- 無碍。
- 168 劫火(こうか、ごうか)
- 169 洞然(とうぜん)
- 170 大千俱
- 「だいせんく」と読むのでしょうか。インターネットなどで調べました。
- 171 極促
- 「きょくそく」と読むのでしょうか。インターネットなどで調べました。
- 172 鴉(からす)
- 烏。
- 173 捷径(しょうけい)
- 174 ソロモン(Solomon)
- 175 言い草(いいぐさ)
- 言い種。
- 176 つごもり(晦、晦日)
- 177 具眼(ぐがん)
- 178 甄別(けんべつ)
- 179 拈じる(ねんじる)
- 180 喚ぶ(さけぶ)
- わめく。
- 181 擲つ(なげうつ)
- 182 下座(げざ)
- 183 融通無礙(ゆうずうむげ)
- 184 往還(おうげん、おうかん)
- 185 相入(そうにゅう)
- インターネットで調べました。
- 186 重々無尽(じゅうじゅうむじん)
- 187 誦する(しょうする)
- そらんじる。
- 188 究竟(くっきょう)
- 189 洗礼(せんれい)
- 190 窮極(きゅうきょく)
- 究極。
- 191 さかしら(賢しら)
- 192 叡智(えいち)
- 英知。叡知。
- 193 法嗣(ほうし)
- 194 大悟(だいご、たいご)
- 195 超克(ちょうこく)
- 196 煙に巻く(けむにまく)
以下余白